〜〜〜注意〜〜〜
今回は時空未知様作、『極夜に囚われたセリカ』とのコラボ回となっております!!
今話は本編とはあまり関係のない、ifの話です。
また、時空未知様の方でもコラボ回最終話が上がっております
ありがたいありがたい……
side after 聖杯、又は山を登る船(5)
それでは本編をどうぞ
イズ二層。
これといって一層と違うものがあるわけでも無く、しかし敵は少し強くなっている、セリカにとっては面倒な場所だろう。
「これは……ああ、エレベーターね」
入ってすぐにあった謎のオブジェクトを見てそう呟いたセリカ。
何かの祭壇のようなそのオブジェの近くの地面を踏んで足を引くと、祭壇は音を立てて二階へと上がっていった。
「見るたび毎回思うけど、よくもこれに上昇機構を付けようって思ったものね」
「同感だ。意味のわからない構造物というのは
オーバーテクノロジーの塊なんだよな、作品を跨ぐごとに個性的なエレベーターが増えていくのは面白いが……
エレベーターには乗らず、セリカはズンズンと突き進んでいく。
「脇道を覗かずに進んでいくのは、一体どういうことなのかね?」
彼女はまるで最初から分かっているかのように、真っ直ぐにレバー部屋へのルートを進んでいるのだ。
俺のように固定聖杯の知識はないはずなのだが……
「……勘」
「勘か……」
所謂野生の勘というやつだろうか?
ただでさえセリカは獣人、その上に狩人として獣に近づいた存在、有り得ないとは言えないが……
聖杯探索で便利だろうなぁと羨ましくも思ったが、そういえば俺には啓蒙があるのを思い出した。
変なところで、獣性と神秘は似通うものだな……
ネズミ、サソリ、トゥメル人など、よく見る雑魚敵を始末しつつ、レバーに辿り着けば、いたのはまたも脳喰らい。
セリカが呆れたような目をしているが、イズの碑はデブの代わりに脳喰らいが配置されているようなものなのだ、よく見るのも仕方ないだろう。
もはや語るのも勿体無いほどさっくりと倒し、レバーを引けば、何処かで扉が開く。
「さっさと行こう」
「ああ」
本命はまだ先、ならば道中は早めでもいいだろうね。
「さて、では挑もうか」
「ええ」
セリカに続いてボス部屋の扉を潜る。
ボス部屋の中に入って“それ”を見たセリカは、思わず声を上げた。
「……大きくない?」
「ああ」
目の前に立ちはだかったのは、五メートルはあろうかという巨躯の、青色の巨人……
ぽわぽわわぽわ!
『星界からの使者』(大サイズ)であった。
こちらに走り寄ってきた星界からの使者が振り下ろした腕を、俺とセリカは左右に分かれて回避する。
セリカがいつのまにか持ち替えていた『千景』で足を切り裂くも、巨大な星界からの使者は他よりも圧倒的に頑丈な肉体であり、深い傷にはならない。
「……面倒」
セリカはカウンターで振り下ろされた使者の腕を避けると、一度距離を取る。
星界からの使者は攻撃自体は大振りだから、回避がうまいセリカなら当たることはないだろうな。
星界からの使者がセリカに気を取られている隙に、俺は瀉血の槌を使者の足へと突き刺した。
きょきょわわ!?!?
不思議な音を立てながら後退る星界からの使者。
俺はその脚に、さらに連続で瀉血の槌を叩きつけていく。
「セリカ、星界からの使者は例え大きくとも強靭が低い」
「わかった」
ぽ…ぽわわ……!?
