side タンザナイト
アイスを奢ってあげると言われたのでそれをアキラ達に伝えようと探していた所...なにやら複数人が言い争っている声が聞こえた。なんだ、一体?
「お客様、そういったことは起きていないかと....」
「んなわけねぇだろ!この目で見たんだぞ!」
『テレーゼ、一体何があった』
「ああ、タンザナイト....さっきから何やら大騒ぎしてる人がいて、他のお客さんが逃げてしまったの....」
「大騒ぎ?そいつぁ俺のことか?あのな、俺は遊びに来た客だぞ!なんだって幽霊なんてモン見せられて黙ってなきゃいけねぇんだ!」
『....幽霊?』
「お前らも見たんじゃないか?ここは確かに『出る』んだ。なのに運営ときたらこの態度...もし俺の心臓が人より弱けりゃ、今頃ここにゃ死体が転がっていたとこだぞ!」
「おいおい、『出る』ってどういうことだよ...!詳しく教えてくれ!それが本当なら、冗談じゃすまねぇんだから!」
「お、おいともよ!さっき散歩してたら、ショーウィンドゥの向こうに人がいる気がしたんだ...おかしいなー、変だなと思って近づいたら、そこには...!そこには....えっと....」
『そこには?...なんだ言ってみろ。話が詰まってんぞ』
わざとらしい....こいつ、ただでまかせで言ってるだけじゃないのか?
「コホン!....まさか、女の肖像画が動いてたんじゃないだろうな!?」
「ああ、そうだそうだ!死相が浮き出た女の、なんとも薄っ気味悪い絵でよぉ....そいつが動くんだ!右へ左へ、ジッと見つめてくるもんだから俺ぁ魂を取られちまうかと思ったぜ!」
「いやーやっぱりなぁー!このリゾートにゃ、何年も前から幽霊がでるって噂だったんだよ...誰が好き好んでこんなブキミな場所に泊まるかい!返金を要求する!」
「ちげぇねぇ!みんな、こんな心霊スポットからはとっととおさらばした方が身のためだ!聞いてるか運営?金を返せっつってんだよ!」
....なるほど、こいらの目的はそれだったか....なら、『出る』とこでようじゃねぇか。
すると、柚葉達がヒョコっと現れる。
「...それで?コントはもう終わり?」
『!...柚葉』
「このリゾートには、あちこちに監視カメラがあるのだわ。勿論、あなたが幽霊を見たというショーウィンドウの前にも。本当に『出た』のかどうかは、映像を見れば分かるでしょう!心霊スポットなんて...まあまあ言いがかりだもの。もし監視カメラの映像でこちらの潔白が証明されたら、あなた達にはキッチリ責任を取ってもらうのだわ!」
「お、お客さんを脅そうってのか...!第一、映像なんていくらでもそっちで改ざんできんだ!俺は確かに幽霊をみた!監視カメラにうつってないからって、それがなんだって話だろ!」
『話をよく聞いてないだろ、お前。幽霊が出ようが出ないが監視カメラにお前が映っていないと、さっき言った言葉が嘘になるんだぞ。それとも何か?本当に映ってないからでっち上げでその場を誤魔化そうとしてるんじゃないのか?』
「ぐっ...!」
どうやら、間抜けが見つかったようだな....こいつ、でまかせしか言ってないな。
「...たく、余計なことばっかり言いやがって!」
『余計?何が一体余計なんだ?』
「じゃ、監視カメラをチェックしてみよっか。納得とてもらえなかったら、治安官に来てもらえばいいわけだし...それでいいよね、『お客さん』?」
「だ、だから...!お前らの監視カメラは信用ならんと...!ええい、その手は食うかよ!悪いが痛い目を見て―――!」
『痛い目を...誰に見せるって?』ピキキキッ....
