夢を配る
こちらは本日十時に更新した物です。
間違って一話先のこの話を投稿してしまったので、見ていない方は一話戻ってください。
「「「……」」」
お義父さん達が何やら黄昏てエクレアを見つめておりますぞ。
そうですか、ダンジョン保険なる物があるのですか。
「それはダンジョンなのですかな?」
「ここでガエリオンが夢を配るなの!」
並走して飛んでいたライバルが突然自己主張をしました。
背中には助手とモグラが乗っております。
「ドラゴンの中には巣を大きくする事に誇りを持っているのがいるなの! もちろん、宝を取らせない為に巣の中に宝を疎らに配置しておくなの」
「へー! そうなの?」
「なの! しかも副産物効果で宝が増える事もあってドラゴンは冒険者が来る事はウェルカムなの!」
「副産物?」
「冒険者は結構宝を所持しているなの。だから息絶えればドラゴンの物なの!」
「あー……なるほど、冒険者の持っている道具か」
「生命線ですもんね。より良いモノを購入して行きますから宝としての価値が出てしまうのも納得ですね」
「なの! たぶん、大きなダンジョンの最下層には竜帝がいるなの。ガエリオンが更なるパワーアップするには倒すのも手なの!」
ライバルの言葉にお義父さん達が活気付きますぞ。
「なるほど……ドラゴンが管理している迷宮ならば宝の復活もありえるという事か」
「そうなの!」
エクレアも便乗しております。
ライバルが注目されて面白くないですぞ!
「つまり、以前私が聞いた宝が蘇る、生きている迷宮、というのは管理している者がいるという事か」
「問題点はボスであるドラゴンを倒したら宝の再生が無くなる事でしょうね」
「宝自体は奪えるのかもしれないけどね……かといって冒険者が犠牲になってる訳だし……」
「どちらにしても、この国の有名なダンジョンとやらは、ドラゴンが作った物もありそうだな」
「欲望が渦巻いている訳ね。普通の遺跡をトレジャーハントするよりは夢があるよ」
「余裕があったら行きますかな?」
「そうだね。とはいえ……ゲーム感覚になり過ぎない様に意識して行かないとね。俺達は遊びで戦っている訳じゃないんだし」
お義父さんの言葉に錬と樹は強く頷きました。
「……ああ。魔物との戦闘であっても覚悟が必要なのを俺は学んだ。切れば血が出るのは当たり前のことだし、殺せば帰ってこない……」
「ですね。この世界の人達だって生きた人間なんです。NPCじゃありません」
最初の世界で豚を追っていた頃の俺も似た様な考えをしていた時がありましたからな。
気持ちはわかりますぞ。
「そこは……うん。冒険二日目で痛いほど身を以って理解したね」
「う……そうだな。アレは夢から覚める心境だった」
「思い出させないでくださいよ。確かにアレが一番の原因ですけど!」
お義父さん達はうんうんと頷き合っていますぞ。
俺も一緒に頷いておきます。
何か、白い目で見られました。
「何かありましたかな?」
二日目と言うとお義父さんを罠に掛けようとした赤豚とクズを仕留めた輝かしい日ですぞ。
「元康さん、貴方が言うんですか……?」
「張本人が何を言っているんだ……お前の所為でしばらく悪夢を見たんだぞ」
「助けてくれたのは良いんだけどね……アレで夢から一発で覚めたのは確かだから文句も言えないしね。戦いってこう言うモノなんだって理解したし……」
「勇者殿達がどんな心境であったのかを私は察する事しか出来ないが、同情する」
エクレアが静かに応じました。
「なの?」
ライバル達はお義父さんの気持ちが良くわからずに居て首を傾げていますな。
お義父さんも説明するか考えて、説明せずにいる事に決めた様ですぞ。
そんなこんなで投擲具の勇者が目撃された国内を巡る事になりましたぞ。
とりあえず情報収集の拠点として冒険者ギルドに行くのは定石となりつつありますぞ。
フォーブレイの豚王の署名と勇者特権で極秘情報も聞く事が可能ですからな。
「見つかったか?」
「んー……どうも噂程度に留まってるね。どんな人なのかも曖昧だよ」
冒険者ギルドでの目撃証言を纏めた資料に、個室で俺達は目を通したのですぞ。
まあ、文字を勉強中のお義父さん達が読める文字は限られておりますが。
「そもそもどんな人なの?」
お義父さんが投擲具の勇者に関して、顔を知る者に尋ねますぞ。
そうですな。
