透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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ブルアカとac6のクロスオーバーの小説はよく見かけるけどacfaとブルアカのクロスオーバーはあまり見かけないなぁと思っていたら、いきなり設定や展開が頭に湧き出てきたので設定を練っていたら1週間くらいで百花繚乱編1章くらいまで出来てしまったので、温めるのやーめた!ということで書きました。

ブルアカもacfaも未プレイの情けないエアプ勢の書く駄作ですが、何卒お許しください。

後、一話で登場した首輪付きさんのアセンは登場することは恐らくないのでフロムマジックなアセンブリはお許しください。はい

後最初は首輪付きさんの視点はあまりないです。


首輪付き、首輪を喰い破る

 

 

―――――圧倒的だった。

 

 

 

 

 

戦闘の様子を中継するモニターに映し出された映像を眺める若い女性―――セレン・ヘイズは驚きを隠すことが出来なかった。

 

 

画面の映す映像には二つの巨大な影が映っており、一つは黒、一つは白その二つの影が超高速で動き回りブースターの炎をまき散らしながらお互いに砲火を交えている。そこまでは分かる。リンクスとして超高速戦闘はリンクスであるなら誰であっても慣れ親しんでいるものだ。

 

 

 

―――だが、問題はそこじゃない。

 

 

 

おかしい。そう、おかしいのだ。モニターに映る二つの影―――二機のネクストの動きが。ただ超高速で機動してるだけならリンクスである限り誰でも出来る。

 

しかし、今モニターに映る二機のネクストはその超高速機動をしながら異常に精密な切り返し、白いネクストから放たれるただのリンクスなら完全な回避は不可能であろう弾幕を黒いネクストは寸分の狂いもなくすり抜ける。そして黒いネクストの右背面部に搭載された砲の砲口に緑の光が溢れる。チャージが完了している証拠。そして緑の光はその砲がコジマキャノンであることを示している。

 

その光に白いネクスト――ホワイト・グリントがそれに反応し、回避機動ととりつつ左手に握られているライフルを黒いネクスト――ストレイドの右背面部で光を放つ砲へ向けられると同時に火を噴き、弾丸を吐き出す。発射された弾丸は驚異的な精度でストレイドの右背面部の砲を狙うも、ストレイドも左右に小刻みに機体を振ることで狙いを誘導。その隙間を縫ってW・G(ホワイト・グリント)に接近する。

 

W・Gも接近を許すまいと機体を後退にさせつつ、それでも左手に握られたライフルの射撃は止めない。しかし、ストレイドは左右の小刻みの機動を合わせた動きを止め、直線的な機動でW・Gへ突撃。ストレイドの背面に付けられたブースターが強い光の様な炎を放ち、機体をただのブーストによる機動を遥かに上回る速度で迫る。オーバードブーストと呼ばれるネクストの高速機動。

 

そして発射されるストレイドのコジマキャノン。W・GはOB(オーバードブースト)以上の急加速で後退。俗にいうQB(クイック・ブースト)という瞬間的な速度ならOBすら上回る速度で短距離を駆けるネクストの機動。超加速されたコジマ粒子の塊は地面に命中。コジマ粒子による爆発閃光が発生。W・Gの視界を塞ぐ。正面の視界を潰されたことで一瞬動きを止めるW・Gを見逃さずに爆風から飛び出てくるストレイド。その左腕には何かの装置が取り付けられており、発振器と思わしき個所から異常に強い光を放つ剣が形成されており、ストレイドは目の前の白い機体の胴目掛けて右手側に位置する左手を左側に薙ぎ払うように一閃。爆発によって視界を奪われたW・Gにその一撃を回避しきる事は叶わず、ストレイドの左腕に付けられているレーザーブレード《07-MOONLIGHT》がプライマルアーマーを一切の抵抗なく切り裂くも、辛うじて後退に間に合ったW・Gの胴に当たる事は叶わず、左手に握られているライフルを両断、金属屑へと変える。

