感想もいつもニヤニヤしながら読んでます。
みんな、ありがとう
第七話:外から見たウンマ
便利屋68社長、陸八魔アルは戦慄していた。
一体何か?
「まずいわ…不味いわよ!」
アルは金庫を覗きながらそう叫んだ。
まぁ、詰まるところ『金がなくて彼女は絶叫していた』のだ。
と言っても金がすぐ消える理由は、社長のトンチキ金銭感覚が理由であり、別に何もおかしなことではない。便利屋にとってはいつも通りの出来事である。しかし、いつもと違うこともある。
「これも、あのバアス旅団のせいだわぁ!」
「くふふ〜アルちゃん、それに関してはバアス旅団じゃなくて、アルちゃんの金銭感覚の問題だと思うよ〜」
現在、便利屋68にはライバル会社(アルが勝手にそう認識してるだけ)が存在していた。
それこそ、傭兵集団『バアス旅団』
迅速な活動、大胆で緻密な作戦、そして依頼達成率100%と言う実績は、便利屋における傭兵依頼にたいして打撃を与えた。
「でも、実際収入は減ってるしね」
「あぁ、アル様のためなら、ば、バアス旅団に私一人で特攻しても…」
「そんなことしなくていいわよ!ハルカ?!」
しかしアルにも、ライバル会社(笑)であるバアス旅団には、一度ギャフンと言わせたいと言う思いは確かにあった。そも、何故彼女がバアス旅団をライバル指定しているのか。
それは一ヶ月ほど前に遡る。
便利屋68は数人の傭兵と共に、とある砂漠にある施設の防衛を頼まれていた。依頼主によると、敵対している勢力が近いうちに大規模な攻撃を仕掛けてくるとの情報を手に入れたとの事だった。
もし、攻撃がなかったとしても報酬は貰えるとの契約であり、アルは快く依頼を受け、警戒任務にあたっていた。
しかし、それは突然現れた。
その日は砂嵐が来る予報があった。そして、砂嵐はやって来た。しかし、砂丘の先から砂嵐は共に無数の点を引き連れていた。
「あれは…車かしら?」
高台から、アルは狙撃銃のスコープを使ってその点を覗く。しかし、それは車などではなかった。
馬であった。
馬に乗った無数の少女達が砂嵐を背に攻めてきたのだ。この現代において、馬に乗って突貫してくるなど、前代未聞である。
な、なんですってー!(絶叫)と、お決まりの文句を言いながらも、アルは低所の傭兵や社員達に状況を報告。早めの状況整理のおかげで、防衛の準備は整い、上手く防衛戦が展開できるはずであった。
しかし、状況は異質であった。
まず、連絡をする間もなく便利屋の陣地にやって来たのは、敵勢力ではなく、砂嵐の方であった。絶えず横から打ちつけるように降る砂嵐は、視界を妨害した。もはや数メートル先でさえ見ることはできない。これでは、高所の狙撃銃も意味をなさなかった。
アルは不安と焦りを抱きながらも、高所を降りて陣地に戻る。
「あれ?こんなに人少なかったかしら」
違和感。
「あ、アルちゃんいた!」
「社長。ハルカ見なかった?」
砂だらけのアルに気づいたムツキとカヨコ。
「見てないわよ?あ、そうだわ!さっき馬に乗った人たちがここに走って来てたのよ!」
「今の時代に馬…?社長何言ってるの?」
「え〜アルちゃん変な虫でも見たのぉ?」
「本当よ〜!」
「…でも、なんだか砂嵐が来てから違和感があるのは…」
カヨコはそう言って、辺りを見渡す。
しかし、その場にあれだけいたはずの傭兵バイト達は"跡形もなく姿を消していた"
「…!社長。不味いよ、これ」
「え?あれ、さっきまでの子たちは?!」
「あれ、これって結構不味いかんじ?」
刹那。
広報の施設に破裂音。
三人が振り返れば、護衛対象であったはずの施設は既に炎上。それは、詰まるところ任務の失敗を意味していた。
三人が唖然としていると、突然の頭に強い衝撃が走る。目を覚ますころには、依頼の失敗と完全敗北という結果だけが残ったのだった。
砂嵐により馬の移動による砂塵を隠し、そして砂嵐による視界を隠しながらの隠密行動。最後には敵の配置も数も、そして姿さえ見ること叶わず、便利屋68は敗北を喫したのだった。砂漠という気候を生かしたその作戦は、ゲヘナ風紀委員会(ヒナ抜き)をも圧倒する便利屋68を作戦で凌駕し、陸八魔アルの記憶に『バアス旅団』という名を強く記憶させた。
これが、一カ月前の話。
バアス旅団は傭兵界隈においてあっという間に名を轟かし、一躍傭兵界隈の時の勢力となったのだ。
「アル社長、これできるだけかき集められたバアス旅団の資料」
