性犯罪や虐待…被害にあった子どもの「司法面接」 法改正から2年、浮上した課題とは 識者に聞く
●検察官の子どもへの司法面接が誘導的になりがちな理由
──どんな問題があるのでしょうか。 司法面接では、子どもから自発的に経験したことを話してもらわないといけないので、面接者が子どもより先に事件の内容を話してはいけません。たとえば、子どもに対して「お父さんに殴られたそうだけど、そのことを話してもらえますか?」という質問をしてはダメで、最初は「今日はなぜ、ここに来たかわかりますか?」という聞き方をしないといけません。 司法面接を担当する検察官は、ある程度専門的なトレーニングを受けているようで、面接の映像を見ていると、最初のうちはそういう手順をちゃんと踏んでいます。ただ、検察官が面接をすると、起訴に向けた情報収集を意識してしまうのか、面接の途中から子どもへの質問などが誘導的になることが多いのです。 たとえば、子どもから性被害の聴取をする際に使うアナトミカルドールという人形は、子どもの記憶を誘導する危険があるので、限定的な場面でしか使ってはいけません。しかし検察官の中には、司法面接中に子どもがうまく話せないでいると、そういう配慮をせず、この人形をすぐに使ってしまう人もいます。 刑訴法321条の3では、子どもらへの聴取の録音・録画映像が裁判で証拠として使えるのは、適切な方法で聴取が行われた場合だという趣旨のことが書かれてはいます。しかし、どういう方法で聴取すればよいかは具体的に書かれていません。面接を行う検察官には、聴取の仕方をもっとちゃんと研修してもらうなどの措置をとらないといけないと思います。
●近しい大人が言うことを自分の記憶や体験より信頼しがち
──やはり子どもは大人に比べ、記憶や供述が誘導されやすいのでしょうか。 就学前の子どもは「客観的事実」という概念を十分には理解していないという研究があります。その概念を持つのは、通常は6歳くらいになってからです。体験した出来事を自分の思い出として保持する記憶を「自伝的記憶」というのですが、小学校を卒業するくらいの年齢でようやくこれが完成するのです。 そして子どもは大人に守られて生きているため、親などの近しい大人が言うことを自分の記憶や体験より信頼しがちです。たとえば、子どもは聴取者に「昨日はどこに行ったの?」と質問され、記憶がない場合でも、横にいる親が「プールに行ったでしょう」と言えば、すぐに「うん、プールに行った」と答えてしまうのです。 ──司法面接で録取された子どもたちの供述には、内容的におかしいものもあるのでしょうか。 「この被疑者は冤罪ではないか」と思うケースもあれば、「この被疑者は冤罪ではないにしても、子どもが供述する被害内容は真実ではないのではないか」と思うケースもあります。 たとえば、「教室でクラスのみんながいる時に、先生にふとももを触られました」という子どもの供述を見た時は、本当にそんなことをするのだろうかと思いました。 イギリスでは、「聴取を行う捜査官」は専門的な研修を受ける必要があり、「現場で犯人を追う捜査官」とは区別されています。日本では、被疑者を起訴する検察官が自ら聴取も行うので、子どもの供述をコントロールしてしまいがちなのだと思います。日本の捜査機関も聴取については、専門家を置く必要があると思います。