ソシャゲの掛け持ちをしまくった結果がこれだよ!   作:じゅうじキー

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第五話

 ロドスでの過酷な夜間残業を終えてから数日。

俺は3つの世界を跨いだ地獄のデスマーチをさせられていた。

シャーレで終わらない経理作業をしながら、アークに迫りくるクソデカ列車の迎撃戦をタブレット越しに指揮して、ロドスで延々とハイタッチをさせられて……

疲労はピークを超え、もはや肉体と精神は諦めの境地に達していたが、少しでもサボろうものなら皆から凄まじい圧(あててんのよ)が飛んでくるので、とても休めたもんじゃない。

 

「指揮官、こちらの書類にサインをお願いします」

 

 本日の仕事はアーク前哨基地での書類作業である。

朝から晩まで書類、書類、書類。ラプチャーとの戦闘指揮も地獄だが、事務仕事はもっと地獄……まるで延々と続くクソゲーのようだ。だが、この無限地獄から抜け出す方法は……いや、抜け出す選択肢は俺には存在しない。社畜に逃げ場はないのだ。

 

ペラ……ゴクッ……カリョク……

 

 俺のデスクの向かいのソファで、ラピ達が書類をチェックしている。隙あらばラピは隣に座ろうとしてくるが、なんとか距離を離して作業させている。

ラピが書類をチェックする小気味よい音が、俺の生気を吸い取っていく。すでに午前中の時点で、俺の心は砕け散っていた。あと何枚だ、このクソ紙切れどもは。まるでエンドレスエイト。無限ループって怖くね?

 

「……指揮官、集中を。サイン箇所がズレています」

「アッハイ」

 

 ラピの冷たい指摘に、俺はビクリと肩を震える。魂の抜けた返事をして、インクの滲んだペンを握り直す。ペンを持つ指先が、もう限界を訴えている。指が攣りそうだ、勘弁してくれ。

そして、俺の体力と神経をすり減らしている仕事がもうひとつ。

 

(ヒフミ今だ!ペロロ……さまの召喚を頼む! アズサ、敵の目にスキルを叩き込め! コハルはみんなを回復して! ハナコは服を着ろ!なんでハートパッチなんだテメェ!)

 

 デスクの下にこっそり忍ばせたタブレットで指示を出しながら、書類にサインしてハンコ押してを繰り返していく。我ながら、狂気の沙汰としか思えない。もし元の世界の上司がこの光景を見たら、「君、すごいね!明日からクビね!」と言われかねない。

 

(指揮官さま、最近独り言が激しいけど大丈夫かしら……)

(ラピとの一夜がとても凄かったんでしょう……こればかりは師匠の火力で何とかしてもらうしかないですね)

 

 ラピとアニスのひそひそ話が聞こえるが、気にする余裕もない。まずは目の前のペロロジラをなんとかしなければ。総力戦は時間との勝負なのだ。

 

 ウィーン……

 

 その時だった。執務室のドアが、ゆっくりと開いた。

 

「初心者さーん……」

「ん、君は……エクシア!」

 

 気の抜けるような、間延びした声。その声の主は、大きなヘッドホンをつけた黒髪の少女、エクシアだった。プロトコール所属のニケにして、天才ハッカー、そして――重度のゲーマーだ。

 

「……久しぶりに基地に戻ってきたって聞いたから、ファイクエしに来ました……一緒にレイド回しましょう……!」

 

 エクシアがふらふらとこちらに近づいてくる。ヤバイ!このタブレットは見せられない!

俺は、長年の社畜生活で培った危機察知能力と、音速のブラインドタッチスキルを組み合わせ、光の速さでタブレットのブルアカ画面を最小化した。

エクシアの来訪に、ラピがすっと目を細める。

 

「エクシア。指揮官は今、多忙よ。」

「ふーん……その割には初心者さん、隠れてゲームしてるみたいじゃないですかー?」

「し、してないよ? エクシア、見ての通り今クッソ忙しいんだ! ゲームなら後でね! 帰って、どうぞ!」

「……?  今、初心者さんが隠したタブレットに女の子が見えたような……気のせい、でしょうかー……?」

 

 エクシアが、猫のように首を傾げて俺のタブレットを覗き込んでくる。その目は、獲物を見つけた狩人の目だ。

 

