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アナス・ビン・マーリクは伝えている
アッラーのみ使いは「聖典の民があなた方に挨拶した時ばワ・アライクム(そして、あなた方の上にも)と言うがよい」と申された
ハディース「挨拶の書」より
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「では改めて紹介しよう。太秦アーファ君だ」
「太秦アーファです!よろしくお願いします、先輩の皆さん!」
ロレンスのテントに生徒会メンバーが揃っての初めての会議。自己紹介のトリを飾ったアーファはそう言って頭を下げる。
アーファは今まで人の前に立ったことなどない人種である。アティクや咲田のように全体指揮をとったこともなければ、ウマルやアリのように部隊を引きたこともない。
では、何故生徒会に入ることとなったか。
それは、彼女のその卓越した教養の深さによるものである。それが最初に判明したのはロレンスが会計書類を整えているときであった。
ロレンスが書類を片手に悩んでいると、そのときたまたま授業の質問をしに来たアーファが、その書類を見てすぐに解決策を見出したのだ。
アーファはそれ以来、たびたびロレンスに頼まれて会計監査や書類仕事に従事していた。ロレンスはこの有能さに目をつけて、生徒会入りを果たしたのである。
「まぁ、自己紹介も終わったので、そろそろ明日からの出張について話をしよう」
ロレンスはそう言って冊子を生徒会の面々に渡す。
「…センセ…これって」
「『旅のしおり』って…修学旅行気分かよ?!」
「うん?あったほうがいいだろう」
ロレンスはそう言って、自身が作った『旅のしおりin D.U』を開く。それをみて彼女達も旅のしおりを開く。そうして出張への注意事項や注意点を一通り確認した後、日が暮れたのを確認して会議は解散となった。
そして、日が暮れて少し。
皆が寝静まった頃、ロレンスはふとテントの外に出ていた。砂漠の夜はいつも肌寒い。少し歩いて、いつもの場所に寝そべって星を見ては、少し物思いに耽っていた。
「ここにやって来て半年か」
随分と長い時間を過ごしたように感じる。
アティク達に助けられ、サラサラヘルメット団に世話になり、学校を作ろうと決め、ヘルメット団をまわり勧誘をして、旅団を作って働いて…
そして、息子に再会した。
敵同士での再会になってしまったが、そんな事はロレンスにとってもはや些細なことである。行方不明…もしかしたら死んでいたかもしれない息子が元気そうに、それに生徒に慕われて生きている。
父として、ここまで嬉しいことはない。
「こんな夜に何やってんだよ、センセ」
背後から声がした。
男がその声が下方向に振り返れば、アティクがパジャマ姿でそこに立っていた。
アティクは躊躇うことなくロレンスの横に座って同じように寝そべって空を眺めた。透き通るような黒い空には少しの星と三日月が登っていた。
「眠れなかったかい?」
「少しな。だから夜風でも浴びようかなって」
沈黙が訪れた。しかし、それは気まずいものではない。気を許しているからこそ、訪れる暗黙の世界だ。
少ししてアティクは、思い出したように口を開いた。
「そう言えばさ、あの日もこんな夜だったよな」
「あの日とは?」
「あれだよ、センセが初めて学校作ろうって言った時の!」
「あぁ…そういえばそうだったね」
アティクはあの夜を鮮明に覚えている。きっと、これからの人生で一生消えることがないであろうその記憶は、自分の人生を大きく変えた日として、そしてアティクが初めて"熱"を知った日でもある。
「なぁ、センセ」
「なにかね」
「絶対成功させような」
「…もとよりそのつもりさ」
肌寒いはずの夜は、何故か少し暖かかった。
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昼上がりの時間、便利屋一行はD.Uに足を運んでいた。目的地は中央のサンクトゥムタワーから少ししてあるシャーレのオフィスである。
「先生いるかしら…」
「先生いなかったら、今日もカップ麺をみんなで分けないとね〜」
「わ、私はアル様がよければ、それでも…」
「私は嫌だけどね…」
便利屋は逼迫していた。
金がなくて、ついに今日の飯さえ危うくなったところで、ようやくその重い腰を上げたわけだが。
「…これも社長が旅団に勝ちたいってこだわり過ぎたのが原因だよ」
