ファイアフラワー
「あらー」
お姉さんのお姉さんがお義父さんの演説に声を漏らしておりますぞ。
当然の反応ですな。
お義父さんの領地……元々はエクレアの親の領地は最初の波が発生した場所だと聞いています。
そしてお姉さんが住んでいた村でもあるのですぞ。
お姉さんのお姉さんですから、波より以前はそこに住んでいたでしょうな。
「面白そうな事をしてるのねー」
「面白いのかなー? とりあえずは……何か大所帯になっちゃったね」
「モグラの村に帰すのですな」
「一応ね。力を貸すにしてもまずは生活の基盤から行った方が良いと思うし……もちろん俺達からの協力は惜しまないよ」
お義父さんはモグラ達を見渡しますぞ。
「フィロリアル達の様な人数は居ないけど、城でずっと抱えているのは難しいと思うからね」
「フィロリアル様は自分で食事を調達も出来ますからな」
野山を駆けて食料を求める事もフィロリアル様はやっていますぞ。
その点で言えば村の奴隷達はお義父さんが開拓した植物の実や指示で狩った肉しか食料にしていません。
おお……やはりフィロリアル様こそ至高の存在なのですな。
「不安だと思うならフィロリアルを村の警備に……」
という所でお義父さんは言葉を止め、ユキちゃんとサクラちゃんに目を向けますぞ。
そして考える様な表情で悩み始めました。
なんですかな? その目は。
「何か考えてるー?」
「うーん……」
「モグ……イミアちゃんの親戚達が野蛮なフィロリアルに食べられるかもしれないとなおふみは不安なの!」
これ幸いにとばかりにライバルがほざきますぞ。
なんですと?
その口にこの槍をぶち込んでやっても良いんですぞ?
「だろうな。イミアが何回食われかけたか……」
錬が援護射撃とばかりに抜かしましたぞ。
なんですかな?
フィロリアル様の悪口は許しませんぞ!
「ユ、ユキちゃん、フィロリアル達の中で大人しいというか、イミアちゃんをちゃんと仲間だと認識している子を見繕って欲しいんだけど」
「わかりましたわ」
ユキちゃんがフィロリアル代表ですからな。
こういうお願いはユキちゃんにこそ相応しいでしょう。
「とりあえず尚文、後でルーモ種の連中は俺がメルロマルクに送り届けてやる。樹の方も心配だし、ついでに会ってくる」
「俺が代表して行った方が良いんじゃ……」
お義父さんが錬の提案を拒むように言うと錬は片手を上げて軽く振りましたぞ。
「何だかんだで助けるのは同意するが、俺達には波に備えた信用が置ける仲間の確保が必要なんだ。もちろんイミアの親戚だから疑っている訳じゃないけどな。だが尚文、交渉能力の高いお前にしかあのパンダは勧誘できない。なら、自由に動ける俺が行った方が良いだろう」
おお、錬が凄く真面目な表情でお義父さんの仕事を引き継ごうとしていますぞ。
錬も偶には役に立ちますな。
「そうだな。メルロマルクの亜人達は私の管轄でもある。このくらいならイワタニ殿の代わりを務められるだろう」
エクレアもやる気を見せていますぞ。
つまりエクレアも錬を手伝うと。
それなら人員的に問題は無いでしょうな。
「再会を祝ってこれから酒場で食事を取るが、その前に寝る所の確保も必要だろ?」
「まあ……俺達が宿泊している所は、そんな大人数は泊れないからね」
「イワタニ殿、私はアマキ殿と一緒にメルロマルクの城で寝る場所の確保を女王にお願いしてみる。先にイミア殿達の再会を祝して楽しんでいて欲しい」
「わかったよ。だけどそんな仰々しいパーティーとかここでやって良いのかな?」
「あの……みんなお腹空いていますし、食事が出来れば十分です」
モグラがお義父さんに提案しましたぞ。
モグラ達も同様の反応ですな。
「うん、じゃあ近くで団体客を受け入れてくれそうなところに頼んでみるね」
お義父さんはこういう事が得意そうですな。
「では行こう。アマキ殿」
「ああ、それじゃあ後でな」
「本当に悪いね。二人とも」
「どうせ酒は飲めないしな。飯は尚文が一番だ。代わりに後で作ってくれよ」
「これは私自身のしなければならない責務なのだ。イワタニ殿」
と言って、錬とエクレアはポータルで飛んで行きました。
そうして俺とお義父さん、ユキちゃん達、モグラ達が残りました。
「俺はどうしたらいいですかな?」
「一緒に騒いでくれれば良いかな? 元康くんもイミアちゃん達の気持になってくれれば良いよ。例えば……フィーロって子が過酷な労働奴隷として使役されていた所をやっと再会した……とかね」
おお……俺の脳内にその状況がマジマジと映し出されますぞ。
檻に入って苦痛の表情を浮かべ、ボロボロになったフィーロたんを俺は保護するのですぞ。
そんな状況で俺が出来る事は傷の手当て、そして食事の提供……寝る場所の確保ですな!
