side タンザナイト
リゾートのことについて聞くことになった俺たちは、アリスと柚葉で役割分担を決めて、アリスはヘレンと、柚葉はミーアと話をすることに。
....俺もそれぞれのところに行って状況を確認してみよう....テレーゼに直接聞いてみるのもいいかもしれない。あの人はリゾートのことなら彼女が一番詳しいはずだから...そう思い、俺はテレーゼの所へ向かっていった。
「タンザナイト、来てくれたのね....ごめんね、さっきまでずっとクレーム対応をしてて....ちょっと元気ないかもだけど....気にしないで....」
「お嬢さん...休憩してください。今のところ、リゾートに残っているお客様は、アトラクションの割引で対応できております。このまま無理をし続けたら、お体がもたないですよ。タンザナイトさんがこっちに来たというということは、きっと何か理由があるんだろう?僕たちにできることがあれば、遠慮せずに言ってくれ」
『このリゾートの真実を知るために教えてほしいんだ』
「なるほど....それなら遠慮しなくても、できる限り答えるから聞いてくれ」
と、エーゲがばっちこいと構えていたので、俺が疑問に思ったことを言う。
『まず、ウィリスの借金についてだが....』
「ウィリス...あいつが現れたのは、リゾートの営業が始まって1年くらい経った頃だった。開業当初、幽霊騒ぎの噂のせいで経済状況が一気に悪化して、初期投資の費用すら回収できない有様になっていた。そんなときに....あいつがやってきて、ここが潰れるのを見過ごせない、俺たちを助けたいと言ってきたんだ。あの頃のウィリスはスリーゲートのマネージャーとして意気揚々だったが...あれから何年経っても、いまだマネージャーのまま、昇格できていないらしい。まあ、それとも自業自得ってところだろうな」
うむ...話だけ聞くといい奴に聞こえるが....そうじゃねぇんだろうな...
「リゾートがこうなったのも、あの頃の僕たちが焦りすぎて、救いの手を差し伸べられたと思いこんでいたせいだ。お嬢さんはあいつと契約を結んで、スリーゲートから多額の資金援助を駆けて...返済の期限もそこで合流した。ただ、あの資金はリゾートの延命こそしてくれたが...結局、数年経っても目立った収益を出せなかったんだ。そして今、返却期限が迫っている....残された時間は多くない」
『もし返せなかったら?』
「このままだと、契約に基づき....リゾートは借金返済のためにスリーゲートに譲渡されることになる。今思うとこれは、最初からあいつがリゾートを手に入れるためにしこんだ策略だったんだろうな。まぁ、今更後悔したところでどうにもならないか....はぁ....借金と利子を返せるくらいの金を稼げたら、ウィリスはーみたいな卑怯者のせいで、眠れなくなることもないだろうに...」
ウィリスの野郎...絶対許さねぇッ!!
『....他には何かあったか?』
「ンナ!ンナナ!ンナナ!」
(コウテイはゆうべ、釜之助っていう狸と一緒に見回りをしていたけど....怪しい人は見なかったよ!でも、コウテイは見たんだ....空中に止まってる蚊を!)
『....空中に止まってる蚊?』
「ンナ...ンナンナンナ!ンナ...ナ?ナ!」
(確信はないんだ、そのとき凄い眠かったから見間違えたかもなんだけど....今夜はカメラを持って、もう一度周りを回ってみるよ、もしかしたらまた出くわすかもしれないから!これって...怪談じゃないよね?もし怪談だったら、コウテイは絶対他の人に言わない!リゾートの評判を守らないと!)
「...私から話しておきたいことが。今までタンザナイトや皆さんに伏せてた情報なんだけど....11年前にリゾートが建てられたとき、ここは『ミッドサマー・リゾート』という名前だったの....」
「お嬢さん、そのことは――」
「もういいの、エーゲ、隠さなくても...タンザナイト、アリス、そして柚葉はもうたくさんことをしてくれた....私たちも黙ってるべきじゃないわ」
何だ何だ?そんなに重要なことなのか?その『ミッドサマー・リゾート』ってのは?
