黒澤明監督の映画「影武者」「乱」などに主演し、幅広い芸域で舞台やテレビでも活躍した俳優の仲代達矢(なかだい・たつや、本名・仲代元久=もとひさ)さんが死去したことが11日、分かった。92歳。東京都出身。
昭和27年、高校卒業と同時に俳優座養成所4期生として入所。22歳のとき舞台「幽霊」で主演デビューし、脚光を浴びる。
29年、黒澤監督の傑作「七人の侍」にせりふなしの浪人役で出演。31年、「火の鳥」で本格的な映画デビュー。34年、五味川純平のベストセラー小説を映画化した小林正樹監督作品「人間の條件」の主役の梶役を得て名実ともにスター俳優となった。
36年の「用心棒」から黒澤映画の常連となる。「天国と地獄」(38年)の凄味をきかせた刑事、「影武者」(55年)の武田信玄とその影武者、「乱」(60年)の一文字秀虎などで国際的な評価を得た。重厚さと説得力のある演技は「鬼龍院花子の生涯」(57年)などでも披露。「戦場にかける橋2・クワイ河からの生還」(平成元年)など外国映画出演にも意欲を見せた。
脚本家で女優でもあった宮崎恭子さんとは8年に死別したが、夫妻で昭和50年から始めた俳優教育のための私塾「無名塾」からは役所広司さんら多くの有名人を輩出した。
妻の宮崎恭子さんに「マクベス」のメークをされる仲代達矢さん=1982年5月、東京・六本木
「どん底」「リチャード三世」などの舞台で数々の賞を受賞。平成19年に文化功労者。27年に文化勲章など受章。
死去の仲代さん、6月に第2の故郷・能登で最後の舞台 92歳渾身の演技「ありがとう」