倉沢良弦『ニュースの裏側』

いろいろ、書いてます。お仕事のご依頼は、ryougenkurasawa@gmail.com。

これからの日本②中国の戦略

中国を単なる共産主義国家、あるいは社会主義国家の理想、または資本主義や自由主義経済圏に争う理想追求の具現と見るのは、中国の歴史を知れば実に浅薄な判断だと感じるだろう。
そもそも中国は多民族国家であり、政争の歴史と血塗られた権力欲が交錯する野蛮な歴史こそが中国の本当の姿だ。詳しくは司馬光の著した『資治通鑑』を読むとよい。『温公通鑑』『涑水通鑑』とも言う。

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中国の歴史書としては『史記』が有名であるし、そもそも『資治通鑑』自体330万文字もあって、私も全文は読んではいない。読んではいないが、かつて翻訳された部分は飽くまで日本人の琴線に触れる程度の部分だけで、真実の歴史に踏み込んだ内容ではなかった。これらの手法は、中国を礼賛する共産主義者の手口のようなもので、共産主義の素晴らしさを具現したのが中国だとプロパガンダを繰り返してきた。
しかし、以前も触れたように本当の中国史中華思想を学ぶ為には、『資治通鑑』は必須の書であると考える。
ではこの本に触れることはどんな意味があるのだろう?
率直に言って、今、日本企業の多くは中国人についての理解は非常に薄いと考えている。昔の中国人と現代の中国人は果たして違う人種だろうか?私はそうは思わない。13億人という日本では考えられない人口を抱える国である以上、いろんな人がいるのは当然だが、少なくともその国民性のベースにあるものは、今も昔も変わっていないだろう。
その意味で、『資治通鑑』を斜め読みでも良いから中身を知っておくことは重要だ。その中身は、人肉食の歴史を赤裸々に語ったもので、飢饉や戦争で食べるものが無くなると、人肉を食糧としていたことが書かれている。日本人にしてみれば考えられないことだが、当時の中国国内では普通のことだったようだ。食べるものが無いなら、人肉を食べれば良いという彼らにしてみれば当たり前のことなのだろう。
似たようなことは現代でも起きている。
新型コロナウイルスが蔓延した時、猫がこのウイルスを媒介すると言う風聞が広がり、高層階のマンションの窓から飼い猫が相次いで投げ捨てられたということがあった。これは何を意味するか?
資治通鑑』の史実、今から1,000年以上前の中国も、今の中国もやっていることは同じで、自分さえ良ければそれで良いから、強者である人間は食糧が無くなれば人肉でも食べるし、自分が病気になりたく無いから可愛がっている猫でも平気で捨てる。
もう少し時代を遡れば、中華思想共産主義を巧みに組み合わせることで中国国民を扇動した事例がある。毛沢東はプロレタリア(都市労働者階級)の革命思想と中国国内の農民の解放と結びつけることによって、中国国内に革命思想を植え付けた。毛沢東自身は『資治通鑑』の愛読者であり、彼の革命思想に通じる手法は、多くを『資治通鑑』を教本に行われたと言われている。煎じ詰めれば毛沢東の政敵を排除する手法の元になったのだ。
毛沢東文化大革命大躍進政策によって実に4千万人を餓死させたと言われている。ところが、知略攻防の限りを尽くす毛沢東にとって、そんなことは取るに足らないことであり・・・

以後、続きは有料部分をお読みください。
尚、有料部分の末尾に、参考資料の出典と抄訳を載せております。

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衰退する『左派リベラル経済圏』

楽天がプラチナバンドを確保して莫大な設備投資を行なってでも携帯電話事業にこだわる理由は、独自経済圏の確保にあるのは周知の通りだ。
楽天市場楽天携帯、楽天ポイントを軸に楽天カード楽天証券楽天銀行への顧客の囲い込みを行うことで、PayPayのソフトバンクをモデルとして、楽天経済圏を作り上げることで、一定の収益化を図る狙い。
既にインターネット光回線の市場にも参入し、顧客の囲い込みに必死だ。
楽天グループの直近の連結決算を出しておく。
これは概算で、25年末(Q3時点での連結ではない)の数字ではないが、概ね楽天グループ全体の雰囲気は掴めると思う。

連結売上(直近の通期ベース)
2024(~2025年3月期)で約2.3兆円(連結)。四半期ベースではQ1(3ヶ月)で約5,627億円、Q2(当四半期)では約5,964億円と四半期で過去最高水準にある。

  • 設備投資見通し(主に楽天モバイル
    楽天モバイル2025年の設備投資は約1,500億円を見込む(ネットワーク品質向上、地下/駅構内対策、プラチナバンド活用など)。グループのCapExはセグメント別に開示あり。

  • 流動性・バランスシート ※数値は2025年6月時点の四半期開示ベース、単位:百億円→分かりやすく兆・兆未満で表示

    • 総資産(連結):約26.28兆円

    • 現金及び現金同等物約5.38兆円

    • 証券事業向け金融資産:約5.58兆円

    • 銀行業向け投資有価証券・貸出等(バンキング資産):約7.04兆円

    • 銀行預金(顧客預金、楽天銀行関連):約11.43兆円

    • 債券・借入(グループ合計の社債・借入等):約1.55兆円 ※うち銀行向け借入等は別計上あり

  • ファイナンス面の最近の動き(資金調達・資産売却等)

総資産から見る売り上げ総額はもう少しあってもいいような気もするが、楽天はモバイル事業に固執するあまり、資金繰りに注力している最中だ。果たして、三木谷社長のこだわりや狙いが吉となるかは、注視が必要となるだろう。
楽天が取り組んでいる楽天経済圏について、楽天ファンの人たちは盛り上がっているかもしれないが、モバイル事業シェアで圧倒的なNTTや、モバイル事業と並行して早くからFintech市場に参入しているソフトバンクとの比較で見ると、楽天の苦労はまだしばらくは続くだろうと思われる。
楽天同様、自分たちのファン層に対して一定の経済圏を確保したい層は、他にも存在する。
いわゆる左翼リベラルと自他ともに認める連中だ。
支持政党は実にさまざまで、多くは立憲民主党だったり社民党だったり日本共産党ということになる。ところが、・・・