「き、気のせいだよ! これは新しいラプチャーの生態を解析するためのシミュレーションだよ! ホラ、すごくグロテスクでリアルだろ!」

「ふーん……。シミュレーションですか……。でも、さっき『スキル』とか『服を着ろ』って聞こえましたけど、どんなラプチャーなんですか……?」

「特殊な擬態能力を持つラプチャーだよ! 最近のラプチャーは人型の奴がいるからね……」

「それヘレティックとは違うんですか……? でも面白そうですね……。私もそのギャルゲー、手伝います……」

「わーごめんねー あと「質問」は「拷問」に変わるんだぜー かえれこらー(棒)」

「ええ……? じゃあ、終わったら声かけてくださいね、初心者さん……」

 

 粘るエクシアをなんとか言いくるめ、「これはトップシークレットなんだ!」と大義名分を盾に追い返した。危ない危ない、あやうく世界の理を乱すところだった。 

エクシアは不満げに口を尖らせながらも、大人しく部屋を出て行った。

 

「……嵐みたいな子ね。ま、指揮官さまはギャルゲーより、私と遊んだ方が楽しいと思うけど?」

「おっ、そうだな(適当)」

 

 アニスがウインクしながら言うが、俺はそれに応える余裕もなく、再びダブルワークの地獄へと意識を戻した。

 

――――――――――

――――――

――

 

 その後、自室に戻ったエクシアは、むすっとした表情で自分のPCに向かっていた。

「初心者さん、何か隠してますね……。私の知らない、面白そうなゲーム……。なら……こっちにも考えがあります……。あなたのタブレット……ハッキングして、中身を確かめます……!」

 

 カタカタカタッ、ターン!

天才ハッカーの指が、超高速でキーボードを叩く。彼女が独自に構築した侵食プログラムが、ネットワークの海を潜り抜け、指揮官のタブレットへと到達する。

目標、初心者さんのタブレット。ファイアウォール、第一層、突破。第二層、暗号化キー、解除。

 

「ふふ……簡単ですね……。初心者さんのセキュリティなんて、まるで塵(ゴミ)のようです……貧弱貧弱……」

 

 エクシアが勝利を確信した、その瞬間だった。

彼女のモニターに映るプログラムの進行バーが、突如として停止した。そして、無機質な壁だったはずのファイアウォールのアイコンが、ぐにゃりと歪み、セーラー服を着た青髪の少女の顔に変わる。

 

『不正なアクセスを検知しましたー!このシッテムの箱のセキュリティは、このスーパーAIアロナちゃんの愛で守られてるんですよ! 悪いハッカーさんは、えいっ!』

『おっ、開いてますね~!』 

「ッ?!」

 

 画面の中のアロナがウインクすると、エクシアが作り上げた攻勢プログラムは、ダブルピースをしたファイアロナウォールによって木っ端微塵に爆破された。

さらに、画面中央に巨大なウィンドウポップアップが出現する。

 

『あなたの使っているドライブの奥にあった【秘蔵どえちしょしんしゃさん】フォルダにロックを掛けました! これ以上抵抗するならネットにこれをあなた名義でばらまいちゃいます!(指揮官に甚大なる間接ダメージ)』

『これで私の勝ちですね! なんで負けたか明日までに考えておいてください! そしたら何かが見えてくるはずです!』

「……くっ……なんですかこれは……!」

 

 エクシアの額に、青筋が浮かんだ。生まれて初めて受けた、完璧な煽り。初心者さんの分際で、この私をコケにするなんて……。

ハッカーとしてのプライドが、粉砕!玉砕!大喝采!された彼女の瞳に、静かな怒りの炎が灯る。

 

「……いいでしょう。そこまで言うなら……物理的に、確かめに行くだけです……」

 

――――――――――

――――――

――

 

 そのまた数日後。

 

「よし……ビナー、討伐完了! 便利屋の皆ありがとナス!」

『当然よ、先生! これでこの便利屋68の活躍はキヴォトス中に知れ渡るわ!』

『はぁ……。あんまり調子に乗らないでよ、社長。後始末が面倒だから……』

 

 なんとか総力戦の指示を終え、俺が安堵のため息をついたのも束の間、タブレットから新たな通知音が鳴り響いた。

BlaBla……もといモモトークの送信者はゲヘナ風紀委員会の委員長、空崎ヒナからだ。

 

ヒナ:先生、ゲヘナのミーティングで大事な話があるの。 

ヒナ:万魔殿だけに任せると碌なことにならないから、いっしょに来てくれない?

