「えっ……何をしているのですか……?」
「え? ただ物色しているだけだが?」
どうやら、目の前のトリニティの子と致命的な認識のズレを起こしてしまったらしい。何か問題でもあるのだろうか。
「いくら不良の方とはいえ、物色するのはどうかと……。あの方々にも尊厳はあると思いますよ」
「けれどね、漁りをしないと私は生きていけないのだよ」
「もしかして、貴方は人のものを盗んではいけないことを教わらなかったタイプですか?」
おそらくそうだ、と返す。彼女は完全に呆れてしまった、分かりやすく表情に出ている。褪せ人とキヴォトス人との価値観が全く合わないとはな……そんな馬鹿な……。
「なんだかもうよく分かりません、ありがとうございました」
その場を去ってしまうトリニティ生徒。ということで、都合が良いので死体漁り*1を再開しよう。不良が目覚める前にやってしまおう、頼むから大人しくしていろよ。すると、何者かの大声が耳に入る。
「いたぞ! アステリアはあそこだ!」
今のはネフェリの声か。バレてしまったようだ、服装を変えているというのに。まあ、装備している武器は普段通りなのだから、見抜かれてしまうのも仕方ない。死体漁り*2阻止の予感……。ひどいことだ、頭の震えが止まらない。
声がした方向を見上げると、ミカちゃんとネフェリ、そして黒い制服に身を包んだ、数人の生徒────おそらく正実部員────がこちらへ向かっていた。嫌な予感がする、贖罪をしなければならないパターンを想定してしまったのだから。グループからこっそり抜けただけで敵対してしまうとなると、今後を無事に生きられるのかが怪しくなってしまう。
「や────っと見つけた! もう、勝手に後ろから離れないでよ!」
「すまない。いや、けれどね、不良がいたのだよ。トリニティの子を恫喝していた」
「あー……もしかしてこの子たちって全部貴方がやったの?」
そうだ、と返事すると「わ──お」とミカちゃんにお返しされた。知り得たか? エルデの刃、褪せ人を。つまり私は強い、とは言え一対多で大量の敵に囲まれると簡単に死ねるので驕ってはならない。私より圧倒的に強い個人だっている。
「で、今までお前は何をやっていたんだ?」
「……死体漁り。生きているが」
「人の物を漁るのは流石にないよ。いじめじゃあるまいし」
ネフェリからは「その癖はまだ抜けないか」と溜め息をつかれ、ミカちゃんは信じられないものを見たような目でこちらを見つめてくる。正実部員たちもざわめき始めてしまった。私は悲しい。
「だがな、物色するのを許してほしい。だからこそ、やらせてくれ……」
やれと言われたことはやり、やるなと言われたこともやる、それが私だ。だからこそ、私は何度止められたって物色を諦めない。
「何がそんなに貴方を駆り立てるの?」
「銃とか、新しい武器が特に欲しいんだよ……ダメだ、やらせてくれ……!*3」
「銃なら後で買ってあげるから! 大人しく着いてきて!」
「さあ早く行けアステリア! 大人しくしろ! するんだ!」
「いや!」
「「いやじゃない!」」
「いやッ!」
二人と正実部員数人に大人しく連行されることとなった。これがエルデの王の姿だなんて……。ちなみに不良たちは、救護騎士団という医療者たちに連れて行かれたとのことである。
「エルデの王が連行されるなんて情けないな」
「ゴストーク……好きに言ってろ……」
「門衛さーん! この抑えの効かない小学生みたいな人を中に入れてもいい?」
「ああ、いいぜ。ネフェリ王の提案だしな」
門衛ゴストーク、狭間の地で用いられている通貨であるルーンを私から盗んできたり、古竜岩の鍛石という最上級の強化素材を売ってくれた奴のこと。こいつとの思い出はあまり良いものではないが、命は奪わないでおいた。
「……貴公は相変わらず門衛か?」
「へっ、キヴォトスに移ってもやっぱり見張りの仕事だよ。だが、ここも悪くない。部長と部員も醜い姿、醜い心からは程遠いからな」
話を早く済ませておき、正実の活動拠点へ入ることにした。正実の訓練の様子を見てみたいとは思う。