 

「・・・まさかあいつがここまでとは。アルテリアカーパルスで戦った時ですらまだ本気ではなかったと言うのか?」

 

セレンがまるで有り得ないものを見る様な目でモニターを眺めている。

 

「いえ、彼女はあの後も殺戮を続けていました。その中には他のリンクス達も含まれています。恐らくあの方はその殺戮ですら自らの成長の糧になっているのではないでしょうか。」

 

鈴の様な澄んだ声でありながらどこか儚さを感じさせる女性というよりは女の子と呼ぶべき声がモニターから発される音しかない筈の部屋に響く。

 

「・・・リリウム・ウォルコット。怪我の程は大丈夫なのか。まだ動ける程回復した訳では無いだろう。」

 

「セレン様。そのお言葉そのままお返し致します。少なくともリリウムは車椅子での活動なら問題ありません。・・・その後のリハビリは避けられませんが。」

 

リリウム・ウォルコットと呼ばれた車椅子に座る少女が静かにそう返す。その顔立ちはまさに人形の様に整っており、色素の薄い金髪はまさに流れる上質なシルクの様だ。しかし、その顔から感情を読み取るのは難しい。そしてセレンと呼ばれる女性、セレン・ヘイズはそのまさに武士然として凛とした強気な美貌を動かすことなく、

 

「ふん、私はなんだかんだ二回目だ。良くも悪くも慣れたものだよ。本当に良くも悪くもな。」

 

昔を思い出すかのようにそう言うセレンと話しながらリリウムは本来なら敵同士で会話など殆どない筈だというのに現在こうして会話しているこの状況に違和感を覚えつつ、

 

「セレン様はかつてリンクス戦争においてインテリオルに所属しておりましたね。二回目というのはかつての戦争が原因でしょうか。」

 

「そうだ、まさか対ネクスト以外の事故によってリンクス引退をするとはあの時は思いもしなかった。何なら今こうして自分が拾ってリンクスになった孤児がこうして人類そのものに牙を剥くことになるなんていったい誰が想像できると言うんだ。」

 

モニターに映る黒いネクスト、ストレイドの見せるカラード最高峰のネクストですら着いて行けるかわからない様な動きを見ながらぼやくように言葉を吐く。リリウムはその言葉に同意するかの様な様子で

 

「リリウムもその意見には賛成です。王大人ですら首輪付き様がこのようにして人類の殺戮を始めることは予測出来ていませんでした。クレイドル03が襲撃されたとの報が耳に入った時、あの方も「なんというイレギュラーだ。ORCAの対処に追われているというのに。空気の読めん輩だ。」とおっしゃっていましたし。」

 

「最も、王大人ですら首輪付き様の手に掛かってしまいましたが。」と呟くリリウムを眺めながら、セレンは意を決したように口を開く。

 

「・・・イレーネ。」

 

「どうされました?セレン様。」

 

突如誰かの名前と思わしき単語を発したセレンにリリウムは尋ねる。

 

「イレーネはあいつの名前だ。どこかのコロニーのスラム街で名前すらなくゴミ漁りをしていたあいつを拾って、呼び名が無いと不便ということで私が仮名として付けた名前だったんだがな。どうやら気に入ったようで、リンクスとしてカラードに登録するときの実名の欄にあいつ自らそう書いたんだ。リンクス名も同じにしていたはずだ。私は止めておけと言ったんだが、どうにも聞く耳を持たなかった。流石に危ないということで過去のコネを使ってリンクス名は伏せるようにはしたおかげで名前は一切広まることが無かったが・・・まさか別の名前がここまでの悪名になるとはな。」

 

「そうなのですか・・・イレーネ様。リリウムに妹のように接して下さり、今だからこそ言える事なのですが、リリウムもイレーネ様のことは姉のように慕っておりました。・・・それ故にORCA旅団に加わった時、そしてクレイドルを墜とした時はとてもショックでした。」