 

「今度はゲヘナか……俺の休みはどこ……ここ……?」

 

 俺は天を仰いで絶望の雄叫びを上げた。しかし、風紀委員と万魔殿が絡む以上、無視はできない。ヒナは話が通じるからまだいいが、アコやイブキの機嫌を損ねれば、どんな報復が待っているかわかったもんじゃない。もう深夜にスリングショット水着アコ犬の散歩をさせられるのは懲り懲りだよ……

 

「行くしかねえか……」

 

 俺は観念して立ち上がると、後ろに黒髪のダウナー少女が立っていることに気づいてしまった。そして今の戦闘指揮を一部始終見られてしまっていたことにも。オワ、オワ…(絶望)

 

「ファッ?! え、エクシア! なんでここに!?」

「初心者さーん。やっぱりプレイしてるじゃないですか……その面白そうなゲーム、私にもやらせてくださーい」

 

 俺が驚きに目を見開いた時には、もう遅かった。

 

『転移シーケンス、起動しまーす!』

 

 アロナの無慈悲なアナウンスと共に、俺とエクシアの足元から眩い光が溢れ出す。

 

「えっ、ちょ、おま……!」「わっ、何これ……!目が、目がああああっ……!!」

 

 抵抗する間もなく、俺たちの体はシャーレに転送された。

 

――――――――――

――――――

――

 

「ぶべっ」

「ぐっ……こ、ここは……? VR空間……?それにしては、やけにリアルな……」

 

 マズイ。これは想定外だぞ……別世界のキャラを連れてきちゃった。 不法侵入ですよ不法侵入。ヤバイですよ!

混乱するエクシアが、物珍しそうにシャーレのオフィスを見回している。このままだと、俺が異世界を渡り歩いている超ヤベー奴だとはっきりわかんだね。何とかして誤魔化さないと。

俺が言い訳を考えようとした、まさにその時だった。

 

 ガチャリ、と執務室のドアが開いた。

 

「ぱんぱかぱーん! 本日のシャーレ当番、勇者アリス、参上しました! さあ先生、早速一緒に世界を救う冒険(ゲーム)に出かけましょう!」

 

 シャーレに入ってきたのは、髪をワンサイドアップにした小さな少女。光り輝く巨大なレールガンを背負った、ゲーム開発部の「光の勇者」、アリスだ。

ヤバイ……! アリスはともかく、エクシアにこの幼女の先生やってるとか言ったら、社会的な弱みにされて一生こき使われる気がする!

俺は、思考が追いつくよりも先に体が動いていた。エクシアの体をぐいっと引き寄せ、自分のデスクの下に隠す。

 

「ア、アリス!よく来たね! そうだ、これはアビドスで見つけた古代のパズルなんだけど、解けなくて困ってるんだ! 勇者のアリスなら、この超難解パズルを解けるんじゃないかな?!」

 

 俺は咄嗟に、デスクの上に置いていた三角形の立体パズル(市販品:500円)をアリスに突き出した。

 

「パズル……!これが伝説の、願いを叶えてくれるという『千〇パズル』ですね!わかりました!アリス、この試練、必ず乗り越えてみせます!」

純粋なアリスは、俺の苦し紛れの嘘を1ミリも疑うことなく、パズルに没頭し始めた。ヨシ、今のうちだ。

 

 俺は背後のエクシアに、鬼の形相で囁いた。

 

「いいか、エクシア……後で説明するから、とにかく俺が戻ってくるまで、絶対ここから出るなよ!いいか、絶対だぞ!(フリ)」

「はぁ……。一体なんなんですか……? でも、面白いことになってるのは、わかります……」

 

 エクシアは状況を理解していないながらも、好奇心で目を輝かせている。コイツ、面白がってるな……!

 

 俺はアリスに「悪いんだけどすぐ戻るから、良い子で留守番しててね!」と言い残し(聞こえていない)、ヒナに指定されたゲヘナの現場へと繰り出していった。

後に残されたのは、パズルに夢中な光の勇者と、影で息を潜める、ダウナー系の天才ハッカー。

その出会いは、誰にも予測できないカオスな化学反応を引き起こすことになる。

 

「できました!先生、見てください!全てのピースが完璧に収まりました!これでアリスも一人前の勇者です!……あれ?」

 

 驚異的なスピード――わずか1分でパズルを解き終えたアリスは、胸を張って振り返った。しかし、そこに先生の姿はない。

周囲を探してみると、代わりに先生のデスクに隠れていた、見知らぬ少女を発見してしまった。

 

「「あっ……」」

 

 その時、アリスに電流走る――!

