ソシャゲの掛け持ちをしまくった結果がこれだよ!   作:じゅうじキー

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第十話

 カルデアの廊下は、ホシノ達の激しい戦闘で見るも無残な戦場に変わっていた。

モルガン達が放つ魔術や弓矢を、ホシノが拳銃で銃弾弾き(ビリヤード)と盾で防ぎ、煙幕とショットガンのヒット&アウェイ戦法でかく乱している。

 

ドゴォッ ギュイイイイン! ズサッ!

 

 うーん、凄まじい戦闘だ。 俺でなきゃ逃げ出しちゃうね。

……そういえばホシノの使う弾って実弾じゃね? やっべ、さすがにこのままじゃ死人が出る。

 

「ホシノ! そういえば実弾はマズイ!(今更) 相手はキヴォトス人じゃないから、ゴム弾を使ってくれ!」

「えー、ゴム使うの~? この人たち頑丈そうだし、おじさん的にはナマの方が気持ちいいんだけどなー」

「実弾を生って表現するのやめてくれない?」

「も~、先生ってば注文が多いね〜」ジャキジャキッ

 

そういいつつも、ショットガンと拳銃をノールックでローディングしている。

すげぇ……ジョ〇・ウィ〇クみてぇなリロードだ。

 

「隙あり! はああご禁制の音おおおおぉぉおおっ!」

「うへ、それはさすがに悪手でしょ」

「なっ?!」

 

ガキィンッ ドムドムドムッ!

 

リロード中のホシノに隙を見出し、頼光が母の愛を込めて太刀を振り下ろすが、なんとホシノは盾で的確にパリィした。

すると刹那、体勢を崩した(スタッガ)ところにショットガンを叩き込み、放物線を描いて吹き飛んで壁に激突。「そんな……私達のターンなのに……」と寝言を呟いている。完全にOKだ。

 

「力は強いみたいだけど、防御はそうでもないみたいだね~。相手がカウンターするかどうかも考慮した方がいいと思うよ~」

 

「おいおい……大将が一瞬で伸されちまったぞ。 援護した方がよかったか……?」 

「よせ、お前が行っても我ら共々、マスターの代わりに赤子にされるだけだ」 

 

ホシノは気絶した頼光にアドバイスを送ると、すぐさま次のターゲットに銃口を向けた。

 

「はぁ……はぁ……! いったい何者ですか、あなたは! 無敵も回避もついていないのに、こちらの攻撃が当たらないなど……」

 

ジャンヌが息を切らしながら叫ぶ。彼女の純白の旗は煤で汚れ、聖女の威厳はどこかへ消え失せている。

そのジャンヌに対し、ホシノはゆらり、と距離を詰める。

 

「お姉さん、イルカさんに攻撃させるなんて頂けないなぁ~。 おじさんが今楽にしてあげるよ」

「くっ……退きなさい! 私は王道を往くお姉ちゃんですよ!」 

 

ジャンヌが宝具を展開し絶対防御の光を展開するが、そんなものお構いなしにと榴弾を叩き込み、彼女の意識を刈り取った。

 

「ど、どうして……防御アップもつくのに……ガクッ」

「ごめんね~、棒立ちで受けようとするのは愚策だよ~。 おじさん防御無視もってるから……」

 

無敵が付くはずの防御宝具をいとも容易く貫通し、倒れ伏すジャンヌを見下ろし、ホシノは呑気に呟く。

さすがはホルス、これが最強格の実力か!

 

「やったぜホシノ、やっぱりお前は最強だ! 頼りになるぜ……」

「も~、まだ面倒なのが目の前に一匹いるでしょ? はしゃぐのはこの人をきっちり潰してからだよ~」

 

ホシノが顎でしゃくった先には、ただ一人、無傷で佇む女王モルガンの姿があった。彼女は一切動じる様子もなく、感心したようにホシノを見つめていた。

 

「……威勢がいいですね。雑魚も蹴散らし、我が夫の信頼も得た。いよいよ本番というところですか?」

「まぁ~、そういうことかな。……あなたを獲る」

 

その声は静かだが、先ほどまでの余裕とは明らかに違う、張り詰めた緊張感を孕んでいた。

 

「良いでしょう。その力、認めます。ならば、こちらも王の力をもって応えましょう」

 

モルガンの周囲の空間が歪み、凄まじい魔力が渦を巻き始める。

ちょっ、ここで宝具はマズイですよ!

