アビドスのロレンス   作:チチメカ

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ここが書きたかったまである
しかし、エミュってむずいんですよ


第八話:男の名はロレンス

私がアッラーのみ使いのところにいた或る日、純白な衣服を着、真黒の髪をした一人の男が突然現われた。どこか遠くから旅してきた様子ではなかったが、我々の誰一人として彼について知る者はいなかった。

 

ハディース「信仰の書」より

 

ーーーーーー

 

「ホシノ先輩の情報通り、この先は何もない砂漠ですが…」

 

「ん、ラクダを見たのは大体このあたり」

 

「ありがとうシロコ」

 

「みんなでお出かけは久しぶりですね〜⭐︎」

 

先生は今、対策委員会と共にアビドス砂漠にやって来ていた。目的はもちろん、あの謎のラクダ集団を追ってである。

 

「シロコ先輩、ここで本当にあってるんですかぁ…」

 

「うへぇ〜セリカちゃんはもうバテバテだねぇ〜。おじさんも干からびちゃいそ〜」

 

皆で一度車を降りて、辺りを見渡す。

シロコがラクダを見たと言うあたりまで来たが、少し奥に砂に埋もれた街がある程度で、その周りは砂丘だらけだ。

 

初見でここにラクダがいたのだと言っても、信じる人は少ないだろう。

 

「足跡なんかもここじゃすぐにすぐに消えてしまうね」

 

先生はそう言って、車で来た道を振り返る。

既に奥の方は車の跡を砂がかき消していた。

 

「いつもは大体この時間に出るはず…」

 

シロコがそう言って遠くの砂丘を眺める。

すると、その時。

 

「ん!来た」

 

砂漠の砂丘の先の先、太陽を背にして揺られる影が現れる。先生には影さえあるのかさえわからないが、少し時間を待てば、それが事実であることがわかる。

 

それは、長い長いキャラバンのようだった。

頭に可愛らしい布を巻いた少女達が奥からやってくる。そうして、しばらくすると対策委員会達の目の前までやって来たのだった。

 

「あ?何だよあんたたち。進行の邪魔だぜ」

 

そう声をかけて来たのはペロロが印刷されたターバンを巻いた鋭い目の少女である。杖でポンポンとラクダに停止の合図を送り、少女は改めて対策委員会と目が合う。

その瞬間、少女は顔を顰めた。

 

「ゲェ!あんた達アビドスのやつらじゃねぇか!」

 

「あれ〜私たちのこと知ってるの〜?」

 

「知ってるも何も!お前達のせいで、うちのヘルメット団は崩壊したんだよ!!」

 

そう言って少女…咲田は怒りながら指揮用の棒を対策委員会に差し向ける。

 

「あ、あんた達!カラカラヘルメット団の残党ね!」

 

「そーだぜ、黒見セリカ!あの時は世話になったな!」

 

咲田は歯をぎしぎしと噛み締めながら笑い、セリカを見下ろす。負けじとセリカも睨み返す。喧嘩はよしてと先生は言うが聞く耳を持たない。

 

「あんた達、また変な事起こす気?!」

 

「ハ!アビドスなんかに言う気はねぇな!私だって暇じゃねえんだよ」

 

そう言って咲田が無理矢理ラクダの後ろ足に棒を当てて、出発しようとする。しかし、それを囲うようにして、対策委員会は道を塞いだ。

対策委員会もここまで知って逃すわけにはいかなかった。カラカラヘルメット団の残党がまた武器を持って勢力を伸ばしている。ましてや、反省するような事もなく、敵対的に接して来ているのだ。

既に、緊張は最高峰に達していた。

咲田は目を細めて正面に陣取るホシノを睨む。

 

「邪魔だよ。どけよ」

 

「う〜ん、君たちが何処に行くか、何に所属してるのかを教えてくれたら考えるよ〜」

 

「教える義理ねぇだろ」

 

「じゃあ、このまま立ち往生だね〜」

 

「…やる気か?」

 

「…さぁ?」

 

ホシノも両手でショットガンを構えてそう答える。

 

咲田スンナは心の底でこの現状を拙いと感じていた。その理由は、相手が対策委員会と言う強力な生徒集団であるということ。そして、敵にあの小鳥遊ホシノがいるといこと。最後にシャーレの先生が敵の指揮官であるからである。

 

一度敗北した相手として、ここまでやりにくい奴はいなかった。だからこそ、彼女は前回ヘルメット団の解散という所まで持ち込まれたのである。

 

戦いは避けられない。

 

アジトの場所を知られるわけにはいかない…!

 

ロレンス先生を知られるわけにはいかない…!!

