フィロリアル定例会議【上】
カルミラ島でLv上げを始めて三日経過しました。
この三日間、俺は思うがままお義父さんからもらったフィロリアル様の卵を孵化して育成しておりますぞ。
ただ、やはりフィーロたんは見つかりません。
色合いが近い子が多くはありますが、色々と違うのですぞ。
ちなみに知っている子、覚えている子には同じ名前を付けました。
ああ、クーにマリンにみどりも中に混じっていたのは驚きですな。
それでも俺のフィロリアル様育成は止まりません。
何羽になりましたかな?
覚えている限りだと20羽は越えたと思いますぞ。
三日目なので、天使の姿になる子がチラホラと出てくる頃合いですな。
Lvの上昇も早い事もあって島は賑やかになってきました。
「尚文さんが別口で大型の船を手配しておいて助かりましたね」
「そうだな。ホテルが騒がしくならずに済んだ」
夜になると錬と樹が中央の島のホテルに集まったのですぞ。
お義父さんやメルロマルクから手配された兵士と伯爵の主導の元に会議をするそうですな。
俺も呼ばれておりますぞ。
まあ、狩りが終わったら俺はフィロリアル様達を見る為に中央の島に戻っていたのですがな。
「さてと、ここで定例会議するのも良いけど、見晴らしの良い会議室があるらしいからそっちで見ようか」
「お義父さん、温泉には入らないのですかな?」
「んー……後で良いんじゃないかな? 一応、経過報告をまとめたいんだ」
「わかりました」
俺達は勇者同士で会議する時に使う円卓の間のような会議室へと案内されましたぞ。
「それでは勇者様方の……フィロリアルの育成状況の経過会議を始めます」
婚約者は今回いませんからな、兵士が仕切っていますぞ。
後で来るのですかな?
何やら錬と樹が若干テンション低めで席に座っていますぞ。
相変わらずこの席に座ると不機嫌そうですな。
「樹は狩り場荒らしをして怒られたりはしませんでしたかな?」
「してませんよ。冒険者が居る時は譲ってますって、奥地へ行くと冒険者はいないから独占出来ましたけどね」
「では錬はフィロリアル様に適した狩り場と称して勝手に狩らせたりしているのですかな? 俺は前回、カルミラ島に来た時にお義父さんに怒られましたぞ」
「してない。樹と同じく、島の奥地にいる魔物をフィロリアル共を連れて狩っていた。勇者の武器の力で雑魚だったがな」
「むしろよくわからないフィロリアル達との連携は練習になりましたよね?」
「まあな、ワザと弱めの武器で呼吸を合わせる練習になった。エクレールも手伝ってくれたし」
「僕はコウさんとサクラさんに手伝ってもらいました」
俺はユキちゃんですぞ。
お義父さんは同行者として助手とモグラに手伝ってもらったそうですな。
ライバルですかな?
フィロリアル様の育成の邪魔ですから島で自由に遊んでいるそうですぞ。
「尚文さん、そっちの状況はどうなんですか?」
「ん? 俺から話して良いの?」
「ええ、何だかんだで一番面倒な統計を取っている様に見えるので参考にしたいんですよ」
「わかったよ」
お義父さんが立ち上がって資料らしき紙を俺達に見せますぞ。
中々本格的ですな。
「錬も樹もわかってるだろうけど、雛鳥の段階でフィーロって子っぽい色合いの子は別口で纏めてるのはわかるよね」
「ええ、一応元康さんの方へ譲る形になってますね」
「白と桜色……数の関係かそこまでいないがな。白に赤系と言った方が良いだろ」
「まあ、ね。なんか雛鳥の段階で見分けがね。これに瞳が青だと、今の所数匹まで減るね……何故か俺の所で産まれた子ばかりだけど」
「これだけ居て、それですものね」
「むしろ良くいたもんだ。元康、そいつ等はどうなんだ?」
「フィーロたんとはちょっと違いますぞ……」
匂いは元より、声、さらに性別まで入れると全然違いますぞ。
しかも羽毛もまだら柄だったり、成長すると柄が変わってしまいました。
「とまあ、その辺りはハズレ……という言い方はアレだね。違ったんだろうけどさ」
「尚文さんは何をしていたんですか?」
「俺はブリーダーの人と協力して食生活に関して調べていた感じかな。ブリーダーが手配した栄養食だけを食べたフィロリアルと島の魔物だけを食べているフィロリアルって感じで」
「そう言えばフィロリアルは食生活や環境で色々と変化する特徴があるんでしたっけ?」
「うん」
「……イミアは大丈夫だったか?」
錬が突然、モグラの話題を出しましたぞ。
何故、この状況でモグラの話が出るのですかな?
