ウワバミの化け物共
「でもなんか楽しいね」
と、お義父さんが今回の狩りを楽しんでいる様ですぞ。
まあ水中戦は滅多にしませんし、お姉さんのお姉さんは水中特化と聞きます。
海の中は透き通っていて綺麗ですからな。
問題は俺とお義父さんに経験値が入らない位ですぞ。
他の連中には入りますがな。
「ナオフミちゃん、近くの島で休憩したら後でお姉さんと一緒に深い所に行ってみるかしら? お姉さんのお勧めポイントがあるわよ?」
「そうだねー……ラーサさんはさっきの沈没船でまだ探したいみたいだし、何処までいけるか気になるかな……かと言ってサディナさんの強さとかを考えたら……」
「私は大丈夫よー。ナオフミちゃんや他の子達ががんばってるしね」
「なの! もっと深い所に行こうなの! そう……フィロリアルが来れないくらいの所まで!」
「むー! サクラ負けないー」
「ドラゴンに負けるのはシャクですわ!」
「そんな事言って良いなの? レースに出るには運動のしすぎもダメじゃないなのー?」
ライバルがユキちゃんに挑発的に言いますぞ。
いい加減にしないと刺し殺しますぞ?
「く……悔しいですわ」
ユキちゃんが悔しげに言いました。
その気持ち、俺には痛いほどわかりますぞ。
「何だかんだで仲が良いのねー」
「なの? フィロリアルはライバルなの!」
「あら? その子の体調を気にして嫌味を言ったんじゃないのかしらー?」
「ガエリオンちゃん、ツンデレだったのか……」
「な、なの!? 違うなの! ガエリオンはそんな事を考えて言ったんじゃないなの!」
お姉さんのお姉さんの言葉にライバルが慌てふためいていますぞ。
そうですな!
ライバルがフィロリアル様の事を心配するなどありえませんぞ!
お姉さんの勘は意外と悪いですぞ。
「まあまあ、とはいえそこまで行くとなると本格的な水中装備を出した方が良いかもね。とりあえず一旦食事休憩してから決めよう」
「わかりましたぞ!」
「じゃあサディナさんに付いて来て、小舟まで連れてってくれるよ」
「はーい。お姉さんがんばるわよ」
そう言ってお姉さんのお姉さんに掴まったお義父さんが進んで行きます。
「あー待ってなのー!」
「待ってー」
ライバルとサクラちゃんが後に続きますぞ。
「ではユキちゃん、行きますぞ」
「わかりましたわ!」
俺はその後に続いていきます。
なんとなくですがお義父さん達にお姉さんのお姉さんが馴染んでいる様ですぞ。
さすがフィーロたんが頼った程の逸材ですな。
で、近くの島の浜辺で休憩を取りました。
パンダはサルベージした貨幣を大事そうに持って勘定をしている様ですな。
やはりこういう所は傭兵という事でしょう。
そういえば前回の周回でもお義父さんからもらった金銭を大事そうにしていましたぞ。
こういう作業が好きなのですかな?
「これだけあれば何が出来るか……酒? いや、装備の新調をして……」
などと分け前に関しても考えている様ですな。
「ラーサさん? どう? 楽しめてるー?」
「ああ、悔しいがかなり楽しめて来てるねぇ……」
パンダが不敵にお義父さんの問いに答えますぞ。
お前が楽しいのは金なのではないですかな?
「それは何よりだね。で、後々お願いしたい事もあるんだけど、前向きに検討出来るかな?」
お義父さんがさりげなく聞くと、パンダがビクーンと全身の毛を逆立たせてお義父さんの顔を見ますぞ。
どんな反応ですかな?
「何が望みだ!?」
「そこまで警戒しなくても……」
「あらー? じゃあ今夜もお姉さん達と楽しく騒ぎましょうよ。ササちゃんとのお酒もお姉さん好きよー」
「あたいを酔いつぶすのが目的か! このウワバミの化け物共め!」
何を言っているのですかな?