 

「貴女に、ブリテンの真髄をその身に刻み込んであげます……『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド・アルトリアーン)』!」

 

「お待ちください陛下ッ!!困ります!ここで宝具は本当に困ります!!あーっ!!陛下!!困ります!!あーっ!!」 

 

「ウッソ、お母様が宝具を? オイオイオイ死ぬわアイツ」

「おいモルガァン!なんで今宝具に私の名前を入れたんだ!」

 

俺の悲鳴も虚しく、モルガンから放たれた極光の槍は、廊下そのものを消し飛ばさんとばかりにホシノへと殺到した。絶体絶命。誰もがそう思っただろう。

 

「……それだけ? おじさんガッカリしちゃったな~」 ギィンッッッ

 

だが、ホシノは動じなかった。彼女は攻撃を受け流すような体制で盾を構えると、着弾の瞬間、槍を受け流す……かと思いきや、なんと盾と態勢を180度回転させ、Uの字に攻撃のベクトルを変えることでそのままモルガンに反射してしまった。

 

「……はいっ???」 ドカアアアアン!

 

マジかよ……あれって銃弾返し(カタパルト)できるんだぁ……

宝具の反射などさすがに予想していなかったモルガンは、跳ね返されたロンゴミニアドが直撃し、凄まじい爆音と閃光の後、床に倒れ伏し気絶した。

 

「お母様ァーッ?! お気を確かに!」

「ああ……確かにそこにあったのです……私の夫と娘……まるで天使のように笑って……」

 

バーヴァンシーが悲痛な叫びを上げながら駆け寄るが、モルガンは幸せそうな寝言を繰り返すばかり。

 

「うへ、この人大丈夫?幻覚でも見てるの?」

「さぁ……政府関係者にゴーストハックでもされたんでしょ」

 

このままながめてるのもいいか。(クズ)

こうして、カルデアを震撼させた正妻戦争は、強制的に幕を下ろされた。静寂が戻った廊下で、ホシノは「ふぅ」と満足げな息をつくと、にっこりと俺に笑いかけた。

 

「うへ~、なんとか片付いたみたいだね、先生。おじさん、頑張ったよ~」

「ありがとうホシノ……マァージで助かったよ!」

 

「それにしても、先生……こんなに色んな人に狙われてるわりに、ちょっと無防備過ぎるんじゃない? そろそろおじさんに責任とって、悪い虫さんはトコトコしないようにしてくれない?」

「……えー、この件につきましてはー、女の子に手を出すとベーケスすぎて死刑(デスペナルティ)になる可能性がありましてー。えー、そのような態度をとった記憶も一切ございませんので、えー軽率な発言は控えさせていただきます」

 

「うへぇ……これは無能クソボケ大臣さんだね。 更迭して私のおうちに天下りさせた方がいいかな?」

「ぐっ……!」

 

手厳しい。だが、これ以上この話を引き延ばすのは危険だ。俺は「と、とにかく、一度指令室に戻ろう!」と強引に話題を切り替え、ホシノを伴ってその場を後にした。背後で、気絶していたサーヴァントたちが「弟くうぅん……」「我が子……どこ……」と呻き声を上げているのが聞こえたが、今は構っていられない。

 

――――――――――

――――――

――

 

指令室のドアを開けると、俺は目の前の光景に我が目を疑った。

そこには、なぜか巨大スクリーンに映し出された俺のタブレット画面を囲み、涙ながらに拍手喝采を送るサーヴァントたちの姿があった。

 

スクリーンに映し出されているのは、ホログラム姿のアロナとプラナ。彼女たちは、まるで舞台役者のように大げさな身振り手振りを交えながら、熱弁をふるっていた。

 

「――こうして先生は! クロコさんを救うために、自分自身の転移シーケンスを使ったのですーっ!」

アロナが告げると、サーヴァントやマリーンたちの間から「おお……!」という感嘆の声と、嗚咽が漏れた。

 

「いやぁ、さすがは我らのマスター君だ!」

「「「うえええん!マスター、かっこよすぎだよぉ……!」」」「最高です先輩……!」

「見なよ、私のマーちゃんを……」「フッ、我のマスターならば当然よ(後方王様面)」

「なんでお主らがそこまで得意げなのだ……?」

 

