side タンザナイト
ウィリスを連行した後、今後について皆で話し合うことにした....
「みんな、本当にありがとう.....ウィリスさんがどうなるかわからないけど、もうこのリゾートに嫌な噂が付きまとうことは無くなるはずよ」
「コウテイもきちんと修理した。皆さん、本当にありがとう。一つ残念だとすれば、今夜予定してたミュージックフェスだな.....」
「うん....バンドもスタッフも逃げちゃったし....残念だけど、さすがに中止するしかないね.....」
「でも柚葉、貴方....楽しみにしてたのに....」
「平気だよ。こうやってみんなとひと夏の大冒険ができて、一生ものの思い出になったから」
と、柚葉がそう言う....待てよ?バンドを今すぐ呼べば、まだ間に合うか?
『....なぁ、みんな。知り合いに出演をお願いできないか、俺の方で聞いてみようと思っている。あくまで怪啖屋が仕切る方針でずっと遠慮していたが....あのアストラ・ヤオを呼ぼうと思ってるが...いいか?』
「あ....アストラって、あのアストラ!?アンクレットとブレスレット以外は全身シンメトリーの化身と言ってもいい、あのアストラ・ヤオ!?」
それは褒めてるの...?どんだけシンメトリーに寄せてるんだよ...
「貴方、知り合いなの!?私、彼女のことはとっても大好きなのだわ!」
「...一応聞くけど、左右対称だったから好きになったわけじゃないよね?」
「柚葉ったら...もちろん、彼女の音楽にほれ込んだに決まってるじゃない。私だって、クラシックしか聴かないわけじゃないのだわ!」
「ごめんごめん。でも、タンザナイトくんがアストラさんを呼べるなら....ミュージックフェスにはまだ逆転の余地があるかも。今すぐ連絡ってできる?」
「そうだ、タンザナイト。このリゾートにはもう何人か友達がいるし....折角だから、アストラさん以外もみんな誘っちゃわない?」
『それはいいアイデアだな。それなら早速、みんなをビデオ会議に招待しよう』
そう言い、俺はノックノックの友達リストから、ビデオ会議を始めた...ほどなく、数名の友人が通話に応じてくれた。
「タンザナイト?どうしたの?私はいまCMの撮影が終わって、次の仕事に向っているところよ」
「タンザナイトか、すまない。私はちょうど今、『報告会を含む、ありとあらゆる要請を却下する修行』を始めたばかりだ」
「雅ったら、却下したいのは報告会だけでしょうに。私はつい先ほど業務を終えたところなんです。タンザナイトくんは....ひょっとしてバカンスですか?」
「なによ、あんたから急にビデオ通話なんて何事かと思ったら....知ってる顔ばっかじゃない。あたしたちなら今....げ、治安官!」
『みんな。俺とアキラとリンは今ファンタジィ・リゾートにいるんだ。今夜、ビーチでミュージックフェスを開く予定なんだけど、みんなにも来てほしいと思ってね....それとアストラ....実は折り入ってお願いが.....』
「フェスで歌ってほしいんでしょ?もちろん、今すぐに行くわ!」
『ええっ?まだ何も言ってないのに....というか、次の仕事があるって言っていたが....』
「ふふっ....リゾートからの生中継、見てたわよ。貴方たち本当にかっこよかったわ、とくにあの『蒼騎士 ブレイバー』って子!私もいつか一緒にやらせてよね?....それに、どうせ次の仕事はTOPSのお偉いさんたち相手だし....すっぽかしちゃってもいいわよね、イヴ?」
あー...あの戦いを見ていたのか...なんか恥ずかしいな....
「む...私もあの中継を見ていた。なら、修行はここまでだ。柳達も連れて馳せ参じるとしよう....それに、『蒼騎士 ブレイバー』....ぜひとも対峙してみたいな」
やめてください!リゾートがぁぁぁリゾートそのものがぁぁぁぁ!
「ふっふーん、あんたがあたしたちを忘れるワケないと思ってたけど....奇遇ね!邪兎屋も中継を見て、そっちにむかってるとこよ!いちおう確認だけど、当然リゾートのあれこれはタダよね?少なくともお友達価格くらいにはできるでしょ?」
お前....がめついなニコ....
「中継自体は見てはいませんが....先ほど処理した案件がそちらのリゾートに関わるものでした。昨夜スロノス区で騒ぎを起こしたというならず者が移送されてきたので、取り調べをしていたんです。私では力不足だったので、ジェーンが引き継いでくれたところ、スリーゲートのウィリスと結託していたと自白したようです。彼の獄中生活は長いものになるでしょうね」
「私は青衣先輩たちとそちらに向おうかと、たまには休暇も必要ですから。....タンザナイトくん、今回の事件はお見事でした」
『おう、みんなありがとう。それじゃあ今夜、リゾートで待ってるよ』
その後、リゾートでの待ち合わせ時間を決めて、ビデオ会議を終わろうとした時、柚葉がそっと近づいてきた....
