どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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最近ようやくイドリーさんのキャラPV見て書くのがとても楽しみになっている。まだ軍部編すら始めてないんですがね。実際書くのはだいぶ先の話になりそうです。

今回ダイジェスト気味。


道化死てるぜ!

 頬に触れる薄暗いコンクリートの冷たさに狩人が目を覚ますと、自分が、そして自分達が牢屋に閉じ込められていることに気がついた。

 

 やはりな。言葉には出さなかった。代わりに、アキラが声を発した。

 

「狩人っ! 大丈夫か!?」

 

「珍しくな。貴公らこそ無事か」

 

 真斗以外は無事であった。ポーセルメックス側の人間と雲嶽山の関係者が居たおかげで口封じされずに済んだのだ。

 

 真斗は尋問の為どこかへと連れて行かれた。本来は柚葉が連れられるはずだったのだが、やってきた尋問官に真斗が頭突きをお見舞いしたのだ。

 

「早く助けに行かないと、真斗が……!」

 

 アリスが声を震わせる。折角友達が出来たと思ったらこのざまなのだ、当然の反応であろう。皆、脱出の術を探っている。

 

 何を悩んでいるのだ。狩人は呆れた。牢屋に閉じ込められたのなら、檻から出たいのなら、やることなど一つに決まっているだろう。おもむろに牢屋の扉へ手を伸ばす狩人。がしゃんっ、と硬質な音が響く。

 

「……馬鹿な」

 

「どうしたんだい、狩人?」

 

「あ、開かないっ」

 

 当たり前だろ。狩人以外の全員が同じ言葉を心内で叫んだ。途端に目元に汗が滲み始める狩人。今まで捕まった時はいつも空いていたというのに、と言葉が漏れる。

 

「えっ、捕まったことあるの?」

 

 いや、まあ、納得って言えば納得なんだけど……。柚葉の声量が一瞬跳ねるも、すぐにそう言って落ち着いた。失礼極まりない発言だったが、今更狩人の気にするところでもなかった。

 

「ああ。デスサンタに誘拐されてしまってな」

 

 デスサンタ……!? 突然のパワーワードに戸惑う一行。落ち込んでいたアリスも思わず顔を上げた。今に始まったことではないが。秘匿を暴く前のヤハグル(デスサンタランド)について、狩人は話すのを忘れていたのだ。

 

 結局、アキラが換気口を見つけたのでそこから脱出、真斗を探すこととなった。武器はかまちーが隣の部屋から持ってきた。獣の癖に全くかわいいやつである。

 

 狩人はかまちーを撫でようとしたが、狩人が手を伸ばすなり怯えた様子で軍帽を深く被り込み、柚葉のセーターに潜り込んでしまった。嫌われてしまったようである。

 

 狩人の身体には獣の死臭が染み付いている。それこそ獣の嗅覚でないと分からぬ程のものだが、小獣の一匹を怯えさせるには十分に濃いものであった。

 

 そうしてダクトを進むこと数分。すぐに真斗の声が聞こえてきた。生きていることに皆安心したが、今だ拷問を受けているようだ。ダクトから飛び降り、そうっと尋問官たちの背後から忍び寄る。

 

 声を出す暇も与えず気絶させる一同。あまりの早業だった為、狩人には出る幕すらなかった。鎖を解き、真斗を立ち上がらせる。

 

「真斗っ! 大丈夫っ!?」

 

「大丈夫だって言ってるだろ、さっきから……!」

 

 柚葉たちに対し気丈に振る舞ってみせる真斗だったが、その身体は傷だらけであり、狩人にはそのあばら骨の数本がへし折れていることが分かった。

 

 さてどうやって脱出経路を探ろうとなったその時、アリスが恐る恐る口を開いた。「こんなことを言うのは、タイムフィールド家を継ぐものとして少し憚られるのだけれど……」という前置き付きで。

 

「彼らのやったことを、そっくりそのままお返しするのだわ!」

 

 語気を強めるなり、アリスは先程まで尋問官が真斗たちに浴びせていた水バケツを引っ掴み、意識のない彼らの内の一人、その顔面目掛けてぶちまけた。酷い咳払いをしながら尋問官が目を覚ます。

 

「お、思ったより苦しそうなのだわ……!」

 

「気にしちゃダメだよ、アリス。悪いやつに情けをかけても、あとで泣きを見るのは自分なんだから」

 

 ぞっとするような低い声が、柚葉の口から飛び出した。何か個人的な恨みでもあるのだろうか。狩人の姿を見ると、尋問官は実に素直となった。

 

