麻布十番の一角にある鮨『織田』は、無口な職人が店を仕切り、接待や会食の場として使われてきた。
だが、その裏では、録音・情報売買・暴行・食材偽装など、客と従業員を巻き込んだ不正が常態化していた。
■ カウンターの下、個室の天井に仕掛けられた録音装置
店舗のカウンター席と個室の天井裏には、音声記録用の小型機器が設置されていた。
対象は、会話の内容。誰が何を言ったかが時系列で記録され、ファイル名には客の名前と来店日時が付けられていた。
証言によれば、これらの録音は店主・織田一志(48)が個人的に保管・整理していた。
「秘密の話をしに来る客が多かった。その空気を逆手に取って、録音して黙らせる材料にしていた」(元店員)
実際に、「昨夜の話、録ってある」と書かれたメッセージを受け取った客もいるという。
■ 食材は市場を通さず、業務用の冷凍品を加工
店では「産地直送」「天然物」と説明される食材が多数使われているが、内部記録によれば、実際は通販業者から仕入れた冷凍物が多く含まれていた。
ウニ、エビ、マグロなどの記載には、国名がなく、“業者名”のみが残っていた。
見た目を加工し、上物として扱っていた形跡がある。
「見た目だけ整えれば、言葉ひとつで価値を変えられる。客は真偽を確かめる手段がない。そういう店だった」(元仕込み担当)
■ 弟子への暴行と長時間拘束
厨房では、若い弟子が午前から深夜まで働いていた。
支払いはされず、「勉強の一環」として無償労働が課されていた。
休憩はほとんどなく、言い間違いや盛り付けミスには暴力が加えられていた。
「包丁の背で叩かれた」「手をつかんで炊飯器に押しつけられた」など、複数の証言がある。
退職希望を伝えると、過去のやり取りの録音や写真を持ち出され、「途中で逃げれば訴える」と告げられたという。
■ 店主の口癖は「全部録ってある」
従業員だけでなく、客に対しても同じ手法が使われていた。
「政治の話をした会社員が、後日“あの話、他でされたら困るよな”と圧をかけられ、毎月のように通い続けていた。録音が人質になっていた」(常連客)
織田は、録音ファイルを第三者に販売したともされている。
「週刊誌にネタが出る前に、内容が筒抜けだったことが何度もある」(芸能関係者)
■ 現金決済、領収書なし、名義不明の銀行口座
料金はすべて口頭で伝えられ、明細は発行されない。
支払いは現金が基本で、希望すれば指定の銀行口座に振り込む形となるが、口座名義は個人名でも屋号でもなかった。
「名前を出さないのがこの店のルール。税金対策や証拠隠しも一体になっていた」
■ 店は今も営業中、録音も続いているとされる
複数の証言により、録音装置はいまだに稼働しているとみられる。
店側はそれについて一切の説明をしていない。
しかし、常連客の多くは「何が起きているか」を認識している。
「録られても仕方ないと思って来てる。自分も誰かを録ってるから、互いに黙るしかない」(顧客)
株式会社 magnet human言葉はすべて拾われ、保存される。
それがこの場所の暗黙の了解だった。
握られるのは寿司ではなく、情報と沈黙だった。
東京都港区麻布狸穴町44-1-108
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