と、俺は地面を結晶を徐々に展開して、戦闘準備する。
「な、なんだよ藪から棒に...俺たちは、そんなつもりじゃ....」
『だったら、何のつもりだったんだ?』
騒いだ二人が心なしか、こぢんまりしていると、冷ややかな別の男の声が響いた――
「そこのエーテリアス君のおっしゃる通りです。ここは休暇を過ごす場所。どんなトラブルであれ、暴力で和やかなムードを台無しにしてはなりません。周りの方々とて同じ気持ちでしょう。しかし、この場所にかつて心霊現象の噂があったことも事実....こうして実際に目撃された方もいらっしゃるのです。オーナーとして、説明する責任があるのでは?」
「ウィリスさん...スリーゲートのオフィスにいるはずでしょう。どうしてこちらに?」
「そう怖い目をしないでください。こちらの経営に好転の兆しがあったと聞いて、挨拶に伺っただけですから。ですが今は私より、目の前のお客様に対応されるべきでは?」
....確かに、幽霊の噂が気になるが、今はそれより折角バカンス気分で来た人たちが嫌な気分にさせるのは良くない...このウィリスという人物、何者だ?
「....ファンタジィ・リゾートを選んでくださった皆さんには、いわゆる『噂』について、きちんと説明をさせてください。数年前に、このリゾートがオープンしたとき、たしかに、『怪奇現象が起こる』という噂がありました。そのとき、何人かの観光客から、『幽霊を見た』という証拠があったのですが、それを裏付ける証拠はなかったのです」
「幸いけが人もおらず、私達はすぐ治安官に連絡して、事件の経緯を記録してもらうに留まりました。それ以降、似たようなことは起きていません、安心しててください」
「まるで当時幽霊を見たお客様が、嘘をついていたと言わんばかりですね?今日のお二人についても言えることですが。それ以降何も起きなかったというのも、そもそも誰もここへこなかったからでは?」
『だったら逆に言えば今起こったのは、有名になって来たからここらで評判を落とそうと聞こえるが?』
「おやおや、そう聞こえますか?」
「...白々しい。リゾートが開業したばかりの当時に、怪奇現象の噂を流して事業を潰したのは、どうせお前だろうが。誰も来なくなって、しばらくはそんな手を使う必要もなかったんだろうが.....経営が少し上を向いてきたとみるや、また手を出しにきた!観光客に扮した手下を使って、リゾートに泥を塗るつもりか!」
「ンナ!ンナナ!」
(アナタ、よからぬ心を抱いてる!リゾートで怪奇現象なんて起きたことがない。本当の悪さをしてるのはあなただけ!)
「根拠のない非難は到底受け入れかねます。私はスリーゲートを代表してここにいる訳ですが、数年前の出来事や本日いらっしゃったこちらのお二人が、スリーゲートとどんな関係があると?調べるのも結構ですが、私達の潔白は揺るがないでしょうね。私は寛容な人間ですので、先ほどの弊社への中傷は聞かなかったことにします...ですが今後はくれぐれもご注意を」
確かにこいつの言う通り、証拠がねぇな....
「債務の返済期限が迫っているのですから、皆様の一刻も早く収益を上げたいという気持ちは理解します。ですが債務者として、お金のためにお客様を危険に晒すようなことは容認できませんからねぇ」
「ははは、なんだ...このリゾート借金までこさえてるのか?そりゃあ幽霊しか来ないわけだ!」
「一応、虫はいるみたいだけどな!クモがどこに巣を作っていたと思う?空っぽのレジの中さ!ガハハ....!」
むかつくなこいつ.....ん?待て、こいつ今なんつった?
『....レジの中?』
「...チッ」
『おい、なんでお前、店のレジが蜘蛛の巣があるってわかった?』
「え?いやあ、今のはちょっとしたジョークだよ、ジョーク...!」
『ジョークなら無人の家とかにしとけ、このスカタン....柚葉、レジの中をチェックしてくれ』
「りょーかい」
「ちょっと待てよ、こいつもただのジョークって言っただけじゃないか。何も本気で疑わなくったって..ねぇ?ウィリスさん?」
「...あなたに馴れ馴れしくされる覚えがありません。従業員がどうしようと、彼らの自由ですから、もし本当にレジからの盗難があったのなら、ボディチェックも甘んじて受けるべきでしょうね」
『あれ?さっきお前、『調べるのも結構ですが、私達の潔白は揺るがないでしょうね』とか自信満々に言ってませんでした?』
「....記憶にございませんね。現状を見るに、今回の件は単なる双方の誤解のようですね。では、私は用事がありますので、これで」
そう言い、ウィリスは去って行った。やっぱTOPSって関係を切るは早いな....
