【社説】性別変更の要件 違憲の規定を早く見直せ
司法判断をいつまでも無視してはならない。国会は重大な人権侵害を含む法律の改正を急ぐべきだ。 性同一性障害の当事者が戸籍の性別変更を求めた家事審判で、札幌家裁は要件を定める特例法規定の中で、いわゆる外観要件は「違憲で無効」と判断した。 ホルモン療法や乳房切除手術をしていない札幌市の申立人に対し、女性から男性への変更を認めた。 外観要件とは、性器の切除やホルモン投与による治療で外性器の見た目を変えることを指す。健康な体の治療を要件とするのは、当事者にとって心身の苦痛が大きく、経済的な負担にもなる。 性同一性障害特例法によれば、性別変更の申請は2人以上の医師から診断を受けた上で(1)18歳以上(2)婚姻していない(3)未成年の子がいない-のほか、外観要件を満たさなくてはならない。 生殖機能がないことも規定にあるが、最高裁大法廷は2023年10月、違憲・無効とする決定を出している。 この時は外観要件については判断せず、審理を広島高裁に差し戻した。 広島高裁は24年7月、憲法13条が保障する「身体への侵襲を受けない自由」への過剰な制約だとして「違憲の疑いがある」と指摘した。 今回の札幌家裁の決定は、性同一性障害特例法の制定後に医学的知見が進展し、外観要件を課すことは合理的関連性を欠くことから「違憲」と踏み込んだ。 別の申立人の審判でも、外観要件を違憲・無効とする判断を示している。同様の司法判断は他に少なくとも3件あるようだ。 性別変更を巡っては「外観要件がなければ、女性がトイレや公衆浴場で男性器を見せられる」といった不安が交流サイト(SNS)で広がりを見せた。 これに関して、札幌家裁の決定は「性同一性障害者の多くは、違和感を覚えた自己の体を他者に見られることに抵抗があり、浴場利用を控えていると考えられ、混乱の発生は極めてまれだ」との見解を示した。まっとうな捉え方である。 厚生労働省は公衆浴場の男女別利用について「身体的特徴で判断」と通知している。時間を区切って利用してもらうなど、トラブルを防ぐ工夫ができるのではないか。痴漢などの性犯罪を厳しく取り締まるのは当然だ。 一連の司法判断で、性的少数者の人権を尊重する流れが定着していると言ってよい。にもかかわらず、立法府の動きは鈍い。 最高裁の違憲判断の後、与野党で法改正に向けた動きはあったが、結論が出ないままになっている。 違憲とされた法律が2年も見直されないのは看過できない。国会議員はそのことを強く認識して、当事者の人権保護に取り組むべきだ。
西日本新聞社