フィロリアル定例会議【下】
「そうだね。俺の方も似た感じだね。若干背が高めの子がいるよ。応答も大人びてる感じだね」
「やはり尚文さんの所でもいましたか。元康さんは?」
「フィロリアル様は等しく愛らしい天使ですぞ」
錬と樹が何やら俺を半眼で見ておりますぞ。
なんですかな?
フィロリアル様に文句でもあるのですかな?
「俺が元康くんの代わりに報告すると、元康くんが世話をしている子達は揃って幼女と少年の姿をしているね」
「この違いは何なのでしょう?」
「うーん……とりあえず背格好が高めの子は理解度と言うか指揮能力が高めの傾向があるね。他の子の引率をしようとする傾向があるよ」
お義父さんの分析に錬も樹も納得した様に頷きますぞ。
「数が多くなって手が回りきるか不安でしたが、見た目の年齢が高めになるフィロリアルが僕の指示を察してくれたお陰で戦いやすかったですよ。あ、もちろん、コウさんとサクラさんの方が上のようでしたけど」
「リーダーシップとでも言うのだろうな。ただ、エクレールが指示をしていた所為か、俺の方はエクレールの真似と補佐をしていた様に見える程度だった」
「お義父さんの方はどうでしたかな?」
「手伝いって感じで補佐してくれる子が何羽かいた感じかな? 背が高くなる子も全体で見ると一割……かな? 責任感の強い性格の子に多い気がするね」
おお、フィロリアル様は環境によって色々と差異が出るのですな。
色々と勉強になりますぞ。
「ブリーダーの話だと、競羽用のフィロリアルは足が速くなる食事を早めにさせるのが鉄則らしいけどね」
「と言うか……尚文さん、僕と錬さんとで気付いた事があるんですけど」
「そういう情報があればなんでも言ってよ」
樹が手を上げて挙手しましたぞ。
なんですかな?
「僕と錬さんがそれぞれ面倒見ているフィロリアルなんですけど、目の色に関してちょっと統計が……」
「何かあるのですかな?」
「……偶然なのかもしれないが、目の色が同じ奴が数匹いる。もちろん、体毛と同じ色の奴も多いんだがな」
「親戚筋と分析するのが良いのかな? 一応、偏っている所もあるし」
おや? お義父さん達の問答で若干思い出した事がありますぞ。
「お義父さん、そう言えばサクラちゃんを初めて購入した時と、次の周回で目の色に違いがありました」
そういえばそうですぞ。
サクラちゃんは俺が登録をした時、目の色もサクラ色で、お義父さんが登録すると目の色が青くなりました。
「ループしないとわからない事実ですね。魔物紋で登録した主でも影響が出るんでしょうか?」
「待って……確かブリーダーの人に話をした時に似た様な事を言ってた様な気がする。フィロリアルレースのブリーダーになるには才能がいるとか何とか……もしかしたらこれを指しているのかもしれないよ?」
お義父さんがフィロリアル生産者からもらったらしい資料に目を通しますぞ。
パラパラと捲っております。
そうして該当の情報を見つけたらしく、お義父さんは俺達に見せました。
「あった! ほぼ同等の兄弟のフィロリアルを別々の主に育てさせる事で起こる差異実験。結果は若干の変化があるみたいだね」
「よくよく考えたら勇者が育てると特別な成長をする訳ですから、主として登録した相手によって変化があるのは自然なのかもしれません」
「そうだな……だが、これはもしかしたらフィーロって奴を元康が手に入れるのは……」
錬がその先を言おうとして黙りこみましたぞ。
なんですかな? 無理とでも言うのですかな?
俺は諦めませんぞ?
「元康くんも諦める気は無いでしょ。とりあえず、メルロマルクを中心に調査はしているし、フィーロって子がもしかしたら育成の仕方で産まれる子かもしれないという検証もある訳だしね」
「サクラさんに近い……けど色合いと性格が全然違う……」
「そもそもだ、尚文。結構な数のフィロリアルが天使化しているが、フィロリアル時と違う髪の色をしたフィロリアルはいるのか?」
錬がお義父さんに尋ねますぞ。
お義父さんは指摘されて困ったように眉を寄せつつ、樹と俺に視線を向けます。
樹は首を横に振りましたな。
「残念ですが、僕が育てたフィロリアル達で天使の姿になった時に羽毛の色と異なる髪の色の子はいませんでした」
そうですな。俺もそうですぞ。
よくよく考えてみればフィーロたんは他のフィロリアル様には無い特徴を兼ね備えた唯一の存在だったのですな。
これは目から鱗ですな。
フィーロたんが至宝であるのは間違いない、何よりの証ですぞ!