どうやら、俺が廊下で死闘を繰り広げている間に、アロプラが最終編の朗読会を開催していたらしい。勘弁してくれ。黒歴史が全世界に公開されている気分だ。

だが、感動ムードに包まれた指令室の空気は、一人の少年(?)によって一瞬で凍りついた。

 

「……おかえりマスター。感動的な話はいいんだけど、僕たちのボーダーをメチャクチャにしてくれた件について、そろそろ説明してくれるかな?」

 

キャプテン・ネモだ。彼はいつもの飄々とした態度を崩さず、にこやかに微笑んでいる。だが、その瞳の奥は全く笑っていない。静かな怒りが、青い炎のように燃え盛っている。

 

「いやその、俺のせいじゃないというか、滅茶苦茶にしたのはあいつ等であってですね……」

「御託はいいよ。君には選択肢を与える。①ボーダーの艦首(ぱんちゅ)に括り付けてトビウオのようにバレルロールする ②今夜、僕の寝室に1人で来る。さあ、どっちがいい?」

「イヤッイヤッ! どっちもオォン!アォン!(地獄)じゃん!」

 

俺が絶叫したその時、後ろから俺に対する怒りの声が聞こえてきた。

 

「見つけましたよこの不敬者ーッ!ホルス様を子どものように扱うでない!罰として、あとで私の寝室に来なさい!」ポカッポカッ

ニトクリスが杖で俺の頭をポカポカと殴り始める。痛い、地味に痛い!

 

「マスターちゃん、さっきはよくもやってくれたわね……アンタの骨、綺麗にへし折ってあげる!」ギュウウウウウ

邪ンヌが背後から忍び寄り、完璧な4の字固めをキメてくる。ギブギブ!骨がミシミシ言ってる!

 

「テメェ、よくもお母様に恥をかかせたな! あとでけつ穴確定な!」ゲシッゲシッ

バーヴァンシーが、キックを俺の脇腹に叩き込む。プロの蹴りだ。内臓がシェイクされる感覚がする。

 

「グエーッ!死ぬンゴーーッ!」

「あほくさ……。おじさん疲れちゃったから寝るね~」

 

サーヴァントたちの暴力に揉みくちゃにされ、俺の意識が遠のきかけた、その時。

ホシノが心底面倒くさそうに呟き、一つ大きな欠伸をした。その瞬間、凄まじいプレッシャーが指令室全体を包み込んだ。

その神々しいまでの威圧感に、サーヴァントたちが一瞬怯んだ。その隙を突いて、指令室にさらなる王の威光が響き渡った。

 

「――控えよ、下郎ども!天空神ホルスの御前であるぞ!」

 

威風堂々とした声と共に現れたのは、黄金のファラオ、オジマンディアス。彼の登場で、室内の空気は完全に支配された。ニトクリスとクレオパトラ、ツタンカーメンは、反射的にその場にひれ伏している。

オジマンディアスは、他のサーヴァントには目もくれず、まっすぐにホシノの元へと歩み寄ると、恭しく片膝をついた。

 

「おお、ホルス神よ!このオジマンディアス、そなたの降臨を心より歓迎する!さあ、退屈な者共は捨て置き、我ら神々と共に盛大な宴を開こうぞ!」

 

そう言うと、オジマンディアスはホシノをまるで赤子のように軽々と担ぎ上げた。

「わぁ~、高い高い~」

 

ホシノは、状況を全く理解していないのか、あるいは気にしていないのか、まんざらでもない様子で楽しげに声を上げた。

 

「ホシノーーーッ!あぁ〜〜〜!戦力がぁ〜〜〜!」

 

俺の悲痛な叫びも虚しく、ホシノはファラオたちに囲まれ、神輿のように担がれながら指令室を後にしてしまった。残されたのは、ボロボロの俺と、再び活気を取り戻したサーヴァントたちだけだった。

 

終わった。完全に終わった……と思ったが、俺を袋叩きにしようと迫りくるサーヴァントたちを、ダ・ヴィンチちゃんが「はいはい、お戯れはそこまで!」と制止した。助かった……のか?

