「社長の最大の仕事は、優秀な人を採用すること」。この言葉は正しい。しかし、現実として優秀な人材が自然と集まるベンチャーなど存在しない。無名で、資金も制度も整っていない会社に、能力も実績もある人が自発的に集まってくることはまずない。
にもかかわらず、多くの社長が口をそろえて言う。「優秀な人がいない」「採用が難しい」と。だが、よく考えてほしい。もしあなた自身が優秀な人材だったとして、今のあなたの会社を選ぶだろうか?この問いに即答で「YES」と言える経営者は、実はほとんどいない。
採用は「欲しい人を探す行為」ではなく、「選ばれる会社をつくる行為」であり、優秀な人材は、給与や肩書きよりも、どんな人と、どんな使命で働くかを見ている。つまり採用とは、条件交渉ではなく理念と覚悟の勝負。会社の未来にリアリティを持たせ、経営者自身がこの人と働きたいと思われる存在になる必要がある。
「来てほしい」と願う前に、「この会社で働く価値を語れるか」、「採りたい人材」を探す前に、「採りたい人が惹かれる環境を整えているか」、この順番を間違える限り、採用は永遠に難しいまま。
優秀な人材は、熱量と誠実さのあるリーダーのもとに集まる。夢を語るだけでは足りない。その夢を実現できそうだと相手に感じさせるほどの、構想力と実行力が必要。
採用とは、鏡。「なぜ優秀な人が来ないのか」と嘆く前に、「優秀な人が来たくなる自分か?」と自問できる経営者だけが、本当に優秀な人を採用できる。