 

セレンは今モニターの映す戦場でホワイトグリント相手に戦うストレイドのパイロット――イレーネがORCAに加わる前に何度か会ったリリウムを従えている食えない老人――王小龍と幾度か世話を掛けたり掛けられたりする時の面会でイレーネとリリウムが話している所をよく見かけた。実際に王小龍に今日は首輪付きは居ないのかと聞かれたり移動中にばったり会ったリリウムに「本日は首輪付き様はご一緒ではないのですか?」と聞かれることは多かったと記憶している。

 

イレーネがORCAに加わることを決めたのはイレーネ自身が自らの意志で決めたものであり、ましてや彼女が人類そのものに牙を剥くなどクレイドルを襲撃するまで知りもしなかったことだ。それでも、何処かであいつを止められたのではないかと考えてしまうと胸が後悔の念で強く締め付けられる。だが、それはクレイドルを沈めた首輪付きと彼女を誑かしたORCA旅団の異端児、オールドキング二名を止めるために行られたアルテリア施設カーパルスでの作戦前に一度謝罪をし、リリウム本人の口からその謝罪を受け取るという答えを得た為にまた謝罪を口にすることは無い。

 

「セレン様。戦闘が終了しました。ホワイトグリントは行動不能。ストレイドは背面部の武装を破損し逃走しました。ホワイトグリントのパイロットは生存しているようです。」

 

リリウムが淡々とそう告げる。物思いに耽りかけていたセレンもハッとして視線をモニターに向ける。するとそこには白い装甲が所々剥がれ落ち、拉げ、歪み、右腕が肘に当たる部分より下が無く、残る左手の武装は切断、背面部の分裂ミサイルも片方弾切れ、片方は肩の装甲ごと吹き飛ばされており、コックピットに損傷が及んでいないのが不思議なくらいの損傷具合で片膝をついており、その奥に小さく見えるネクストのブースターの炎はイレーネだろう。何処かへ飛び去ろうとしている。

 

「・・・まさか、消耗した状態でリンクス戦争の英雄をぶつけても武装の一つしか持っていくことが出来ないとは・・・もう、私たちにあいつを止める手立ては無いというのか?」

 

「いえ、彼女はオールドキング率いる過激派勢力リリアナとも協力体制にあります。企業やラインアーク程では無いとは言えある程度の補給と整備は受けられる状態のはずです。武装の変更などは出来ないと思われますが。」

 

ホワイトグリントに乗っているパイロットはアナトリアの傭兵と言われ、かつてのリンクス戦争と呼ばれるセレン・ヘイズが霞スミカという名前で参加していた企業間戦争において、粗製と呼ばれるほどのAMS適正の低さでありながら、コロニーアスピナのジョシュア・オブライエンと並んで企業のパワーバランスを破壊、リンクス戦争を終結に導いた英雄とも呼ばれるリンクスだ。

 

そして現在は企業による統治に反対するものを集めた非企業勢力ラインアークにおいてその守護を務め、ラインアークの守護神、もしくはラインアークの白き閃光とも呼ばれ、カラードのランクは9でありながらその実力は当時のランク1オッツダルヴァに並ぶとされ、実際に首輪付き事イレーネとオッツダルヴァの2人がかりでオッツダルヴァが水没するという犠牲を払うことで漸く撃墜をすることが出来た程の正真正銘の化け物であり、前戦争のイレギュラーだ。

 

 

しかし、そんな実力を持つアナトリアの傭兵ですらアナトリアの傭兵が若干とはいえ有利な状態を以てして始まった戦闘に敗北し、首輪付きを仕留められなかったのだ。

 