 

以後、続きは有料部分にて

 

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石破茂に辞めてほしくない人々②

立憲民主党総裁・石破茂

以前の拙稿で、立憲民主党野党第一党でいることの旨味を知ってしまったことを書かせていただいた。
つまり、立憲民主党旧民主党時代の経験から、政権をとることの大変さを知ってしまったのと、リベラル政権が出来てしまうと、時に菅直人鳩山由紀夫のようなトンデモが総理になる可能性を知ってしまった。
それは、政党全体が国民から反感を買う原因にもなり、結果、安倍晋三大勲位のような自民党の長期政権の引き金になることを学んだことでもある。
政権運営など立憲民主党には荷が重いので、野党第一党でいる方がはるかに美味しいのだ。各委員長ポストを与えられ、潤沢な政党交付金ポンコツ議員の議席を確保し一大勢力があるかのように見せることが可能となる。
正直言って、国民は各政党の議員の詳細など分からないし、また分かる必要もない。景気動向、国民負担率の上下、社会問題等によって政権が信頼できないとなれば、先の衆院選参院選のように選挙によって判断されるだけの話なのだ。

立憲民主党にとってありがたいのは、石破茂のような総理である。
自民党は一般的には保守政党だと思われているが、現実は右も左も包含した、所謂、リベラル政党だ。立憲民主党社民党日本共産党がリベラル政党と言うなら、それは大きな誤解だ。ただの左派政党であり、社会主義共産主義にかぶれた人々と言ってもいい。単に今の欧米のリベラル機運に乗っかろうとしてるだけで、本質は昭和の時代から何も変わっていない。
これも何度も言ってるが、宗教信者と一緒で、日本の自称リベラル政党の支持者は、社会主義共産主義が正しいと心から信じているから厄介なのだ。
厄介さで言うなら、野党第一党である立憲民主党が特に酷い。
その立憲民主党の議員の多く、財政に詳しいと言ってる連中ほど、頭が昭和のままだ。

 

昭和の経済・財政政策

日本はプラザ合意以後、管理通貨制度に移管した。この点は、それまでの貨幣論も財政論も覆すほどのことであり、世界はブレトン・ウッズ体制から管理通貨制度に移行している。
にも関わらず、今の財務省主導の政策に固執する人々は、未だ管理通貨制度に移行したことすら気づいてないように見える。

石破茂に総理総裁を続けて欲しいと考えているのは、この立憲民主党に多い。議員も支持者も、だ。
そして彼らに共通しているのが・・・

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石破茂に辞めてほしくない人々

石破茂を擁護する人々

石破茂の辞任はもはや既定路線でしかない。
これだけ党内外から石破下ろしの声が出ている以上、それに抗うことは、いくら無神経で頭が悪い石破茂とて出来ない相談だ。
では、石破茂を擁護する声は上がっているのだろうか?

石破茂に対して応援メッセージを送る連中は、日本的にはパヨクと呼ばれる人たちらしい。そもそもパヨクがなんの略語かは判然としないが、物の本によると、左翼に対する蔑称らしい。
ではパヨクと呼ばれる人たちは、どうして自民党総裁である石破茂を擁護するのだろう。
人は自分の考えや主張に同調する人を応援したくなるものだとすれば、石破茂の中にパヨク的な何かを感じ取ったからに違いない。
では石破茂の中にあるパヨク的な「何か」とは何を指すのか。
石破茂は常に自民党本流に逆らい続けてきた。自民党所属議員でありながら、自民党的なるものに常に争ってきたとも言える。そしてその具体的な行動が、総裁選に五度にわたって挑戦してきたことに表れている。

 

石破茂と左翼リベラルの勘違い

では、どうして石破茂自民党内部にいて自民党的なるものへの批判を続けながら、五度にもわたって総裁選出馬を行ってきたのだろう。
石破茂が目指してきたものとは一体何か。

執拗に総理総裁の立場にこだわる石破茂を見ていれば、その本性は自ずと明らかで、石破茂は望まれて総理総裁に選出されたと思っている。この点がそもそも、ご本人の勘違いではないだろうか。
岸田政権が終わりを告げた最大の要因は、自民党における派閥政治の弊害が問題視された為。しかし、派閥政治がもたらした利点もあり、自民党のように右から左まで包含した政党の場合、政策や立法にあたって意見集約の為の派閥は非常に大きな役割を果たしてきた。
それが、政治資金規正法上の不記載問題一つで瓦解してしまったのは、自民党の甘えもあるだろうが、自民党政治を否定する左翼のバカどもが騒いだからに過ぎない。
デフレ不況から脱却する糸口が掴めないまま、アベノミクスを継承できなかった岸田政権にとって、大きな痛手となった政治資金規正法上の不記載問題については、自民党に限った問題ではなく、大なり小なり政党交付金をもらっている政党は同じことをやってきた。
それらが問題視されてこなかったのは、単に自民党政治を終わらせたい野党とメディアの喧騒の結果だ。

立憲民主党的な、自民党批判だけを繰り返すような他責思考の政党を支持しているのがやはり他責思考で短絡思考の人々ということになる。
彼らの主張には、合理性が欠けている。
例えば選択的夫婦別姓の法制化にしても、国民の声だと言いながら、左翼思考の人々が単に声を上げているに過ぎない。先日のAbema TVでも問題視されたように、あたかも国民から多くの声が上がっているかのように見せているのは単なる世論誘導であり、また国民の多くが選択的夫婦別姓の法制化を支持しているとメディアが騒いでいるのは、積極的に国民が言ってるのではなく、夫婦別姓したければすれば?という程度のものだ。