「……実験棟か」

 

 狩人が吐き捨てる。安全な抜け道として尋問官が提案したのは、讃頌会が秘密裏に工場の中に設けた実験棟を通るルートだったのだ。

 

「じゃ、もう用済みだね。おやす──」

 

 柚葉が傘を握りしめたその時、上体を起こそうとした尋問官の胸を狩人が踏みつける。そのまま、頭に散弾銃を押し付ける。

 

「安心したまえ、柚葉。ここなら音を聞かれることもないだろう」

 

 コツンと音を立て、尋問官の頭が地面と銃口に挟まれる。引き金にかけた指に狩人が力を込め、恐怖に声も出せない尋問官の目が震え極まったその時。

 

「狩人」

 

 そこまではしなくても良い。ぶっきらぼうに柚葉が言ってみせると、そうか、と一言言って狩人は銃と足を放した。すぐさま柚葉に傘で殴られ、尋問官は結局意識を失ったのだが。

 

 実験棟の中は意外にも清潔、無人であり、梅干し頭の化け物どもが我が物顔で牢屋を練り歩いているようなことは無かった。しかし。

 

 ──突如、爆発。アキラ目掛けて一直線に飛んできた鉄製ドアを真斗が背中で受け止める。狩人は後方にいた為無傷であった。

 

「なんだア? また面倒くさそうなのが……」

 

「真斗は下がってて!」

 

 真斗を置いて皆が飛び出す。その先に居たのは、不気味に笑うピエロめいたムキムキの怪物。「サクリファイス……!?」とアキラが声を上げる。讃頌会の研究している怪物なのだ。

 

 狩人は散弾や輸血液の類が不足してきていたので、支援に回るようになっていた。具体的に言えば、後方から永遠に火炎瓶と毒ナイフを投げつけるのだ。あと油壺も。

 

 柚葉の弾丸とアリスのレイピアが怪物の身体を貫く間も、全身に回った毒は着実に怪物の肉体を蝕み続け、火炎瓶がその白い皮膚を黒く焦がしていった。

 

「あっづ! あ゙っ! ちょっ、狩人! ちゃんと狙って投げてよ!」

 

「あ゙っ゙っ゙っ゙っ゙づい゙の゙だわ゙!!!」

 

 悪態をつく柚葉たち。幸い直撃はしていないが、ときどき炎が彼女たちの指先や足に触れるのだ。それに加え、恐ろしく部屋が暑い。

 

 それもそのはず、狩人が火炎瓶をぶん投げている現在は絶賛真夏*1。特に柚葉などこの夏にセーターなど着ているおかげでもう汗だくである。

 

「すまないっ。だがこのくらいしかできることが無くてな」

 

 謝る狩人。デスピエロを倒した後すぐにランタンを見つけ、物資を補充することとなった。戦闘の音を聞きつけた部下達が駆けつけて来ているので、狩人は後から柚葉達に追いつくこととなった。

 

 この「小女」たちが「下水道」の方面へ逃げると聞いて凄く嫌な予感がしたが、結局狩人は夢へ戻ることとなった。豚に気をつけろとだけ言い残して。

 

 早速装備を整え全身武器庫状態で戻り地下通路へ行くと──誰も居なかった。ただ下水が流れ、全てを押し流しているだけである。狩人の全身が汗ばむ。

 

 全速力でランタンへ駆け戻り、雲嶽山へとワープ。偶然居た住民に「藩たちはどこだ」と聞くと、とんでもない話を聞かされた。

 

 なんでも雲嶽山は先程ポーセルメックスの手下に襲撃を食らったのだが、防衛軍の精鋭部隊「オボルス小隊」が助けに来たのだという。

 

 現在は海へ流れたアキラ達を皆で救出に行っているそうだ。儀玄は出張でずっと前から居ない。そう聞くなり、狩人はまたランタンへと走り、泅瓏囲へと移動。全員揃っていた。ただ一人を除いて。

 

「柚葉はっ。柚葉はどこだっ」

 

「狩人、落ち着いてくれ!」

 

 声を張り上げる狩人を落ち着かせるアキラ。その口から語られたのは、あまりに残酷な真実だった。

 

 下水道にて、柚葉はかまちーを含めたアキラ一行を逃がし、しかし彼女自身だけは残ったのだ。ポーセルメックスとの交渉の為。そして、その罪の償いの為。

 

 柚葉は讃頌会のモルモットであった。先程まで狩人達の居た実験棟の住人だったのだ。彼女は幸せなど掴む事なく、惨めに、そして一人孤独に死ぬ運命だった。

 