ORCA旅団の長であり元ランク1のオッツダルヴァ、霞スミカの後任でありGAの厄災ランク3のウィン・D・ファンション、アナトリアの傭兵と同じ低AMS適正を実力で補える程の腕を持つランク4ローディー、そして今セレンの横に居るBFFの小さな王女ランク2リリウム・ウォルコット、そしてイレーネにリンクスとしてのイロハを叩き込んだ元リンクスの霞スミカことセレン・ヘイズ。クレイドル03襲撃後すぐにこれほどの面々で行われた作戦も失敗。オールドキングこそ仕留める事が出来たものの、5機全てを首輪付きは撃墜。この5名の内3名がカーパルスにて戦死。運よく生き残ったセレンとリリウムもともに重症。どちらも意識が戻るまで数週間、セレンは立てるまで、リリウムはベッドから起き上がれる様になるまで数か月の時間を要した。その間にも人類種の天敵とまで呼ばれるようになったイレーネはクレイドルの大半を撃沈。地上に存在するコロニーの襲撃。二つの虐殺で死者は20億を超えようとしている。残っているクレイドルの編隊はあと1つか2つ。短期による大虐殺によって通信網が混乱し、正確な編隊の数も分からない。しかも、近いうちに襲撃される可能性が高いと言う情報すら出回っていた。

 

人類側とても様々な妨害工作、暗殺作戦の実行や、動けるリンクス、AF(アームズフォート)による首輪付きの排除を試みていたがどれも失敗。排除はおろかその歩みを止める事すら叶わなかった。その上、一気に何人ものリンクスを失った。

 

そこで今回行われたのはラインアークでの戦闘で生き残っていたアナトリアの傭兵による首輪付きの排除。企業勢力、非企業勢力が一時的に手を取り合い、撃墜され水没したホワイトグリントを引き上げ、それを元に新たにもう一機のホワイトグリントを製造。そして首輪付きとリリアナに偽物と気づかれないように幾重にもフェイクを重ねた情報をリリアナの情報収集の網に偶然引っかかるように仕組むことで実行場所に誘導。首輪付きの侵入を確認し作戦区域の周囲を生き残ったサイレント・アバランチを筆頭にしたハイエンドノーマル部隊によって包囲。更にその外に複数のAFを待機させ、首輪付きをここで排除しようという作戦だ。

 

「セレン様。ただ今戦況の確認が取れました。ネクスト、ストレイドは作戦区域を真東へ離脱。ハイエンドノーマルによる包囲網を突破。東側に待機しているAF、ギガベースを撃破。東側のAFの残りであるカブラカンと交戦中。現状ホワイトグリントとの交戦で与えた損傷以外の損傷がありません。他方面に配置したノーマルACやAFも向かわせているとのことですが、カブラカンの損傷速度から見てまず間に合わないかと。」

 

・・・しかし、人類が一丸となって臨んだ作戦も失敗に終わろうとしている。

 

「ッッ!!」

 

声にならない悲鳴がセレンの喉を駆け巡る。そんな様子を見ながらリリウムも何処か悔しさや悲しさ、寂しさを僅かに滲ませた声色で続ける。

 

 

「・・・カブラカン、沈黙。増援に間に合ったノーマルACも全滅しました。ストレイド、進路変えず離脱しました。これといった損傷確認できず・・・イレーネ様っ・・・」

 

 

 

―――ストレイド、離脱。

 

 

 

それは作戦の失敗を意味する。あれだけの戦力で備えておきながら逃げられたのだ。武装一つという成果だけを残して。

 

 

「・・・あいつは、人類を、殺し尽して、一体、何を・・・」

 

 

最早絞り出すようにしか声が出せない。それほどまでにセレンと言えど精神に来るものがあった。セレンも彼女のイレギュラーさを知りつつも心のどこかでこれほどの戦力ならまぁ成功するだろうと何処か思い込んでいた節があったと言えば否定できない。事実、最高峰とはいえネクスト一機に向ける戦力としてはあまりにも過剰すぎる。本来ならAF一機かネクスト一機居れば十分なのだ。