こやつの役目はその確認ですぞ。
「とは言われましても……雰囲気は剣の勇者様と似た方です」
「錬っぽいか……」
お義父さんが錬を見つめますぞ。
「な、なんだよ」
錬はお義父さんに見られて言葉に詰まる様子ですな。
「初対面の印象だと……クール――」
「若干中二が入った孤独を愛すると言いながらも寂しがり屋に見える感じですね」
「樹!」
お義父さんが言う前に樹が間に入って挑発していますな。
樹の方が的確な気がしますぞ。
「いやいや、初対面なんだからクール系って言ってあげなよ」
「尚文、それは俺が実は寂しがり屋と言いたいのか?」
「そういう訳じゃないけど、そう見えても錬の年齢からすると仕方ないというか……」
お義父さんが誤魔化してますな。
「今は違うのでしょう? 劇的な異世界生活をしている訳ですし」
「う……まあな」
樹に関してはもはや作業と言う感じに流しておりますな。
口は災いの元ですぞ。
「中二? 錬はどちらかと言うと最強厨ですぞ!」
「くっ……否定できない……!」
「そういう元康さんは直結厨なんじゃないんですか?」
よくわかりましたな。
俺は基本的にネットゲームでも豚を追いかけていたのですぞ。
「樹、いくら親しいからと言ってもオブラートに包む事を覚えようよ。命中の能力が言葉でも作動してるの?」
お義父さんの台詞に樹もピクっと資料から目を離しますぞ。
何かツボにハマッたのか、樹が苦笑しています。
「これは一本取られましたね」
「言った俺が言うのもなんだけどまったく上手く無いからね?」
「とにかく、俺みたいな雰囲気の奴だったと言う事か」
「そうなるね。錬だったらどう行動するか考えてみると見つけられる……かもね」
お義父さんの言葉に錬は色々と考えますぞ。
「国が気にくわないとか情勢を知った場合の立ち回りとなると、武器を隠して冒険者の振りをするだろうな」
「だろうね。あんまり武器を基準に考えない方が良いね。一応尋ね人として冒険者ギルドでも情報を集めているみたいだけど、そっちは引っかかりもしない」
「整形でもしているのではないですかな?」
聞いたことがありますぞ。
豚共は自分を良く見てもらうために、色々と自身の体を弄くるのですな。
そこまでして良く見せても内面が伴わなければ完全に豚ですぞ。
豚を整形して肉にでもなるのですかな?
まさしく食われる為の豚ですな!
HAHAHA!
「もしくは魔法で顔の認識を弄ってるとかかな? 幻覚耐性のある人が居れば良いんだけど」
おや? 確かお姉さんがそういう能力を持っていると思いますぞ。
そういえばこれまでのループでお姉さんに会った事が一度もありませんな。
……ちょっと気になるのでお義父さんに相談してみましょう。
「それならお姉――」
俺が言おうとしたその時、何やら部屋の外、冒険者ギルド内のホールから大きな声が聞こえてきました。
男の野太い声ですぞ。
「なんだ?」
「冒険者ギルドですからね。育ちの悪い冒険者が諍いを起こしたんじゃないんですか?」
「そうなのかな? まあ、大体資料は目を通したし、最悪、騒ぎを抑える為に見に行ってみようよ」
「そうだな。そろそろ次の町へ行くべきだろうしな」
「ええ」
「もう終わったー?」
サクラちゃん達はお義父さんが作った紙飛行機を投げ合ってキャッキャと楽しんでおられていた様ですぞ。
俺も一緒に遊びたかったですな。
「うん。みんな、行こうか」
「はーい」
「なの! もっと飛ぶのを作って欲しいなの」
「次は竹トンボとかかな? 割り箸とかで模型飛行機を作るのも良いけどね」
「なんか楽しそう!」
「うん!」
助手とモグラがはしゃぎ始めました。
外からは相変わらず大きな声が聞こえるのに、のどかなものですな。
戦いの中で成長したのでしょう。
「ナオフミさんは本当に子供の相手をするのが上手ですね」
「だな」
「錬も樹も他人事にしてないで遊んであげてね? チャンバラでも楽器演奏でも良いんだから」
「俺もお義父さんと遊びたいですぞ!」
「……ここに一番大きな子供がいますね」
「そうだな」
「元康くん……」
「イワタニ殿の苦労、みんなわかっているぞ。一人で背負いこまない事だ」
「背負わせようとしているのは皆だけどね……」
何やらお義父さんに同情する空気が出来ているのは気の所為ですかな?
そんなこんなで部屋から出て騒ぎのする方へと行きますぞ。