ノースフェラト大森林
「転生者とかってこれで見るとどんな外見してるんだろう?」
お義父さんが主治医から借りたルーペを見ながら言いました。
「実は一発でわかったりしませんかね?」
「どっちにしても幽体離脱させないと難しいわよ?」
「元康さんなら出来そうですね。さっきやってましたし」
「ソウルバキューマーの力を使えば、今回のような症例なら効きそうだけど、転生者の体の方は人格があるのかしら?」
「産まれた時からその人の体って事だからなぁ……多分、無理だと思うけど……」
難しい問題ですな。
ですが試してみるには良いのではないですかな?
ちなみにその後、実験と称して斧を隠し持っていた転生者の貴族を俺がソウルイータースピアで魂を抜き取って見た所、魂と肉体の外見が大きく異なると言う結果が判明したのですぞ。
補足すると元々この世界の住人の場合は同一でしたな。
「あの王女にコレをやったらどうなったんだろうね?」
と、お義父さんが呟いていました。
まあ、こうしてお義父さん曰く、乙女ゲー魂転移者を倒す事が出来、主治医の研究も進んで敵の発見率を向上させる事ができたのですぞ。
「うーん……」
なーんか忘れている様な気がしてしょうがありませんぞ。
昨日は豚に乗り移った豚を倒したのでしたな。
「そう言えば波のスケジュールが空くね」
今は城の朝ですぞ。
朝食を終えて、お義父さん達が世界中で起こる波の日程表をチェックしております。
ユキちゃん達は朝のお散歩にと出かけて行きました。
ライバル達も似た様な感じですぞ。
特に何も無ければそのまま城内でお義父さん達と勉強をする事になりますな。
「空く、訳では無く空けてあると言うべきでは無いですか? メルロマルクの杖の勇者である女王の管轄範囲の関係ですよ」
「ああ、なるほどね。その間に出来る事とか無いかな?」
「お義父さん、そろそろフィロリアル様の大量育成をやりたいですぞ」
「またその話か……」
「まあまあ、そろそろ本格的に人員を増やしたいと思っていた頃だし、悪い手じゃないんじゃない?」
おお! お義父さんが好意的に許可をしてくださいましたぞ。
是非ともやらねばなりませんな。
「確かに……もう少し仲間がいないと豚王にどんな事をされるかわからないからな……」
「ですね。人員は増やしておきたい所ですよ」
「だが、元康の話で出てくる仲間の暴走などは避けて行きたい所だな」
錬も樹もどうやら反対ではないご様子ですぞ。
では保留していたフィーロたんの捜索を大々的に行えますな。
「今度こそフィーロたんを俺は見つけてみせますぞ。今度は財力も豊富なので出来るでしょうな」
シルトヴェルトに行った時はお義父さんを送り届けた報酬金で買い占めました。
メルロマルクに滞在した時は三勇教から奪還したのですぞ。
次はフォーブレイですな。
「今度はフォーブレイの財力で買い占めますぞ」
「買い占めるとか言いましたよ!」
「まあ……それだけの財力はありそうだし、相応の金銭を俺達は持ってるからねー……」
「育成が面倒だな」
「心配ご無用! 前回は――」
と言う所で思い出しました。
青い海、白い雲、そして活性化ですぞ。
「そろそろカルミラ島の活性化現象が起こっている時期ですぞ!」
「活性化?」
「ゲーム的なイベントで言うと、経験値増加イベントですかね?」
「ですぞ! カルミラ島には勇者にしか使えない魔法もあるので行くには良いと思いますぞ!」
「へー、そんなイベントが起こってるんだ?」
「とはいえ……」
錬と樹がどうも今までとテンションが異なりますぞ。
何だかんだで錬も樹もイベント時はやる気を見せていたのに、今は落ちついております。
「大体Lv制限が掛るんですよ。で、僕らのLvから考えると既にLv制限に引っ掛かってると思います」
「だな。元康、カルミラ島のイベントはどの程度のLvまでなんだ?」
む……Lv上げマニアの二人がこの反応。
つまらない連中ですな。
もっと興奮しろ、ですぞ!
「80までサクサクですぞ」
「ね? 今の僕達にはちょっと心もとない数字なんですよ」
「そうだな。参加しない事は無いが、興奮する程じゃない」
「最大Lvになったユーザーにとってはそこまで美味しい訳じゃ無く、後続のLv上げイベント的な感じか……」
お義父さんも二人に釣られて若干テンションが低めですぞ。
このままではフィロリアル様計画が……!