「ファンタジィ・リゾートは元々、ミッドサマー社の遺産なの....かつて軍需企業としてスリーゲートと肩を並べていたけど、旧都陥落と共に、歴史の表舞台から消えた....あのミッドサマー社よ。ミッドサマー社の社長は私の父さんであり、エーゲの上司であり....そしてコウテイの最初の主人でもあったわ....」
「11年前の旧都陥落で、お父さんはミッドサマー社のほぼすべての資産と共にホロウの中に飲み込まれて....それまで、お父さんはミッドサマー社のを軍需企業から
「旧都陥落の影響で、リゾートの開業は無期限延期になった。お嬢さんのお父上には恩義を感じていて...だから僕たち生き残った社員は、お嬢さんを支えていこうと決めたんだ」
「あれから6年、私は自分の足で歩く覚悟ができたと思ったから、お父さんが遺してくれた最後の『形見』....このリゾートをちゃんと自分で経営していこうって決意したの。それから5年前、リゾートを開業した経緯なのよ」
「だが、『ミッドサマー・リゾート』って名前のままだと、ミッドサマー社との関係がすぐ分かってしまうだろう?余計な憶測や騒ぎを避けるために、僕たちは何度も検討して、結果、名前を『ファンタジィ・リゾート』に変えることにしたんだ」
成程....そんな背景があったんだな...相当苦労したんだろう。
「ごめんなさい...これまでの経緯をきちんと話してなかったのは、決してわざとじゃないのよ...私たちもこんな風に、次から次へと予想外のことが起きるとは思ってなくて....せめてこの情報が、話を解く手がかりになればいいのだけれど....」
『いや、大丈夫だ、テレーゼ。おかげで結構手がかりが集まったよ』
だが、肝心の真相がまだ分かってないな...うーん...後で柚葉達と合流するか。
「わかったわ....ごめんなさい。他に手がかりが見つかったら、また教えるわね」
『おう』
リゾートスタッフの聞き込みが一段落したので、アリス、柚葉の方へ向かい、情報を交換しに行くが.....
『あれ?アリスは?』
「アリスはなんか『むー...』って言いながら考え事してたから、アキラくんと一緒に海釣りに行かせたよ」
『そうなのか?....あんまり思いつめてないといいが...』
「そこはアキラくんがいるから大丈夫でしょ!...それより、タンザナイトくんが集めた情報を聞かせて」
『おう、いいぞ』
俺は柚葉にテレーゼたちの情報を話した。
「...うん。タンザナイトくん、さっきの話から結構使える情報が見えてきたよね?もしかして、スリーゲートの管理職のウィリスが狙ってるのって、このリゾートそのものじゃなくて....その後ろにあるミッドサマー社なのかも?でもミッドサマー社はウィリスにとってどんな意味があるのかな?」
『それは分からんが...テレーゼが手放してくれるように、幽霊騒ぎをでっち上げ、それから善人ぶってリゾートに近づき、借金を負わせた...徐々に廃業するのを待って、最期には合法的にここを乗っ取ろうと計画していた....ほんと、TOPSの連中って碌な奴しかいねぇ....』
「...うん。これなら、この間わざと騒ぎを起こしたことにも説明がつくよね。仮にリゾートが復活して借金を返せるようになったら、ウィリスの計画は全部パーになっちゃうんだもん」
『ああ...だが、昨日のあれはどんな手を使って仕込んだのか、それが分かればなぁ...』
「....っ!タンザナイトくん、どうやら『オバケ』がじっとできなくてきたらしいよ...」
『!....来たか』
と、そんな会話をしていると、突然不気味な物たちがまだ夕方ぐらいに現れた。急いでテレーゼたちに報告し、調査をしようとすると、丁度アリスたちが帰って来た。
「柚葉、タンザナイト!」
『アリス!...それにアキラも』
「アキラくん、アリス、ちょうどいいとこに帰って来たね...予想通り、リゾートが順調に回り始めたら、『オバケ』もじっとしてられなくなったみたい」
『ふつうは夜がベストなのに、こんな明るい日に騒ぎを起こすなんて、どれだけ焦ってるんだか...』
すると、アリスが何か確信がついたような顔つきをする。
「なるほど...『空中に止まってる蚊』って...こういうことかもしれないのだわ!」
『?』
「何か分かったのかい?」
「ええ...!お先に失礼するのだわ。自分の推理が正しいかどうか、確かめに行かないと!」
そう言い、アリスは慌てた様子で、幽霊騒ぎがあった方へ走りさった....急いで俺たちもアリスの後を追った。
「うう...やっぱり何度見ても怖いのだわ...」
『ムリすんなよアリス....』
「いえ、私は平気なのだわ....それよりも、近くにあるはず....目には見えないけれど、確かに触れられる何かが!」
「それは何だい?」
特に説明もなく、アリスは怯えながらも、決意を固めた子ウサギのように幽霊騒ぎのあった場所の周囲を走り回り、何かを探すかのように空間に手をのばしている。彼女は目標を早く見つけたいのか、とうとう鼻や耳まで使い始めた。
...本当に頑張っているな。
「っ!」
アリスは何かを察知した後、一切躊躇いなく拳を握りしめ、目の前の空間に向ってパンチをおみまいした――すると、何もなかったはずのその場所に何かがゆっくりと姿を現した!