ということで、訓練場へ入らせてもらえることになった。ネフェリは別の用事があるとのこと、ミカちゃんは正実を適当に見回りたいとのことで一旦離脱することになった。ネフェリはともかく、ミカちゃんは物凄く自由だが、生徒会長たる者がそれで良いのか。それはさておき、入口近くに来ただけでもう銃声が聞こえてくる。相当訓練に励んでいるようだ。
さて、近接戦闘を特訓したいという子が数人いるとのことだったが、程度をどれくらいにするべきだろうか。まあ、そこは何回もやってみてコツを掴めばいいだろう。あと、場合によっては戦技を教えることも考慮している。銃を持って戦闘している状況で役立つものといえば、「クイックステップ」「猟犬のステップ」「我慢」くらいだろうか、すぐに思い浮かぶものに限れば。特に今挙げた2種のステップは、回避・撹乱・移動などと汎用性が非常に高い。故にこの二つの戦技は教授する価値がある。
ところで、私が訓練させる子はあの子たちだろうか、ナイフと銃を一対持っているようだし。声をかけてみよう。
「貴公たちかね? 近接戦闘に励みたいという子は」
「あっ、はいそうです! 本日は貴重な時間の中お越しして頂きありがとうございます!」
「そんなに畏まらなくてもいいぞ。しかし、私に教えを請うとは随分と物好きなことだ。だが、その好奇心は悪くない。私はアステリア、こちらこそよろしく頼む」
この子たちは皆ぱっつんとした前髪で、目が微かに見える程度の長さである。特定の地位の者が身につけるという腕章はどの子にも付いていない。この子の中から腕章持ちが現れるといいなと思う。
まずはクイックステップとパリィを覚えさせることにした。従軍医師が用いる短剣である「慈悲の短剣」を右手に持ちながら、クイックステップを実演する。その後に、ステップする際の体勢や、足に力を入れる箇所、踏み込みなどを手取り足取り教えた。この手に言えることは、失敗を恐れないこと、何度もやってみることである。失敗は誰だってする、しかし諦めぬことでいずれ成功に至る。まこと失敗は成功の母である。
途中休憩も挟みながら、ひたむきに特訓させたところ、訓練させている子たち全員がクイックステップを扱えるようになった。この調子で正実部員全員が修めたら、きっと高速戦闘を繰り広げる治安組織が生まれることだろう。そう考えると恐ろしくなってきたな。
「わっ! ねっ、訓練の調子はどう?」
「なっ!? 勘弁してくれ……後ろから襲いかかるんじゃあない」
後ろからミカちゃんに驚かされた。思わず軽くステップしてしまったじゃないか。そんなことより訓練の成果である。ということで、実戦演習の名目で一対一で戦わせてみた。すると、互いが銃床部分を構え、クイックステップも織り交ぜて戦闘を繰り広げる。ミカちゃんから本日二度目のわーおを頂いた。私が教えた戦技は、生徒会長から見ても好評だったようだ。
「教えるの上手かったりするの?」
「いや、教えるのは初めてだが、案外向いているのかもしれんな」
「え──、じゃあ早く魔術も教えてよ──!」
「だから待ちたまえ、私にも銃を触らせてくれ。その後に魔術を教授しよう」
ミカちゃんよ、魔術を習えて上機嫌なのは分かる、分かるのだ。だが自慢するかのように私の教え子の前でドヤ顔するのはやめろ。ほら、どう反応すればいいのか相手たちも困っているだろう。
「はぁ……少し自重したまえ」
そう言うと彼女はすぐムッとした表情になった。結局、私の隣にいる天真爛漫で気分屋なお嬢様をどうすればいいか分からず、逃げるようにダッシュで銃を借りに行くことにした。確か倉庫の辺りで借りられるだろう。
スカートで戦ってる子にローリングさせるのはちょっと…
…誰か、俺の原作を知らないか… 水たまりに、落としちまったみたいなんだ で、原作って知ってます?
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ブルアカもエルデンも知っている
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ブルアカのみ知っている
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エルデンのみ知っている
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ブルアカもエルデンも知らない