 

政治における思惑を抜いたら最高のリンクスに加え、ネクストやAFが相手でさえなければどんな戦力も跳ね返せるほどの数のノーマル部隊。そしてそれだけで地上の一地域を焼け野原に出来そうな数のAF。はっきり言ってセレンがリンクスとして全盛期だったとしてもこれらが相手ならどれほど持ち堪えられるかなんて考えたくもない。数分?数秒?どちらにせよ機体もろともミンチにされることは確実だろう。

 

だが、首輪付きはその戦力の全てを相手にした訳では無いにしろ、陣容を切り崩して突破していった。一体そのイレギュラーさの底はまだ見えないのか。

 

 

満を持して決行された作戦の無残な結果に何も言えず、セレンは今いる部屋を出ようとする。そこで、端末を弄っていたリリウムが新たに流れてきた情報に目を通し、

 

「セレン様。部屋をお離れになる前に一つだけ、首輪付き様の排除と同時に進行されていた過激派勢力リリアナの殲滅作戦は成功致しました。彼らの本拠地を始め各地に点在する規模の大きいとされている拠点の大半が破壊。リリアナの幹部格と思わしき人物らを多数拘束ないしは殺害。と同時に首輪付き様が利用していると思わしき潜伏場所のデータ含めいくつか情報を入手した。とのことです。」

 

「リリアナ・・・ふん、あのゴキブリ共も漸く毒を喰らって死んだか。」

 

セレンはその報告に対して吐き捨てるように言葉を吐く。過激派勢力リリアナ。自由と民主主義を謳いながらもその思想の過激さ故に来る者を一切拒む事の無かった非企業勢力ラインアークが唯一追放という答えを出す程の勢力だ。そしてイレーネを人類種の天敵に仕立て上げ、誑かしたオールドキングはその組織の首領だった。自分の弟子を狂わされたセレンからすればまさに己が子の憎き仇というところだろうか。

 

「はい。そして拠点内から得たデータより首輪付き様の潜伏先の特定作業は始まっています。セレン様、端末をこちらに。今潜伏場所の座標とデータを送ります。」

 

セレンが黙ったまま自らの携帯端末をリリウムに向かって投げ渡す。明らかに物を投げて渡す速度ではない速さで飛んでくる端末をリリウムもその細腕からは信じられない程安定したキャッチを見せる。そしてそのままリリウムの持つ端末とコードで接続。データのコピーと送信を行う。

 

「・・・潜伏場所の特定が完了し次第、また排除作戦が実施されるかと思われます。」

 

リリウムが事務的に今後の展開をセレンに伝える。しかし、セレンはそれに納得がいかないようで、

 

「これ以上、何処にそんなリソースがあると言うんだ。AFの群れでもぶつけるのか?それとも生存しているリンクスを全てぶつけるのか?そのどちらともあいつが焼き払ったというのにか?後ろ盾が死んだんだ。放っておけばそのうち何も出来なくなる。ネクストは個人で運用できる代物ではない。」

 

「現場の者たちからは反対の声が上がっています。ですが、企業の上層部の方々は飽くまで自らの手によっての首輪付き様の排除を目論んでいる様子。現場の声は無視しての決行の線が濃厚かと。」

 

「はぁ、企業共いつもの奴か。奴らはどうにも一度直接殺されないと理解出来ない様だな。」

 

企業のいつもの奴。確実性を欠いた今、企業達は天敵狩りに自らの欲望を混ぜ込んできた。ここではそれはいつものことだ。しかし、今は状況が違うと言いたいが言っても上は聞かないだろう。あの連中は如何にして自分だけが最大の利益を得られるかしか考えることの出来ない奴らの集まりだ。その理不尽の中で如何に生き残るかは自分たちで考えることだ。

 

 

「既にクレイドルにある本社を潰された企業も多いというのに全く、実に愚かなことだ。」

 

 

