厄ネタ×二乗は一周回って厄ネタではない(白目) 作:ハゲチャビン
「……酷い、ですね」
だな。
俺達とフランス兵たちによる『些細な行き違い』から発生したトラブルを『シンプル』且つ『直接的』な方法で『穏便』に交渉をし、彼らにお帰り頂いた後、Dr.ロマニの指示によって追跡した先の砦。
内部は損傷が激しく、外壁も中と比べてマシなレベルでしかない、機能がほぼ死んでいるような砦と呼んでいいのかどうかすらわからない状態だ。
「戦時中だから?」
「いえ、この年は休戦条約を結んだはずです。小競り合い程度はあったかもしれませんが、此処まで酷い損傷が発生する戦闘は無い筈です」
「じゃあ、特異点の異常のせいかな?」
「判りません。ですが、ここの人に聞けば―――」
その時、見張りの為にか一人のフランス兵が砦の外に出てくる。
案の定、俺達を敵だと思い応援を呼ぼうとしたところをマシュが上手い事説得してくれたおかげで何とか事なきを得た。
「シャルル7世は休戦条約を結ばなかったのですか?」
いくつかの質問をしていくうちに出て来た、踏み込んだその質問に彼は訝しみながら答えた。
「知らんのかアンタ等? 王なら死んだよ。魔女の炎に焼かれた。だから、お嬢ちゃん達みたいな見た目の奴等は警戒しちまうんだ」
「魔女?」
「ジャンヌ・ダルクだ。あの方が"竜の魔女"になって甦ったんだ……」
恐ろしい物を見たような、いや、実際に見たんだろうな。身体を震わせながらそう語るフランス兵―――更に話を続けようとするが、
『魔力反応有! 周囲を警戒してくれ!!』
Dr.ロマニの声で意識が切り替わる。
辺り見るとガチャガチャと音を奏でながら此方に向かってくる骸骨兵。
コイツ等なら別に手加減はいらないな。
「ええ。先輩…いえ、マスター、指示を! 木っ端みじんに蹴散らします!!」
―なんかこの娘物言いが物騒じゃない?
藤丸はキリエライトに、俺は魔法少女二人に指示を出しながら、影の中で沸き立つ死体反応系アブノーマリティの制御に意識を割くのだった。
あっ、『憎しみの女王』は魔法禁止ね。魔女云々で誤解がさらに加速しかねないから。
『え』とこっちを見ながらも、慣れない格闘戦を繰り広げる彼女はちょっと新鮮だった。
***
「た、助かった……あんたらが居なかったら全滅してたかもしれない」
(主にキリエライトが)骸骨兵を粉砕し終えると、一緒に戦っていた彼等は安堵した表情で此方に近づいた。
見た目が貧弱そうな相手に何を大げさな……とは言えなかった。
彼等の装備は手入れする暇も無かったのか傷が目立ち、戦闘においても砦に入り込みそうな敵を抑え込むことぐらいしかできなかったからだ。
無論、何度か戦ってき経験からか効果の薄い剣ではなくハンマーなどの打撃武器で応戦はしていた。しかし、体力という制限のない死人の相手は手こずるようだった。
「…それでは、申し訳ありませんがもう一度詳細な事情をお聞かせいただけますか?」
先ほどの戦闘で信用を得たのか、最初よりもより詳しい事を話してくれた彼等の言葉曰く、火あぶりで死んだはずのジャンヌ・ダルクが悪魔と取引をし、死体の様な青白い肌を纏い甦ったとのこと。
「先程の骸骨兵もその悪魔との取引で?」
「そんな子供だましなら俺達でも対処できる。もっと邪悪な奴らを引き連れてフランス中を襲っているんだ」
キリエライトの言葉に彼は首を振って答える。まあ、でなければ砦がこんなにボロボロにならんよな。見た所あの骸骨どもにそんな力は無いだろうし。
彼女がその『邪悪な奴等』について更に問いかけようと口を開いた瞬間――咆哮が響き渡った。
それを聞いた彼等は判り易く緊張状態に入った。
「ああ、畜生。言った傍から来やがった!!」
「動けるヤツらをたたき起こしてこい! この砦を壊される訳にはいかない!!」
骸骨兵の時よりも激しく動き回る彼らに俺達は置いてけぼりにされつつあった。
「あの、何が―――」
「アンタらも構えろ! 連中が、ドラゴンが来るぞ!!」
一人のフランス兵が一点――空中を指さした。
俺達が指さした方向に視線を向けると、確かに居た。
鱗のある大きな体躯、蝙蝠の羽根、鞭のようにしなる尻尾、そしてその口内に揃うナイフのような牙。
