左ハンドルにこだわりがあった初マイカー
俳優の沢尻エリカさんにクルマを好きになったきっかけを尋ねると、「おそらく父の影響だと思います」という答が返ってきた。
「父はスポーツカーにばかり乗っていて、メルセデス・ベンツのオープンカーやジャガーなど、物心ついた頃からそういうのを見てきたので、自分も大人になったら乗りたいと思ったんでしょうね。“クルマって格好いいな”という気持ちはありました」
小学生の頃からモデルとして活動してきた沢尻さんが運転免許を取得したのは21歳のとき。
「実技の試験で緊張しすぎて一度不合格になった以外は、順調でした」。そして免許を取得すると、もちろん自分のクルマが欲しくなる。沢尻さんが選んだのは、BMWの初代「Z4クーペ」だった。この選択は、やはり父上の影響を受けているように思える。
撮影用のBMW Z4ロードスターが現場に到着すると、沢尻さんは「私のZ4はクーペだったんですが、オープンはかわいいし憧れもあったんです」と目を細めた。
そしてインストゥルメントパネルを覗き込んで、「そうそう、こんな感じでしたね、懐かしい!」と明るく笑った。その弾けるような笑顔から、初めての愛車だったZ4をとても気に入っていたことが伝わってくる。
日本仕様のBMW Z4にはいくつかのエンジンバリエーションが存在したけれど、沢尻さんが乗っていたZ4クーペは、排気量3.0リッターの直列6気筒エンジンのみの設定だった。
「若葉マークだったので、オープンは敷居が高いと思ったんですね。あと、マニュアルで免許を取ったのでマニュアル車も考えましたが、さすがにオートマだろうと。ただ、なぜか左ハンドルにこだわりがあって左を選んだんです。でも、日本では左ハンドルがいかに使いにくいかということを学びました(笑)」
沢尻さんが21歳の頃といえば、が映画『パッチギ』で多くの映画賞を受賞したり、主演したドラマ『1リットルの涙』が大ヒットしたりした直後だ。さぞかし忙しかったのではないだろうか。
「Z4に乗るようになってからは、どこでも自分の運転で行きたいという気持ちが強くなりました。プライベートはもちろん、仕事の現場にも、自分でZ4を運転して行くことが増えたんです。よく覚えているのは、仕事の終わりに首都高速をぐるぐるしたことですね。夜遅い時間帯の首都高はクルマも少なくて、あてもなく流しているといろいろなことが忘れられるというか、あの感じが好きでした」
俳優の方に話を聞くと、車内で発声やセリフの練習をするケースが多いけれど、沢尻さんは「そういうのとは違いましたね」と、きっぱり。
「ただリラックスしたり、リフレッシュしたりするためにぐるぐるしたという記憶が残っています。Z4はすごく気に入っていたんですが、海外に拠点を移すときに日本に置いていくことになったんです」
BMWがすごく気に入ったワケ
海外から戻り、日本に帰国した沢尻さんは、BMW Z4の後継を探すことになる。
「アウディも格好いいと思って試乗もさせてもらったんですが、んー、やっぱりビーエムのほうが好きかなと感じて、6シリーズを選びました」
こうして沢尻さんは、F12の開発コードで呼ばれる3代目の6シリーズ、BMW 「650i」と生活するようになる。
ただし、6シリーズを所有した期間は、それほど長くはなかったという。その理由が、BMWがすごく気に入ったからだというのがおもしろい。
「どんどん走ることが好きになって、自分だけの空間でもっと運転を楽しみたいという気持ちが強くなったんです。行動範囲も広がって、かなり長距離ドライブもするようになったんですけど、だったらM6のほうがいいかなと思いました。もうひとつ、M6は純正のオプションでマット塗装が選べるようになったのも大きかったですね」
こうして沢尻さんは、最高出力560psを発生する4.4リッター V型8気筒エンジンを搭載する、BMW M6クーペに乗るようになった。ちなみに、2017年から2023年まで生産された4代目の6シリーズにはM6が設定されなかったから、現時点では最後のM6ということになる。
「M6 は最⾼に気に⼊っていました。ずっと乗ろうと思って、本当に⼤切にしていたんです が……、思いがけない事故に巻き込まれて、フロント部分が大破してしまい、買い替えざる得なくなりました。あのときの無残な“マイベイビー”の姿は、今でも目に焼き付いています」
最愛のBMW M6と悲しい別れとなった沢尻さんが次に出会ったのが、現在の愛車だ。
後編となる次回は、現在の愛車について語ってもらうのと同時に、いま興味があるクルマを試乗いただく。
沢尻エリカ(さわじりえりか)
俳優。1986年4月8日生まれ。東京都出身。05年、ドラマ『1リットルの涙』で主演を務め、同年公開の映画『パッチギ!』で、『第29回⽇本アカデミー賞』新⼈俳優賞を受賞。映画『へルタースケルター』(12 年)では日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞し、『ファースト・クラス』(14 年)など話題作に出演。映画『#拡散』が2026年2月に公開される。また昨年に上演されたテネシー・ウィリアムズの名作『欲望という名の電車』では初舞台で主人公のブランチを演じ、来年は『ピグマリオン-PYGMALION-』の公演が控えている。
【舞台情報】
『ピグマリオン-PYGMALION-』
【期間】2026年1月20日(火)~2月8日(日)
【場所】東京/東京建物 Brillia HALL 他、地方公演(愛知・北九州・大阪)
【原作】ジョージ・バーナード・ショー
【演出】ニコラス・バーター
【出演】沢尻エリカ/六角精児/橋本良亮/清水葉月/玉置孝匡/市川しんぺー/池谷のぶえ/小島聖/春風ひとみ/平田満 他

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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・亘つぐみ 編集・稲垣邦康(GQ)
