日本の今後の政治にも活かせるゾーラン・マムダニ氏の選挙戦術 #エキスパートトピ

鈴木崇弘政策ディスラプティブストラテジスト、早稲田大学招聘研究員
マムダニ氏は、2025年NY市長選挙で、草の根・どぶ板およびSNSを融合したハイブリッドな選挙戦で勝利した写真:ロイター/アフロ

 ゾーラン・マムダニ氏のニューヨーク市長選での勝利を導いた選挙戦術は、「草の根の熱意」と「巧みなデジタル戦略」のハイブリッドな融合を核にしたもので、従来の民主党主流派が行うキャンペーンの常識を根本から覆すものとして、国内外で大きな注目を集めています。

ココがポイント

マムダニ氏の選挙運動は同氏自身に関してではなく、生活費高騰に苦しむ平均的なニューヨーカーの負担軽減に焦点を当てている
出典:Bloomberg.com 2025/11/4(火)

マムダニに関するネット上のコンテンツの多くは、陣営や政治インフルエンサーだけでなく、ファンによって生み出されたものだった
出典:WIRED.jp 2025/11/6(木)

マムダニ氏はまさに「ドブ板作戦」をニューヨーク市を代表するマンハッタンで展開したことになる。
出典:FNNプライムオンライン 2025/7/7(月)

選挙で全勝したことで、トランプ氏の政権復帰以来の猛攻によって下げられた士気を高め(中略)共和党側に警鐘を鳴らすことになる
出典:AFPbbNews 2025/11/5(水)

エキスパートの補足・見解

 ゾーラン・マムダニ氏の選挙戦術は、「草の根の熱意」と「デジタル戦略」を融合させた、現代進歩派のモデルです。

・生活費問題への集中: キャンペーンは市民の切実な「アフォーダビリティ(手頃さ)」に焦点を絞りました。家賃凍結、富裕層増税など具体的で急進的な公約を掲げ、「ハラルフレーション」などの造語で経済的苦境を分かりやすく訴求しました。

・SNSと多様な言語での発信: TikTok/Instagramでは、政策を型破りな「スタント」と結びつけた愉快な動画を大量発信し、政治を「自分事」と感じさせ、若者層にリーチ。多言語での発信により多様な移民コミュニティも取り込みました。

・草の根の動員と小口献金: 数万規模のボランティアを動員した徹底的な戸別訪問で「草の根のグラウンドゲーム」を構築。小口の個人献金を資金源とし、企業の影響を排除してメッセージの信頼性を高めました。

 これらの戦術により、マムダニ氏は「世代交代と変革」を求める若年層の熱狂的な支持を獲得しました。これらの戦術は、日本の今後の政治のやり方にも活かせそうだ。

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政策ディスラプティブストラテジスト、早稲田大学招聘研究員

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与(大臣付)、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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