犯人から賠償を得ることもできず

「ひき逃げをしても、まず逃げ切ることはできないはず」

 多くの人は、警察のドキュメンタリー番組などで「地を這う捜査」の様子を視聴し、そう信じているのではないでしょうか。

 たしかに令和5年、死亡ひき逃げ事件の検挙率はほぼ100%でした。しかし、被害者が死亡していない場合は、犯人が検挙されず、泣き寝入りを強いられている被害者がいるのもまた事実です。

 令和6(2024)年版の「犯罪白書」によれば、ひき逃げ事件(人の死傷を伴う交通事故に係る救護措置義務違反)の発生件数は、平成12年以降急増し、17年からは減少傾向にありましたが、令和3年以降、再び増加し続け、令和5年は7183件となっています。

 全検挙率(死亡、傷害含む)については、平成16年に25.9%という極めて低い記録を残した後、上昇傾向にあり、令和5年は72.1%まで上がっています。しかし、それでも4件のうち1件は未解決のままということになり、被害者は賠償を受けることもできず、悶々とした時間を過ごしながら、過酷な状況に置かれているのです。

ひき逃げ件数と検挙率の推移(令和6年版 犯罪白書より)