 

咲田スンナは迷いなく。

引き金を引いた。

 

「全体一度拡散!後退して砂丘に陣を取った後、攻撃体制へ!」

 

咲田は先制を取り、指令を送る。そして、すぐさま手榴弾と発煙弾を足元に投下して、ラクダで逃げる。それに合わせて、数十人規模のキャラバンは煙幕と共に拡散した。

 

しかし、この程度でやられる敵でもない。

 

「隠れても無駄で〜す⭐︎」

 

ミニガンが煙幕の先をしらみ潰しに撃ち尽くす。

手榴弾の爆発はホシノが盾で防ぐ。

 

「なんだか…」

 

「ん、先生も気がついた?」

 

「なんだかヘルメット団のみんな、動きが良くなってるよね〜…」

 

ラクダを使った高速移動と補給の確保。そして、以前より増して洗練された連携行動。少なくとも、彼女たちは以前より多くの研鑽を積んだのであろうと、対策委員会の面々は察する。

 

「先生…お願いします!」

 

「うん。わかった」

 

アヤネの一言で、先生はタブレットを取り出す。

対策委員会も負けるわけにはいかなかった。

 

ーーーーーー

 

「…咲田君…普段より遅くないかね」

 

山のように重なる予算書類を裁きながらロレンスは呟く。それと同時に、いつになったらこの書類地獄は終わるとかとロレンスは思った。

 

「…いつもはこの位には戻って来てるよね」

 

「そうっスね…何かあったんスかねぇ?」

 

仕事を手伝ってくれているアリや、近くでごろついているウマルも同様に疑問を持っていた。

 

いつもならこの時間くらいには、帰ってきた咲田がロレンスに褒められるために、尻尾を振りながらこの仕事場まで押しかけてくるはずである。

しかし、いまだに咲田どころかキャラバン隊の誰一人として帰って来ていない。

 

「センセ〜、今日の仕事ってそんなキツかったスかね?」

 

「いや、仕事といっても、今日は物資の仕入れくらいだ。そんなにかからないとは思うが…」

 

口髭を触りながら、ロレンスは語る。

嫌な予感がする。

ロレンスは立ち上がって、外を覗いた。

 

太陽に照らされた砂漠。

その先に、一頭のラクダがやって来ている。

急いでいるようだった。

 

「先生〜!ロレンス先生〜!!」

 

それはいつもキャラバン隊で補給係をしていた少女であった。普段なら彼女がキャラバンを離れて一人で帰ってくることなどはない。

 

「ロレンス先生!咲田さんが!キャラバンが襲われました!」

 

その言葉にロレンスはすぐに飛び出した。

 

ーーーーーー

 

それは先生と対策委員会一行が咲田達キャラバン隊に勝利してすぐのことであった。

 

「ん、あなたで最後。これであなた達の負け」

 

「くッ!!」

 

「それにしても、だいぶ堅かったねぇ〜おじさん感心しちゃったよ〜。でも、これでもう逃げられないよ」

 

勝敗は対策委員会の勝利であった。

しかし、キャラバン隊はラクダや発煙弾、砂の立地などを巧みに生かし遅滞戦術を展開したのだった。負けたキャラバン隊は捕えられ、ラクダと共に一つの縄にまとめられ、縛られていた。

 

「さぁ、白状してもらうんだから!」

 

「へ…へ!やなこった!」

 

「まさかの拒否?!」

 

「ん、凄い度胸」

 

ボロボロの姿でもなお、咲田はニヤリと笑って気丈に振る舞う。しかし。

 

「もしかしてだけど、その格好って『バアス旅団』と関係ある?」

 

「…?!お、お前、なぜそれを!」

 

先生は知っていた。

資料を読み込む中で部隊の特徴である、ターバンや動物を使った移動という点が、先生の中で繋がったのだ。それに不思議そうにアヤネが先生に問いかける。

 

「先生、『バアス旅団』って…」

 

「…近頃いろんな自治体で暴れてる傭兵集団のことだよ。作戦成功率100%。凄まじい連携、突飛な攻撃方法、そして念密な作戦行動で注目されていて…って、自慢げだね」

 

「ふん!それはそうだろう!」

 

先生の解説に咲田は図らずとも自慢げに答える。

 

「まぁでも、私たちに負けたからもう100%ではありませんね⭐︎」

 

「ん、その通り」

 

「な、な!そんな事はない!これは仕事終わりでアジトに帰る途中だったから負けてしまっただけだ!」

 

「…もしも"君達の先生"がいたら、勝てたと思う?」

 

「勿論だ!ロレンス先生がいればお前達なんてけちょんけちょんのぎったんぎったんに〜…あれ?」

 

「うん。君達の先生は『ロレンス先生』って言うんだね」

 

咲田の顔が歪む。絶句した顔だ。

 

「は…図られた!!誘導尋問だ!!」

 

「あはは…」

 

「何だか可愛いですねこの子〜⭐︎」

 

咲田と先生一行がそうして尋問に勤しむその時、咲田とキャラバン隊の目線が先生達の後ろに向けられる。驚いたようで、そして感動したように向けられた目線だ。

その目線に気付き、皆が後ろを向くと。そこにあったのは無数の点だった。

 

砂丘を埋め尽くす人の影。

 

布を体に巻き、旗を掲げ、ラクダや馬にまたがるそれはまるで映画のワンシーンのようであった。そう、先生はその映画を知っていた。そして、その先生の名前も知っていた。

そう、既に知っていたのだ。

 

隊列の前で馬に乗るその男。

男は対策委員会と先生を一瞥し、すこし動きを止めた後、緩やかに腰のサーベルを天に掲げる。あの男は誰か。目元だけを開け、そのほかを白い装束で包んだ男。

 

「アラビア…いや、アビドスのロレンス…!」

 

男はその剣を勢いよく振り落とした。

 




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