こんな時に、俺がやらねばならないのは……フィーロたんの笑顔を取り戻す事ですぞ!
「わかりました! この元康、ここにいる者達の為に一肌脱いで色々とやりますぞ!」
お義父さんが何やら『しまった』という顔をしております。
何故そんな顔を? ここは笑う所ですぞ。
そうですな。この元康、何か面白い芸でもしてみますかな?
「うわ! やり過ぎた! 元康くん。もうちょっと穏便に、みんなが楽しめるように意識してくれれば良いだけだから! 雑談にしても宴会芸にしても何でも」
「はっはっは! 俺は盛大に盛り上げますぞ! そうですな! 再会を祝して花火を上げましょうぞ!」
俺は意識を集中して魔法を唱えますぞ。
「も、元康くん! 誰か、元康くんを止めて!」
「大丈夫ですぞ。お義父さん! 俺はフィーロたんと再会出来た気持ちで魔法を唱えますからな」
間違ってもフィーロたんに怪我などさせられませんし、お義父さんが前に注意した。被害を出さない様にと言う言葉を守りますぞ。
「アル・リベレイション・ファイアフラワー!」
俺は創作魔法を空高く打ち上げましたぞ。
大本はプロミネンスですぞ。これに弾ける魔法であるバーストファイアと言う魔法を混ぜ合わせました。
魅せ魔法ですぞ。
ヒューッと音を立てて俺の唱えた魔法がゼルトブルの空高く舞い上がって大きな花火となりました。
「わー……凄く綺麗だけど、勝手にやって何か言われたりしないかな?」
「大丈夫、ちょうどいいと思う」
助手がそこで何やら紙を広げていますぞ。
「えっと、ゼルトブルの夜の時間帯は花火の打ち上げ許可が降りる? なので上空の飛行禁止時間? うわー……助かったね」
「商売と傭兵の国なの。それに人のいる地を空を飛ぶ野生の大きなドラゴンや魔物は通らないなの」
「この調子なら環境問題も大丈夫そうだけど、問題は元康くんの魔法ってことでしょ。火事とかになったらどうしよう」
「大丈夫ですぞ。その点は抜かりありませんからな」
魅せ魔法なので、物を燃やす効果はありませんぞ。
そういう調整も出来ますからな。
ちょーっと面倒なプロセスと消費魔力、詠唱時間が長くなる難点がありますがな。
ちなみに敵味方の区別などは出来ません。
味方にダメージの入らない便利な範囲攻撃魔法が作れれば便利ですな。
花火を上げる便利な魔法なのですぞ。
「まあ、元康くんがフィーロって子との再会を喜ぶつもりでやってくれたんだから、問題はないのかな?」
などと言いながら俺が打ち上げた花火をお義父さん達は見届けたのですぞ。
そんなこんなでモグラ達との食事会ですぞ。
俺は宴会芸として火の魔法で小さな蝶や小鳥を作って踊らせたりさせました。
「元康くん、いろんな芸が出来るね」
「これくらいなら錬や樹だってきっと出来るようになりますぞ」
お義父さんは回復と援護ですから系統の違いで出来ないでしょうな。
ただ、これは細かな操作を要するので本当に宴会でも無いとやりませんな。
「危険ですから触ってはダメですぞ」
言わば火の魔法の変更ですからな。
俺の周りを舞わせて、魅せているだけなのですぞ。
威力はそれ程ありませんが、触れると熱いですからな。
「さすが元康様ですわー!」
「アレくらいガエリオンだって出来るなの!」
何やらライバルが騒いでいますが知りませんな。
ユキちゃんの賞賛は素直に受け取りますぞ。
で、モグラ達は各々食事を取ってますな。