一晩中、病室で「うううああー!」と叫び続けた…37歳の酒飲みに「地獄の激痛」を与えた恐ろしい病気の名前
飲酒が体に与えるダメージは決して少なくない。酒の飲み過ぎで37歳の時に緊急入院したライター・たろちん氏の新刊『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』から、闘病記の一部を抜粋してお届けしよう――。(第1回/全2回) 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、たろちん『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』(太田出版)の一部を再編集したものです。 ■酒飲みは“うっすら不調”がデフォルト 酒飲みというのは基本的に常にちょっと体調が悪い。大体いつも頭が痛いとか胃がむかむかするとかお腹を下しているとか、そういううっすらとした不調を抱えて生きている。 このあたりは個人差も大いにあると思うのだけど、「耐えられないほどの不調ではない」というのがミソだ。 酒を飲みすぎた翌日、盛大な二日酔いになり「もう二度と酒を飲まない」と決意するのは過度な酒飲みでなくてもわりとあるあるだろう。 ただ、おしまいの酒飲みになってくると二日酔いの苦しみがいつまで続くのか、どの程度になれば「迎え酒」によって解決できるのか、といった塩梅がわかってくる。要するに「飲めるギリギリまで飲む」という行為の上達こそが、たまに深酒をしてしまうだけの人とおしまいの酒飲みの境界線であるように思う。 ちなみに問題飲酒者のスクリーニングテスト「AUDIT」で当時の飲酒量を数値化したところ、「25点」という数値が出た。このテストは「15点以上」でアルコール依存症の疑いがあるというテストらしい。 こう言うと人は自分のことを激ヤバアル中患者のように見るかもしれないが、決してそういうわけではない。仕事の期日はきっちり守るし、家事も率先してやっていた。朝から酒を飲んで暴れるとかもない。やるべきことをしっかり終わらせた上で、毎日だらだらと酒を飲み続けるのが好きだっただけだ。
■少々の不調は酒を飲めば気にならなくなる そういう意味で、自分は毎晩焼酎水割りを何合も飲みつつも、日々の生活や仕事はしっかりこなせる程度に元気に破綻していた。痛風など「酒飲みあるある」の病気は経験したものの、37歳まで特に大病を患うこともなく、健康に悪いことといえば酒とタバコと仕事くらいしかしていなかった。 それが急転直下で死のキワキワまで行ってしまうのだから人生というのはわからないものだ。なお、思想的には一番健康に悪いのは「仕事」だと思っている。 倒れる前日。その日は朝からちょっとだけお腹が痛かった。もちろん前夜も深酒をしていたので不思議なことではない。酒飲みとして体の不調はいつものことだ。 珍しかったのはお腹を下したときのゴロゴロする痛みではなく(酒飲みなので常にうっすら下してはいる)、お腹が張るような苦しさ、気持ち悪さがあることだった。その感覚自体はそれまでもたびたび経験したことがあったので、「また胃腸の調子が悪いのかな」と思ったくらいでまったく重く考えなかった。 なので昼におかゆを食べ、胃腸薬を飲み、仕事をして、夜はいつものように軽く芋焼酎の水割りを飲んだ。少々の不調なら酒を飲んでいるうちに気にならなくなるし、数日そうやってやり過ごせば治ってしまう。ほぼ毎日酒を飲むようになってから、もう10年くらいそうやって生きてきたのだ。その日も同じだろうと思った。 ■後からわかった「人生最後の1杯」 翌日は昼から食べ物を食べる取材の予定があった。しばらく水割りを飲んでいてもまだ腹部の違和感が消えない。逆に胃に物を入れたほうがいいような感じがして、部屋にあったスナックとアイスを少しつまみ、酒はいつもより軽めの2〜3杯程度にして深夜にベッドに入った(結果的にこれが人生で飲んだ最後の酒になった)。まあ朝にはおさまってるだろう、と思っていた。 数時間後、2022年10月26日の朝5時ごろ。お腹の痛みはおさまるどころか尋常じゃないレベルに悪化していた。 ベッドの中で海老のように丸くなる。少しでも楽な姿勢を求めるがそんなものはなかった。あまりの痛みに自分の口から「うううう」という声が無意識に漏れていることに気付く。今まで自分が経験したことのないタイプの痛みで、救急車が必要になることを直感した。 スマホを手に取り、別室でまだ起きていた妻に「めちゃくちゃお腹痛い……」とテキストチャットを送る。妻はすぐに救急車を呼んでくれた。このときはそこまで大ごとになると思っておらず、「救急車が来る前にシャワー浴びたほうがいいかな」とか思っていた。 暢気に聞こえるかもしれないが、結果的にはまだギリギリでも自分で動けたこのときに無理してでもシャワーを浴びておけばよかった。その後数カ月間、シャワーも浴びられない寝たきりになってしまったので。