 

「いやぁ、君のおかげで色々と面白いデータが取れたよ、マスター君。君が持ち込んだそのタブレットと異世界……研究のしがいがありそうだ。それはそれとして」

 

ダ・ヴィンチちゃんは、にっこりと完璧なビジネススマイルを浮かべた。

 

「君が不在だった間の仕事、しっかり溜まってるからね。まずは微小特異点の修復からお願いしようかな。たぶん、100周くらいすれば消えると思うから、よろしくね♪」

 

その言葉は、俺にとって死刑宣告と何ら変わりはなかった。

ただひたすら同じクエストを繰り返す苦行。それがFGOの周回だ。俺は膝から崩れ落ちた。

 

「カドックパイセン!助けて! もうオートもスキップもできないクエスト周回は嫌だよ! サポートしてよ!」

 

俺は近くで呆れ顔をしていたカドックに泣きついた。彼は俺と同じく苦労人の匂いがする男だ。きっとこの苦しみを分かってくれるはず。

 

「!?僕に話を振るな! だいたい連れていくなら、そこにいる芥の方だろうが!」

 

カドックは、心底面倒くさそうにそう言うと、親指で後ろを指した。そこには、一連の騒動を壁際で静観していたぐっちゃんの姿があった。

 

「はあっ? 私を巻き込まないでくれる?! 私はただ項羽様と過ごしたいだけなのに!」

「あ、ぐっちゃんパイセンはクラス相性悪いんでお留守番で」

「そこは来てほしいって言いなさいよ……!(怒)」

 

 ――――――――――

 ――――――

 ――

 

結局、俺はマシュと二人だけで周回作業へと駆り出されることになった。唯一の救いは、ダ・ヴィンチちゃんがタブレットを返してくれたことくらいだ。これでいつでもブルアカの世界に逃げ……いや、戦略的撤退ができる。

 

「そこだマシュ! BQAチェインアタック!」

「はい先輩! ましゅモーター! ぶおおーん!」

 

今回レイシフトしたのは、とある地方の草原である。わんさか出てくる「ハナシノトチュウダガ・ワイバーン・ダ」達が主な敵だ。

 

「はぁ……さすがに火力不足で時間がかかる……。あと二人、強力なアタッカーがいればな……」

「申し訳ありません、先輩……他のサーヴァントの皆さんは、アロナさん達のお話に夢中みたいでして」

「うーん、追加の現地召喚もゴッフ所長許可してくれなかったしなぁ。 これ使うしかないかぁ」

 

俺は嘆息し、再びポケットの中の黒いカードに手を伸ばした。しょうがない、またこれに頼るしかない。

 

「頼む、まともな戦力を!」

 

ピカッ

 

祈るようにカードを掲げると、眩い光と共に、優雅なドレスに身を包んだ美女が現れた。しかし、その瞳はどこか虚ろで、妖しい光を宿している。

 

「……ドクター?ようやく私を指名してくれたのね。嬉しいわ。さあ、私たちの故郷に帰りましょう?そして、二人で血族になるの……」

 

 彼女はねっとりとした声で囁き、俺に手を伸ばしてくる。その背後には、おぞましいシーボーンの影が見える。

 

濁 心 ス カ ジ じ ゃ ね え か ! 

 

「ごめんチェンジでお願いします! プラナ、強制送還!」

「そんな、ひどいわドクター……あとでケルシー先生に(告げ口)なっちゃう……」スウッ

 

 俺は即座にプラナに送還を願い、スカジは不満げな表情で光の中へと消えていった。危ない危ない、うっかり深きものになるところだった。

 

「せ、先輩? 今の方はいったい……」

「ちょっと失敗しちゃった(てへペロ) さあもっかい行くよ!」

 

気を取り直して、もう一度カードを使う。今度こそ、頼む!

 

ピカッ

 

光の中から現れたのは、狐の面をつけた、可憐な和装の少女だった。その手には禍々しいオーラを放つ九九式短小銃が握られている。

 

「あなた様……♡ようやく、ようやくワカモを指名してくださいましたのね……♡♡」

 

災厄の狐、狐坂ワカモだ。彼女は俺の姿を認めるなり、恍惚とした表情で駆け寄ってくる。

うーん、まだヤバい奴ではあるけど、さっきよりはマシ(?)だから良しとするかぁ……

 

「せ、先輩! こちらの方は一体!? 計器が神霊級サーヴァントの反応を捉えているのですが、いつの間にご契約を!?」

「あー、もちつきなさいマシュ。ワカモはサーヴァントじゃなくてだね……」 

 

マシュが、俺の隣で目を輝かせながら超早口でまくし立て始めた。

 

「『若藻(ワカモ)』? たしか、玉藻の前さんが遣唐使船で来日した際に使っていたとされる名前……そのお姿、狐の面…つまりは玉藻の前さんの系譜。ですが、その霊基パターンは破壊の衝動を内包している……。反英雄としての側面が強調されたタマモナインの系譜に連なる存在。もしやこの方はタマモ・オルタ、もしくはタマモ・リリィさんとでもいうべき存在なのでしょうか?」

 

「「何を言ってるんだ(です)?この娘は」」

 

(……あなた様? こちらのトンチキな小娘はいったい何の話をしているのですか?)