俺が瀉血の槌を叩きつけて星界からの使者を壁際に寄せ、そこにセリカが千景で斬撃を加える。
そうして連撃を叩き込まれた星界からの使者は、
一度怯んでしまえばこちらのもの。
頭から触手を生やそうがなんだろうが、抵抗できない敵はただの獲物なのだ。
卑怯とは言うまいな、イズのボスよ……
「……思ったよりも弱いわね」
「追加儀式も特にしていない固定聖杯なら、例えイズでもこんなものさ」
エレベーターで下の階層へと降りていく俺たち。
カラカラと降りていくエレベーターの中で、俺はセリカに話しかけた。
「次でイズも終わりだが、慣れたかね?」
「墓所カビが多すぎて、あまり長くは居たくないわ」
「それは確かに」
降りかかってきた墓所カビを適度に落としているとはいえ、こびり着くのは防げない。
空気も、カビの影響か粘性を含んでいるような感覚で気持ち悪い。
イズは神秘性が多いから、セリカにとっても落ち着かないだろうな……彼女の中の獣性が抑圧されているはずだから、幾分か落ち着いている印象を受けるが。
「……ローランとかトゥメルはもう少し変わり映えもあったのに、ここは大して変わらないわね」
三層に入って見えたのは、一層と同じような部屋。
通路型大部屋はどこでも出てくるから、もう彼女も見飽きているのだろう。
「そうは言っても、聖杯の部屋の種類はトゥメルとイズで出尽くしてしまっているのだよ。それに、変わり映えがしないというのはあまり好ましくないのは確かだが、どう攻略すればいいのか分かるというのはいいものだぞ」
「……確かに、変に気を張らなくて済むかもしれないけど」
鉄球の転がってくる通路を抜け、二階層になっている部屋の梯子を登れば、そこには水盆があった。
「これは……水盆?」
「見るのは初めてか?」
「……ええ」
聖杯水盆と呼ばれるものであり、DLC武器や小物を買い揃えることのできるものだ。
いまいち狩人の夢の水盆と繋がっているのかもわからない、謎の水盆なんだよな……
「ここで本来は汎聖杯を買うのだが……君の場合は先輩が買っているだろう、気にしなくていい」
「……そう」
自分に関係ないならいいか、と言ったら感じで淡白に返事するセリカ。
使った輸血液や水銀弾を少々補充した後、レバー部屋を攻略して俺たちはボス部屋へと進むのだった。
「ここね、カオリの言ってた上位者がいるのは」
「ああ、そうだ。星の娘と呼ばれる存在がいる」
セリカには、この先にいる上位者のことは簡単にだけしか伝えていない。
俺が言ったのは、『イズ最下層に上位者がいる』ことと、『一目見に行かないか?』ということ、『医療教会が神として崇めている存在である』ということぐらいだな。
まぁ俺たち狩人にとって『一目見に行く』は『狩りに行こうぜ』と同義なのだが。
「開けるわよ」
「よろしい」
セリカがゆっくりと扉を開けば、そこには一体の異形がいた。
こちらに頭を下げるかのような姿勢のそれは、ゆっくりと頭を起こす。
背から生えた触腕をゆっくりと解し、堕天使のようにボロボロな一対の翼を開いてゆく。
その開かれた柘榴のような頭部にある、二つの小さな翡翠の目が、セリカと俺を捉えた。
触腕を開き、腕を左右に伸ばし、翼を広げ、頭をもたげたその姿は……まるで、五芒星のように見えた。
星の娘、エーブリエタース。
見捨てられた上位者である。
「来るぞ!」
「っ!」
エーブリエタースが動き出すと同時に、俺たちも二手に分かれていた。
協力者がいる時の戦い方は、片方が敵からの標的を請け負いもう片方が火力を出すというのが定石だ。
それは上位者相手でも例外ではない。
■■■■■■■■■■■■!!
咆哮したエーブリエタースが、セリカを触腕で薙ぎ払わんとする。
「はっ!」
勇気の前ステップ。
触腕を避け懐へと潜り込んだセリカは、手に持ったレイテルパラッシュで斬り込んだ。
「硬い……」
セリカに返ってきたのは、星界の使者と戦った時と同じかそれ以上の硬質な感触。
切る感覚は硬い肉のそれであり、効いているのかいないのかいまいちわからない、嫌な感触のものだった。
■■■■■■■■■!!
突進してきたエーブリエタースをセリカがどうにか回避するのと、突進後のエーブリエタースの側に駆け寄っていたカオリが瀉血の槌をエーブリエタースに突き立てるのは同時だった。
「ふんっ!」
ゴシャ!
■■■■■■■■■!!
瀉血の槌の棘が深く食い込み、痛みからか暴れ回るエーブリエタース。
まるで荒れ狂う風のような咆哮を上げながらカオリを叩き潰さんとその腕を振り下ろすが、カオリはすでに攻撃の範囲外へと出ていた。
「そこ!!」
カオリに目を向けていたエーブリエタースは、背後から近づいていたセリカに気が付かなかった。
セリカが全力でレイテルパラッシュを振り抜き、エーブリエタースの右触腕を破壊する。
■■■■■■■■■!?!?
「隙を見せたな」
怯んだエーブリエタースの左側にカオリも入り込み、左触腕へと瀉血の槌を叩き込んだ。
■■■■■■■!!!
両方の触腕を破壊され、体勢を崩すエーブリエタース。
「喰らって」
セリカはいつのまにかその頭部へと走り寄っており、そこへ目一杯の力を込めてレイテルパラッシュを突き刺した。
■■■■■■■■■■■■■!!!!!
