連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.60『新幹線に乗りながら書いてみたかった(下)』
連載•小説
2025/11/09
新幹線で原稿を書いて売れっ子気分になりたい!
ついに走る書斎がスタートした。きっと、春樹も圭吾も真理子もここから名作が生まれたに違いない。いや、真理子レベルになると自家用飛行機の、飛ぶ書斎に違いない。そんな妄想をしていると、きつい香水の臭いをさせた男が俺の前の席に埃が立つほどの勢いで座った。鼻が曲がりそうになった。こんな時、売れっ子たちはどんな対処をするのだろう?西村賢太が生きてたら「テメェ!臭いぞ」とぶん殴りそうだ。だが、俺は西村賢太ではない。その内慣れるだろうと気持ちを切り替え、無の心でパソコンに向かった。と、その瞬間、ぐにゃり。突然、俺の手が液晶画面とキーボードの間に挟まれた。えっ?
なんと男が思い切り背もたれを倒してきた。もう限界だ!俺は男の後頭部に蹴りを入れた。意識を失った男は全身から血のように香水が吹き出した。
そんなアイデアだけ浮かんだ。
俺は書くのを諦め、あとは、眠る書斎になった。
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