ソシャゲの掛け持ちをしまくった結果がこれだよ!   作:じゅうじキー

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第二話

 大丈夫……見た感じゲームの時と同じUIが表示されてるから、いつもと同じくスキルを撃たせればいいはず。

目標をセンターに入れてスイッチ……目標をセンターに入れてスイッチだ。ヨシ!

 

「セリカ、落ち着いて(おまいう)状況を説明してほしい」

 

 内心の焦りを押し殺し、セリカに話しかけた。

画面越しではあるものの、生徒に不安を与えるわけにはいかない。

俺は先生だぞ。雰囲気でやっているとはいえ、生徒に不安を与えるわけにはいかない。

俺ァーンがやらねば誰がやる。

 

『状況って……見ての通り、カイテンジャーが暴れてる上に、でっかいロボットが町を襲ってるの!先輩達も、みんな苦戦してるんだから!』

 

セリカの声からは、いら立ちと焦りが強く感じられる。どうやら本当に切羽詰まっているようだ。

 

『先生ですか?!こちらアヤネです!現在、カイテンジャーが市街地にてテロ活動を行っており、市民の避難は完了しましたが、建物の被害が拡大しています!』

 

 アヤネの緊迫した声が響く。

画面には、巨大な寿司がガッチャーンコしたロボット「KAITEN-FX MK.Ⅰ」が街を破壊する様子と、必死に立ち向かうアビドス対策委員会の生徒たちの姿が映し出されていた。

いつも見慣れたUIが、生々しい戦場の映像の上に重なって表示されている。

これが……これが本当のe-Sports……!

 

「あーそーゆーことね。完璧に把握した(してない)。ほかのみんなは無事かい?」

 

内心は胃がキリキリ痛むが、努めて冷静な声色で問う。

 

『こちらノノミです~。今のところ目立った負傷者はいませんよ!でも、攻撃が激しくて……防衛線が破られそうです……』

『うへ~、いつもそうだったけど、あいつら割と強くて厄介だよね~。あんな兵器まで出してきちゃってさ~』

『ん、なんでか知らないけど、私たちのこと目の敵にしてる。すごく迷惑。』

 

みんなの状況を確認していると、マグロを頭にのせたレッドが叫んでくる。

 

『なにをしらばっくれている!いつもいつも我々の活動を邪魔してコケにしてくれたこと……忘れたとは言わせないぞ!悪党どもめ!』

『毎日毎日、必ず6回は襲撃してきやがって……今こそ成敗してくれる!』

『レッド、奴らを倒せた分はかならず成果給に反映しておいてください』

 

 ……デイリーの指名手配(校舎)をアビドス組でボコってたけど、もしかしてそれを根に持ってるのかこいつら。

正直いつも掃討でスキップしてたけど、彼女らにとっては「毎日同じ時間に来てぶっ飛ばされる」ってことだったんだ……。そりゃ恨まれるわ!

 

「とりあえず状況はわかったよ。ノノミ、準備はいい?」

『はい!いつでもいけますよ~』

 

 よし、とりあえずいつもの感じでスキルカードをタップして……いけっ!

攻撃範囲を指定すると、ノノミがスキル攻撃を始める。

 

『全弾発射~!』ドドドドドッ

『ぐおおっ! さっきより攻撃が重くなっただとっ!?』

 

ノノミのスキルが炸裂し、カイテンジャーたちが面白いように吹っ飛んでいく。

……心なしか、ゲームの時より威力が5割増しくらいになってる気がするが、気のせいだろう。多分。

 

「その調子だよノノミ。 ホシノは今のうちに盾を構えて凸するんだ! シロコとセリカもそれに続いて!」

『おっけ~。みんな盾だよ、集まって~』

『ん、了解。ユニット起動。』

『覚悟しなさい!』

 

 3人がカイテンジャー達に突撃していく。

さっきまでの劣勢が嘘のように、あっという間にカイテンジャー達がねじ伏せられた。

はえ~すっごい。

 

「……みんなお疲れ様!ナイスファイトだったよ!」

 

 内心の胃痛をよそに、俺は画面越しの生徒たちに声をかけた。

画面の中で、カイテンジャーたちは倒れ伏し、巨大ロボは黒煙を上げて沈黙している。

アビドスの街はまだ多少の被害は残っているものの、ひとまず壊滅は免れたようだ。

 

『先生っ!まさかこんなに早くカタがつくなんて!』

 

セリカが驚きと安堵の混じった声で叫ぶ。

 

『先生が指揮してくれたおかげです~!なんだかいつもより強くなった気がしたの、気のせいでしょうか?』

 

ノノミが首を傾げながら、無邪気に尋ねてくる。いや、気のせいじゃない気がするんだよな、俺も。

これが「先生」の力……カリスマというやつか?俺の社畜根性が、指揮能力にバフをかけているとでも……?そんなバカな話があるか。

 

『先生、ありがとうございます。これで任務完了です。』

 

アヤネが静かに感謝を述べる。その表情からは、信頼感が滲み出ていた。

 

『助かったよ、先生。まさか、あんなにてこずったカイテンジャーを瞬殺できるなんてね~。おじさん、びっくりだよ~』

 

ホシノが疲れたように息をつきつつ、安心したような笑みを浮かべる。

彼女の言葉に、俺は少しだけ胸を張った。普段のデイリー掃討では感じられない、リアルな達成感がそこにはあった。

 

「……みんなが頑張ってくれたおかげだよ。少し休んで、ゆっくりしてね」

 

俺がそう言うと、生徒たちは一斉に「はい!」と元気よく返事をした。

 

