いじめ受け難聴や適応障害に 同じ京都市立小で2件の重大事態認定
同じ京都市立小に通う同学年の男子児童2人が同級生に暴力を受け、難聴になったり、けがをしたりした疑いがあるとして、同市教育委員会がいじめ防止対策推進法(いじめ防止法)の「重大事態」に認定したことがわかった。認定された2件の被害者となった男子児童2人は現在、別の学校に転校。市立学校のいじめ重大事態の調査は、これまで学校や市教委が行ってきたが、今回は初めて、弁護士や大学教授などで構成される市の「京都市いじめ問題調査委員会」が、調査する方針だ。
1件目のいじめ重大事態の認定は今年3月。
市教委によると、男子児童(当時4年生)が昨年9月から、複数の同級生に暴言を浴びせられたり、物を投げつけられたりした。11月には、そのうちの一人が男児の背後から首を絞め、頭を数発殴った疑いがある。その後、右耳が聞こえづらいと男児が訴えたため、病院を受診すると、外傷性の感音難聴と診断された。男児はその後、適応障害とも診断され、翌月から不登校になった。現在は、転校し、別の学校に通う。
また今年8月には、同じ学校の同学年で起きた別のいじめの疑いが、2件目の重大事態と認定された。
市教委によると、男子児童(当時4年生)は昨年11月から、1件目に殴ったとされる一人とは別の同級生から何度か殴られ、5年生になった今年7月にも背中を殴られた疑いがある。男児は、頸椎(けいつい)捻挫、背部打撲傷、適応障害と診断された。この男児もその後、転校した。
いずれも保護者側から、市教委に対していじめ重大事態の申し立てがあった。市教委は、児童が心身に重大な被害を受けたり、相当の期間学校を欠席することを余儀なくされたりしたいじめ重大事態に認定した。
1件目の保護者は「息子は転校を余儀なくされ、今も後遺症に苦しんでいる。いじめの初期の段階から学校や市教委には相談し、対応をお願いしていたが、十分な対応や対策をしてもらえなかったことが、事が大きくなった原因だと思っている」。2件目の保護者は「一つ一つのいじめに学校がきちんと対策をしてくれていたら、防げたのではないかという思いがある」と話す。保護者2人とも「他の児童が、安心して学校に通えるためにも、今回の2件の事実確認だけではなく、学校や教育委員会の対応も検証して、再発防止の対策を講じてもらいたい」と希望する。
市立学校では、いじめ防止法が施行された2013年から、昨年度までに40件の重大事態が発生。これまでは、学校や市教委がいじめ調査に当たってきた。しかし、今回は調査の難しさや、保護者が第三者による調査を希望するなどしたため、京都市いじめの防止等に関する条例に基づいて2014年に設置された常設の「京都市いじめ問題調査委員会」で調査するという。
委員は、弁護士や大学教授5人で任期は2年。委員会はいじめ重大事態に関して、市教委の諮問に応じ、調査、審議する。
一方、保護者は委員の中に「学校や教育委員会に近い委員がいることを懸念している」として陳情を市議会に提出。調査委員会の独立性、中立性の確保を求めており、市教委と保護者との協議が続いている。市教委生徒指導課は「同じ学校で重大事態が続いたことや、学校や教育委員会に不信感を抱く事態になってしまったことを重く受け止めている。我々の対応も含め調査の対象と認識している」としている。
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