(ごめんねぇワカモ。こいつ新鯖と出会うとウィ〇ペディアみたいになるんだ)

 

「マシュ違うから。タマモシリーズの人とは何ら関わりがないから」

「で、でも、玉藻の前さんとお声がそっくりな気がしますが」

「それはたまたまCVが斎藤〇和さんで同じなだけだから。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありませんだから」

「はぁ……???」

 

ワカモはこちらの意図を察したのか、こほん、と一つ咳払いをしてマシュに向き直った。

 

「わたくしはワカモ。先生への愛に生き、愛のために全てを破壊する一途な女狐にございます♡」

「(愛のために全てを破壊…!?)な、なるほど! 私はマシュ・キリエライトと申します。よろしくお願いしますね!」

 

「さあ、お話はそこまでですわ、あなた様! ワカモにお任せを! あなた様の行く手を阻む害虫は、このわたくしが一人残らず駆逐してさしあげます!」

 

ワカモはそう言うと、愛用の銃を構え、ワイバーンの群れへと突撃していく。

 

「あなた様以外のクソザコ……消えなさい……ッ!」

 

ドドドドドドッ!

 

銃口から放たれる緋色の弾丸が、ワイバーンたちを次々と蜂の巣にしていく。ふむふむ、キミのコマンドカードはアーツよりなんだね。ぽちぽち。

 

「す、すごい火力です……! まさに一点集中の殲滅力……!」

「しかも弾数が謎に無限ときた。こりゃ百人力だぜ……」

「あなた様♡ いかがでしたか? わたくしの愛の弾丸は」

 

ひとしきり暴れまわった後、ワカモは頬を上気させ、潤んだ瞳でこちらを振り返る。

 

「うん、すごく助かったよ。ありがとう、ワカモ」

「ふお゛っ♡  あなた様の感謝キクっ♡ このワカモ、天にも昇る気持ちにございます……! ですがあなた様、わたくしに感謝の言葉だけ、というのは少し水臭いのではございませんか?」

 

ワカモが、ねっとりとした視線で俺の唇を見つめてくる。

 

「わたくしは、言葉よりも態度で示していただきたいのです。そう、例えば、熱い口づけの一つでも……♡」

「うーん、なら後で柴関ラーメン奢るよ」

「まあ♡ ラーメン! あなた様とお食事デート……!  嬉しいですわ!」

「ワカモさん、食事デートがラーメンでよろしいのですか……?」

 

どうやらラーメンで納得してくれたらしい。チョロくてよかったよかった。

 

――――――――――

――――――

――

 

なんやかんやで、ワカモの圧倒的な火力の助けもあり、俺たちは無事に100周のノルマを達成してカルデアに帰還した。

司令室に戻る途中、食堂から楽しげな声が聞こえてきたので覗いてみると、そこにはなんとも気の抜けた光景が広がっていた。

 

オジマンディアスに肩車されたホシノが、ニトクリスやクレオパトラとキャッキャウフフと戯れている。すっかりファラオたちに懐き、いや、懐かれている。

 

「ホルス神よ、して、その依り代でこの時代に降臨なされた真意は?」

「なんでおじさんの二つ名知ってるのさ……? うーん、先生に指名されたから抜いてあげに来ただけだよ~。あ、このメジェド様クッキー美味しい」

「あ、先生!見て見て~、この王様、すっごく高い高いしてくれるし、面白いゲームも教えてくれるんだよ~!」

 

「フハハハハハ!余の肩車は天にも届こう!さてホルス神よ、そろそろ我らがエジプト領にそなたを神として迎えたいのだが!」

「えー、めんどくさいからやだー」

「なんと気さくな神か!素晴らしい!」

 

話が全く噛み合ってないのに好感度だけが上がっていくの、怖っ。もはやファラオたちの新たなアイドルと化していた。

 

「あらホシノさん、久方ぶりです。 あなたも此方に来ていらしたんですね」

「うへ、ワカモちゃん……君も来ちゃったのか~。先生、もしかして3Pがしたいのかな?」

「まぁ……♡ あなた様、そういうことでしたら早く言ってくださればよろしいのに♡」

 

いや、君たちデリ〇ル目的で呼んでるわけじゃないからね?

