湯
そんなこんなでカルミラ島での日々が過ぎて行きました。
「俺はこんな着ぐるみが手に入ったよ」
「……俺はこれだな」
「僕は――」
お義父さん達はそれぞれの島のボスのドロップを見せ合って、着ぐるみ等の談義をしております。
お義父さんはペングー着ぐるみで錬はドッグ着ぐるみ、樹はスクイレル着ぐるみで俺はラビット着ぐるみでしたな。
「こういうネタ装備って地味に能力高いね」
「絶対に着ませんよ。と言うかなんで尚文さんは迷いなく着てるんですか!」
「なんか面白そうだったからさ、結構バカに出来ない性能をしてるよコレ。ガエリオンちゃんやフィロリアルのみんなと泳いでたら面白かったよ」
「ふ、ふん! 趣味じゃ無いな」
「スクイレル着ぐるみは木登り技能があるようですがー……」
「樹には良いかもよ? 木に登って射撃! 一方的に攻撃だね」
「このネタ装備で戦うんですか!?」
「時には必要かもよ?」
「嫌ですよ!」
「俺はラビット着ぐるみを着るのも視野に入れますかな?」
足が速くなるのですぞ。
ですが、ちょっと視界が悪いですな。
どちらかと言えばフィロリアル様の着ぐるみがよかったですぞ。
「好みかな? 城の鍛冶師とかに頼んで効果だけ抽出できないかとか頼んで見るのも手だけどね」
「出来れば使いたくないですね……」
「ああ、このネタ装備で戦うのは勘弁してほしい。もはや勇者でも何でも無いぞ」
「何も俺達じゃなくても良いでしょ?」
と、お義父さんがエクレアや助手、モグラ辺りに目を向けますぞ。
ちなみに魔物枠という事でこの着ぐるみはフィロリアル様達に効果がありませんからな。
視線を振られたエクレアがビクッとお義父さんに顔を向けますぞ。
どうやら嫌な様ですな。
「イワタニ殿、もしや私達にそれを着ろと言うつもりはないだろうな」
「状況次第じゃ着てもらった方が安全かもね」
平然と答えたお義父さんにエクレアが小剣の柄を握り締めて出発とばかりに出かけようとしておりますぞ。
相当嫌な様ですな。
「ウィンディア殿、イミア殿もLv上げをしに行こうではないか! このままではアレを着させられかねん!」
「そんなに嫌か」
「嫌でしょう。もはや罰ゲームですよ!」
おや? 俺の記憶違いでしょうかな?
樹辺りが仲間に着せていた様な覚えがあるのですがな?
そう、ストーカー豚に。
「勇者殿達、私達のLvを上げたら資質向上を頼むぞ!」
「え? あー……うん。良いけどね」
などとエクレアは足早に狩りへ出かけました。
助手やモグラも大分戦えるようになってきたそうですな。
元々魔法担当なのに、がんばりますな。
それから別行動をした俺達が一狩り終えた頃には陽が沈みかけていました。
いつも通り合流し、話をしているとエクレアも帰ってきました。
「さーてと、エクレールさんも狩りから帰って来たみたいだし、露天風呂でゆっくりしたら?」
「ふむ、そうさせてもらおう。イワタニ殿、イミア殿やウィンディア殿に頼んで私の着替えを着ぐるみに変えない様にな」
「俺がそんな悪戯する様な人に見える訳!?」
心外そうにお義父さんはエクレアに答えますぞ。
ですが半眼の錬と樹がそれぞれお義父さんへと追い打ちをしました。
「やりそうではありますよね。普段は比較的に常識人なのに、悪ふざけをする時がありますし」
「だな。もしもそんな事件が起こったら一番に疑われるのは尚文だろ」
「信用ないなー……まあ良いや、露天風呂にでも入ってゆっくりしようよ」
お義父さんはがっくりと肩を落としながら答えますぞ。
ちなみにフィロリアル様達も定期的に水浴びに来ているのですぞ。
「そうだな。ぶっちゃけ温泉で羽を伸ばせる分だけここに来たかいがあると言うもんだ」
お義父さん達は楽しげに入浴タイムとなりました。
温泉は日本人の魂ですな!
