「生息数を過小評価してきたのでは」東北でクマ激増の背景に“個体管理の不備” かつては絶滅の危機…現在の森林は“飽和状態”で「鳥獣はこの上なく住みやすい環境」【識者解説】
全国各地でクマの被害が相次ぐ中、5日に和歌山県はツキノワグマを従来の保護政策から管理政策に転換することを決定。これまで人的被害を起こした個体のみ駆除してきましたが、今後は人の生活圏に出没した時点で駆除するとしています。 難易度高い市街地でのクマ駆除 ハンターの驚きの技術とは かつては“絶滅の危機”にあったクマ。なぜここまで出没が増加しているのでしょうか。原因と対策について、兵庫県立大学の横山真弓教授と“深掘り”します。
■かつては“絶滅の危機” 長く続いたクマ受難の時代
横山教授によると、野生動物は獣害を引き起こす一方で、かつては貴重なタンパク源でした。毛皮のニーズも高く、ツキノワグマは大正から昭和初期にかけて乱獲されました。太平洋戦争の直後には一度人間が“ほぼ捕り尽くした”と考えられていて、環境省は2012年、九州ではクマが絶滅したと発表しています。 また、明治期には薪の需要が高まり、乱伐で“はげ山”が増加。戦後に“はげ山”に植樹されたのは針葉樹でした。クマの主食であるドングリが実る広葉樹は減少し、生育環境が悪化したことも個体数の減少につながったといいます。
■兵庫県ではクマにマイクロチップを埋め込み個体管理 西日本と東北で異なる状況
2000年代以降には、西日本の多くの府県が『特定鳥獣保護管理計画』を策定し、クマを保護・管理の対象としました。 中でも兵庫県では、人里に出没したクマを捕獲してマイクロチップを埋め込み、年齢や栄養状態などのデータ収集に努めています。また、罠にかかったクマには唐辛子スプレーを噴射するなど、嫌がる刺激を施してから放す『学習放獣』を導入。 かつては生息数が100頭ほどまで減少しましたが、現在は800頭まで回復し、“絶滅させず増えすぎない”管理が続いています。
一方、東北はもともとクマが多いと言われてきた地域で絶滅が危惧されていた西日本とは状況が異なります。 横山教授によると「西日本のように特別な施策の必要が無かったので、増えているのか高精度なデータがないまま、人里に出たクマを捕っていた」状況が続いていました。「わずかな間で急増したのではなく、長い間生息数を過小評価し続けてきたのでは」と横山教授は分析しています。 環境省のデータによると、全国のクマ捕獲数は2008~2010年度が計2408件だったのに対し、2017~2019年度は計4607件と倍増しており、特に生息数が多いとされる秋田県は2008年度の46件と比較して、2019年度は533件と10倍以上に増えています。県内の推定生息数も2016年度までは約1000頭でしたが、2020年度には約4400頭と4倍以上になっています。