「ありがとう、カヨコ課長!」
「くふふ〜アルちゃん、すっかりバアス旅団にお熱じゃん」
「す、すみません!すみません!あの時は、あっという間に倒されちゃってすみません!!」
「いいのよ!ハルカ!!」
そう言いながら、アルは資料に目を通す。
すると、とある写真に目が止まる。
「え?!バアス旅団の社長って『先生』なの?!」
「「「え?!」」」
その言葉を聞いて残りの三人も資料に飛びつく。
「社長、これ確かに先生とは書いてあるけど、多分これは…」
「写真も体格もちがうしね〜」
「せ、先生はもっと優しい目をしてると思います…」
三人がそう言って指さしたのは、資料に載っていた白装束の男の写真。口も鼻も髪も隠され、目元しか写されていない男の写真であった。
「で、でも!大人で、男性で、それにだって目元も、先生に似てると思わない?」
「そうかな…」
便利屋68は今日も賑やかであった。
ーーーーーー
ゲヘナ風紀委員会は今日も今日とて、仕事に忙殺されていた。
ゲヘナ風紀委員会。トンチキ治安のゲヘナにおける治安維持組織。彼女たちは日々過労の中で戦い、戦って、戦い続ける社畜たちである。そんな彼女たちに近頃、新たな悩みのツボができた。
「またバアス旅団が現れました!!」
「またですか?!」
急足で部室にやって来たのはままで前髪の伸びた少女、それに受け応えるのは行政官の天雨アコ。
既にゲヘナ内におけるバアス旅団の作戦行動は、今月に入って四度目であった。
「ヒナ委員長は?!」
「今日はシャーレの当番で不在でして…」
「あぁ、もう!シャーレの先生め!」
普通に当てつけである。
風紀委員会は今まで一度もバアス旅団と戦い、勝利したことはなかった。詳しく言えば『勝利条件の達成』まで漕ぎ着けたことはなかったのである。
バアス旅団は基本的に戦略攻撃を専門とする。破壊対象は固定され、必ずしも敵は正面からやって来ない。なんなら、いつも通りに現場に現れるころには既に撤退していることが多い。
これは、旅団が徹底的に空崎ヒナを警戒しているからであった。
旅団はゲヘナでの攻撃の際、目標拠点が一つであったり、少数で攻略可能な場合はテロリズム的な攻撃手段を用いて拠点を破壊した。
また、大規模に動かさなければならない場合は、ロレンスを中心とした囮部隊がヒナを引きつけ、その隙に攻撃を行ったのだ。
ゲヘナにおいても作戦達成率100%
依頼達成率100%を叩き出したバアス旅団は様々な団体から依頼を受けるようになった。特に
給食部のとある人物の誘拐協力*1や
温泉発掘のための障害物破壊*2
風紀委員会活動妨害のための破壊行動*3
などは、高頻度で同様の団体、依頼内容で雇われており、ゲヘナにおいても旅団は看過されない組織へと拡大していたのである。
「…ッ!わかりました!私が指揮をします!」
こうして、また風紀委員会の敗北記録は積み重なるのであった…
ーーーーーー
「謎のラクダの群れ?」
「そうなんだよねぇ〜」
アビドス廃校対策委員会の部室で二人の人影が話をしていた。方やシャーレの先生、方や対策委員会の委員長小鳥遊ホシノである。
学校の様子を見に来たのだが、ホシノが相談があると声をかけて来たのだ。
「シロコちゃんが学校に来る時に何度か見たらしいんだけどねぇ、ちょっとおかしいんだよねぇ〜」
ホシノはそう言って、先生のモモトークに数枚の写真を送る。そうして、送られた写真には朝の太陽に照らされた砂丘と、黒いラクダに乗った人影が一列に並んでいる姿だった。
「これは…多いね」
「そうなんだよね〜わざわざアビドスの砂漠でこんなことしてるのもよく分かんないし、この人達の行く先も謎なんだよね〜」
「どう言うこと?」
「…ラクダの群れが向かう先ってさ、オアシスも何もない昔から砂漠地帯で、人も寄りつかないような場所なんだよね」
その言葉に先生は少し寒気がした。
目的も、行動も、それが何かさえも一切不明。
まるで蜃気楼のようだ。
「それでね、先生」
ホシノの目が先生と合う。
たまにしか見せない真剣な顔でホシノは言う。
「私たちと一緒にこれが何か調べるの、手伝って欲しいんだよね」
再会はすぐそこまで来ているのかもしれない。
次から本章入れると嬉しい
いや、少し幕間いれようかしら
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