「―――見つけたわ、これよ!」
「これは...」
『照明器か?』
「ふぅ...これは最新型のホロ・プロジェクター....限りなくリアルな映像を投影できる機材で、私達がみた実体のない『オバケ』は全部これが
そうだったのか....!これは盲点だった。
「なるほど。光源が分からなかったせいで、だれもがこのホログラムを怪奇現象だと思ったのか...とはいえどうやって透明になんて...?」
「私、この既視感がどこから来るのかよく考えたの....そして、私達は似たようなものを見たことがあったわ....それこそが既視感の源だったのだわ」
『....あ、そうか。グレースのドローン!』
「ドローン?たしかにあれも、見えたり見えなくなったりしたけど....同じ仕組みなの?」
「私の知る限り、物体を安定して不可視する技術なんて、タンザナイト以外で新エリー都には存在しないはずだった...だから、あのドローンが一瞬とはいえそれをやって見せたことで、未知の技術をプロジェクターへ応用したという仮説にいたったのだわ....正直、怪奇現象のみえない根源を探すなんて、生きた心地がしなかったけれど....私の仮説は証明されたのだから、結果オーライなのだわ!」
『すげーぞ、アリス!お前のおかげで真相が明らかになるかもな。早速、グレースに連絡して、確認してもらおう』
俺は急いで、グレースに連絡を取った。彼女は今、白祇重工の面々と休暇でこのリゾートに来ているらしい。そのため、連絡して五分ぐらいに来た。はえーよホセ。
「やあやあ、来たよ!さっそくだけど、君達が話していたホロ・プロジェクターとやら....お姉さんに見せてくれるかな?」
「お手数をおかけするのだわ。貴方が持ってきたドローンと、このプロジェクターが同じ技術を使ってるか調べて欲しくて」
グレースがプロジェクターを手に取ってべたべたと触りまくり、くまなく調べる。
「うん....間違いないね。表面にまったく同じ塗料が使われている―――いいかいみんな、これは『カメレオン』というんだ」
『『カメレオン』?』
「軍は長いこと、武器や戦闘員を不可視する技術を求めていてね。軍事産業はその実現に躍起になってきたんだ。この『カメレオン』は、そんな中でスリーゲート軍工が出した『微妙な解答』さ。こいつを機器に吹き付けて温度を調節してやることで、機器の周囲の色に同化して視覚的なステルス性を得られるんだ」
まさか、スリーゲートがこんなものを作っていたなんてな....
「けど、、効果が外的な要因に左右されやすいという欠点があってね。温度の低下や赤外線の照射、それにちょっとした衝撃なんかでもすぐに同化が解除されてしまうんだよ」
「どうりで、アリスが一回叩いただけで見えるようになっちゃったんだね.....」
『成程....つまり『透明結晶』の劣化版か』
「いや、アンタが規格外すぎるだけから」ビシッ
と、柚葉にツッコまれた。
「とにかく、軍事的なニーズには到底応えられないものだから、スリーゲートが特にPRしてないのも不思議はないね。彼らは見下そうとした課題を改善すべく、私達白祇重工に協力を求めてきたところなんだ」
「ベンがいい条件で提携の契約を結んでくれてね。1ロット分の『カメレオン』を貰えるかわりに、私がテストと改良を手伝うことになったのさ――あの子たち...つまり射的用のドローンは、こういう経緯で生まれたというわけ」
「色々とご教授くださり感謝なのだわ!つまり、こういうことでいいかしら?『カメレオン』は欠陥のあるステルス技術として、一般には流通していないと....」
「うん、そのはずだよ。うちみたく提携してる会社は他にいるかもしれないけど、素材の大半はスリーゲートの倉庫にあるんじゃないかな」
『これで、真相が大体分かって来たな....スリーゲート、やはりウィリスが関係してるな』
「そうそう、ここに来る道すがら、私も『オバケ』について聞いたよ。その感じだと、スリーゲートが関わってるんだね?」
「確率として88%、そう思うのだわ。ウィリスがスリーゲートの指示でやった確証はないけれど...少なくともこのリゾート中にプロジェクターが仕込まれてて、恐怖のホログラムを垂れ流してるのは間違いないのだわ」
「うーん、それは私としても放っておけないなあ。最近おチビちゃんは何かとストレスが大きいし、アンド―とベンには息抜きがいる....休暇を台無しにさせるわけにはいかないからね!」
「だとしても...まだまだあのプロジェクターはあるよね?私たちだけで見つけられる?」
「その心配はないのだわ、柚葉。なぜなら....ここに透明のエキスパートがいるのだか!」
と、アリスは俺を指しながら自信満々に言う。
『....俺?』
「ええ。タンザナイト、貴方前に泅瓏囲に向かう時、数多くの警備員たちを掻い潜ったことを覚えているかしら?」
『―――あっ!そうか....『
「タンザナイトの道具はどういう原理になっているのかわからないけど、透明になったプロジェクターを見つけるにはちょうどいいのだわ!」
「ナイス!なら、早速リンちゃんや真斗を呼んで、このプロジェクターを片付けよう!」
『ああ、そうだな!』
そうして、俺たちは結晶で作ったゴーグルを使い、透明になったプロジェクターを探しはじめるのだった。