ではこの選択的夫婦別姓に限らず、リベラルを自称している人々が移民問題の推進や外国人を擁護する、あるいはLGBTの保護政策等にこだわる理由はなんだろう?
率直に言って、自民党政治への批判以外には無いと考えている。
彼らは賢しらな態度で保護主義自国第一主義を否定する。グローバル社会の中で自国の利益だけを追求する態度を否定し、みんな仲良くと言うのだ。それが反戦反核の態度と極めて類似している。
誰だって戦争なんかしたくないし、誰だって核兵器など使用したくはない。まして唯一の被爆国である日本においておやである。一方で、極めて深刻な事態として近隣諸国の核兵器は増加の一途だ。中国にしても北朝鮮にしても、持つ者の優位性を誇示し、あるいは国際社会からどれほど批判されようとも核兵器の開発を止めない。その理屈は核の平和利用だ。原子力発電所をはじめとする核の平和利用を盾に核開発を推し進めている。
実に不思議なのは、日本で反戦反核を訴える人は、どうして中国や北朝鮮を名指しで批判しないのだろう。日本は原子力発電という有効利用は推進しているが、核兵器の「持たず、作らず、持ち込ませず」は提唱し続けている。その日本に対しては執拗に批判するのに、日本の隣国の核兵器の開発には一切、批判を加えない。その表向きの理屈は内政干渉にあたるからだという。

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自民党の「再生の道」とは?

2025年夏の参院選が終わりを迎えた。
私は自民党は30台前半の議席数を予想していたが、それよりは若干上乗せしたようだ。
いずれにしても自民党史上、空前の惨敗と言っていいだろう。
自民党内派閥の政治資金規正法上の不記載問題に端を発し、自民党の支持率は凋落の一途だったが、米問題をきっかけに再浮上の芽もなくはなかったと思う。しかし私は、全ては自民党総裁選で石破茂を選んだことが、今の自民党の没落の原因だと思っている。
SNSでも書いたが、当時、石破茂を選んだ自民党議員は万死に値すると言って良い。

そして、先の衆院選と今回の参院選、更に加えるとすれば東京都議選の結果も踏まえると、石破茂は総理総裁を続けるのは、無理だ。
どんな組織であっても、結果が残せなければトップは責任を取る。それが社会のルールだし、組織として当たり前のことだ。

2024衆院選結果
2025都議選結果

石破茂は既にツーアウト状態にある。現在、7月21日午前2時で、事実上結果は見えている。石破茂は自ら50議席を目標にすると明言していたが、結果は40議席前後に留まる気配だ。
つまり石破茂はこれで3連敗を喰らったわけで、これは国民から明確にノーを突きつけられたことになる。
選挙特番の中で、各テレビ局は石破茂に対して責任追及し、日テレなどは明確に辞任の意志は無いのか?と問うている。それに対して、石破茂はその意志は無いような物言いだ。
勿論、選挙結果が全て出揃ってない状況で軽々な発言が出来ないのも理解は出来るが、しかし、あの太々しさは、ただ有権者に不快感を与えただけだ。

逆に今回の参院選の結果を通じて石破茂を総理総裁から下ろせない自民党は、朝鮮労働党中国共産党にでも変貌したのだろうか?
歪な独裁体制のまま、石破茂を延命させたとなれば、もはや自民党ではなくなったと言える。自由民主労働党などの名称にでも変更した方がいいだろう。
つまり、石破茂などどうでも良い。自民党議員が先の総裁選以後二度目の岐路に立たされているのだ。
ここで正しい判断が行えないなら、自民党はますます支持率を失っていくだろう。

2025参院選結果

本稿記述の間に、7月21日の石破総理記者会見が行われた。
ライブで見ていて思うのは、石破茂は本物のバカだと言うことだ。
石破茂は今回の選挙結果の責任をとって辞任すると国民の99.9%が思っていたにも関わらず、今の日本は国難の中にあるので、イタズラに政権運営に混乱を来たすわけにはいかないという理由で、石破茂は続投すると明言した。
率直にこれを聞いて、その通りだと思った国民は一人もいないんじゃないだろうか?
石破茂はそこまで権力の座に拘る理由とは一体、なんだろうか。

※引き続き有料部分でお楽しみください。

 

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減税ポピュリズムか制度改革か:参院選前夜の税制を読む

参院選前夜、政治の焦点は「減税政策」へ

2025年6月下旬に通常国会が閉会すれば、政治の主戦場は参議院選挙へと移る。現在、衆議院ではすでに少数与党に転じた自民党にとって、この選挙は与党の地位を維持できるかどうかの分水嶺となるだろう。そうした中、争点の一つに浮上しているのが「減税」政策、特に消費税を中心とした財政政策の方向性である。

与野党のスタンス比較:減税か、再分配か

与党内では国会会期中ということもあり、積極的な発言は控えられている。たとえば石破茂氏などは、消費税減税に関して沈黙を守っている。一方、野党各党はそれぞれの理念や支持基盤に応じて、多様な減税案を打ち出している。

以下に、2025年5月時点での各党の税制スタンスを要点的に整理する。

各党の税制スタンス一覧

仮説的整理:制度と選挙の狭間で

このように消費税減税を掲げる政党は多いが、それが単なる人気取りに過ぎないのか、制度的整合性を伴った本格的な改革案なのかを見極める必要がある。

  1. 消費税減税の有無と程度

  2. 所得税社会保険料など他の減税策の導入有無

  3. 所得制限など対象限定措置の有無

これらの観点で比較すれば、より制度的な整合性をもった政党(例:国民民主党)と、訴求力重視の政党(例:れいわ新選組社民党)との違いが見えてくる。

政策評価の三軸
消費税減税の代替案(例)

ポピュリズムか制度改革か:代替案の実効性

立憲民主党枝野幸男氏は「安易な減税は財源無視のポピュリズム」と批判。野田元首相もこれに近い姿勢だったが・・・

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通貨と価値観の冷戦:トランプ関税と人民元経済圏の行方

米中経済圏の衝突と新たな冷戦構造

第二次トランプ政権の誕生が現実味を帯びる中、世界は再び大きな分岐点に差しかかっている。トランプ大統領の関税政策は、単なる自国第一主義にとどまらず、米中両国による経済圏の覇権争いの最前線となっている。一方で、中国共産党は独自のイデオロギーと政治体制を背景に、人民元を中心とした経済圏の確立を目指している。米中の経済戦略は単なる貿易摩擦を超え、通貨、価値観、そして支配構造をめぐる新たな「冷戦構造」の様相だ。