パンダはどうやら何か勘違いしている様ですぞ。
きっとお姉さんのお姉さんが酒を好んでいるからでしょうな。
お義父さんがやりたい事はパンダの勧誘ですぞ。
「ウワバミの化け物共って、心外だなー……」
ボリボリとお義父さんは頬を掻きますぞ。
「あたいは間違ってない!」
「サディナさんも誤解を生むからちょっと黙ってて」
「あらー?」
お義父さんはお姉さんのお姉さんに向けて、人差し指を自分の口元に当てて注意しますぞ。
それからパンダの方に振りむきました。
「俺の頼みってのはラーサさん、貴方達を雇いたいんだ。傭兵として仲間になって欲しい」
するとパンダは先ほどの脅えた様子は何処へやら、若干面倒そうに頭を掻いてますぞ。
「なるほどねぇ。つまりあたいを戦力として勧誘したいってことか。その為に色々と面倒な事をして輪に混ざったりこうして強引に狩りに行かせた訳かい?」
「そう、なるのかな? まあ、ラーサさんと話をして色々と楽しめたからそれが全てじゃないよ。いろんな意味を込めて一緒にいたいかな」
「世辞は良い。あたいの何処に興味を持ったかは知らないけどね。あたいは安くはないが良いのかい?」
お義父さんはパンダに金貨を一枚、弾いて渡しますぞ。
「うん。もちろん雇用期間を含めて色々と商談をするけどね。悪い話にする気は無いよ」
お義父さんが弾いた金貨をパンダは受け取り、お義父さんの顔を見て不敵に笑いますぞ。
それから若干諦めた様にため息交じりに答えておりますぞ。
「わかったよ。まったく……割りは良さそうだけど面倒な仕事になりそうだねぇ」
「損には絶対にさせないからさ。傭兵ってのは常に死と隣り合わせな仕事なんだし、俺と一緒に居てもそれは変わらないよ」
「わかりやすくていいねぇ。ま――」
「ササちゃんのアイドル計画よね? ナオフミちゃん」
お姉さんのお姉さんの一言でパンダは転びそうになってますぞ。
パンダはお姉さんのお姉さんが苦手なのですかな?
「サディナさん、さすがにそこまでは……まあ、ラーサさんが喜ぶ範囲で可愛くしちゃうのは賛成だけど」
「やっぱりあたいをおもちゃにする気か!?」
「だから違うから安心してって。俺も可愛くなったラーサさんを見たいだけだよ」
と言ってますがパンダは警戒を緩める気配は無いようですぞ。
「「「兄貴の持ってきた弁当ウメー!」」」
なんて合間にパンダの配下である獣人はお義父さんの作った弁当を夢中で食べておりました。
ちなみにお義父さんはその後も狩った魔物で料理を振舞っていましたな。
「そんで元康くん、ユキちゃんの運動が終わったみたいだけどどうするの?」
「そうですなー。とりあえず早めにユキちゃんを舎に戻して生産者と次の打ち合わせをしますぞ」
推定ですが、何処かを走って感覚を掴むのでしょうな。
そのような予定を組んでいた覚えがあります。
確か芝の走る感覚を掴むとか言われた気がしますぞ。
「うん、わかったよ」
「あら? じゃあお姉さんが送りましょうか?」
お姉さんが何やら気を使ってますぞ。
「問題ないですぞ。俺にはポータルがありますからな」
「そう?」
「ですぞ! ではユキちゃん、お食事も終わったので帰りますかな?」
「わかりましたわ! 適度な運動、適度な食事! これもレースの為ですわ」
「じゃあ元康くん、夕方には帰るから」
「はいですぞ。ポータルスピア!」
と、俺はユキちゃんを連れて先にゼルトブルに戻ったのですぞ。
ちなみにその時俺が転送で消えた事を驚いたパンダがここで、お義父さんが勇者である事に気付いたと帰って来たお義父さんが仰っていました。
俺はその足で生産者の所へ行って、指示を仰ぎました。
やはり芝の感覚をユキちゃんに覚えさせる練習があったのですぞ。
ユキちゃんも芝具合に関しては満足していましたが、力を込めて踏みつけると芝がベロンとはがれおちてしまうと言う問題が浮上しました。
その為に、芝をいたわってなおかつ速く走る練習を余儀なくされました。
「いやぁ! 楽しかったねー」
お義父さんが何やら大興奮でポータルで帰還しました。
あの後何か良い事でもあったのですかな?
「おや? パンダは何処へ行ったのですかな?」
お義父さんの後ろにはお姉さんのお姉さん、サクラちゃんに助手とモグラしかおりません。
ライバルは何処ですかな?
「あー……ラーサさんはサルベージした宝を小舟に満載にさせて漕いで帰るって聞かなくてね。手伝うって言ったんだけど、本人が大丈夫って聞かないから、置いて行く事になっちゃったよ」