「元康さんはこの温泉にはどれだけ入った事がありますか?」
樹が俺に聞いてきましたぞ。
俺は思い出す限りの出来事でカルミラ島に来た事を考えてみますぞ。
「そうですな。最初の世界ではお義父さんがポータルを取って、割と毎日入りに来ましたな。他の周回だとLv上げに来た時に入りますな」
「活性化が終われば、ポータルが取得できるらしいですからね。毎日入れるなら良いのでしょうけど……」
「ここの温泉は呪いとかにも効果があるらしいぞ」
その通りですぞ。
実際、最初の世界のお義父さんは呪いを回復させる為に通っていましたからな。
「万能ですね。そしてポータルを取得したら便利でしょうね」
「国の援助もあって入り放題……良い生活だな」
「最初は野宿をするのにも不便さを感じてましたけど……変わりましたね。僕達」
「最初の数日が厳しかったねー」
思い出に浸る様に温泉までの道のりでお義父さん達が語り合っておりました。
そして入浴タイムですな。
「じゃあエクレールさん。みんなの面倒大変だろうけどお願いするね」
「ああ……とは言っても温泉内で暴れる者はいないぞ。みんな大人しい……いや」
エクレアがライバルとサクラちゃんを見ております。
「なの?」
「んー?」
毎晩、垣根を越えて男湯に遊びに来ていますからな。
「こっちはこっちで大変だけどね」
「元康様! 今晩もユキは待っておりますわ」
「ですぞ」
「あー……そうだな。どっちも大変だな」
などと言いながらお義父さん達は脱衣所へと入って行きました。
そしてすぐに服を脱いで温泉にダッシュですぞ!
「元康! 今晩こそ覗きはさせないぞ!」
錬が俺を追い掛けて来て言いました。
最初の日は錬も樹も乗り気でしたが、何故か最近では俺を阻止しようとしてきますぞ。
お義父さんは楽しげにしておりましたが、本格的に覗くまでには至りませんでしたな。
むしろサクラちゃんとライバルが侵入してきた所為でそれどころでは無くなってしまっていた様ですぞ。
「ははは、これは見られる者の美を高める儀式なのですぞ!」
「ウィンディア、イミア、キタムラ殿が垣根から顔をのぞかせたら魔法で妨害するのだぞ」
「うん」
「あ、はい……」
エクレアの声が聞こえてきますな。
そんなの無駄無駄! ですぞ。
「ささ、コウ、足場になるのですぞ」
「えー……イワタニに怒られるからやー……」
む、コウもテンションが低めですぞ。
みんなノリが悪いですなー。
「連日覗きをしようとしていたらそうなりますよ」
「では他のフィロリアル様に頼みますかな?」
「く……足場になってやりそうな奴が多過ぎる!」
「これもフィロリアル育成の弊害ですね」
錬と樹が呻きましたな。
そうですぞ。無駄な抵抗は早くやめるべきですぞ。
「はっはっはー! 錬、樹もみんなの裸体を見て目の保養にするのですぞ」
「なのー! ガエリオンはなおふみに見てもらって誘惑をするなのー!」
「させないもーん!」
ライバルとサクラちゃんが小突きながら垣根を越えようとしておりますぞ。
「こら! 今日こそ行かせないぞ!」
「ガエリオン! そんな事しちゃダメ!」
「妨害が多いほど燃え上がるなの!」
声に錬と樹が呆れるように溜息をもらしますぞ。
「……女湯も大変ですね」
「そうだな。尚文、お前は別の時間に入ったらどうだ?」
「俺だけが男湯に入ってたらあの二人が乗り込んでくるんじゃないの!?」
「良いじゃないですか。尚文さんのヒロインでしょ?」
「樹はあの二人をそんな目で見てたわけ? 子供だよ? 手なんて出せる訳ないでしょ!」
心外そうにお義父さんは言っていますな。
そうですな、ライバルにお義父さんを取られる訳にはいきませんぞ!
「コウさんの婚姻話を聞いてまだそういう事を言うんですか?」
「そうだ。あんな外見をしてはいるが、あくまで人外だ」
「あのね……」
お義父さんが呆れるように眉間に手を当てておりました。
「この隙に俺は身体能力で垣根に寄りかかって覗きますぞ!」
「あ、元康!」
「させませんよ!」
と、俺が垣根を越えた天国を見ようとした所で、何やら見覚えのある壁が俺の目の前に出現しました。
これは……!
「エアストシールド」
「ナイスだ尚文!」
お義父さんが妨害するとは!
ですが俺は負けませんぞ!