馬車の下
「ん?」
ヒョコッと今まで見なかった活性化地で見る魔物達が姿を現した様でした。
再度実験場の所へ行くと活性化地のボスが出現する時にある空間の歪みの球体が浮かんでおります。
「そうだ! 波!」
しばらくぼんやりと解放されたこの大地を眺めていると、お義父さんが言いました。
「……どうやら終わったみたいですよ」
確認すると波が終わっているようですぞ。
あっちもうまくやった、という事ですかな?
「つまり村の方も無事だったって事だよね?」
「みたいだな。俺達が思っていた以上にアイツ等は強くなっていたって事だろう」
「そうですね」
当然ですぞ。
なんせフィロリアル様達もいるのですからな!
「それにしても人為的に波を起こせるとはな……実は波の到来を早めるとかしていたのかもな」
「とりあえず、経験値目的での調査でしたが、得られる物はそれよりも多かったという事ですね」
「そうだね。仮にループしたとしても、ここを潰せば良い事の方が多いんだし」
虹が浮かぶ砂漠の廃都を背景に俺達はそれぞれ勝利の美酒に酔いしれましたぞ。
「さあ、これから調査をしましょう。悪魔達が集めた宝はこれだけじゃないでしょうしね」
「そうだね」
お義父さん達がシステム経験値が蓋となっていた場所の下を指差します。
するとそこには階段があって、その下にはなんと宝物庫への道があったのですぞ。
そりゃあもう、収めきれない程の様々な武具が収められていました。
鎧から何までアクセサリーなどもある様ですぞ。
言ってはなんですが反則級の効果のあるアクセサリーまであるとか。
問題は呪いとかが施されているので解呪するのが先決だそうですが、それも直ぐに出来るでしょうな。
「モイラが見つかりましたー!」
樹がホクホク顔で宝物庫を漁っていたのが印象的ですな。
まあ、それほどの重要文化財的な武具が大量に見つかったとか何とか。
「お宝なのー! ガエリオンの物にするなのー!」
ライバルに至っては宝の山を見て欲望を滾らせておりました。
ああはなりたくないですな。
「やー!」
「コウもピカピカー欲しい」
「綺麗ですわ! 元康様! ユキ綺麗ですわよね?」
「黄金はクロの趣味じゃないー」
これはフィロリアル様達の宝ですぞ!
ドラゴンになど一つもやりませんぞー!
「な、なんだかなー」
「宝は人もドラゴンもフィロリアルも等しく誘惑するという事だな」
錬が何やら締めておりますぞ。
「とにかく、やりました! なおふみ様! ラフタリアちゃん!」
お姉さんの友人がお義父さんの盾の上で勝利の踊りをしております。
お姉さんもお姉さんのお姉さんと手を繋ぎ、晴れやかな笑みを浮かべております。
「これで世界が少しでも良くなったのかな?」
「そうね」
「うん。じゃあ一旦帰って報告をしようか。これからこの場所は忙しくなるだろうし」
というわけで、やはりこのプラド砂漠という活性化地は知られていなかった地だった様で、経験値が大量に手に入る場所となりました。
それどころか、帰った俺達が知る事になった事実として、各地の活性化地が再活性化し、しかも世界中の経験値が倍化したとの話。
更に、波の所為で荒廃してしまった土地にも緑が戻り、食料事情も俺達が関わることなく解決したそうですぞ。
村の方もほとんど完勝に近かった様ですな。
キール達は何度か波を経験していたので、その経験を生かして割とスムーズに波と交戦したそうですぞ。
普段の波と違い、悪魔などが大量に出現したそうですが、同時に杖の勇者であるクズも出現し、悪魔達を屠って行ったみたいですな。
そうして間を置く事もなく婚約者やエクレアが駆けつけて、後は作業の様に倒したのだとか。
そんなこんなで俺達はプラド砂漠へ大々的に新たな拠点として各国から人員を連れて開拓をさせる事になりました。
あ、お姉さんの村の様に勇者が主導でやる訳ではありませんぞ。
経験値目的の冒険者を主体とした宿場町が作られるそうですぞ。
今では少しの経験であっという間にLvが上昇する状態に世界が変わってきております。
世間での勇者の評判もうなぎ上りとなりました。
失われた武具の発見、新たな活性化地の発見と世界単位での経験値の倍化ですからな。
勇者の偉業が世に轟く結果となったのでしょう。
ちなみに後にお義父さんやお姉さんから聞く事になったのですが、システム経験値が倒されたお陰で転生者がこの世界に安易に入り込めなくなったそうですぞ。
変に穴があったそうです。
どうやらシステム経験値がその辺りの補助もしていたとか何とか。
そんな感じに日は過ぎて行きました。
「イワタニーリファナが見つからないー」
プラド砂漠でフィロリアル様達を育成しているある日の事ですぞ。
育てたフィロリアル様達とお姉さん達がかくれんぼを始めておりました。
俺はみんなの服を作っていました。
どうやらコウが鬼役でみんなを探しているそうですぞ。
ああ、ちなみに事件解決後には村の連中も同行している時がありますぞ。
長い長い活性化の影響で行き来している状態ですからな。
「リファナちゃんが見つからないの?」
「うんー……他の子はみんな見つかったけどリファナだけ見つからないー」
お義父さんはお姉さんやキール達に目を向けます。
「フィロリアル達は小さく化けてもピイピイ鳴くから見つけやすいし、人の方は小さくなれないから見つけやすいけど、リファナはなー」
キールが困った様に返事しますぞ。
そうですな。小さなイタチになりますからな。
