姓が違っても家族の絆は変わらない

これまで幾度も述べてきたように、戸籍法は「氏を同じくする者」でなければ同じ戸籍に入れないというのが鉄則である。ゆえに、こうした煩雑な手続きを要求されるのである。この手続きをとらなければ、やはりタラちゃんはマスオの戸籍に「フグ田タラオ」として入ったままである。

とはいえ、姓の異なる親子であっても同じ屋根の下で幸せに暮らしていれば、そうした面倒な手続きを踏んでまで姓を変える必要はないであろう。それで社会生活上、何か不便があるかというと、もし母子関係を証明する必要が生じた場合でも、住民票、あるいは母子手帳などで事足りる。

すなわち、戸籍や姓の異同は真の「家族」の絆を揺るがすものではないのである。

内閣府による最新の統計によれば、2020年の出生数における婚外子の割合は2.4%であり、平成以降、微増の傾向にある。今後は事実婚夫婦やシングルマザーが増えるとともに、婚外子も自然と増えていくことは想像に難くない。

戦後の民法改正により、戸籍における婚外子の扱いは明治民法から多少変更された。

いうまでもなく、子が生みの親の戸籍に入るのは「親子」という血縁関係に基づいている。だが、婚外子の場合、母子関係については分娩という事実によって明らかであるのに対し、父子関係については父が「これは自分の子だ」と認知しない限り成立しない。

手をつないだ母子
写真=iStock.com/Hakase_
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婚外子が認知されても姓と戸籍は別

ここでまた離婚後、シングルマザーとなったサザエを例にとろう。

遠藤正敬『戸籍の日本史』(インターナショナル新書)
遠藤正敬『戸籍の日本史』(インターナショナル新書)

サザエが新たなパートナーか、一夜限りの相手との子を産んだとする。その子は婚外子であるから、まずサザエが出生届を出すことにより、母サザエの戸籍に入る。当然、子の戸籍の「父」欄は空欄となり、サザエが単独親権者となる。

この時、タラちゃんはサザエと同じ戸籍(したがって「磯野」姓)に入っているものとする。そうなると、現行法の下では、サザエの婚外子はタラちゃんに次ぐ「二男」として戸籍に記載される。

サザエの婚外子が父から認知されれば、子の戸籍の「父」欄にその名前が記載され、父の戸籍にも認知した事実が記載される(ただし転籍などによって新戸籍を作った時は認知の記載が削除される)が、それだけでは父子の戸籍も姓も別々のままである。

では、サザエの婚外子が父と同じ戸籍、同じ姓となるにはどうすればよいか。それにはまずその父と母サザエが婚姻することが前提になる。これによって婚外子は「嫡出子」となる(これを「準正」という)。その上で子は父の姓に変更する必要がある(手続きは前述の通り)。

繰り返しになるが、たとえ親子であっても氏(姓)が同じでなければ同じ戸籍には記載されないという戸籍法を貫く「同戸同氏」の原則のためである。

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