「何を呆れているのですかな? お義父さんが俺達を強さにおいてごぼう抜きをした輝かしいイベントですぞ」
この時に行われた勇者同士の意見交換で、お義父さんは俺達の強さの秘密に気付き、大いなる躍進をしたのですぞ。
同時に俺達は滅びの一途を辿る訳ですが。
「カルミラ島に行かなければお義父さんは元より、俺達が強くなる事は無かったと言っても過言ではありませんぞ」
「そうなんだろうけど……まあ、強化方法にある資質向上とかでLvは使うし、美味しいイベントなら参加しても良いんじゃない?」
「そうなんだが……」
「何だかんだで戦いの連続でしたからね。少しは休憩したいという気持ちもありますよ?」
むう……どうにも皆、乗り気ではないですな。
と言う所でエクレアが部屋に入ってきました。
「失礼する。ん? どうしたのだ?」
「あ、エクレールさん。エクレールさんこそ何かあったの?」
「いや、特に問題は無いが、勇者殿達の近日中の予定を聞いていなかったのでな」
「フォーブレイで王様からの依頼を聞くかどうしようか? って話かな? 後は元康くんの話だとカルミラ島って所へ行くかって所」
「なるほど、活性化か……それならこのフォーブレイ近くでも一ヶ月後辺りに起こるそうだぞ?」
「初耳ですな」
カルミラ島以外でも活性化があるのですな。
まあ考えてみれば自然現象なのですから、当然ですがな。
「ノースフェラト大森林と呼ばれる森で同様の催しが行われるそうだ。少々険しい山脈を越えた所にあるがな」
「へー……」
「今からカルミラ島へ行ってはもう期間に間に合わないだろうと、この辺りの冒険者は既にノースフェラト大森林の方へ移動を開始しているそうだ」
「俺達はポータルでメルロマルク近隣に行けるからな。急ぐ必要があるか……だな」
「どちらにしてもLv上げ目的ですからね。今の僕達からすると底上げになりますよ」
「戦力増強には良いんじゃない? 勇者無しで波に挑めるくらいの戦力は欲しいよ。そういう意味だとカルミラ島とノースフェラト大森林のどちらも使えるのは利点だね」
そうですぞ、そうですぞ。
俺はお義父さんに味方します。
「フィーロたんを見つけて見せますぞ」
「って元康くんも言ってるし、そろそろ本格的に元康くんの願いに協力してあげた方が良いんじゃない?」
「トラブルに散々巻き込まれましたけどね……」
「とはいえ、元康がいなかったら俺達は茶番を演じる道化だった訳だし、少しくらいは手伝ってやった方が良いか。フィロリアルの育成だったな?」
「違いますぞ。まずはフィーロたんの発見ですぞ。無論、例え購入したフィロリアル様がフィーロたんじゃなかったとしても捨てることなど出来ません」
「どっちにしても育てるけど、最初の世界で俺が育てたフィーロって子と再会したいってことね」
おお! お義父さんが俺の言いたい事を察してくださいました。
この元康、感激で涙があふれて止まりませんぞ。
「大体当たりみたいですね。ですが、そんな砂漠に落ちた針を見つける様な話をこれからやるんですか?」
「雲を掴む話なのは確かだな。元康、何か手掛かりはないか?」
「まあ……目的も無くフィロリアルの卵を買っても見つけられる可能性は低いよね」
前回もお義父さんが似た様な事を仰っていましたな。
なのでお義父さん達へ知恵を借りる為に今までの事を話しました。
「フィーロって奴を尚文が仲間にしたのが最初の世界の最初の波が過ぎた頃……か」
「何処で購入したかを確かめる術は、今の僕達には無いですね」
「推測だとその頃に贔屓にしていた魔物商人辺りが怪しいと元康くんは考えて、シルトヴェルトに行った周回で時期を見て買い占めをした……」
ですな。
まずはお義父さんが何処でフィーロたんを手に入れたのかと言うのを特定しないと始まりません。
俺は今までの周回でフィーロたんに出会った事が一度もありませんぞ。
その辺りが気掛かりですな。
「そもそもそのフィーロって奴はどんな奴だ?」
錬が今更になって聞いてきました。
知らないとはどういう事ですかな?
アレだけ説明したのに覚えていないとか、どういう事ですぞ。