 

「なんでしょう、あの方……わたくしのアルターエゴでしょうか……?」ヒソヒソ

「そうかな? 確かに声と雰囲気は近しいものがあるけど……」

 

いつの間にか後ろにいた玉藻と白野パイセンが、不思議そうにワカモを眺めている。

 

「はぁー…疲れた…早く元の世界に…いや、家に帰りたい…」

 

「――今、『(わたし)』の胎内に帰りたいと聞こえました!」ガタッ

「お前じゃない座ってろハチドリ」グイッ

 

疲労困憊で司令室に戻ると、そこには腕を組んだゴルドルフ所長が仁王立ちで待ち構えていた。その顔には、青筋が浮かんでいる。

 

「おかえり。帰ってきて早々だけど、この施設の器物破損に関する始末書を100枚。次に、そして、溜まりにたまった特異点の周回報告と、今後の育成計画書をだね……明日の朝までに提出してもらうよ」ドサッ

「そしてキミィ、またなの? また神霊級の存在を召喚しちゃったの?それも二体も? 召喚した経緯についての詳細な報告をしっかり聞かせてもらうからね?」ピキピキ

 

「ウワーッ!(絶望)」

 

俺の悲鳴が、カルデアに虚しく響き渡った。どうやら、俺の社畜生活は、まだまだ終わらないようだ。




世界のどこでもなく、あらゆる可能性が交錯する観測不可能な座標。そこに、三人の男がテーブルを囲んでいた。

一人は、見るからに怪しい黒ずくめの紳士。
一人は、深い絶望を体現したかのような、復讐の化身。
一人は、威厳を纏った銀髪の獣人。

彼らの眼前に広がるスクリーンには、哀れな社畜の姿が、様々なアングルから映し出されている。
 
「クックック…いやはや、素晴らしい。実に興味深いですな」
 
黒服が、愉悦に満ちた声で呟く。
 
「異なる世界法則に適応し、その都度役割を変え、別世界の存在まで呼び水として召喚する……。彼の存在そのものが、我々の研究にとって計り知れない価値を持ちます」
「フン……道化が。貴様らが弄ぶ玩具に興味はない」
 
巌窟王が、忌々しげに吐き捨てる。
 
「だが、認めよう。地獄の中で藻掻き、叫び、それでもなお立ち上がろうとするその姿…クハハ、実に滑稽!見ているだけで、この胸も躍るというものよ!」
「お二方の見解には同意する」
 
最後に口を開いた彼は腕を組み、冷静な目でスクリーンを見据えている。
 
「彼が持つ特異性は、テラの未来にとって無視できない。継続的な監視と、必要とあらば積極的な介入も視野に入れるべきだろう」
 
三者三様の目的。しかし、彼らが共通して求めているものは一人の男の情報だった。
黒服が、テーブルの上に数枚の写真を置く。
 
「では、今週分です。こちら、全力で逃走する、大変貴重なヴェルティ女史(先生)の写真です。この必死な形相、素晴らしいと思いませんか?」
「クハハ!無様よな!だが、それが良い!ならばコレを褒美にくれてやろう。『後輩』によって締め技をキめられている、我らがマスターの写真だ。貴様も気に入るだろう」
 
巌窟王もまた、どこからか取り出した写真をテーブルに置く。それを受け取ったシルバーアッシュが、満足げに頷いた。
 
「良い取引だ。ならばこちらも誠意を見せよう。ケルシーによる長時間尋問の末、ついに精神が崩壊し、エンカクと二人で盆栽を愛でながら『これが…故郷の星…』と呟いているドクターの写真だ」
 
黒服と巌窟王は、その写真を見て「「ほう…」」と興味深げな声を漏らす。
 
「やはり先生は良いものですねぇ……」
「ああ……」「良い……」

「して、次はどこにする?」
「我が領地へ招待するのも一興だが…」
「フン、待ち焦がれるがいい。いずれ、奴は必ず辿り着く!」
「いえいえ、次なる舞台はやはり入浴中の――」

こうして世界の裏側では、プライバシーと尊厳をチップにした、極めて高度で最高にアホらしい情報交換が繰り広げられていた。
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