「ラフタリアちゃんも?」
「はい……リファナちゃん、強くなってからますます運動神経が良くなってるみたいで、隠れるのも上手なんです」
「まあ……コウと毎日元気よく遊んでるもんね。足が速いのが自慢だったラフタリアちゃんよりも足が速くなってるみたいだし」
「はい……ナオフミ様、見つけられませんか?」
「降参とか呼べば出てくるんじゃないの?」
「そういう話はしてないんで……出てくるのを待つしかないんです」
「なんだかなー」
「兄ちゃんなら見つけられるんじゃないかと思ってさ!」
お義父さんが困った様に答えますぞ。
当然ですな。
お義父さんなら一瞬で見つけますぞ。
「イタチですから匂いで追えないのですかな?」
「リファナちゃんはその辺り、かなり気を使う子だからね。狩りとか凄く上手でしょ。ぶっちゃけコウはねー……」
「んー?」
コウが首を傾げておりますぞ。
「まあいいや、ちょっと探してみるよ。元康くんは……フィロリアル達の服作り中か」
「ですぞ」
チクチクとフィロリアル様のニーズに合わせて服を作っておりますぞ。
そんなこんなでお義父さんを入れて捜索を始めておりました。
範囲は決めていたそうですが、何分小さくなれるお姉さんの友人ですからな。
最悪、コウの羽毛の中に隠れているとかもありえなく無いですぞ。
なんて思っているとお義父さんが馬車の下を覗きこんでおります。
「あ」
お義父さんがポツリと呟くとお姉さんの友人がイタチ姿で馬車の下から出てきましたぞ。
「あー、リファナやっと出てきたー!」
「見つかっちゃいました。でもこれで私が一番ですよね」
「もちろん。イワタニに頼った所でコウの負けー」
「兄ちゃん、よくわかったな!」
「なんか小さく声が聞こえた気がしたからさ……器用に馬車の下に引っ付いて隠れてたね」
「がんばりました!」
と、お姉さんの友人が両手を広げてポーズを取っておりますぞ。
「しかし……休憩は良いけど……」
お義父さんは砂漠内を縦横無尽に走り回って楽しむフィロリアル様達を見つめます。
もはや砂漠と呼ぶほどの暑さは日中でもありませんぞ。
バイオプラントでも植えたらきっとすぐにでも緑あふれる土地になるのではないですかな?
というか、少しずつ緑地が浸食して来ている様ですぞ。
「フィーロって子が見つからないねー」
「ですぞ……」
錬も樹も俺に協力してくれて、完全に環境は整いました。
七星武器も着実に持ち手を選び始めている様ですな。
ちなみに今回の事件に参加して多少は力になった影響か、主治医が鞭に選ばれましたぞ。
槌はサクラちゃんが手に入れました。
投擲具は修業を終えたストーカー豚が手に入れた様でしたな。
真面目に取り組んでいたら手に入ったそうですぞ。
ツメの方は候補者が多くて迷っているのではないかという話でしたな。
何でもお姉さんの友人やコウ、後に回収したパンダ等を連れて行くと淡く光っているとか。
手に入らないのでツメの前で候補者を集め、トーナメントでもして強さを見せれば手に入るのではないかと分析されているとか。
近々大会が開かれる予定ですぞ。
同様に斧とかも似た様な症状を見せているとかで、世界は良い方向に進んで何よりですぞ。
まあ、そんな感じで戦力が着実に整いつつありますな。
霊亀の方もクズのお陰か良く分かりませんが封印が解ける気配も無いですぞ。
予定では霊亀の封印が解ける日に勇者が揃って霊亀の封印された国の近くで待機しているとライバルが遠くを見つめる様な眼でおりました。
「なおふみ、槍の勇者……」
「どうしたのガエリオンちゃん?」
「なんですかな?」
ライバルが何やら真面目そうな口調で言うので少々気になりましたぞ。
まあ、凄くどうでもいい話をきっとするのでしょうがな。
「なおふみ達は世界の為に今を壊さないと行けないのならやるなの? 選ばれた者達だけを生かして他を犠牲にする事に対してどう思うなの?」
「え? それって四霊の事かな? うーん……」
「そんな事よりも俺はフィーロたんが重要ですぞ」
どんな行き違いがあっても絶対に再会できるように、俺はフィロリアル様を集める事をやめる気はありませんぞ。
「槍の勇者は相変わらずなの。なおふみは?」
「うーん……難しいけど、そうならない道を選びたいかな」
「……わかったなの。それでこそなおふみなの。だけど……それじゃあ……」
そう言ってライバルはずっと霊亀の国の方を見つめておりましたぞ。
何なのですかな?
ちなみに、封印が解ける事はありませんでしたな。
何か理由があるのか、無いからなのか分かりませんがな。
どちらにしてもいずれ解けはしますが、今はクズや女王、豚王の外交で封印された国に事情を説明している所なのですな。
それから数日経過した頃の事ですぞ。
開拓が進んだ村で勇者が揃って休暇中の事ですぞ。
勇者を含め、みんなで集まっているとお義父さんが何やら楽しげな表情を浮かべてやってきました。
「みんなみんな! なんか面白い生き物を見つけたんだ!」
そう言ってポンと、机の上にお義父さんが連れてきた生き物を乗せますぞ。
タヌキのようなアライグマのような、それでありながら何やらコミカルな側面のある不思議な魔物ですぞ。
むむ? この生物、どこかで見た事がありますな。
「ら、らふぅ……」
その生物は言わされているかの様な態度で二足歩行で立ち上がり、右前足を上げました。
口調が遠慮気味な様な気がするのは、俺の気の所為ですかな?