兵庫知事選機に真偽不明な発信続けた立花氏 選挙にも出馬繰り返す

堀之内健史 河原田慎一

 政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首はこれまで、SNSなどを使って自身の主張を展開してきた。十分な根拠を示さない発信でも支持者らによって拡散されることでSNS上などで注目を集め、自身は昨秋の兵庫県知事選のほか、各地の市長選などへの出馬を続けていた。

 斎藤元彦兵庫県知事らに対する内部告発文書問題に端を発した昨秋の知事選では、自身の当選を目指さず、斎藤氏の応援を表明する「2馬力選挙」を実行した。街頭演説やSNSなどで、告発者らに対する不確かな発言や真偽不明な投稿を繰り返した。

 立花氏がSNSなどで取り上げたのは、斎藤氏らを内部告発した元西播磨県民局長だった。

 告発文書は元県民局長が作成し、昨年3月、匿名で一部の県議や報道機関に配布した。斎藤知事から調査を指示された片山安孝前副知事らが元県民局長の公用パソコンを回収。県は内部調査によって告発内容の「核心部分が事実ではない」と結論付け、同5月、懲戒処分を下した。元県民局長はその後、同7月に死去。自死とみられているが、原因はわかっていない。

 立花氏は、この回収された公用パソコンの中に、元県民局長が「収集・作成した」とされる私的な文書が入っていたなどと指摘。十分な根拠を示さず、「(元県民局長は)犯罪行為をしていた可能性が高い」「自殺は自業自得」などの発信を繰り返した。

 選挙後も、元県民局長の公用パソコンに保存されていたとされる私的な文章やファイル名の画像を自身のユーチューブなどに投稿。SNS上で拡散された。

 立花氏はまた、告発文書が指摘した疑惑の真偽などについて調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)の委員を務める県議らについても、自らの発信の対象にした。

 百条委の委員長である奥谷謙一県議の自宅兼事務所前で「街頭演説」し、拡声機を使って「出てこい奥谷」「あまり脅しても自死されたら困るので、これくらいにしておく」などと発言したこともあった。奥谷氏は、県警に被害届を提出。立花氏の「X(旧ツイッター)」の投稿についても、名誉毀損(きそん)の容疑で告訴している。

 今年1月18日には、百条委の委員を務めていた元県議の竹内英明氏が、自宅で死亡しているのが見つかった。県警は自死とみている。

 竹内氏は、昨秋の知事選の投開票日翌日に、百条委の委員を突然辞職していた。選挙期間中からSNS上で竹内氏に関する様々な投稿があったとされ、会派の幹部は「言葉の暴力、ネットの暴力が拡散したため家族が重い精神的負担を抱えていた」として、竹内氏が家族を守るために辞職したなどと説明していた。

 しかし、その後もSNS上の匿名アカウントなどで「内部告発問題の主犯格」と断定する投稿が拡散された。

 立花氏は竹内氏が死亡した翌日、「どうも明日逮捕される予定だったそうです」などと、十分な根拠を示さずに発言した動画を配信(現在は削除)。翌20日、県警の村井紀之本部長(当時)が県議会で「全くの事実無根」と否定する異例の事態となった。竹内氏の妻は今年8月、名誉毀損の疑いで県警に告訴し、受理されたことを会見で明らかにした。立花氏の今回の逮捕は、この妻の告訴を受けたものだ。

 立花氏はSNSでの発信などをしつつ、各地の市長選などへの立候補を続けていた。昨年12月に自身の地元の大阪府泉大津市の市長選に立候補したほか、今年3月の千葉県知事選、6月の兵庫県三木市長選に出馬し、いずれも落選。7月には「兵庫県の問題がくすぶり続けている」として、参院選に兵庫選挙区から立候補した。街頭演説で「斎藤知事を応援する人は立花孝志に投票して」と呼びかけたが落選した。

 今月投稿した自身の動画では、学歴詐称問題で失職が決まった静岡県伊東市の市長選に「立候補する方向で動いています」と意欲を見せ、10日に伊東市内で記者会見をするとしていた。

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この記事を書いた人
河原田慎一
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
公共交通、イタリア文化、音楽
兵庫県の内部告発文書問題

兵庫県の内部告発文書問題

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