「さて、ほんとにレジのお金が無くなってたら、その時は隅々まで調べさせてくれる?」
「バカ野郎、お前はいっつも余計なことまで...!」
「ど、どうする?もう味方もいねぇし...」
「どうするだって?―――逃げるんだよォ!どけーッ、ヤジ馬どもーッ!!」
『どこへ行くんだぁ?』キュピキュピ....
俺は逃げようとしている二人を先回りにし、通せんぼする。
「い、いっしょにこの場から避難する準備だぁ!」
『二人用のポッドでかぁ?』ピキキキッ
そう言い、俺は二人の後ろに大きめなポッド↑を用意し、二人をまとめてそこへ吹っ飛ばす。
『フンッ!!』バキィッ!!
「「ジュウエンッ!?」」ドコッ!
『へハハッ!―――ウォォォォォォォォォッ!!』ビキビキビキッ!!
更に俺は二人を詰めたポッド↑を上に掲げ、それを押しつぶす。
「「こ、これもならず者の定めか...」」ビキッバキッ....
『フハハハハッ!ハハハハ!!』
「あ、悪魔タン.....」
「....あんた、そんなキャラだったっけ?」
こうして、現代アートになったチンピラは現場に駆け付けたリゾートの警備員に連行された。*1チンピラたちの窃盗が発覚した後、観光客たちは『幽霊騒ぎ』を泥棒が注意を逸らすためにでっち上げたものだと思ったようで、自然とそのばから離れていった―――
「悪い、最近他のバイトが忙しくてよ。遅くなっちまった...まさかこっちでもトラブってるとはな」
「真斗にも見せたかったな~タンザナイトくんが結構も面白いことになっていたよ」
『にしても、スリーゲートのマネージャーだったっけ?あのウィリスってやつ、このリゾートに来て、どんな因縁つけようとしてたんだ?』
「ウィリスさんは、前からこのリゾートと前から因縁があってね。確かに彼は私たちの債務者ではあるけど...でも、これまではわざわざ顔をだすことさえしなかったのに、まさかごろつきを雇って、こんな騒ぎを起こすなんて思わなかった」
「皆さんがリゾートを引き継いでから、ここがまた賑やかになって.....ようやくリゾート経営に希望が見えてきたと思ってたのに。ウィリスはきっと、そのことを知って邪魔しに来たんだと思う。それに、あの人たちが言っていた『幽霊騒ぎ』なんて絶対あり得ないよ!リゾートがオープンして五年間、一度も怪奇現象なんて起きてないもの。なのに、オープンしてすぐそんな変な噂が広まっちゃって...」
「...あの時の噂は、やっと軌道に登り始めていたこのリゾートに壊滅的な打撃を与えて、売上もそこから低迷しはじめた。今日はまたあの悪夢が繰り返されるところだったな....皆さんのおかげで本当に助かった!ありがとう!」
....ここが何故、売り上げが低いのかわかったな。あの野郎、余計なことしかしてねぇ...
「心配いらないのだわ。私たちが経験してきたことに比べれば、ウィリスの嫌がらせなんて幼稚にすぎるもの。あんな人を雇うなんて、スリーゲートの人を見る目はどうなってるのかしら....」
「何度嫌がらせに来たって追い返してやるんだから。リゾートもちょっとずつ人気が出てきたところなのに、あんなののせいで計画を狂わされたくないしね~」
「柚葉の言う通りだ。あいつにこの程度の小細工しかできねぇなら、今の俺らにとっちゃ何の脅威もならねぇよ」
...本当にあれだけしか小細工をしていないのか?あんだか怪しいな...マネージャーっていうだけあるからもっと他にあると思うが...
「タンザナイトくんの心配ももっともだね...じゃあ、かまち―に近くを見回ってもらうようにお願いしとくよ。怪しい人がいないか目を光らせてもらえば、みんなもちょっとは用心できるでしょ?」
「見回りまでできるなんて、かまちーは器用なのだわ...とにかく、騒ぎは収まったし、それにみんなも疲れてるでしょう?一旦、各自の部屋に戻って休むのはどうかしら?」
そう言って、俺たちはこの場で解散し、自分の部屋に戻った。
ベットに寝っ転がると、今までに起こった出来事が沢山あったせいか、眠気がどっと襲って来た...そうして俺は、そのまま海から流れる波の音を聞きながら眠りについた.....