板橋資産家殺害から1年 物証は焼失、目撃情報も乏しく
東京都板橋区で昨年5月、不動産賃貸業の瀬田英一さん(当時74)と妻、千枝子さん(同69)が殺害、放火された事件は25日、未解決のまま発覚から丸1年を迎える。警視庁板橋署捜査本部は金銭目的の犯行との見方を強めているが、火災で多くの物証が焼失、深夜の雷雨で目撃情報は乏しく捜査は難航。犯人の侵入・逃走ルートや殺害時刻も特定されていない。
瀬田さん宅近くの東武東上線大山駅前など3カ所で23日午前、捜査員ら約40人が通行人に「何か知っていることがあれば連絡を下さい」などと呼びかけ、情報提供を求めるチラシ約3千枚を配った。
これまで捜査本部に寄せられた情報はわずか70件前後。若松敏弘捜査1課長は「一件でも多くの情報を寄せてほしい」と話す。
捜査本部は火災の発生が午前0時過ぎであることから、殺害時刻は前日深夜とみているが、当時は激しい雷雨だったため目撃証言は極めて乏しい。付近の防犯カメラの映像も回収したが、不審な車や人物は確認できなかった。このため犯人の侵入、逃走のルートや手段は不明のままだ。
捜査に立ちはだかる、もう一つの壁は、火災で大半の物証が焼失してしまったことだ。血液やDNAの検出はままならず、凶器も特定には至っていない。室内から見つかった数千万円の現金に犯人が手を付けたかどうかも分かっていない。
捜査本部は当初、遺体の状況などから、顔見知りの犯行の可能性が高いとみて、夫妻のなじみの飲食店やパチンコ店の関係者を中心に事情を聴いたが、私的な付き合いや仕事上の知り合いからは事件への関与が疑われる人物は浮上していない。
こうした状況から不動産物件を多数抱えていた瀬田さんに対する金目当ての犯行との見方を強めており、瀬田さんと直接面識のない人物による犯行の可能性も含め、捜査範囲を広げて犯人像の絞り込みを急いでいる。