でも話が浮かんじゃったから頑張ってみました。
もしもし治安局? 今職場にモッキンバードがいるんですけどどうしたら……。どうせパエトーンの知り合いだろって? でしょうね。
冗談はさておき、今をときめく怪盗団、その名もモッキンバード。その筆頭であるヒューゴ・ヴラドさんが『Random Play』のレジに立っているという異様な光景が目の前に! それも従業員用のエプロンもバッチリ身に着けてる!
貴方こないだガッツリ指名手配されてませんでしたっけ? 堂々と店の表口から入ってきたときは流石に正気を疑ったよね。リンも何普通に店番頼んでんのよ。DMで『今日はヒューゴと店番ね!』って当たり前のように言うのやめてもらっていいですか。
「あのー……」
「おっと、サク殿。いらぬ気遣いはしてくれるなよ? 今の俺は、『Random Play』においては貴殿の後輩だ、なんでも命令してくれたまえ。なに、他でもない店長殿の頼みだ、モッキンバードの名に懸けて必ずや恩義に報いて見せよう」
「は、はぁ……」
や、やりづれええぇぇーっ!
だから人選もっと絞れって何度言ったらわかるんだよ店長! いきなりモッキンバードを後輩につけられたら気が狂うわ!!
と、とにかくここは先輩らしく仕事の指示を出してみよう。俺がいつもしている事をヒューゴさんに振ってみよう。……やべえ、めっちゃ勇気いるなこれ。
「じゃ、じゃあ床の掃除を――」
「すまない、それについては先程終わらせてしまったよ」
「……ほんとだ、チリ1つ無いですね」
「なら商品棚の整理――」
「それもすでに完了している」
「領収書――」
「顧客ごとにまとめ終わっているぞ」
俺の頑張って絞り出す指示は、言ったそばから完了済である事を突き付けられていった。
「……ははっ、もうやることねえや」
「そうか、それは僥倖だな」
もしかして俺おちょくられてる? 先輩よりも仕事ができる後輩とか屈辱なんですけど。このままだと俺戦力外通告されちゃう、つらい。
「時にサク殿。仕事が無いのであれば1つ、俺の話を聞いていただきたいのだが……宜しいかな?」
「話? 俺にですか?」
「ああ、何を隠そう俺は、サク殿に感謝を伝えるために店番の任を引き受けたのだよ」
「感謝……? 全然心当たりがないんですけど……」
まさかヒューゴさん、自分の話を俺に聞いてもらうこの流れを作るために、先に仕事を全部終わらせておいたとか? だとしたらどんだけ策略家なんだ。敵に回すと恐ろしい人だな……。
「先日、俺の妹と会ったと聞いている」
「妹?」
「ふむ。名はビビアンという、心当たりは?」
「ああ、確かに会いましたけど……」
あんなにキャラの濃いオタクは一度会ったら忘れないと思う。え、あの娘ヒューゴさんの妹なの。それならヒューゴさんも何かしらの限界オタクだったりするのだろうか。妹激推しとか、もしくは滅茶苦茶シスコンだったりするのかな。
なんてアホな事を考えていたのだが、ヒューゴさんを取り巻く空気が変わった。さっきまでのおどけた笑顔をやめて、真剣な眼で俺を真っすぐ見つめてきた。
「君は彼女の……時には災厄とも呼ばれてきた予知の能力について聞いただろう。これまで関わってきた人間どもは彼女の存在を嫌悪し、迫害するのが当然だった。……だが君は彼女を拒まなかった。ビビアンにとってそのような人間は非常に稀有な存在なのだよ」
ビビアンが俺に能力を打ち明けるとき、とても迷っていたのはそういう背景があったのか。確かに他人から急にあなたは死ぬかもしれないなんて言われたら気味が悪いだろう。増してやその予知が的中してしまうのなら猶更。迫害が当然だなんて、あってはならない状態であるはずなのに、彼女はいつしか受け入れてしまっていたという事だ。
正直な所、俺ももし死ぬと言われていたら似たような気持ちを抱いていたかもしれない。実際には変な過労みたいな内容だったからよかったんだけど。いやよくはない。
「だから礼を言う、サク殿。僭越ながら、兄としていつか恩を返させていただきたい」
「礼を言われるような事はしてないですよ。普通に話をしただけですし」
「……俺からすれば、貴殿の対応は世間一般で言う普通には当てはまらないと思うのだがな」
えっ、普通ではない……? ちょっと聞き捨てならない。なんすか、俺が普通の人じゃないとでも言うんですか。
俺が異議を申し立てようとする前に、ヒューゴさんは時計を確認するや否や店の裏口に向かって颯爽と歩きだした。
「さて、俺からの話は以上だ。店番という依頼も完了しているし、俺はここで退散させてもらうとしよう」
「え、ちょ――」
「待て、ヒューゴ」
あれ、険しい顔持ちのライカンさんがいつの間にか店の裏口で待ち構えてた。対するヒューゴさんはなぜか来るのがわかっていたかのように余裕の笑みを浮かべている。
「これはこれは……どうかしたのかねライカン。お前の店番を代わりに請け負ってやったのだから、ここに来る必要は無いはずだが?」
「リン様から脈絡もなくキャンセルの連絡が来たと思ったら、やはりお前の仕業か……」
会話から察するに、元々ライカンさんの店番だったところをヒューゴさんが横取りしたってことか。何、二人は知り合いなの? というかライカンさん全然敬語じゃないの違和感が凄い。
「ヒューゴお前、サク様に余計な事をベラベラと喋ったりしてないだろうな?」
「先入観で物を言いすぎだぞライカン。俺は善良な市民たるサク殿に、とある件で感謝を伝えていただけだ。お前は俺が不用意に情報を漏らすろくでなしに見えるのか?」
「……わかっているのなら良い。だが店番とは最後まで持ち場にいないと成立しないだろう。そんな事もわからないのか?」
「ふん、ならば貴様が変わりにやるがいい。生憎俺は忙しい身でね、次の現場に向かわなければならないのだよ」
「はぁ……。お前ってやつは相変わらずだな……」
何か完全に二人の世界に入っちゃった。お互い憎まれ口は叩いてるけど凄く距離が近いし、めっちゃ仲良いじゃん。
ちなみにこの後、2人の口喧嘩は帰ってきたアキラとリンによって丸く収められましたとさ。ヒューゴさん、結局閉店まで居たけど次の現場は大丈夫だったんですかね?
ちなみにリンはヒューゴさんにミニケーキで買収されていた。『私はミニケーキ以下なのですか……』ってライカンさんがめっちゃ落ち込んでいて、とてもかわいそうだった。
ヒューゴとライカンの関係とても好き……。
もしも「こんなのヒューゴじゃない!」と思われた方がいましたら、「いいか、ヒューゴはこうやるんだ!」と教えてほしいです。