お義父さんがゆっくりと頷きますぞ。
「まあ……ちょーっと危なかったけど大丈夫だったよ。イミアちゃん自体も強くなってるし、ウィンディアちゃんが守ってくれたからね……」
「ホント、フィロリアルと言う生き物は凶暴ですね」
「なんですと!」
「元康、事実だ。コウと同じくイミアを狙った奴がいたんだろ」
く……フィロリアル様の好奇心がこんな所で牙を剥いてお義父さん達の評価を下げる結果になるとは……。
この元康、非常に腹立たしいですぞ。
「それで結果はどうなりました?」
「栄養食だけを食べた子は健康、というか特に変わった特徴らしい特徴は無い……かな?」
「その言い方だと島の魔物を餌にした奴は違うみたいな言い方だな」
「……まあね」
前回、カルミラ島で俺が大量に育てた時にも色々とありましたな。
そういった変化があったのかもしれません。
「まずバイオレットブロブ、マゼンタフロッグ、イエロービートル、カクタスワームという魔物が島に生息している訳なんだけど、この魔物達を常食したフィロリアルは体毛に若干変化が出たね」
「色まで変化するんですか?」
「僅かにね。羽の先に該当する魔物の色が見られたよ。で、それぞれの色にあった魔物みたいな特徴を若干吸収しているように見えたかな」
なんと!
そんな結果が出るとは……。
まだまだフィロリアル様の神秘は明かされていないのですな!
「フィロリアルにそんな特徴が?」
「あくまで個体差の域を出ていないけどね。例えばマゼンタフロッグを好んで食べていたフィロリアルは歌を歌うのが好きでジャンプ力が高めとか、鳴き方がカエルっぽい鳴き方をしてる時があるってだけ」
「バイオレットブロブは?」
「妙に体が柔らかいみたいだったよ? イエロービートルは頭の羽が硬くなってた。カクタスワームは姿勢が低めに走るとか、その程度の差だけどね」
「栄養素とか大丈夫なんですか?」
「ブリーダーに見てもらってる限りだと問題ないね。後は栄養食とかいろんなモノを食べさせて様子を見るけど、成鳥になるまでの間に食べたモノの影響を受けるみたいだよ。天使化出来るほどになると、もう何を食べても影響は無いっぽいけど」
お義父さんは凝り性ですからな。
そう言う事を詳しく調べているのでしょう。
フィロリアル様は等しく天使なのですぞ。
「島の奥地に居るボスクラスの魔物も似た特徴を宿すんじゃないかな? 樹や錬はそっちでがんばってたからわからない?」
「そう言えば……カルマースクイレルを餌にさせていたのですけど、フィロリアルってほお袋ありましたっけ? 貯め込んでましたね」
「こっちはカルマードッグを餌にさせていたが妙に鳴き声で連携をしたがっていたな」
おお、そんな特徴に差異が出るのですかな?
初めて知りました。
「あくまで、なんとなく程度ですけどね。フィロリアルは奥が深いですね」
「後は……性格とかかな? どう? 後でそれぞれ確認でもする?」
「良いかもしれませんね。僕の場合、仲間の暴走が怖いですから」
「そうだな。元康の話に出てくる仲間みたいな性格だったら嫌だな」
錬と樹は俺の話を参考に注意深くフィロリアル様に教育しているようですな。
ですがフィロリアル様は大体明るい、楽しい事が大好きな性格ですぞ。
それが天使の証ですからな。
「なんと言いますか、ここ三日で育児ノイローゼとかになりそうなストレスを感じます」
「尚文の苦労がわかるな」
「これでわかられてもな……で、そろそろ天使化した子が出て来ていると思うんだけど、どう?」
お義父さんの提案に樹と錬が背筋を伸ばして俺とお義父さんに言いますぞ。
おや? 何かあるのですかな?
「その事ですよ。驚くべき発見がありました!」
「ああ、俺もだ」
「なんですかな?」
「まあ、なんとなく俺もわかるかな」
どうやらお義父さんは錬と樹が何を言うのか理解している様ですな。
「ユキさんやコウ、サクラさんを見ていたからフィロリアルは天使化した時、幼い外見になると思っていたのですが――」
「俺が育てたフィロリアルの中に背格好の高い奴がいるぞ! 話をした感じだと精神年齢も高めだ」
錬が樹の台詞を遮って言いますぞ。
すると樹も同意するように頷きました。
「僕も同じ事を言おうと思っていました」