トランプ経済圏とは何か

トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」の根底には、アメリカ国内の複合的課題がある。不法移民、経済格差、国際社会での影響力の低下、さらにはインフレ抑制など、内政の不安定化といった問題だ。

こうした課題への対応として浮かび上がったのが、いわゆる「トランプ経済圏」の構想である。これは単にアメリカ一国の保護主義政策ではなく、関税やサプライチェーン再編を通じて、米国主導の新たな経済ブロックを構築する試みだ。特徴としては、以下の点が挙げられる。

①米国本土への製造業回帰
②北米や中南米との経済協調の強化
③ドル基軸体制の維持と国際金融への影響力行使
④安全保障と貿易を一体化した経済安全保障戦略

つまり「トランプ経済圏」とは、米国の主権と経済的独立を再定義しつつ、グローバル経済の脱中国化と再米国化を目指す枠組みである。従来の自由貿易体制とは一線を画し、国家主導による戦略的通商体制への回帰と見るべきだろう。

アメリカは長らく、基軸通貨ドルを軸に国際経済を支配してきた。ベトナム戦争中東戦争をはじめとする他国の紛争への関与の多くも、米ドルの信認維持と通貨覇権の防衛が裏にあった。近年、グローバル経済の中で消費大国アメリカの地位は揺らぎつつあり、2023年には国内で消費される製品のうち約40%が海外で生産されたものであった。

 

※米中経済圏の衝突は、単なる貿易摩擦ではなく、通貨と価値観を巡る冷戦の様相を呈しています。では、中国の経済圏はどのような論理で拡大しているのか? そして日本は、この冷戦構造の中でどんな戦略を取るべきなのか?――この続きは、ぜひ有料部分でお読みください。 ↓ ↓ ↓

 

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情報を“信じたい人”と“信じさせたいメディア” 報道の危うい共犯関係に警鐘を鳴らす

はじめに:「偏っているから危険」ではない

前回の拙稿で、『報道特集』という番組を通じて、メディアリテラシーと視聴者側のリテラシーの重要性について触れた。
今回は更に深掘りして今の報道のあり方と情報の受け手である我々について深掘りしてみたい。

かつてのように、テレビや新聞の肩書きだけで情報が信頼される時代は終わった。SNSYouTubeを通じて、誰もが情報の発信者になれる現代、人々は情報の洪水の中で、自分にとって“心地よい真実”を無意識に選び取っている。

だが、そこで問い直すべきは、「メディアがどこに向かって報道をしているのか」という問題だ。本稿では、前回同様TBSの『報道特集』を例に取りながら、現代メディアが特定の思考や感情に寄り添いすぎている現実と、その危険性について掘り下げたい。


視聴者とメディアの“共犯関係”

見たいものしか見ない時代へ

私たちは、自分が信じたいことを信じる傾向がある。これは「エコーチェンバー」と呼ばれる心理現象であり、SNS時代の象徴として語られてきたが、テレビや新聞の報道にも同じ構造がある。

たとえば、あるニュース番組に出演する論者に強い共感を持つ人は、その番組を“安心して見られる情報源”と認識するようになる。すると、番組側もそうした視聴者層に合わせた編集方針を強める。
こうして、情報の偏りが強化されていく。


情報バイアスの構造(エコーチェンバー化の過程)

視聴者の思考
  ↓
信じたい情報を選ぶ
  ↓
メディアがその層に迎合する
  ↓
視聴者の共感が強化される
  ↓
思考が固定化・硬直化
  ↓
再び同じ情報を欲する
(以下ループ)


TBS『報道特集』はなぜ問題なのか?

TBSの『報道特集』は、ジャーナリズム精神を標榜する一方で、出演者の選定や構成が極めて一方向的な傾向にある。
公平性よりも“共感性”を優先し、特定の視点から社会を切り取る構図は、視聴者に「これこそが正義」と錯覚させてしまう危うさを孕む。

しかもそれが・・・

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日本政治のトリレンマ③:強い野党の不在

日本政治のトリレンマ③:強い野党の不在

戦後日本の政治は、今の自民党が作り上げたと言っても過言ではない。
1955年体制以来、日本の政界は一貫して自民党を中心に回り続けてきた。

一方で、野党勢力はどうだったかと言えば、まるで迷走する日本経済の縮図のように、離合集散を繰り返してきた。
たとえば2012年に自民党が政権復帰して以降の動きを見るだけでも、旧民主党から民進党へ、さらに立憲民主党と国民民主党への分裂・再編が続いた。
2017年には希望の党という存在も現れたが、野党再編の決定打にはなり得なかった。

結果として現在、議席数だけを見れば立憲民主党野党第一党に位置しており、自民党政権に一定の対抗勢力を持っているように映る。
しかし、立憲民主党自体の支持率は大きく後退しており、2024年衆院選を経ても、その勢力が政権交代を実現するに至るほどには拡大していないことが明らかになった。

むしろ、ここ数年で議席数と支持率を着実に伸ばしたのは、玉木雄一郎代表率いる国民民主党の方だった。

では、立憲民主党と国民民主党――
この両党には、いったいどのような違いがあるのだろうか。


① 基本スタンス・政治理念の違い

まず、立憲民主党と国民民主党は、政治理念と基本スタンスの面で大きく異なっている。

立憲民主党はリベラル志向が強く、中道左派からリベラル寄りのスタンスをとっている。
対して国民民主党は、より中道に位置し、ときに中道右派寄りの現実主義的スタンスを示している。

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日本政治のトリレンマ②:自民党的政策の構造

前稿「日本政治のトリレンマ①」では、現代日本政治の根底に流れる“官僚思考”と、それが制度の中にどのように埋め込まれてきたかを論じた。今回はそれに続いて、日本政治を半世紀にわたって支配してきた自民党的な統治構造——その原点である「55年体制」について考察する。

1|“55年体制”とは何だったのか?