セレンのその呟きはいやに長く静かな部屋に反響し続けた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

―――青黒い空。全てを拒絶するかのような砂の地面。

 

 

 

 

 

機体を格納庫に入れる。格納庫と言っても、そこに人はおろか生物の気配すらなく、完全な静寂の帳が下りている。辺りを見回すと壁や足場の所々に破壊痕があり、大穴の開いた壁が外の空気がそこから入ってきている。そんな建物の様はまさに廃墟と呼ぶにふさわしい風貌だ。

 

そしてそんな廃墟の中に静止している機体―――ストレイドもその廃墟に眠る廃棄された兵器と呼ばれても違和感のないほどの損傷具合だった。黒い装甲はあちこちが剥げ、両背面部に付けられていたと思われる武装は無く、そのジョイント部が何か強烈な衝撃で吹き飛ばされたように破損しており、ド素人が一目見てもちゃんとした修理が必要だと分かるほどの傷を負っていた。

 

 

(ホワイトグリント、シュミレータ(アリーナ)以外で初めて1対1でやり合ったけど、結構楽しかったな。またやれるかなぁ。)

 

 

ストレイドのコックピットの中でその女性―――イレーネはそう一人心の中で独り言を呟く。意識はAMS接続によってネクストの10mにもなる巨体に接続されている。リンクスがネクストという規格外兵器を操縦するのに用いられるリンクスの神経を直接ネクストに繋いで操縦するという操縦法。戦闘時以外はAMSの接続を切って手動での操縦をしているリンクスが大半の中、イレーネは機体を暫く動かすつもりが無いのにも拘らずAMSを繋ぎっ放しにしている。

 

 

(でも、もう無理ね。最後にAMS切ったのは・・・3日?4日?はは、これじゃ生体パーツと何ら変わりもない。)

 

 

心の中でそう自嘲しつつ、イレーネは視点をコックピット内にある自らの肉体に向ける。コックピット内に設置されたカメラには女性にしては長身な一人の女性が座っている。その女性は目を瞑っている為、瞳の色は分からないが、顔立ちは美女とも美少女とも言える整った、完成された顔立ちをしているが、その貌に特徴が見て取れず、美人であるが特徴の無さ故に記憶に残らない様な顔立ちをしている。リリウムの美貌が整った人形の様であるなら彼女はまるで機械のように無機質な美しさだ。そして肩まである銀灰色のサラッとした髪は数日間手入れをしていないせいか枝毛が所々に目立ち、髪質全体もボサついてしまっている。

 

イレーネはそんな自分の肉体視点を切り替え、機体に備え付けのデータ端末に意識を向け、データを弄り始める。すると、

 

(うん?リリアナの人達からの定期連絡が来ない・・・なるほどね、罠に掛けられたのは私だけじゃないと。で、リリアナはその罠から逃れられなかった訳だ。)

 

イレーネは直ぐに連絡の来ない理由に辿り着く。これでもリンクスとして短期間で数多の戦場を駆けてきた。そして今は人類種の天敵として人類という種の根絶目指して殺戮を行っている。今や全世界にその命を狙われる、もしくはその存在を恐れられる状態だ。そんな中で自分と協力している勢力と連絡が取れないということは直ぐに分かった。

 

(まぁ、オールドキングが死んでから良く持った方ではあるか。しかし、リリアナが墜ちたという事は私が世界の目から逃げられ続ける時間はもう無いって事か。恐らくここがバレるのも時間の問題。・・・動けるうちに動いておくか。私自身ももう長くないし。)

 

動く。そう心に決めるや否や直ぐに立ち上げるデータを確認。世界地図を呼び出すとそこには、クレイドルの編隊のあるところと地上のコロニーの座標を示す点がありその大体にバツ印が付けられている。地上のバツ印の付いてない点はまだいくつか存在するが、クレイドルの編隊でバツ印が無い点は17つある点の内3つだけだ。