うっすら灰色の黒髪。大きなヘッドホン。白を基調としたSFチックなゲーム機。自分とどこか似ている。だが、雰囲気が決定的に違う。光と闇。陽と陰。アリスと、もう一人のアリス…。

アリスの頭の中で、ゲーム開発部の仲間、モモイとミドリが熱く語っていた王道RPGにおける“概念”が、稲妻のように閃いた。

 

"いい、アリス! 光の勇者には、必ずその対となる存在がいるの! それが、闇に堕ちた悲しきライバルキャラ!"

"最初は敵対するけど、最終的には共闘してラスボスを倒す、胸熱展開のキーパーソンだよ!"

 

 これだ。間違いない。この人は、私の――。

 

「あなたは……!」

 

 アリスは、エクシアを指さして叫んだ。

 

「まさか……! あなたは千年パ〇ルによって解放されたもう一人の私……! 『闇(ダーク)アリス』ですね!?」

 

「……はぁ?」

 

 エクシアは、面倒くさそうに眉をひそめた。

 

「ダークアリス……? 何を言ってるんですか、この子……。それより、あなたの持ってるそのゲーム機、すごく旧式ですね……。ここのテクノロジーレベル、低いんですか……?」

「やはり……! あなたは別の世界から来た、私を導くための存在なのですね!」

 

 アリスの脳内では、既に壮大なストーリーが構築されていた。この「闇アリス」は、きっと自分をさらなる高みへと導くために現れた、相棒のような存在なのだ、と。

 

「わかりました! ゲーム開発部に来てください! 私たちの世界(アリスたちのつくるゲーム)の力を見せてあげます! そして、あなたの世界のことも教えてください!」

「ゲーム開発部……? 面白いゲーム、たくさんあるんですか……?」

「はい! テイルズ・サガ・クロニクル、ゼルナの伝説などなど、名作がたくさんあります!」

 

“名作”という言葉に、エクシアの目がキランと光った。

 

「……いいでしょう。案内してください。闇のゲームの始まりです……!」

「はい!行きましょう、闇アリス! 私たちの戦いは、これからです!」

 

 アリスは、完全に誤解したままエクシアの手をぐいっと引くと、意気揚々とシャーレの執務室を飛び出していった。

エクシアも、未知のゲームへの期待に胸を膨らませ、何の抵抗もなくついていく。後に残されたのは、完成されたパズルだけだった。

 

――――――――――

――――――

――

 

 数時間後。

俺は、ゲヘナでの会議(と、アコからの理不尽な説教)を終え、疲れ果てた体を引きずってシャーレに戻ってきた。

 

「ただいまー……って、あれ?」

 

 執務室は、もぬけの殻だった。

机の上には、綺麗に完成したパズルがポツンと置かれている。

 

「アリス? エクシア? どこ行ったんだお前らほんとにさぁ……!」

 

 嫌な予感がする。とんでもなく嫌な予感が。俺は急いでモモトークを開き、アリスに連絡を取った。その頃、ゲーム開発部の部室では、前代未聞の事態が発生していた。

 

――――――――――

――――――

――

 

「皆さん!新しい仲間を紹介します!もう一人の私、闇アリスです!」

 

 アリスが、得意げにエクシアを部員たちに紹介した。

 

「「「ええええええええええっ!?」」」

 

 モモイとミドリの絶叫が、部室に響き渡る。

 

「アリスちゃんにそっくりな人がいる……!? しかも、こっちのアリスちゃん(?)、なんかグレてる!」

「そのヘッドホン、見たことないモデル……!それに、どこかダウナーな雰囲気が……まさか、これが世に言う“ギャル”……?」

「それは違うと思うよお姉ちゃん……」

 

 隅っこでダンボールを被っていたユズまで、カタカタと震えながら顔を覗かせている。

一方のエクシアは、そんな部員たちの混乱などお構いなしに、部室にある最新鋭のゲーム機や開発機材を興味深そうに眺めていた。

 

「へぇ……このVRハード、ミシリス製のよりスペック高いですね……。CPUはどこのメーカー製ですか……?」

「そ、それはカイザーダイナミクス社製の最新モデルで……」

 

 ミドリがたじたじと答える。そこに、モモイがニヤリと笑いながら一本のゲームソフトを差し出した。

 