日本の戦後政治を語る上で、1955年に成立したいわゆる「55年体制」は外せない。

この年、日本政治にとって象徴的な二つの出来事が起きた。

  1. 自由党日本民主党保守合同による自由民主党の誕生

  2. 分裂状態にあった社会党の再統一

この保守と革新の「二大政党体制」が形だけ整えられたことで、日本政治は約40年にわたり、「安定的な保守支配」と「制度化された対立構造」の中で動いていくことになる。

自民党:親米・資本主義・改憲志向
社会党:反米・社会主義・護憲

このイデオロギー対立が、60年安保闘争学生運動浅沼稲次郎暗殺といった政治的事件に象徴されるような、国論の分断を生んできた。

しかし、この「対立の演出」こそが、55年体制の最大の特徴であり、同時に日本政治に安定をもたらした構造でもあった。


2|制度化された「対立」とは何だったのか?

一見すると激しく対立しているように見える自民党社会党。しかし、実際には社会党には政権を担う力量も意志もなく、自民党もまた「革新勢力の存在」を排除することはしなかった。

むしろ、社会党の存在は体制にとって都合の良い“安全弁”として機能していた。
国民の中に存在する社会主義的・共産主義的な思想を、制度の枠内で吸収し、暴発を防ぐ——それが55年体制の本質だったといえる。

つまり、社会党は「革命の防波堤」であり、政治的ガス抜き装置でもあった。

マスコミ、法曹界、教育界に根を張った左派的な思想の“溜飲を下げる”ための受け皿を、自民党がある種、制度設計として容認していたのだ。

その上で自民党は、官僚との緊密な連携によって“非公開型の政策決定システム”を築き上げた。

これが前稿で論じた「官僚思考」の源流であり、「自民党的なるもの」の原型である。


3|安倍政権は「新・55年体制」だったのか?

この構造は、2012年の第二次安倍政権にも通じる。安倍政権は・・・

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日本政治のトリレンマ①:官僚思考政治とは何か

なぜ、日本政治は変われないのか。その答えの一端は、「三つのジレンマ」が絡み合っていることにあるのではないかと、私は考えている。

それはすなわち、

①官僚思考政治
自民党的政策の構造
③強い野党の不在

である。

本シリーズでは、この“日本政治のトリレンマ”を三回に分けて論じてみたい。
初回となる今回は、まず〈官僚思考政治〉に焦点を当てる。


宮澤洋一氏に見る「官僚思考政治」の象徴性

近年、YouTubeチャンネル「ReHacQ」出演を機に、国民から厳しい批判を浴びた自民党税制調査会会長・宮澤洋一氏。

元財務官僚である彼が、なぜここまで国民感情と乖離したように映るのか。その背景には、長く官僚として培われてきた思考様式があるように思える。

宮澤氏は、まさに「絵に描いたようなエリート」の出自だ。

祖父は元首相・宮澤喜一、従弟は現首相・岸田文雄。地元・広島では“宮澤家”として絶大な影響力を誇る政治一家である。

宮澤喜一氏は、アメリカの高官や知識人とも対等に議論を交わせるほどの語学力と知性を持ち、総理経験者の中でも「論理と教養の人」として際立っていた。その資質を受け継いだのが、現・洋一氏だろう。

しかし、こうした知性が、必ずしも国民との対話や民主的な政治に繋がるとは限らない。

国民の声を「非合理」なものとして排し、政策の整合性や制度の安定性ばかりを重視する姿勢は、時として「官僚思考」として批判される。

税制調査会会長という自民党の要職に就き、財務省とタッグを組んで歳入政策の要を握る宮澤氏。その姿は、単なる個人のキャリアを超え、戦後政治が生み出した一つの構造的な“型”のように見える。


官僚思考とは何か──その強みと限界

政治家が官僚と同じ思考を持つとは、どういうことか。

官僚出身者の長所は明確だ。法律や制度に通じ、行政の実務に強く、短期間で政策の論点を把握できる。しかし同時に、その思考は「制度の中での最適解」を探すことに慣れすぎており、「制度そのものを見直す」「時代の変化に合わせて構造を変える」といったダイナミックな思考には不向きだ。

たとえば、少子高齢化や経済停滞といった日本の構造的問題に対して、「現行制度の中で調整する」という発想では、いつまでたっても根本的な変革は生まれにくい。

結果として、「閉塞感」が続くのだ。


官僚出身政治家に共通するリスク

宮澤洋一氏に限らず、財務省出身の政治家たちは、財政規律を何よりも優先する傾向がある。そのため、社会保障や教育投資など「未来への投資」は後回しにされがちだ。

確かに、「安定」は政治の大義ではある。しかし、その安定が、将来世代への希望や改革の芽を摘んでいるとしたらどうだろう。

過度な財政規律主義は、国民の活力を失わせる“静かな破壊”でもある。


与野党に共通する「官僚思考」

こうした官僚的な思考は、決して自民党に限ったものではない。
むしろ野党第一党である立憲民主党にも、同様の傾向が色濃く見られると私は考える。

代表・野田佳彦氏は、「財政規律重視」の政治家として知られる。そのため、やはり財政保守派の石破茂氏との親和性も高い。
両者に共通するのは、財務省のブリーフィングを重視し、「財政赤字こそ日本の元凶」という信念に近いものを持っている点だ。

立憲民主党はまた、野党第一党としての「安定したポジション」に甘んじているようにも見える。

政権交代」と叫びながらも、実際にはその可能性を本気で追い求めてはいない。
むしろ、現状の議席数を維持し、政党交付金と委員長ポストを確保することが、現実的な目的になっている節すらある。

このような姿勢は、まさに“現状維持”を是とする「官僚思考」の政治スタイルではないか。


官僚思考を超えるには

政治家が、単なる制度運用者ではなく、時に制度を壊してでも変革を推進する「意思決定者」となるには何が必要か。

それは、ビジョンとリーダーシップだ。

そして、それを育むのは教育であり、また国民との対話を通じた政治文化の再構築ではないか。

地方自治体の首長たちの中には、霞ヶ関的な発想から離れ、大胆な政策に挑戦する者もいる。

そのような挑戦が、中央政治にも求められているのではないかと感じる。


次回に向けて

日本政治が変われない理由としての第一の要因、「官僚思考政治」。

これは、制度に精通するが故の“思考の保守性”であり、それが与野党を問わず蔓延しているのが現実だ。

では、こうした政治構造を生み出した「自民党的なるもの」とは何か。

次回はその実像を掘り下げ、「②自民党的政策の構造」に迫ってみたい。

※是非、読者の皆様のご意見をお聞かせください。


 

財務省前デモより大事なこととは?