 

このバツ印はイレーネが破壊したコロニーもしくはクレイドルの編隊であり、既にイレーネが何十億という人間を殺した確かな証拠でもある。そして、そのデータを見ながら思考を続け、そして一つのクレイドルの編隊の点に丸を付ける。

 

(クレイドル12、ふふっ、君に決めた。所詮大量虐殺だ、刺激的にやろうぜ。なんてね。)

 

コックピットで死んだように眠っているイレーネの目が開き、色素が殆ど残っていない薄紫の瞳が姿を現し、口が綺麗な弧を描く。そしてそのまま機体の状態のチェック、まだ動くことを確認し、ジェネレータのエネルギー配分を振り分け、機体の各パラメータを現在の状況に最適に設定する。

 

(さて、出る前にいつものあれをっと。)

 

AMSを繋げたまま意識を体へ、肉体の感覚が戻る。

 

「あー、あー、あー、ゔゔっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ。ゔゔん。」

 

声の調子をを整え、一呼吸。そして息を吸い。

 

 

 

「イレーネ、ストレイド、出る!」

 

 

 

掛け声とともに機体に意識を向けて空へと飛び出す。ストレイドの巨体が廃墟の屋根を突き破り廃墟を建物の残骸へと変貌させる。そしてストレイドのブースターに火が灯り、帳の下りた夜の空を流星のように駆けて行った。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

―――クレイドル12 墜落。

 

 

 

その知らせを聞いたのは全勢力の首輪付き排除作戦が失敗に終わってから僅か2週間後の事だった。

 

その日はリハビリもそこそこにカーパルスより引き上げられたセレンの乗機であるネクスト:シリエジオの修理状況とその改修状況の確認をしている時の事だった。格納庫の壁に設置されているテレビから流れるニュースのキャスターが慌てた様子のディレクターから原稿を受け取り、慌てた様子で、

 

『そっ、速報です。クレイドルの編隊、クレイドル12が襲撃されました!襲撃犯は人類種の天敵として今もなお世界に破壊をもたらしている首輪付きです!被害の程はクレイドル12に属する全てのクレイドルからの連絡が取れないとの事で恐らくは全機墜されたと推測されています。被害者の数は不明、今もなお火を噴きながら墜ちているものと・・・あっ中継繋がりました。・・・これはっ!?』

 

ニュースのキャスターが絶句している。中継された映像からは幾つものクレイドルがエンジン部から火を噴きながら墜ちているものあれば、中央の一部分だけから火を噴いているだけにも関わらずエンジンに火が入っておらず、そのまま落ちていくものもあるがその全てが地上に向かって落下していることは容易に見て取れる。

 

「おい、嘘だろ!?もうあいつは死んだんじゃなかったのかよ!?」

 

「くそっ、俺たちをゴミのように踏みつぶしやがって・・・何が人類種の天敵だ!ふざけやがって。」

 

「クレイドル12だって!?待ってくれ、そこには俺の親友が・・・」

 

「もう、人類に逃げ場は無いってのかよ・・・くそったれ・・・」

 

「もう駄目だぁ!俺たちは皆死ぬんだぁ!!」

 

場が騒然となる。格納庫のあちこちから怒り、悲しみ、嘆き、といった他にも様々な感情を乗せた声が聞こえてくる。中には自我を半ば保てていない者もちらほら見える。

 

映像はそのままにキャスターの声は続く。

 

『今届いた情報によりますと、先日、首輪付きを支持、協力体制をとっていた過激派組織リリアナの殲滅作戦が実行、成功を納めたようです。リリアナの幹部の多数を拘束、もしくは無力化に成功。制圧した拠点から首輪付きの潜伏場所やそれに関する資料が発見できたとのことで、企業の見解によりますと後ろ盾のなくなった今、首輪付きはこれまで通りの破壊活動を維持することは不可能で、近い内にでも排除作戦が展開されるとのことです。』

