幼馴染への束縛が強め(になる)ヘルタと幼馴染 作:ヘルタファンクラブ永遠の最後尾
「おお、ついに──」
「えぇ、やっとね」
「あぁ、やっと─────────、胴体が届いたな」
ネルトの視線の先では、四肢のないヘルタが椅子に座らされていた。
ヘルタは苛立ちを隠そうともせず手足の付け根を動かして──おそらく地団駄を踏むような仕草をしようとしたのだろう──怒りを露わにする。
「配送がこんなに遅れるなんて、何のつもりなの?」
「全くだな、本当なら俺ももうそろそろこの宿を出るつもりだったのに……」
少しの間黙り込んでから、ネルトはもう一度ヘルタの現在の状況を観察した。
そして、ついこの間商店で買ってきた諦聴の耳のカチューシャを取り出す。
それを持って自分へと迫るネルトを見て、ヘルタは警戒心を顕にして目を細める。
「ネルト、一応聞くね。何をするつもり?」
「何をするって?わかりきってるだろ」
ネルトは素早い動きでヘルタに近づいてカチューシャを取り付けようとするが、ヘルタは頭を捻ってそれを避ける。
「……くっ、この、やめなさい!」
「避けるな!三ヶ月待ったんだ!俺のとこに人形なんざ送ってくるのが悪いだろ!」
手足のないヘルタ(人形)とネルトの戦いは約十分間続いた。
それに終止符を打ったのは……
「ネルトさん、お食事の用意が……──お邪魔しました〜。ごゆっくりお楽しみください」
「え?あっ!ちょっと待ってください!」
俺とヘルタの取っ組み合いを見て、異常者を見る表情で管理人さんが放った一言だった。
────────────
数分後、ネルトの部屋には項垂れるネルト本人と複雑な表情のヘルタが居た。
「……完全に誤解されたぞ。お前の手足が届くまでの数週間、どんな顔してここに泊まれって言うんだよ……」
「自業自得だよ。というより、私が頭だけだった時にすればよかったんじゃない?」
「それは違うだろ。カチューシャ付けた生首は、なんかさぁ……違うだろ」
「はぁ……?」
ヘルタは理解できないものを見る目でネルトを見つめて首を傾げた。
しばらくの沈黙の後、彼は
「せっかく買ったんだし、ヘルタが嫌なら別の人に頼むか」
そう言って部屋を出ようとする。
「他に頼める人なんかいるの?」
「いるよ、ここに来たばっかの時に知り合った人がいて、今も仲がいいんだ」
「……ふ〜ん?私じゃなくて、その女でいいんだ?」
「別にそれでいいってわけじゃないけどさ、せっかく買ったんだから使わないままじゃ損だろ?」
「別に私、付けないとは言ってないけど?ただし、人に物を頼むなら相応な態度がないとね」
それは自分以外に相手がいると聞いたヘルタの苦し紛れの引き止めだったが、ネルトはそれに気が付かずに喜んだ。
そして、ネルトの思いつく限りの美辞麗句と懇願の末……
「おぉ……っ!!」
ついに、諦聴の耳のカチューシャを付けたヘルタが爆誕した。
「──わざわざ付けたんだから、感想くらいまともに言ってくれない?」
「……あぁ、悪い。すげぇ可愛いよ。……天は二物を与えず、なんて信じられないな。天才だし顔もいいし、最高だよヘルタ」
「…………ふっ、当然ね」
ヘルタはそう言って胸を張る。
人形に顔色が変わるような機能を搭載しなくて良かったと思ったのは今日が初めてだった。