正直に言うと、財務省前デモに意味があるとは思えない。

天下り禁止
国税庁の分離(歳入庁設立)
・主計局の廃止
・予算編成権の内閣への移管

以上の4点がデモを行っている人々の主な主張らしい。

この4点が大事ではないとは言わないが、財務省前でデモを行っても、問題の本質に切り込んだことにはならない。デモで国家の統治機構が変わるとは思えないのだ。そうではなく、もっと別の切り込み方があると考える。

日米安保に反対するデモでは、国会前に10万人(自称、実際は1.5万人)の人が集まった時も、結局は尻すぼみに終わった。この時のデモで何が顕在化したかと言えば、騒いでいるのはただの左翼であり、60年安保、70年安保同様、騒ぐこと「だけ」を目的に、強すぎる安倍政権に抵抗しているに過ぎないという姿だ。つまり大多数の国民は、どうでもいいと感じたのだ。

今回の財務省前デモにしても、社民党共産党の議員が参加したとの情報もあり、相変わらず彼らは「やってる感」を出す為、わざわざ出かけて行ったのだろうとみられている。と言うより、社民党共産党が参加してるなら、間違った主張をしてるデモであると受け止められているのだろう。しかし、ことの本質は別なところにある。

これまで国会では、幾度か財政法財務省設置法の改正が議論されてきたが、いずれも、今の日本経済に対応した議論とは言い難く、その点に切り込まないデモは無意味と言って良い。

2023年9月頃より始まった財務省前デモは、規模こそ大きくはないが、むしろどうしてこれらの動きが散発的だったり、ごく少数のデモで終わっているかと言えば、まさにデモの目的が国民に訴える内容ではないからだ。

政府与党もこれらの動きを軽視しているのは、ごく一部の人たちが不満を言ってるに過ぎないと判断しているからだろう。事実、経済指標はコロナ禍以後、順調に回復しているし、賃上げの機運も高まっている。名目GDPも好調に推移し、株価も上昇している。経済全体を見据えた時、財務省前でデモを行っても、政権は「だって、数字、悪くないモン!」と言う言い分だろう。

石破茂政権は、典型的な緊縮財政政権だ。これは誰しもが認めるところ。自民党税調の宮沢洋一氏は、財政は均衡すべきだと言う一貫した説を崩さない。

宮沢氏は一貫して、

  • 財政規律の重視: 減税よりも増税や歳出抑制で財政を安定させることを優先。

  • 理論・理屈の重視: ポピュリズム的な政策より、経済理論やデータに基づく税制を好む。

  • 財務省との連携: 財務省の伝統的な路線(緊縮財政、増税)を踏襲し、予算編成権を守る立場。

  • 現実主義: 大胆な改革や「財務省解体」といった非現実的な提案には否定的で、既存の枠組み内で調整する姿勢。

と、税調の立場を堅持し続ける。それは宮沢氏の過去の発言からも分かる。

・日本の財政再建を強く意識しており、プライマリーバランス基礎的財政収支)の黒字化を目標に掲げる
・「減税すると赤字国債が増え、金利上昇によるツケが大きい」(2025年4月6日)
・「税というものは基本的に理屈の世界であり、しっかりとした理屈を伴ったものでなければならない」(2024年12月20日

とインタビュー等で語っており、自民党税調の伝統的な役割(現実的な財政運営)を守る信念の一環と考えられる。当然だが、与党政権の誰もが積極財政を主張すれば放漫財政となり、文字通り、国家は破綻する。あくまでも財政は均衡すべしと言う立場は誰かがやらなければいけない。

一方で、現在の日本経済が直面する課題を考えると、緊縮財政一辺倒の石破政権や宮沢氏の姿勢は、むしろ危機を増幅させるリスクを孕んでいる。2025年4月時点で、実質賃金は依然として伸び悩み、消費者物価指数(CPI)は前年比2.5%程度上昇(総務省統計)。国民の手取りが減り続ける中、トランプ米政権が再び関税を強化する可能性が浮上すれば、輸出産業への打撃は避けられない。こうした内外の圧力に対し、財政規律を盾に増税や歳出抑制を続けるのは、もはや現実的ではない。

米「相互関税」きょう発動へ 各国との交渉の行方が焦点に | NHK 【NHK】アメリカのトランプ政権は、貿易赤字が大きい国や地域を対象にした「相互関税」を日本時間の9日午後、発動します。関税 www3.nhk.or.jp 

経済指標が好調だからといって、それが国民生活に直結するわけではない。

※では、どうすればこの閉塞感を打破できるのか?その答えは有料部分で明らかにします。

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電気料金の裏側:再エネ賦課金23.5兆円の行方

再エネ賦課金は、日本で再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど)の普及を促進するために導入された制度であり、その根幹となるのは、2012年7月1日に施行された「再生可能エネルギー特別措置法」(再エネ特措法)だ。この法律に基づき、固定価格買取制度(FIT制度)がスタートした。FIT制度は、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が一定期間・一定価格で買い取ることを国が保証する仕組みで、その買い取り費用の一部を電気利用者全員が負担する形で賦課金が設定された。

2012年に始まった制度の総額は23.5兆円だ。このお金は一体、誰の元に行ってるのだろう?再エネ促進の為に税金から賄われているお金の他、毎月の電気料金に上乗せになっている再エネ賦課金のこれまでの総額が23.5兆円なのだ。このお金の行き先、気になりませんか?

