side タンザナイト
司教の件が終わり、しばらく経った後、俺は適当観に戻るとそこで引壺さん...もとい潘さんとアキラが何やら会話をしていた。
そこに丁度リンも帰ってきていた。
「リン、タンザナイト、来たか」
『どうしたアキラ、潘さんと何か会話していたが.....』
「おっと、お弟子ちゃんか、ちょうどよかった。呼びに行こうと思ってたんだ。ちょいと相談したいことがあってだなあ....」
「うんいいよ」
「そうか...お弟子ちゃん達、ダミアンの野郎は覚えているよな。ほれ、ポーセルメックスが衛非地区を任していたやつだよ....あいつから何が来たと思う?なんと晩餐会の招待状だ!」
『招待状?』
あれ?そういえば.....おっ、あった。昨日から俺宛てにとどいてたんだった。
「もう、潘さんったら!....お兄ちゃんと一緒に凄い顔してたから、てっきり、裁判所から何か来たのかと思ったよ!」
「ガハハハ!ダミアンの野郎に、そんな度胸あるかってんだ!あいつがいまも椅子を尻で磨いてられるのは.....俺たち雲嶽山が、讃頌会のゴタゴタを片付けたからだぞ!―――とはいえ、この招待状があの件に関係してるってのは、間違いなさそうだ」
まぁそう考えるのが妥当か...ダミアンのことだし、何かあるだろう。
「と、いうのも....讃頌会が衛非地区で起こした騒ぎは、
「そっか....でも、安全調査と晩餐会になんの関係があるの?」
「それはだな、お弟子ちゃん....大々的に調査する以上は、衛非地区に関係者がたくさん来る。ポーセルメックスもホスピタリティってもんを見せにゃならんわけだ。雲嶽山は安全調査に噛んだわけじゃないが、抜け目のないダミアンのことだし.....ついでに媚びでもうっとけって算段だろ」
「前に釈淵さんから聞いたんだけれど....例の件が終わってすぐ、ダミアンさんから豪華な謝礼が届いたそうだ。とはいえ師匠は受け取らなかったらしいから、晩餐会はどうしたものかと話していたんだ。師匠の方針に照らせば、雲嶽山とポーセルメックスはあまり『お近づき』になりすぎるべきじゃない。とはいえ、僕たちが衛非地区で活動する以上、ダミアンさんも無下にはできないところだ....」
まぁ、俺の会社もあまり関係を深入れさせるのは良くないと思っているしな....
そんなことを思っていると、潘さんが自信満々な表情で言う。
「ふふん。おれに言わせりゃ、いまがパーティーにお邪魔する好機だぞ」
『?....どういうことだ?』
「お師さんと兄弟子はしばらく雲嶽山に戻ってて、すぐには帰ってこれないんだ。俺たち4人だけでも、一応ダミアンの顔は立つだろ?むしろ変に目立たないぶん好都合だ。どのみちお師さんの不在はダミアンも知っているしな、わざと避けてるとも思われんさ」
そうなんだ....ん?まって、4人?
「待って、大姉弟子は?」
「はぁ....算術で不合格になったことがお師さんにバレて、夜中のうちに呼び戻されちまった。いまごろ補習の真っ最中だろう。ご馳走には間に合わないな」
「なるほど....雲嶽山では、学業も疎かにできないのか....」
というか雲嶽山にも筆記テストがあったんだな.....
「本題に戻るとして、僕は兄弟子の言う事にも一理あると思う。参加してみるのはどうかな?」
「うん、いいんじゃない?なんか大物が来そうな雰囲気あるし、情報収集にはもってこいかも」
『まぁ、招待状貰ったし....行かなきゃ損だな』
「よっしゃ。そんじゃいっちょ、ポーセルメックスの野郎のメンツを立ててやるとするか!」
そうして、ポーセルメックスの晩餐会は明日の夜の『飲茶仙』に決まっているので、各自時間がなったら入口に集合することになった.....そういえば、たしか代表で姉さんが来るんだったっけ?