『ん、先生ありがとう。このお礼は必ず体で支払わせてもら……『はいはいだめだよシロコちゃ~ん』ブツッ』

 

 なんかおかしな声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。

気が付くと画面がアロナとプラナに切り替わり、二人がキラキラした目で俺を見つめていたが。

 

『先生、素晴らしい指揮でした!』

『はい、先生の潜在能力、素晴らしいです。』

 

「そ、そうかな?ありがとうね。――それじゃあ今度こそ休ませてもらうからね」

 

『ええっ!?もうですか?!』

『アロナ先輩、さすがに先生もお疲れです。すこし休んでいただきましょう。』

『そうですね……先生、おやすみなさいっ!』

 

 ようやく二人が解放してくれたので、ベッドにダイブしようとしたその時。

ドアを開ける音とともに、またしても俺の休息をよしとしない声が聞こえてきた。

 

「先生っ! ようやく戻られたんですねっ!」

 

 うお……ふっと……。

振り返ると、そこには怒り心頭といった様子の早瀬ユウカが、物理的に山と呼べる量の書類を抱えて立っていた。

その背後には鬼が見える。嘘でしょ……?

 

「せ~ん~せ~い~? あなたが留守にしている間に、こんなにシャーレの仕事が溜まってるんですよ! 責任、取ってもらいますからねっ?」

 

 あっ……(察し)

終わった……。俺の安息は、終わったんや……。もう終わりだぁ!

 

――――――――――

――――――

――

 

 数時間。

俺はユウカの監視のもと、ひたすら書類の山と格闘していた。デスクワークは得意分野だが、それにしても量がエグい。

連勤明けの体にはあまりにも酷だ。現実世界より働いとるやんけ!訴えたら勝てる?

 

「先生?手が止まっていますよ。まさか居眠りなんてしてませんよね?そんな調子で大丈夫ですか?」

「し、してないよ?大丈夫だよ! 問題ない!」

 

 少し手を休めようにも、真隣にユウカが座っているので逃げることができない。

てか君なんでピッタリくっついて隣座ってんの?距離近くない?

すんごいいい匂いしてドキドキするンゴけど、性欲からくる物なのか極度の疲労からくるもんなのかわからんぞ……

 

「それにしても……先生、意外と手は器用なんですね」

「おん? まあ、書類作業は慣れてるし……」

「……ふーん」

 

 なぜか俺の手をじーっと見つめた後、ふいっと視線を逸らす。

 

「……その手で、たとえば……他にも“いろんなこと”できたり……するんですか?」

 

 な ん で す か 急 に !?

 

意識してなかったけど、その瞬間、ペンを握る手に余計な力が入ってしまい、グシャッと書類の端を破ってしまった。

 

「先生……それやり直しですからね」

「アッハイ」

 

――――――――――

――――――

――

 

 なんとか最後の書類にサインを終えた頃には、キヴォトスの空はとっくに夜の帳に包まれていた。

 

「ふぅ……これでようやく終わりです。……先生、今日はよく頑張りましたね」

 

 そう言いながら、ユウカが俺の肩にそっと手を置き、もう片方の手で俺の膝を撫でてくる。

 

「……もう、あんまりいなくなっちゃダメですよ?先生がいなくなったら、私……困っちゃいますから」

 

 ――耳打ち気味に、恋人にかけるようなやわらかな声で語りかけてくる。

どうして理性を消し飛ばそうとしてくるんですか?

なんでこんな距離が近いんだよぉ……ゲーム中で好感度50とかにしてたのマズったかな。

 

「それでは私はこれで……おやすみなさい、先生」

 

 振り返らずに手を振って出ていくユウカの後ろ姿が、ちょっとだけ、名残惜しそうに見えた。

もう疲れたよパトラッシュ……。でもなんだかんだ言って最後まで手伝ってくれた……好き……。

 

ピロン。

 

 今度こそベッドにダイブしようとすると、 タブレットから通知音が鳴った。

どうやら、アビドス組の皆がメッセージをくれているらしい。

 

ホシノ:今日は本当に助かったよ~。ありがとうねせんせ~

シロコ:ん。今日はダメだったけど、次あったときはもらうからね。

 

 一体何をもらうつもりなんすかねぇ……。

シロコの珍妙な通知は無視して返事を書いていると、またモモトークに通知が来た。

 

「今度はどなたですか~っと……うん?」

 

 ゲーム内では見慣れたモモトークの友達一覧に、見覚えはあるが見慣れない相手からの通知が来ていた。

 

 ラピ:指揮官、今どちらにいらっしゃいますか?

 

「ラピ……ラピぃ?! なんでぇ????」

 

 それは、ブルアカにはいるはずのない相手であった。




アロナ
和名:シッテムアオフウトウコロガシ

せつめい
タブレットに棲まうえりーと秘書。
事故に遭った先生をうまいこと救えた(拉致れた)が、
いくら石を貢いでも青封筒しか出さないのでよくおしおき(ほっぺむにむに)されている。
 
のうりょく
ハッキング:どんな機械も一瞬で手籠にできるぞ!
アロナちゃんバリア:どんな攻撃も通さないすっごいバリアだぞ!


プラナ
和名:シッテムムラサキフウトウコロガサナイ
 
せつめい
タブレットに棲まうえりーと秘書その2。
いくら紫封筒を出そうとしてもアロナに「めっ!」され、よくおしおき(ほっぺむにむに)されている。

のうりょく
空間転移:対象を指定した座標に瞬間移動させることができるぞ!
制約解除:先生のおさいふを素材にすることで、つよつよな生徒をたくさんエクシーズ召喚できるぞ!
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