 しかし、それを救ったものが居た。アリスの父、ライオネルである。アリスの失くしたヘアピンを探している時に柚葉を見つけ、彼女を逃がす為に犠牲となったのだ。下水道は、その時の彼女の脱出経路である。

 

「あんな形で恩返しなんて、絶対に許さないのだわ!」

 

 彼女から渡されたヘアピンをぎゅっと握りしめるアリス。必ず、生きて彼女にこのヘアピンを返す。そして二人で、皆で生きるのだ。アリスの固い決意は、もう歪ませることなど不可能だった。

 

「しかし、なぜ軍人がこんなところへ」

 

「イゾルデさんさ」

 

 アキラが返した。あの女、実はまだ軍属だったのだ。讃頌会の臭いを嗅ぎつけ、秘密裏に調査しに来ていたのだという。丁度その時、本人がやってきた。

 

「騙して悪いが、仕事なのでね。君たちを利用するつもりはなかった」

 

 あんなことが起きると知っていたら、全力で止めていただろうに。イゾルデが唇を噛む。本心からの言葉であった。

 

 彼らは軍人、法でがんじがらめにされている存在の為、ホロウ内に突っ込むのには少し時間がかかるそうだ。儀玄も今向かっている最中らしい。ならばと狩人がまたまたランタンへと走り出す。「私だけでは守りきれん。頼んだぞっ」とアキラに告げて。

 

 数分後、研究所。逃げた連中がまだ施設内に残っていないか探る為に派遣されたポーセルメックス社員たちが、暗い研究室の中へ足を踏み入れていた。

 

「クソっ、暗すぎる。何も見えんぞ」

 

「やけに鉄臭いな」

 

 社員の一人が手探りで壁にあったスイッチを押すと、ぶうんと音を立てて細長い蛍光灯が薄汚い白光で部屋を照らした。同時に、空気が凍った。

 

 照らされたコンクリート製のその部屋は、赤く染まっていた。臓物と血が至る所にへばりつき、床に転がった死体は原形すら留めていなかった。

 

 そして、その死屍累々の中央で、ぽつんと一人、逃げた筈の男が立っていた。短いマントごと赤黒く染まった灰色のロングコートから血を滴らせ、だらりと鉈を垂らすその男は、一寸の迷いもなく彼らへ視線を向けていた。

 

「なっ」

 

 放たれかけたその叫びは、しかし散弾銃の悲鳴に掻き消されていった。

 

 更に数分後。狩人はようやく戦闘を終えた所であった。何人も居たので随分と殺された。柚葉の居場所は既に他の社員から聞き出している。

 

 こうしている暇はない。狩人が地面を蹴る。それでもできるだけ暗闇の中を通った。短いマント付きのこの狩人衣装は、実によく闇に溶け込むのだ。

 

 すぐに柚葉を見つけたが、どうにも様子がおかしい。涙を目に浮かべ全力疾走でこちらへ向かっている。

 

「逃げて逃げて逃げて!!死ぬよ!!!マジで!!!!」

 

 続いて爆音。「白い髪の女幽霊」である。なるほどそういうことか。柚葉とすれ違うなり怪物に散弾銃を浴びせる。怯んだが、依然としてこちらを裂かんとしている。

 

「糞っ垂れめが。貴公に構っている暇など無いのだっ」

 

 怒声を上げながら狩人も走り出す。目の前の道は途中で途切れている。途切れ目から下の階の地面までは十メートル近くある。

 

 絶望に狩人が引き裂かれそうになったその時、翼の音が鼓膜を打った。途切れ目で咄嗟に柚葉を抱き上げると、そのまま上へ放り投げ、飛び降りる。この音は、間違い無い。

 

「儀玄っ。頼むっ」

 

 自由落下する柚葉と狩人の身体は、黒い翼を生やした儀玄に抱えられゆっくりと降り立った。堪らず柚葉に駆け寄り、抱き締めるアリス。瞼にたっぷりと涙を貯めている。すぐさまオボルス小隊の一人、トリガーもやってきた。

 

「さあ、終わらせるとしようか」

 

 飛び降りてきた怪物相手に、儀玄の吐き捨てた言葉であった。

*1
この時空では夏です。




※(2025/Nov/9)柚虐やりすぎたので内容を修正しました。今度からああいうことする時はおまけ集でやります。棲み分けもできない作者ですまない。

あのデスピエロ一瞬で退場させて申し訳無い。戦闘描写は苦手なんだ……話進めたいんだ……

なあイドリー、漁村で怪談集めするなら私も良いとこ知ってるんだ。来ないか。
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