「なんか元康さんが目から鱗とばかりに遠い目をしてますが、どうします? 何か目に見えない条件が僕達の前に立ちはだかっているんじゃないのですか?」
「かもしれない……ね。天使の姿の時にフィロリアル時と違う髪色になる条件がわからないとフィーロって子を見つけてもそうならないのかもしれない」
と言う所でお義父さんが小声で何やらポツリと呟きました。
「……やっぱりサクラちゃんがその条件を踏んだらフィーロって子になるんじゃないのかな……?」
俺には聞こえましたぞ。
違いますぞ!
サクラちゃんはサクラちゃんでフィーロたんでは無いのですぞ!
「ねえ元康くん、今までの周回でフィロリアル時と天使の姿の時とで違う髪色をした子はいなかった?」
「元康さんの記憶力でわかるんですか?」
「フィロリアルの事となると匂いまで覚えてる人だからね。何かあるかもしれないよ?」
お義父さんが仰っている所で俺はフィーロたんの事を思い出しているのですぞ。
ああ、フィーロたん……貴方はどこにいるのですぞ。
そんなにもお義父さんはフィーロたんが他のフィロリアル様とは異なる姿になる様に育てたのですかな?
世界で唯一の天使としてお義父さんはフィーロたんを生み出したのですな。
フィーロたんは希少種だったのですぞ!
感激しながらも俺は、お義父さんが質問している事を反芻しておりますぞ。
今まで出会った数々のフィロリアル様達、その中でフィロリアル時と異なる髪色をした天使の外見を持ったフィロリアル様と言ったら……。
背格好はユキちゃん達と同じく幼い外見ですぞ。
夜の海の様に深い紺色の瞳。サラサラと輝く銀色ですぞ。
陽の光を吸い込んでキラキラと輝いていますな。
今までのフィロリアル様の姿とはどうも異なる色合いになりましたぞ。
そんなフィロリアル様が一人いたのを思い出しました!
そう、キールに対して並々ならぬ情熱を持っていたフィロリアル様!
一言や二言で終わる事の多い……。
あの時、お義父さんが髪の色に関して不思議がっていましたな!
「ルナちゃんがそんな感じでしたぞ!」
「あ、いたんだ? フィロリアル時と色が違う子」
「いましたぞ!」
「で? どんな子で何処で手に入れたのかな?」
「お義父さんがメルロマルクの魔物商が取引していた魔物の卵くじで強引にフィロリアルの卵だけにした時に買った子ですぞ! 何故か天使の姿になった時に髪の色が異なりましたな」
「時期は?」
「推定でフィーロたんを購入した時期、メルロマルクの最初の波を終えた後ですぞ」
そこでお義父さん達が沈黙しました。
確かにどうしてフィーロたんとルナちゃんだけそうなっているのか、不思議ですからな。
「星とかの関係とかですかね?」
「月の満ち欠けとかだと占い師が必要な次元だな」
「ますますわからないなぁ……食生活と言っても何か変な物でも食べさせたりしないといけないし……何かあった?」
「特に何かありましたかな? 俺達と同じモノを食べさせていましたが?」
「元康くんが育てた子を見る限りだと食生活は違うのかな? うーん……わからない」
お義父さん達はそれぞれ唸りますぞ。
「とりあえずカルミラ島から帰る時にでもそのルナって子の卵を元康さんが調達すれば良いんじゃないですか? 匂いとやらでわかりますよね?」
「匂いは覚えていますぞ! 可愛いモノ好きの子ですからな」
「へー。可愛いモノ好きねー」
「フィロリアルは本当に性格が違う奴が多いな」
「ですね。奥が深過ぎますよ……まあ人間と同じく十人十色なんでしょうね」
お義父さんを含めて錬と樹が脱力しております。
色々と調べてもらって、俺は感激ですぞ。
「とりあえず、島にいる間はフィロリアルの育成を適度にしながら底上げをしておこうか、この苦労で波での戦いを楽にすると思ってさ」
「……そうだな。波での人手になると思って育てて行こう」
「与える食事単位で差が出るのなら面白くもありますからね。僕もブリーダーさんと話がしたくなりました。後で訪ねてみましょう」
と言う事で会議が終了したのですぞ。
フィロリアル様は着実に数を増やしております。
俺はお義父さんが用意したフィロリアル様用の船という楽園で眠ったのですぞ。
最初の世界のフィロリアル牧場が懐かしいですな。
思えば、懐かしき牧場の子達も沢山おります。
こうしてカルミラ島の輝ける夜は過ぎていったのですぞ。
そういえばクーにマリンにみどりも居るのですが若干、大人しいですな。
お義父さんの予想通り、環境での変化があるのかもしれませんな。
この事をお義父さんに報告したら参考にするとメモを取っておりました。
「やはり環境によって性格もある程度、差が出ると思って良いかもね」
と言うのが印象的でしたぞ。