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『飲茶仙 入口』
いくつかの用事をすませ、夕暮れ時に俺は入り口まで来ていた。
「タンザナイト、随分と悠長にしてたじゃないか。潘さんなんて、もうお腹と背中がくっつきそうなんだぞ」
「いやぁ~....こないだ上等な陳皮を見かけて、つい買ってしまってだな....あれから節約の日々だったんだ。贅沢できる今日という日を待ちわびてたんだぞ!」
『えっ何?お前らお昼抜いてきたの?』
「えへへ...だって絶対豪華な食べ物が出てくるんでしょ?なら、沢山食べないと!」
「二人とも、昨日までは行ってやるか、という空気だったのに....ダミアンさんの罠にまんまとはハマった気がしてならないよ」
「もーお兄ちゃん。ご飯くらいいいじゃん!」
「ガハハ、そうだそうだお弟子くん、考えすぎは体に悪い。よし、お喋りはここまでだ。みんな揃ったところだし、行くとするか!」
潘さんがそう言い、俺たちは2階の会場へ向かった。
――そこには大勢の人達が会話したり、ご飯を食べてたりしていた。
「こんなに大勢の人が来ていたなんて....今回は安全調査とやらは、相当な規模で実施するみたいだな」
『まぁ、讃頌会だけじゃなくて、労働者との関係も問題があったからな....今回でそれがまとめて解決できればいいが....』
「あら?....タンザナイトじゃない」
「あっ...あなたは!―――ツイッギー!」
声をかけられて振り向くと...そこにはツイッギー姉さんが白の礼服を着て現れた。
「ああ...あなた達も来ていたのね」
「嘘ぉ...何であんたがここに?ダミアンに招待されたの?」
「ええ。何しろ、侵蝕緩和剤の件で代表で私がここに来たのよ....ついでにこれを機に衛非地区で少しの間旅行しようって来たわ」
「へー...そうなのか。じゃあ、少しの間ここに留まるってことか」
「あー....その、お弟子ちゃん?なにやら知り合いみたいだが....この人は?」
『この人は『ツイッギー』。俺とインフィニティの姉さんだ』
なんかインフィニティが『えへんっ!』って威張ってるがそれを無視しつつ、潘さんは驚く。
「姉さん!?....いや、そうかエーテリアスだったな。それになる前は似ていたんだろうな....コホン、俺はお弟子ちゃんの兄弟子、『潘引壺』だ。よろしくな!」
「ええ、よろしく」
そう言い、お互いに握手した。
「そうだ...あなた達、ダミアンから招待してもらったんでしょ?挨拶くらいはしておきなさい」
「あー、それなんだが....ちょっとおれは遠慮させてもらうぞ――ダミアンの野郎とはあんまり反りが合わんしなあ、わざわざ揉めに行くようなもんだ」
「あー....まぁ、あなたの言ってることは分かるわ...確かに反り合わないわね」
『じゃあ俺とアキラ、リンの3人で行くか』
「そうだね...じゃあ潘さん師匠たちの分も楽しんでください」
「じゃ、私もここの料理を楽しんでいくわ」
そう言い、姉さんと潘さんは一旦別れ、俺たちはダミアンの所へ行くのであった。
「これはこれは、雲嶽山の先生方にタンザナイトさん。ツイッギーさんや潘先生と、それに....見習いのお二人にご出席いただけるとは、主催者として光栄の至りだす」
「なんだい、ダミアンさん。師匠の出席が叶わなかったことに失望の色があるようだね?」
「ハッハッハ....何を仰いますやら。遥か雲嶽山より、儀玄先生が信頼できるお弟子様を遣わしてくださったのです。どこに不満や失望がありましょうか」
と、アキラが捻くれた言葉でダミアンを繰り出すが、のらりくらりとかわす。
「今日はどうか、心ゆくまで晩餐会をご堪能ください。ご所望の品が見当たらなければ、直接私までお伝えいただいて構いませんので」
『そうか、ならありがとう...というか、安全調査という割には結構人が多いな。なんでだ?』
「ハハハ、タンザナイトさんの単刀直入な物言いは、私がかねてより評価しているところです。確かに....衛非地区に讃頌会の跋扈を許した以上、ポーセルメックスは安全管理者として責任を問われています。当事者の態度としては、些か適当ではなかったかもしれませんね?」
「他だもないお三方なのですから、正直に申し上げましょう。私の肩書は、ポーセルメックスの衛非地区における最高責任者....ですが、実務として担当するのは主に生産管理となります。ホロウに絡む安全ついては、グループ上層部から別の担当者が任命されておりました――ええ。当然、もう彼は任を解かれてしまったわけですが」
「なるほど、あの惜しみない情報提供には理由があったわけだ。とっくに今日のことを見越していたんだな。安全のほうにも権限を持つようになって、ポーセルメックスでのキャリアを着実に゜歩んでいるようだ。これはお祝いすべきかな?」
「ハッハッハ、お三方はご冗談がお好きでいらっしゃる....この件はそう簡単な話でもないのです。今の地位を保っていられるだけでも幸運というべきでしょうね。これから控えている安全調査にしたって、薄氷を踏むような思いですよ」
と、ダミアンは笑いながらアキラの言葉を否定する。
...なんかあったのか?