 

本当は首輪付きの排除も同時に行われて失敗したことは報道されていない。企業連が隠蔽でもしたのだろう。企業の隠し事なぞ正直どうだっていい話だ。特に今となっては。

 

何処か諦観にも似た気持ちでテレビを眺めていると、

 

「セレン・ヘイズだな?」

 

低い男の声。呼びかけられたセレンは声の方に振り向く。そこには如何にもボディーガードですと言わんばかりの大男がこちらを見下ろしていた。

 

「体の調子はどうだ?」

 

男は低い声のままセレンに問う。

 

「もうネクストには乗れる筈だ。医師はこれ以上の戦闘行為は本当に次が無くなると言っていたが、もう世界はそれ所では無いんだろう?」

 

何かを理解したようにそう答えるセレンに男は

 

「理解が早くて助かる。そうだ、近い内に首輪付きの潜伏場所の掃討作戦が行われるそうだ。掃討と言っても候補になっている場所に向かって奴が居るか居ないかを確認するだけなんだがな。セレン・ヘイズ、貴方にもこの作戦に参加するよう要請が来ている。」

 

「要請じゃなくて強制だろう?一々オブラートに包む必要性は無い。そうだな、シリエジオはもう動かせると伝えておいてくれ。」

 

「了解した。上にはそのように伝えておく。それと今から30分後に第6会議室に来るようにとの事だ。この作戦に参加するリンクスは貴方含めて4名。ランク2リリウム・ウォルコット、ランク28ダン・モロ、ランク18メイ・グリンフィールド。それとセレン・ヘイズを含めた4名だ。」

 

「GAとBFF。だいぶ偏った編成に見えるが、上の連中の意図か?」

 

リンクス戦争後、BFFはGAの傘下に降った。要するに関係が深い企業だ。訝しむセレンに対し、男はため息をつきながら、

 

「いや、本当に偶然なんだ。首輪付きが虐殺を始めて、リリウム嬢と貴方はカーパルスで重症。ダン・モロは単純に実力不足故に首輪付きを発見もしくは捕捉されたら逃げろと指示があったようで交戦していない。メイ・グリンフィールドはカーパルスでの後に一度交戦、ネクストは破壊されたが、本人が軽傷だったというだけだ。GAのお偉いさん方も生き残ったリンクスに偏りがあって面倒だと呻いておられた。そのせいで首輪付きと繋がっているのではと疑われていることについてもな。」

 

「ふん、どうだか・・・だが、私の知るあいつは戦場での手抜きを一切しなかった。証言ならそれしか言えないな。」

 

「首輪付きのオペレーターの証言として伝えてくるよ・・・では。」と深い溜息を吐きつつ去ってく男の背が扉をくぐり、扉が閉められるまでセレンは無感情にそれを眺めていた。扉の向こうで男の「俺は伝言係じゃなくてボディーガードが仕事なんだぞ・・・」という嘆きは聞かなかったことにしておく。

 

そして格納庫に物言わずに佇んでいる自らの愛機を見上げる。修理、改修とも済んでおり、セレンが乗ればもう出撃が可能な状態だ。無意識に自分の首の裏――頸椎にあたる所を手でさする。そこには明らかに人の皮膚とは違う硬質な感触がある。これがリンクスがリンクスたる所以であり、これにネクストの座席にある接続端子を繋いでネクストを操縦する、AMSの接続プラグだ。

 

 

 

(運命を信じるつもりではないが・・・何か、起きそうだな・・・)

 

 

 

その硬質な感触を指に感じながら、セレンは何か予感のようなものを感じていた。

 

 




首輪付きの転生までの物語part1です。多分次回でプロローグは終るはず・・・です。
原作からキャラや口調がブレていると思いますが、温い目で見守ってください


誤字脱字につきましてはコメントにて優しく御指摘いただけると幸いです。気付き次第修正します

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