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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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先客

「ふむ……手応えは十分だ。イミアは手先が器用だから魔物の急所を的確に突くな」


 それからダンジョンでの戦闘が続きました。

 先程戦闘が終了したので、小休憩をしている所ですぞ。

 休んでいる最中、反省会という事では無いでしょうが、錬がモグラを褒めていますな。


「は、はい」

「そうだね。魔物の目とか眉間とか、心臓……鱗の間……かなり上手に突くね。錬や元康くんが倒した魔物よりも綺麗に仕留めてあるよ」

「解体する時に痛いほど器用さを思い知らされるな。弟子みたいな関係だが、学ぶべき点は多い」

「え、あ、う……」


 モグラは本当に恥ずかしがり屋ですな。

 まったく言葉が出てきませんぞ。


「話は変わるけど、武器から出るドロップとオーダーメイドだとどっちが優秀なんだろう?」

「今度フォーブレイの技術者や鍛冶師にお願いしてみましょう」

「モンスターをハンティングするゲームみたいに武器がそれっぽくなるね」

「魔物の素材を入れてもそれっぽくなるじゃないですか」

「まあね。だけど同一の魔物から別の武器にさせられるのは強みじゃない?」


 お義父さんの理屈は少し難しいニュアンスが絡んでいますぞ。

 最初の世界のお義父さんに例えるなら愛用していた鎧ですかな?

 蛮族の鎧だったかと思いますが、徐々にいろんな素材で強化していました。


 勇者の武器の場合は魔物本体、素材、加工した武器と色々と種類が別れますぞ。

 槍に例えるのなら……ドラゴンの骨で作った槍があるとします。

 勇者の武器ではドラゴンボーンランスですな。


 これに皮で持ち手にコーティングをし、鱗を張りつけて耐久度を向上させたりできますぞ。

 さらに、魔力効果の高い宝石等をアクセサリーとして付けたり、勇者の武器ではコピーさせるしかない強化があるのですぞ。

 ここまで来ると別の武器名になるでしょうな。


「そうですね」

「樹の場合はグリップの部分とかを新しい素材で持ちやすくするとか、弾丸を魔物の素材で作るとかしたらいいんじゃない?」

「無尽蔵に乱射出来る銃になってますからね。弾丸を込めるともっと威力が上がるんでしょうかね?」

「グリップとか細かな調整をしたら更に強くなりそう」

「あの……尚文さん? 僕の強化は良いですけど、自分はどうなんですか?」

「盾だからねー……素材を得るだけでどうにかなっちゃうのがね……」

「あー……はい。すいません」

「大丈夫大丈夫、強化に手に入れた武器の合成とかも出来るから弱くは無いんだよ?」


 そう言えば武器の強化に複数の武器の特徴を混ぜる事で出来る物がありますぞ。


「色々と細かな調整は勇者の武器じゃ難しいってだけだよ。そういう意味じゃ武器を作ってもらうのも強くなる意味が出て良いと思うよ」

「基本的に持ちやすく扱いやすい武器になってはくれるんだが、デザインが気にくわないとか無い訳じゃない。専用効果の合成も一番の特徴だけだったりして痒い所に手が届かない部分を改良できると良いな」