「ただ....今回ご出席された顔ぶれを見まして、少しばかり胸をなでおろしたのは事実です」
『というと?』
「ハハハ....それではお三人とも、向こうをご覧ください。本日、晩餐会には数多と賓客がいらしていますが....
「あちらにいる、洗練された身なりの面々が見えますでしょうか。彼らはTOPSの上層部であり、
ご招待した全員が出席されています。これは依然として、TOPSとポーセルメックスの関係が強固であることの証です。彼らがこの集まりに顔を出してくださったことで、私共TOPSは一丸となって衛非地区の安全を重視している....そう軍と市政に向けてアピールできるですよ。」
『ふんふん....』
「一方で市政の関係部署にも招待状を送りましたが、残念ながら誰一人きませんでした。つまり市政は、TOPSと軍の双方にとってデリケートである衛非地区に対し、
「輝磁を巡って、TOPSと軍はたびたび揉めていたって聞いたけど....思ってたよりも深刻そうだね.....」
と、一つため息交じりに言うリンにダミアンは賛同しながら続ける。
「ええ、深刻です。とはいえアンタッチャブルな話でもありません。軍は輝磁の最大の買い手であり、TOPSが衛非地区の実権を掌握できれば
「ってことは...大事なのは、今日ここにきてる軍のゲストが誰かってことだね」
「仰る通りです。少し離れたところにいる女性が見えますか?あちらが、軍を代表してこられた方になります」
....もしかして、あの飲み物を飲んでいる緑髪の人か?
「そうなのかい?防衛軍の制服には見えないけれど...いちおうフォーマルな晩餐会のはずだ」
「それもそのはず...あちらのイゾルデ女史は軍属ではなく、あくまで軍に雇用されているいち研究顧問という立ち位置です。軍は士官ではなく、雇われの民間民を出席させました。彼らも同様に、この件には深入りする意思がないということなのでしょう」
「侵蝕事故のせいで生産に制限を受けつつも、ポーセルメックスは一切の遅延なく軍の注文に対応しましたから。その
「ダミアンさんが楽に構えているわけがわかったよ。TOPSの上層部だけじゃなくて、今は市政と軍も圧をかけてこなくなったんだもんね。ちなみに、残れの人は?みんな年配の人が多いみたいだけど....」
確かに、年食ってる人達が多いな...