結論を先に言うが、この23.5兆円は、主に太陽光発電事業者や設備メーカー、地方の土地活用者、太陽光発電設置者に流れ、再エネ普及を支えてきた。ところが、、家計負担の重さも際立っているのだ。

背景には、日本のエネルギー自給率の低さ(2010年代初頭で約10%程度)と、化石燃料への依存度の高さがある。2011年の東日本大震災福島第一原発事故をきっかけに、脱原発や脱炭素の動きが加速し、再生可能エネルギーの導入拡大が急務となった。再エネ賦課金は、これを資金面で支えるための国民負担として設計され、初年度(2012年度)の単価は0.22円/kWhからスタートした。

東日本大震災がきっかけとは言え、実質賃金が上がらずコストプッシュインフレが続いている日本において、今や再エネ賦課金自体が家計の重しになっているのは事実だろう。

いずれにしても、再エネ賦課金自体を時限的にでも停止するか、いっそ、再エネ賦課金自体を止めてしまう案も浮上している。

そこで本稿では、現状と課題を明確にして、今後の再エネ賦課金のあり方について考察した。

※ここまでは無料で公開しています。詳細なデータや今後の予測、受益者の分析については、有料部分でご覧ください。

 

以下の項目

・現状

・今後の見通し

・再エネ賦課金で儲けたのは誰?

・何故、国民負担が増えるの?

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詐欺師が仕掛ける見えない戦争:今すぐできる対策とは?

先日、ミャンマーの犯罪組織摘発がきっかけで、中国系の犯罪集団による大規模なオンライン詐欺が問題視されている。

ミャンマーが犯罪組織の拠点に選ばれたのは理由があり、元々、「ゴールデン・トライアングル(タイ、ミャンマーラオスを結ぶ麻薬取引地帯)」と呼ばれていた地域は犯罪組織が集中していた。この歴史的な経緯が、ミャンマーが犯罪組織の温床になる起因とも言える。ミャンマーは依然、内戦状態にあり、軍政は強硬な態度で国民を抑え込むことで治安維持したい考えだが、実際は犯罪組織と軍政幹部が通じているとの指摘もある。

ここに目を付けたのが、中国系の犯罪組織で、それまで中国に国境を接する地域を中心に中国の富裕層相手に違法カジノを行ってきたが、新型コロナウイルス蔓延の影響で、違法カジノからオンラインカジノ、オンライン詐欺に手口が切り替わっていった。そして、大規模な詐欺犯罪を行う拠点に選ばれたのが、ミャンマーだった。

オンライン詐欺の予防には、技術的な対策と意識向上が両輪として必要。個人では自己防衛の習慣を身につけ、企業では組織的な防御を構築し、政府は国際的な枠組みで対応を進めることが求められる。特に、AIや暗号資産を悪用した新たな手口が増えている今、最新の知識とツールを活用して一歩先を行く姿勢が重要。詐欺師の手口が巧妙化する中、予防策を日常に取り入れることで被害を最小限に抑えられるだろう。

本稿では、現状と具体的な対策、今後の課題について触れていきたい。

今国会においても、「能動的サイバー防御法案」に関する議論が行われているが、サイバー空間における専守防衛の議論の他、サイバー空間における犯罪取り締まりに関しても、今後議論が進むことになるだろう。

その前に、個人や企業は積極的に自己防衛策に講じるべきだ。

オンライン詐欺の現状

では、このようなオンライン詐欺、オレオレ詐欺のような手口はアジア特有のものかと言われれば、そうではない。同様の手口は世界中にある。

世界の被害実態

欧米で行われているオンライン詐欺は特に手が込んでいる。政府や公的機関の名称を利用する詐欺が多く、日本人から見れば荒唐無稽と思われるような手口を使うが、被害者の母数が多ければ、中にはこんな分かりやすい手口にコロッと騙されてしまうものだ。

オンライン詐欺に関しては、概ね以下の4点が問題視されている。

・技術の活用:ディープフェイク、ソーシャルエンジニアリング、暗号資産
・ターゲットの多様化:個人、企業、政府機関
・匿名性VPN、ダークウェブの活用
・被害額の増大:年々、被害額は増大(オンライン広告詐欺だけで年間13兆円)

また、世界の地域別にその内容には一定の傾向があるようだ。

①アジア(東南アジア、中国、日本)
手口はロマンス詐欺オレオレ詐欺暗号資産詐欺が主で、ミャンマーカンボジア、フィリピンを拠点にするケースが多く、背後には中国系犯罪組織が関与しており、人身売買、強制労働を伴うケースが多い。2024年は日本における被害は400億以上あり、中国国内の被害は数十億ドルの被害が報告されている。

②欧州
フィッシング詐欺CEO詐欺(ビジネスメール詐欺)偽ショッピングサイトを使い、東欧(ルーマニアウクライナ)の犯罪組織が関与し、詐欺総額は30億ユーロ(約5,000億円)規模に上る。

③北米(カナダ、アメリカ)
テクニカルサポート詐欺IRS(米国歳入庁)詐欺ギフトカード詐欺が主で、インドやナイジェリアをコールセンター拠点に置くケースと、SNS広告、偽アプリ経由が多い。FBIの調査で約50億ドル(7,300億円)の被害があると言われている。

④アフリカ
419詐欺(ナイジェリア詐欺)偽チャリティ詐欺雇用詐欺

中南米
偽宝くじ詐欺ランサムウェア偽旅行詐欺

オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド
投資詐欺偽慈善団体詐欺SMS詐欺。

このように、犯罪者集団はあの手この手で詐取しようとする。巧妙なのだ。

技術の進化

手口が巧妙化した原因は、技術的な進歩が大きい。特にAIを活用したディープフェイク技術が挙げられる。

①AIとディープフェイク
偽のビデオ通話や音声で本人を装う「なりすまし詐欺」が増加。日本でも話題になった、有名人を装った詐欺。

②暗号資産の悪用
ICO(新規コイン公開)やNFT詐欺が急増。暗号資産の知識が無い人たちを狙う。

ソーシャルエンジニアリング
「アカウントがハッキングされた」と偽り、パニック状態でパスワードを入力させるなど、心理操作を駆使し、被害者の恐怖や欲望を刺激。

対策と課題

上記のようにオンライン上での詐欺被害は上昇するばかり。そこで国際的に強調して対策を行えば良いと思うのだが、管轄権や法執行の点で課題が多く、連携が追いついていない。