「ああっ、お願いまだ切らないで!アストラさんとちょっとお話させてほしいの」
『別にいいが...何かあるのか?』
柚葉は不敵な笑みを浮かべてスマホを手を取ると、画面の向こうのアストラと何やら小声でやり取りしている。それからスピーカーモードに切り替え、画面を今にも中継を終えようとしているテレビ局のカメラにむけた―――
「突然だけどみんな、アストラ・ヤオから大事なお知らせをするわ。今夜、ファンタジィ・リゾートで開催するミュージックフェスに、出演させてもらうことになったの。私の歌声で、みんなの夏に魔法をかけてあげる。もしビビッときたにら、ぜひファンタジィ・リゾートに来て。私と一緒に、最高の夏にしましょう!」
『咄嗟にこんな宣伝を仕掛けるなんて....天才じゃったか....』
これなら、沢山のお客さんを呼び込めることになるぞ....!
「あれだけのメディア、普通に集めて宣伝したら....むむむ、ちょっとやそっとの予算じゃきかないのだわ.....」
「えへへ、ウィリスも夢に思わなかったんじゃない?柚葉たちを追い詰めようとして呼んだのに、それがとてつもない助っ人になっちゃうなんて。これで、ミュージックフェスの注目度も爆上がり間違いなし!どうアリス?怪啖屋に入って初めての夏....楽しんでくれてる?」
「へ?わ、私?...なんて言えばいいかしら....全然思い通りにいかないし、何もかも滅茶苦茶で、驚かされてばっかり....もう、こんなことになるなんて思ってもみなかったのだわ!....でも私、この夏がとっても好き。たぶん物心ついてから、いちばん楽しい夏なのだわ!」
アリスは満面な笑顔でそう答えるのだった....ミュージックフェスはもう少し!頑張ろう!!
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夕日が沈む頃、フェスのゲストと知り合いのみんなが、続々とリゾートに到着した。
....アレは、イヴリンか....話しかけてみよう。
『イヴリン、来てたのか』
「タンザナイトか。お嬢様はつい先日、しばらく会っていないと言っていたのだが....まさか今日また会えるとはな」
『これも縁かもしれないな....』
「ああ。お嬢様と一緒にライブ配信で、君達とスリーゲートのマネージャーとの対決を全て見ていた。冷静沈着で、論理的な詰め方だったな、そしてあの戦い....よくやった。」
わぁ、イヴリンに褒められた!なんか嬉しい。
『おう、ありがとう、イヴリン!』
「事実を述べてるだけだ。私もスリーゲートと関わりがあったが、中間管理職には彼らのように利益に目がくらんで出世に執着する連中が多くてな...奴が失脚したと聞いて、私も少しスッキリしたというわけだ。まぁ、断ったほうの事務所は怒り狂うだろうが....お嬢様がこちらで出演を望むなら、私も全力でサポートするだけだ」
そっちの方は結構大変だな....
「それに....暑い真夏には、友人と会って休息をとることも必要だな....タンザナイト、会えて嬉しい。忘れられない夏の夜を共に過ごそう」
『ああ、そうだなイヴリン。一緒に暑い夏を吹っ飛ばそう!....ん?』
と、会話をしていると、何やらアストラと天使の羽が付いた少女が話していた...誰だろう?
そう思った俺は、イヴリンと別れ、アストラの所へ足を運んだ。
「あっ、タンザナイト、やっと会えたわね!見て、前に見せたバカンス用の服に着替えてきたの。どう?この間で舞台に立つと、すっごく夏らしい感じがするでしょ?」
『おお...凄い似合ってるよ』
アストラの衣装はいつもの赤白の服じゃなく、黒をベースに金色の装飾があってかなり上品さが出てる感じがした....
「ふふ....そうそう、今夜歌う予定の曲は、前に貴方に聞かせた曲なのよ!楽しみにしててね!」
『へー....そうか、楽しみにしてるよ。――――ところで』
「....」
『....そこでモジモジしてる少女は?』
なんかランドセルみたいなもの背負ってるし、小学生....にしては身長が大きいな。中学生ぐらいか?
「あ、そうだわ!紹介するのを忘れていたわね。最近新曲を考えてて、さっきステージを見学してた時も、頭の中に浮かんだメロディを口ずさんでたんだけど....通りがかったこの子が即興で続きをハミングしてくれたの!それもすっごく上手!だから、お話してみたくなっちゃって」
「そ、そんなん....ふと聞こえてきたから、テキトーに口ずさんだやつやし...」
...うん、素人でも分かるぐらいガチガチに緊張しているな....
「ううん。最高に素敵なメロディだったわ!あなたも音楽をやってるの?お名前ほを聞いてもいいかしら!」
「う...うち、いま、バババ、バンドやってて...妄想エンシェウ、って...あう、嚙んでもた...!」
「ふふっ。そんなに緊張しないで!ねぇ、ステージが始まったら最前列に来て頂戴。いっしょに盛り上げましょ!できたら、貴方のノックノックも知りたいわ!」
「ぜ、ぜひ...!それならこれっ、うち個人のやつと、バンドのノックノックアカウントがどっちも載ってるんで!それと、それと...サイン、もらってもええですかっ!」
うわぁ!急に饒舌になるなよ!
「もちろん大丈夫よ!ふふ、これで私たち友達ね。天才作曲家ちゃん!じゃあタンザナイト、始まったら彼女を最前列まで案内してあげて頂戴!私とイヴはそろそろ準備に行くから、また後でね!」
そう言い、アストラはイヴと一緒に準備しに行った....そうだ、他の皆が着いているかもしれないし、会ってみようかな。
そう思った俺は、颯爽と足を動かし、このリゾートに来てる友達に会いに行くのだった。