実はこの現状の間接要因はバアス旅団にある。
最初の敗北から少ししてからのことであった。
便利屋に大量の依頼が舞い込んできたのだ。しかし…
「実は我が社の製品工場が破壊されるとの情報を得まして…」
「旅団って奴らに攻撃されるらしくて…」
「今防衛用の傭兵を我が社求めてまして!」
そのどれもが旅団がらみの防衛や護衛仕事であったのだ。復讐に燃えるアルはその依頼を片っ端から受諾する。
しかし、前金を貰わないと言う性質上仕事を失敗し報酬を受け取れず、また護衛していた企業が実は悪徳だったりした場合旅団と共に護衛対象を破壊するなどした結果…無事破産
便利屋のお家芸、テント生活に戻り数日シャーレの経営顧問に助けを求めにきたと言うわけである。
「仕方ないでしょう!今の所一度も勝ててないのよ!」
「途中で共闘とかしちゃうからじゃな〜い?」
「あれは、護衛対象が悪者で…!」
「まぁ、引き際を見誤った感はあるよね」
「あ…アル様、あれって…」
雑談する皆を横目にハルカが一つの行列を指差す。それは、車や人の影に隠れてはいるが、ハルカには見覚えがあった。
「あれ〜?あれって」
「旅団の人たちじゃない?」
「え?!本当?!」
そこには見覚えのあるシルエット。
馬に乗った色とりどりの布を羽織った数人の人影が列をなしていた。
「話しかけちゃおうよ!」
「だ、ダメよムツキ。もしかしたら、仕事中…」
「おーい!旅団の人ー!」
アルの言葉を横目に、ささっと旅団の影に話をかける。
「んあ"?誰だよ…ってお前ムツキか?」
「あ!アティクちゃんじゃん!」
「突然走り出して…ってアティクじゃないの」
「何だ便利屋一行勢揃いかよ」
何故、アティクが便利屋の名を知っているか。それは、先程の話にもあったように度々発生した共闘に端を発する、歪な交流関係によるものである。毎度の如く仕事に向かえば便利屋がいるものだから、旅団の中でも便利屋の存在は知れ渡っていたのだ。
「ふむ。久しいな、便利屋の諸君」
「ひ、久しいわね!ロレンス氏」
「今日もアウトローを目指して研鑽中かな?」
「えぇ、もちろん!ま、まぁ、今日は少し違う用向きだけど…まぁ、広義的にはそう言えるわね!」
アルは実のところロレンスに対して憧れを抱いている。金に糸目をつけず、成功率100%の作戦立案と、そしてその冷静な指揮。
私が目指すアウトローの一つの完成形だわ!
と少々浮かれ気味に、ロレンスの事を尊敬しているのだ。そんな、ロレンスは便利屋達の顔を見てあることに気づく。
「む、君たち少しやつれてはいないかな?」
「あ、えぇと…」
「実はうちの社長が旅団のみなさんと戦い過ぎてお金が無くなっちゃて…」
「そうなの〜」
「い、今私たち二日間くらい何も食べてないんです…す、すみません!」
「だとよ、センセ」
「ふむ。ちょうどお昼時か…そうだ、便利屋諸君。私たちと昼食でもどうかな?」
「センセが奢ってくれるぜ」
便利屋に光明下る。
アルは最後までプライドが引き留めんとしたが、ロレンスの「新なるアウトローなら、相手のお誘いを断るものではないよ」との一言で陥落。便利屋一行と生徒会はD.Uのとある喫茶店へと足を止めたのだった。
ーーーーーー
「それにしても、ロレンス氏…カッコいい髭ね!」
「おお!分かってくれるかな。髭は男の嗜みだからね」
「分かるわ!アウトローっぽいもの!」
「社長とロレンスさん…凄い意気投合しちゃった」
「まぁ、こんなもんだろ。ん?ハルカお前そんな量でいいのか?」
「あ、いや、私なんかそんなに頂かなくても…」
「そんなの気にすんなよ。大将!この子に特大パフェ!」
「え、え、え!!」
「ハルカちゃん食べ切れる〜?」
昼下がりの喫茶店、二つの勢力は賑やかに昼食を取っていた。アルは何かを忘れているようなと考えていたその時、横のカヨコが肩を少し叩いて耳打ちする。
「今日、シャーレに先生いないって」
「本当…?じゃあ、今どこに…」
「トリニティだってさ」
涼しい風が吹くテラスに三人の人影。
方やシャーレの先生。
方やトリニティのティーパーティ。
ティーパーティのナギサはそのブラウンの目を先生に向ける。
「いかがでしょう、先生?」
まるで、物語が始まるように。
「助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べていただけませんか?」
「私にできることがあれば、喜んで」
条約へ、日は近づいていた。