また被害に遭う多くは高齢者やデジタルリテラシーの低い層で、予防策の普及、浸透が追いついていない。

予防策

各国政府機関は、このような詐欺被害に手をこまねいているわけではない。様々な手法で予防策の周知と啓蒙を行っているが、追いついていないだけだ。

以下、各国の手口の対策と予防策を具体的に紹介する。

個人レベルでの予防策

オンライン詐欺の被害者の多くは個人であり、特に高齢者やデジタルリテラシーの低い層が標的になりやすい。以下の対策で自己防衛を強化できます。

情報リテラシーの向上

  • 疑う姿勢を持つ: 「おいしすぎる話」(高額報酬、無料オファー、当選通知など)は詐欺の可能性が高いと疑う。

  • 送信元を確認: メールやSMSの送信元アドレスをチェック。不審なドメイン(例:@gmai1.comなど綴りミス)や知らない番号からの連絡に注意。

  • リンクをクリックしない: 知らない送信元からのリンクは絶対に開かず、公式サイトを直接訪問して確認。

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トランプ関税の影響

日本時間4月3日(現地時間4月2日)、アメリカのトランプ大統領は、大規模な輸入関税の引き上げを行うと発表した。日本に影響が大きいとされた自動車に関しても、特段、日本を特別扱いすることはなく、大きな影響を受けると考えられる。

以下、その数字(予測値)の詳細について解説する。

一方、国会で審議されている新たな景気浮揚に関わる政策の詳細について、数字を見ながら解説し、日本企業への影響や我々の庶民生活に与える影響、国内の政策による今後の方向性について考察する。

トランプ関税の詳細(予測値を含む)

まず、これまで報じられてきたトランプ関税に関して、網羅的に列記し、日本への影響がある中身について、見ていこう。

1.関税の基本方針

トランプ大統領は、選挙戦や就任後の発言で、アメリカの貿易赤字削減、国内製造業の保護、雇用創出を目的に輸入関税を積極的に活用する姿勢を示している。彼の政策は「アメリカ第一主義」を基盤とし、特に不公平とみなす貿易慣行を持つ国々への対抗措置として関税を位置づける。

一律関税
すべての国からの輸入品に対して10~20%の「普遍的基本関税(Universal Baseline Tariff)」を課す案が浮上している。これは、貿易相手国全体を対象にした包括的な措置で、国内産業を保護しつつ連邦政府の歳入を増やす狙いがある。

相互関税(Reciprocal Tariff)
相手国がアメリカ製品に課す関税率と同じ水準まで、アメリカがその国からの輸入品に課す関税を引き上げる政策。例えば、カナダがアメリカ製自動車に25%の関税を課した場合、アメリカもカナダ製自動車に25%の関税を課すという仕組。この「公平性」を強調するアプローチは、トランプ氏が「アメリカが搾取されてきた」と主張する状況を是正する手段とされる。

2.具体的な対象と税率

トランプ大統領は特定の国や品目に対して、より高い関税を課す意向も示している。

中国
中国からの輸入品に対しては、60%という非常に高い関税を検討中。これは、第一次政権時(2018~2019年)に課した最大25%の関税をさらに強化するもので、不公正貿易慣行やフェンタニル流入対策を理由に挙げている。

メキシコとカナダ
北米の近隣国に対しては、25%の関税を課す方針が発表されている。特に自動車や鉄鋼・アルミニウムが対象で、不法移民や麻薬流入への対策として圧力をかける意図がある。

以下、主要国別の影響について表にしてみた。

トランプ関税の主要国への影響(概算)

また、各産業への影響は以下が考えられる。

自動車
すべての外国製自動車に25%の追加関税を課す案が具体化しており、2025年4月3日に発動予定と報じられている。エンジンや主要部品も対象に含まれる可能性があり、日本や欧州からの輸出に大きな影響が予想される。

鉄鋼・アルミニウム
第一次政権時と同様、全輸入鉄鋼に25%、アルミニウムに10~25%の関税を再導入する動きがある。2025年3月時点で既に発効が予定されているとの報道も。

3.実施時期と法的根拠

時期
一部の関税(例: 自動車への25%関税)は2025年4月3日から発動予定とされている。また、相互関税の詳細は4月2日に発表され、ほぼ即時施行が計画されている。

法的根拠
トランプ政権は、通商拡大法232条(国家安全保障を理由にした関税)や通商法301条(不公正貿易への対抗措置)を活用する可能性が高く、これらは大統領権限で発動可能であり、議会の承認を必要としないため、迅速な実施が期待されている。

4.目的と期待される効果

トランプ大統領と側近は、関税政策に以下の目的を掲げている。

製造業の活性化
関税で輸入品の価格を上げ、企業がアメリカ国内で生産するインセンティブを高める。特に自動車や鉄鋼産業の「アメリカ回帰」を目指している。

歳入増加
関税収入を財源とし、減税政策(例: 2017年減税の恒久化や法人税率の15%への引き下げ)の資金とする計画。自動車関税だけで年間1000億ドル以上の収入を見込む。

外交の武器
関税を交渉材料として使い、相手国に貿易条件の改善や譲歩(例: 中国の麻薬対策、日本への市場開放)を迫る戦略。

5.日本への影響

日本はアメリカにとって重要な貿易相手国であり、特に自動車産業が関税の影響を受けやすい立場にある。

概算であるが、トランプ関税以後の日本への影響をまとめると、表のようになる。

トランプ関税による日本経済への影響(予測値)

製造業では自動車産業(対米輸出額の多いトヨタとホンダを例)の他、相互間税額が引き上がることへの影響を、消費者物価(CPI)と家計負担(年額)で挙げてみた。いずれも最大値を例に取っており、実質的な影響については、関税が発動後、更に詳しく出てくるだろう。

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