 錬も剣に関して思う所があったのですな。

 俺はもう随分長い間使っているので、慣れてしまいましたが。


「イミアさんは手先が器用なら銃器も扱わせて見るのも良いかもしれませんよ? 能力に依存しますが、大分強くなってきているので問題はないでしょう」

「樹の場合はLvと能力が突き抜けているから撃ったと同時に命中しているが、一般の射撃だと弾が見えるもんな」


 そうですな。

 止まって見える程遅くはありませんが、勇者として強化されたステータスなら見てから避けられますぞ。


「勇者だと能力的にも目で判断し易いしね」

「えっと……その……」

「大丈夫ですよイミアさん。魔法で狙い澄ます様に、それでありながら小剣で急所を突くように狙って引き金を引くだけで当たります」


 何故か樹がモグラに銃器の扱いをレクチャーしていますぞ。

 命中の能力で補正されている部分以外の樹の能力がわかる事になりそうですな。


「なんかイミアちゃんが万能キャラに育てられて行っている気がする」

「何でも卒なく出来るからな」

「魔法に始まり、剣術が出来るようになっていますから……しかも尚文さんの料理の手伝いも出来ていますから、手先が器用と言うのは万能ですね」

「器用貧乏にさせない様に注意しないとな。戦闘時の足運びに若干不安がある。剣術だってまだ際立っている訳じゃない」

「勇者がマンツーマンで教えているんだから……万能に育つと良いね」


 お義父さんがモグラの頭を撫でますぞ。

 ますますモグラは恥ずかしそうに俯きました。

 微笑ましいとばかりにお義父さん達は微笑みます。


「……俺自身、剣の太刀筋にそこまで自信は無い。まだエクレールの方が上だ」

「元康さんとの訓練でも、僕達の戦いには無駄が多いですからね。これからを考えたらもっと鍛錬しないといけません」

「と言う訳だからイミアの突きは参考にさせてもらおう」

「日々精進だね。俺もどんな攻撃からも守れる様、位置取りとか受け方とか考えないといけないな」


 なんて話がまとまり、しばらく休憩してからお義父さんが言いました。


「さてと、そろそろ……」


 と、お義父さんが立ち上がった所で、休憩をやめて歩き始めました。

 やがて……複雑に絡まった迷路の出口……ライバル曰く、ここのボスをしているであろうドラゴンが居ると思われる部屋への入り口が見えてきた様ですぞ。


「ん? あれは……」

「おや?」

「なんだ?」


 お義父さんが目を凝らして指差すと、その入口に人が入って行く姿が見えましたな。


「なんだ? 裏で糸を引く人型の魔物か?」

「どうやら違うみたいだね。先客の冒険者って感じだったよ」

「ここまで来れる冒険者も居るんですね」


 おやおや、まあ俺達だからこそ遠足みたいな感じで戦っていますが、魔物もそれなりに強いですぞ。

 このクラスの魔物が出るという事は、一般冒険者では難しいダンジョンでしょうな。

 まあ、時々飛び抜けて戦闘能力の高い冒険者はいますぞ。

 きっと運良くここまで来れたのでしょう。


「先客がいるならどうしようか?」

「横取りは嫌がるでしょうし、とりあえず隠れて見守るのが良いんじゃないですか?」

「そうだね。ところで、忘れがちだけど冒険者はこういうダンジョンの主を倒す事ってどういう認識なんだろう?」


 お義父さんがエクレアに目を向けます。

 エクレアもこの国のルールや冒険者に関しては詳しくないのか手を顔の前で振っております。

 知らないのでしょう。


「冒険者における暗黙のルールですか?」

「ボスを倒したら迷宮が機能しなくなる……そうなったら魔物と宝で成り立っている冒険者からしたら大損だもんな」

「淘汰されるのは魔物も人間も同じ……その環境を潰して良いか、という話ですね」

「何の問題も無いと思いますぞ。ドラゴンが管理するダンジョンなら、倒しても他のドラゴンが縄張りを占拠とかするのではないですかな?」

「そういう考えもあるか……って脱線したな。俺達は先客がいる中でどうしたらいいかと言う話だ」


 錬の台詞にお義父さん達は考えるように腕を組みますぞ。


「順番に待っていてあげるのがネットゲームとかのマナーだけど……」

「勝敗では無く命のやり取りですからね。様子を見て、負けそうになったら助ければ良いかもしれませんよ?」

「かと言ってピンチを待ってその場で見てるのもどうなんだ?」

「そうですね。元康さんの話に出てくる僕みたいな真似はどうかと思います」

「だけど、ボスを俺達が倒したら獲物を横取りしたとか因縁付けられない? 冒険者も宝や経験値が目当てなんだろうし、ボス……迷宮の主に挑む程の人達なら準備は万全でしょ?」


 難しい問題ですな。

 カルミラ島の時は冒険者達の強さの程度が知れたので、最深部のボス類は無視されていました。

 あの時の俺達は喧嘩にならない様に日毎に行く島を変えていたのですがな。


「なんて言うか勇者同士の反発現象と同じ問題な気がするね」

「そうだな。だからと言って主が強過ぎて見殺しはどうかと思う」

「いつ死ぬかわからない冒険者稼業に身を置いて迷宮の主に挑んだのですから、助ける意味は無いと思いますぞ」

「んー……何か難しい問題だね。下手に主を俺達が倒したら悪評が広がりそうでもあるし」

「それこそ状況次第ですね。元康さんの話す僕ではありませんが、まずは見守っておいて、危なかったら助けるのが妥当でしょう」

「了解」

「妥当だな」


 作戦は決まりましたな。

 俺達は一般冒険者たちを影から見守り、危ないようでしたら助けるのですぞ。

 若干、危なくなる事を期待しているように見えなくもないですが、相手の意志を尊重するのですな。


「サクラちゃん達やイミアちゃん、ウィンディアちゃんとガエリオンちゃんは疲れているだろうし、十分がんばったからもう戦わなくて良いからね」

「色々楽しかったー」

「偶には良いですわね」

「ぐるぐる迷路が面白かったー」


 フィロリアル様達の反応に俺も楽しくなりましたぞ。


「狭い所で動く練習になったなの」

「援護の良い経験になったね」

「あ……はい。実戦経験が積めました。次はもっと上手く立ち回れるようにがんばります」


 ライバル達も十分経験を積みましたな。

 経験値では測れない経験……重要な要素ですぞ。


「もしもの時はエクレールさん。俺達の補佐をお願い」

「うむ、わかった。出来れば先客の冒険者が主を倒す事を願うばかりだ」

「そうだね。主の宝とかは手に入らないけれど俺達も無駄足じゃなかったんだから良いよね」


 と言う事で俺達は主のいるらしい広間への扉から恐る恐る中を確認する事にしました。


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