一際大きな咆哮を発し、エーブリエタースは頭部を破壊され、地に伏せる。
そこへ、セリカの腕が突き刺さった。
「終わりね」
ゴシャリ、という音と共に、彼女の腕はエーブリエタースの頭部の内側を破壊し尽くして引き抜かれた。
「……ふぅ」
倒れ伏したエーブリエタースの前で一息をつくセリカ。
しかし、カオリが声を上げる。
「まだ終わっていない!」
「っ!!」
セリカが離れると同時に、エーブリエタースが大量の血を吹き出しながら起き上がっていく。
その血は灰色であり、眷属に見られる白色の血液と通常の赤い血液が混じっているようにも見えた。
やがて起き上がったエーブリエタースは、その身を震わせ……
コォォン
その周囲の空間を歪ませるほどの力場を形成した。
「あれは……?」
「超音波によるバリアだ。空気が震えるせいで空間が歪んでいるように見えるが、近づくのに支障はない。しかし、高波数の殺人的な超音波は人間の肉体を壊す」
「……」
要するに、近づけばダメージは避けられない簡易的な結界のようなもの。
かなり面倒だと思うセリカだが、エーブリエタースを狩らない選択肢はない。
形態変化したエーブリエタースが翼を広げ、腕を持ち上げる。
何かに祈るような仕草をした瞬間、エーブリエタースの頭上に神秘が集まっていく。
「彼方への呼びかけ……!」
エーブリエタースの交信は、小宇宙への窓を開き、大量の光弾を生み出した。
「避けろよ」
「言われなくても」
次々と飛んでくる光弾を避け、セリカとカオリはエーブリエタースに波状攻撃を仕掛けていく。
じわじわと超音波に身体を蝕まれ顔を顰めるセリカだが、その攻め手が鈍るわけがなかった。
近づかれたエーブリエタースは頭突きを行うがそれは悪手、弱点部位を大きく晒すだけである。
セリカはレイテルパラッシュを、カオリは瀉血の槌を構え──
「はぁっ!」
「ふっ!!」
──その頭部へと、渾身の一撃を見舞った。
■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!
それは、頭部を完全に破壊し……
エーブリエタースを、絶命させた。
「はぁ……」
改めて息をつくセリカ。
緊張が解けたようだが、あまり疲れているようには見えない。
最後のボスを倒したことで鐘の共鳴が薄れているのか、徐々に俺の身体がこの世界で保てなくなってくる。
上位者の権能を使い一時的に繋ぎ止めているが、気を抜けば直ぐ帰るだろうな。
俺は最後の手土産を貰わんと言わんばかりに、セリカに口を開いた。
「セリカ、イズはどうだったかね?」
「……他と大分毛色が違う聖杯ダンジョンだったわね。得体のしれない上位者の気配に直に触れているようであまり好きではないわ」
やはり獣性の大きいセリカにとって、神秘が強いイズの地は嫌な感覚だったらしい。
イズの地は宇宙に触れている……そして宇宙とは星界のことだ。
星界というのは眷属がいる、つまり一種の上位者的存在かそれに近しい力場なのだろう。
そういったものも、彼女が感じたことの一因かも知れないな。
「それに……あの体型を星の娘とはよく言ったものだけど、生憎美しいとは思えないわ」
「ふふふ、そんなものさ。彼女をかわいいという狩人たちは
「そう……やっぱり啓蒙って碌でもないわね」
確かに。
脳に巣食うナメクジたちの齎す啓示がまともなわけないからな……
……なんで現実世界のプレイヤーの皆さんは啓蒙得てるとしか思えないアイデアやプレイスタイルの数々を生み出すのだ?
人間、末恐ろしいな……
「じゃあさようなら、カオリ」
「ああ、セリカ。君の『先輩』や『同輩』たちにもよろしく頼むよ」
「ええ」
俺は狩人の一礼を行い、維持していた肉体を解放する。
共鳴する鐘の音は徐々に二つへと変わっていき。
少しずつ身体の結合が解れ、靄へと変わり、露と消える。
やがて霧散する視界の中、セリカは確かに俺に対して礼を返していた。
前回はお騒がせしてしまい誠に申し訳ございませんでした……
作者としては本編に絡まなくても問題ないように、尚且つ本編らしさを混ぜ込んで書いたつもりだったのですが、本編と直通になってしまうような書き方になってしまい、注意書きも疎かに……
再発防止に努めます。
読者の皆様のアドバイスや感想、非常に勉強させていただいております……
なにはともあれ、これにて聖杯にてあったかも知れない一幕、終了です。
コラボありがとうございました!
友人(?)同士の何気ない戯れならこんな気楽な感じだろうな、と考えて書きました。
次回、セイア編第一話。お楽しみに!
……読者よ、君はよくやった。
長い夜は、もう終わる
さあ、私の介錯に身を任せたまえ
君は死に、そして夢を忘れ、朝に目覚める
……解放されるのだ
この忌々しい、作者の悪夢から……
なるほど、君も何かにのまれたか。
高評価か、感想か、それともここすきか?
まあ、どれでもよい
そういう者を始末するのも、作者の役目というものだ……
……ゲールマンの小説を知るがいい
オドンと月の魔物の扱い
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『姿なきオドン』と『月の魔物』は別存在
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『姿なきオドン』と『月の魔物』は同一存在