「ああ...『調査監督チーム』の方々ですね。皆様エーテルにまつわる業界の専門家です。今回の調査を全面的に監督し、私共に貴重なアドバイスを提供してくださいます。いずれも学会の重鎮でございますから.....こうしてお招きするにあたって、私もずいぶん骨をおりました....」
『「皆様、ご歓談中ところ失礼いたします。しばしお時間を頂戴してもよろしいでしょうか」』
「おや...『本当の主催者』がご登壇されるようですね」
そう言い、俺たちはステージの方を見ると、青髪の人とクリーム色の髪と鼻髭を生やした人が立っていた。
「お集りの皆様。この度は衛非地区の安全調査にご参加いただくため、はるばるこの澄輝坪へお越しいただいたこと....ポーセルメックス・グループの共同CEO、ルクローよりここより感謝します」
「私からも御礼を申し上げます。おなじく、共同CEOのフェロクスでございます」
『あの二人....テレビで見たことあるな。どちらもポーセルメックスの最高責任者で、青髪がルクローさん、クリーム色の髪がフェロクスさんだったな』
「成程、ダミアンさんの上司は、あの二人ということにあるのかな?」
「ええ、その通りです。ポーセルメックスの経営陣は、旧都陥落に大規模な再編を経験していまして....あの二人が最終的な勝者です。もっとも、今でも水面下では争っているようですがね....」
「ええ....上司のこと、そんな風に言っちゃってもいいの...?」
リンがちょっと心配そうな感じで言うと、ダミアンは笑い飛ばす。
「ハッハッハ.....お三人を信頼しているからこそ、こうしたお話ができるのですよ。この度更迭された安全責任者ですが、あのフェロクス氏の腹心でしてね...突如してできた空席に、両氏はそれぞれ息のかかった人間を送り込もうと躍起になっています」
「私が衛非地区における各目上の最高責任者となれたものも....この競争においてどちらにも属すことなく、勢力の均等を保っているからなのですよ。とはいえ中立を保つ以上、私に
『中間管理職って大変なんだね♨』
と、ダミアンの苦労の話を聞いていると、ここでシメの挨拶が聞こえた。
「『...えー....私共は、会場にお集りいただいた皆様と力を合わせ、安全の最前線を守り抜き...市民たちに胸を張れる成果をお届けする所存でございます!皆様、安全調査は明日より正式に開始されます。その前途となる本晩餐会を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください!』」
「さてさて...お偉いさんの有難いお言葉も終わりの要です。お三方のおかげで、どうにか乗り切ることができましたよ...ありがとうございます」
と、ダミアンは俺たちにお礼を言う。
「さあ、どうぞ晩餐会の続きをお楽しみください。私は上司のカミナリを楽しむとします....それでは、失礼」
『おう、またな』
そう言い、ダミアンは去って行った....さてと――
『ダミアンも行ったし...俺たちはどうしようか?』
「ちょっと会場を見て回りたいかな。いろいろ聞いてたら、私もゲストのことが気になっちゃった。それにほら、あのダミアンのことだし...鵜呑みにしちゃうのもどうかとおもうじゃん?」
「よし、なら僕もあたりを見てこよう。また後で」
『おう』
そうして、俺たちはバラバラで回りを見に行った。
途中でダミアンの上司の話を聞いたり、潘さんが晩餐会の料理を持ち帰るのを冷たい目でみたり、姉さんと緑髪の人...確かイゾルデだったな。その人と会話してるのを見かけたり、色々見て回り、アキラ達と合流し、晩餐会の料理を一緒に食べることにした。
「お兄ちゃんはやくなんか食べよ!」
『そうだな....色々考えて疲れたからな。いっぱい食べるぞ!』
「ああ、わかった」
「ごゆっくり...あっ!」
「あっ!」
後ろで何かぶつかった音が聞こえた。
「申し訳ございません....」
「お気になさらず」
「失礼しました...!」
『....?これは.....』
「?」
と、俺は何かを名札らしきプレートを拾った。
...なんかぶつかった音聞こえたが、その人が落としたのか?
『すみません、落としましたよ!』
「ん?ふぁっ!?....あっ!」
その人物は可愛い耳が生えてる金髪のツインテールで、学生のような服装をして、なんか変なベルトをしている金と赤のオッドアイの少女が、こっちから来てお礼を言う。
「あ...ありがとう」
『いえいえ....』
「その...助かったのだわ」
(だわ?)
「わあ、調査監督チームの人?同い年くらいなのに専門家なんて~!」
「――っ!」
『ん?』
いまこの人、一瞬泣きそうな感じがした?
と、そんなことを思っていたら、その少女は去って行った。
「失礼、その、用事があって.....」
「あっ...馴れ馴れしかったかな....」
「ふっ...」
すると、後ろを振り向くと、イゾルデが話しかけてきた。
「お嬢さん....本当にわからないかな?」
「あなたは確か...軍の研究顧問の.....」
「ああ、イゾルデだ――彼女も私も体のいい『お飾り』に過ぎない....」
『.....』
イゾルデがそな言葉を残し、俺たちは最後まで晩餐会を楽しんだ。
...何だろうなこのモヤモヤは.....