「ふふふ、闇アリスちゃんの実力、見せてもらおうじゃない!これは、ユズが暇つぶしで作った伝説のクソゲー、『ワナまみれダンジョンⅢ』だよ!まだ誰もクリアしたことないんだから!」

 

 エクシアは、渡されたコントローラーを手に取ると、無言でゲームを始めた。

画面には、明らかに調整不足なドット絵の勇者が表示され、開始3秒で理不尽な罠にかかって死んだ。

 

「うわぁ……このゲーム……。操作性が劣悪で、UIも最悪……。フラグ管理はガバガバだし、バグだらけ……。はっきり言ってサービス開始からオワコン手前のソシャゲ……でも……」

 

 エクシアの指が、残像が見えるほどの速度でコントローラーを操作し始める。

 

「……このクソみたいな仕様の、裏をかくのが……最っ高にハイってやつです……!」

 

 初見殺しの罠を完璧に見切り、バグを利用して壁を抜け、通常ではありえないルートでショートカットを決める。エクシアの超絶プレイに、ゲーム開発部の面々は呆然と口を開けていた。

 

「「「こ、この人……何者!?」」」

 

「あ、あの……どうしてこの隠し通路がわかったんですか……?私が仕込んだ、誰にも見つけられないはずのイースターエッグなのに……」

 

 作者であるユズが、信じられないといった表情で呟く。

 

「簡単でーす……。この地形データの配置パターン……メモリの特定アドレスに、不可視のオブジェクトを生成する古典的な手法ですね。ダミーデータをいくつか参照させれば、位置の特定は容易です」

「あっ、そうだ(唐突)。このバグ、応用すればケツワープできると思いますよ……」

 

「「「(何言ってるか全然わからないけど、とにかくすごい!)」」」

 

 その日のうちに、エクシアはゲーム開発部にある全てのゲームをクリアし、部員たちから「師匠」と崇められる存在となっていた。俺が、ユズからの連絡を頼りにゲーム開発部の部室にたどり着いた時、そこに広がっていたのは地獄絵図だった。

 

「初心者さん、遅かったですね……。もう、ここのゲーム、全部クリアしちゃいましたよ……?」

 

 エクシアが、王様のように椅子にふんぞり返っている。その周りでは、モモイとミドリが「師匠!この仕様についてご教授を!」「師匠!新しい栄養ドリンクです!」と甲斐甲斐しく世話を焼き、ユズは「し、師匠のプレイデータ……記録させていただきます……」とビデオカメラを回している。そしてアリスは、「さすがです、闇アリス! これで世界を救えますね!」とキラキラした目でエクシアを見つめていた。

 

「何やってんだ、お前ら……!!」

 

 結局、俺はゲーム開発部の面々に「師匠を返せ!」と泣いて懇願されながらも、なんとかエクシアを連れ出し、ニケの世界へと強制送還させることに成功した。

その際、アリスには「闇アリスさんは、自分の世界を救うために旅立ったんだ」と説明し、涙ながらに納得してもらった(ことになっている)。

 

 しかし、俺はまだ知らない。

異世界の天才ゲーマーとの出会いが、ゲーム開発部に“革命”をもたらしてしまったことを。

後日、彼女たちがエクシアに感化されて開発した、超絶技巧とバグ利用が前提の超高難易度クソゲー『ゲマトリア・マスト・ダイ』が、キヴォトス全土で謎のブームを巻き起こすことを――。

 

 そしてアークに戻ったエクシアが、MMORPG『ファイナルクエスト』に『テイルズ・オブ・サーガ』なるクソイベントを勝手に実装し、サーバーをプチ炎上させることを、今の俺は知る由もなかった。




エクシア
和名: テトラロボモップモドキ

せいそくち:
 アーク前哨基地、ゲーム開発部(なわばりになった)

せつめい:
 シキカンオンナタラシが隠していたあやしいゲームが気になって追いかけた結果、なぜか異世界「キヴォトス」に転移してしまった外来種の生物。
ミレニアムロボモップとよく似た外見と性質を持っているが、根本的に違う生物とされる。

とくちょう:
 てんさいハカー: すごいハッキング能力を持っているが、シッテムの箱にいるなんかこわいものに完敗し、プライドをズタズタにされた。わァ…あ…!

 ゲーマーのたましい: どんなクソゲーでも、バグや仕様の穴を見つけて攻略してしまう。その腕前は「なんかすごくて…こわい…」と専門家(ゲーム開発部)をドン引きさせるほど。
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