空想上の生物でしかなかった翼を持つトカゲ――。
「アレは――ワイバーン! ドラゴンの亜種体です!」
「何か違うのけ?」
「一般的にはドラゴンよりも格が低いとされていますが、それでも先ほどの骨々六助よりも手ごわい相手であることには変わりありません。マスター」
指示を! と言いかけたその言葉はしかし、それを上回る声量にかき消された。
「水を被るのです! 一瞬だけですが彼等の炎を防げます!!」
凛とした声は慌ただしく動いていた兵たちの動きをぴたりと止めた。
声の主、旗を持った女性はそのまま動きが止まった彼等の元に向かうとテキパキと指示を出して自身も戦闘に参加するべく動き始める。
フランス兵たちは彼女を有り得ないものを見るような眼で見ながらも、明確な脅威を前に大人しく指示に従い戦闘の準備を進める。
俺達もぼやぼやしてねぇで戦闘に加わろうか。
とはいっても『絶望の騎士』は遠距離攻撃…はあったけどアレ射程短かったよな……。
と、いう訳でスマン藤丸とキリエライト。
「『憎しみの女王』、この戦闘において魔法を解禁する」
『文目君!?』
これが終わったら速攻トンズラしよう!
此処はフランスのとある農村。
いや、農村『だった』と形容した方が良いだろう。
かつては長閑で朗らかな村民が平穏な日常を享受するなんの変哲もない村だった。
百年戦争の影響で多少なりとも苦しくはなったがそれでも住人同士で協力しあって苦難を乗り越えていたそこは最早存在しない。あるのは焼けた木材と死体だけだ。
魔女として復活した聖女ジャンヌ・ダルクの襲撃によって無残にも滅ぼされた。
未だ燻り、煙を上げる村の残骸の中ですすり泣く声が聞こえる。
それは10にも満たない幼き少女だった。
魔女の襲撃に際し両親と兄の尽力によって奇跡的に生きながらえる事の出来た彼女はしかし、襲撃を乗り越えた先の景色に絶望を抱くしかなかった。
自身を匿ってくれた家族は物言わぬ骸となり、見知った隣家の老婦も家の修理をしてくれた大工も、自身の知る人間が一人も生きていない。
現代であるならば救助隊を期待できるだろうが、此処は未だ騎士が残る時代。さらに言えば国王無き今国内は混乱していることも加味すると、救援は期待できない。
この時代で少女が一人生きていける訳も無く、只々村を彷徨い何時しか空腹と体力の限界で野垂れ死ぬか、或いは人の道から外れた生き方をするしか選択肢は無かった。
――そう、本来ならば。
『汝は選ばれた』
それは白い衣に奇妙な仮面をつけた、羽根を持つ人ならざる者。
『汝は世界を救う使命を、その背に背負った』
周囲には複数の人。いずれも同じ白い衣を纏い、細部は異なるが同じ意匠の仮面を身に着け、膝をついている。
『汝、我らと共に魔女を打ち倒し、全ての命に救済を与えん』
静かに、しかし響くような声は少女の絶望を掻き消し、そして希望と使命で満たした。
『そして―――世に平穏のあらんことを』
祈るように両手を組み、跪く少女を羽根が包み込んだ。
救済と審判の足音が近づいてきた。
残された無垢なる羊はその時を知らない。
色々解説
ラストに出て来た『アレ』
・お ま た せ。
ロボトミーに努める管理人にとって一度は通る碌でも無い雪見大福。(一応滅茶苦茶有用性のある特性はあるが個人的には事故注意)
12人にせんの…祝福を与える。尚脱走した瞬間に祝福を与えられた奴らは一人を除いて『使徒』になり『救済』を与えに来る。危険度は使徒含め最上位の『AREPH』。
ジャンヌオルタと愉快な仲間たちを使徒にして特異点乗っ取り……というルートも考えたけどそこまでの技量は無いし面倒くさいのでジャンヌオルタに襲われて絶望に沈む人々に『希望』と『使命』を与えてしかも『祝福』も与える太っ腹路線にしました。
今後の展開次第ですが、その時が来たら主人公にE.G.Oを付けていいか否か。
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『武装』主人公も戦力を付けるべき
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『非武装』そのままの方がおもしr、輝く