投稿の拡散も民事責任の追及対象 SNSに詳しい弁護士のアドバイス

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聞き手・石田耕一郎
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 SNS上で元兵庫県議のデマを拡散して名誉を傷つけた疑いで、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者が逮捕された。SNSに虚偽情報があふれる時代、司法の実務はどうなっているのか。2020年に大量の中傷を受け、自死した女子プロレスラーの遺族代理人を務め、「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などの著書がある清水陽平弁護士に聞いた。

 ――立花容疑者が逮捕された事件では、他のSNS利用者も、亡くなった兵庫県議に対する立花氏の投稿をリポストしたり、引用したりしていました。

 立花氏はSNSのインフルエンサーで、兵庫県警は証拠隠滅(口裏合わせなど)や逃亡の可能性を考慮して逮捕したのでしょう。立花氏に同調し、積極的に投稿の拡散に関わったSNS利用者については、仮に投稿を削除しても、県議の遺族がSNSの記録を保存していて、投稿者を特定する手続きを取れば特定できる余地があり、少なくとも民事的な責任を追及される可能性があります。

 ――SNSなどネット空間での誹謗(ひぼう)中傷には、どんな措置が考えられますか。

 一般論として、違法な投稿に対しては、刑法の名誉毀損(きそん)罪や、侮辱罪のほか、業務妨害罪が適用され、刑事罰が科される可能性があります。

 民事上でも、投稿の内容が名誉権やプライバシー権、肖像権といった権利を侵害する場合は、民法の不法行為に該当し、被害者がこうむった損害を賠償する必要が生じます。

 ――SNSではメッセージの投稿のほか、引用や、賛意などを表す「いいね」などができます。どういう行為が責任追及の対象になるのでしょう。

 名誉毀損は、社会的評価を低下させる不法行為です。他者を非難する投稿が、名誉毀損ではないとみなされるには、①公共性②公益目的③真実性という三つの要件のすべてを満たす必要があります。一つでも欠けると、不法行為になります。例えば、デマや、個人への恨みから発せられる罵詈(ばり)雑言のような投稿には、公共性がありません。

 また、デマだと認識した上でのリポストや引用といった拡散行為に対しても、理論的にはもとの文章の投稿者と同じ責任が問われます。

 一方で、「いいね」だけだと、法的責任を問うのは一般的には難しいといえます。

投稿者と裁判で争うのに必要な準備とは

 ――被害者が、投稿者の責任を問うには、どんなプロセスが必要ですか。

 まず、誹謗中傷の投稿をした…

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