部屋を出た後、私は待合室で待つことになった。我々がいる建物は病院のようだ、今更ではあるが。どうやらミカちゃんとネフェリの二人が病院の者に話をつけるらしい。けれど、その間に一回外に出てみようと試みた。だがミカちゃんの物理的拘束により阻止。あの子は本当に力が強いのだ。意味が分からない、あんなかわいい見た目して。そういうわけで、仕方なく待合室で佇むこととなったのである。
その途中で着替えることにした。今のコーデは、貴人の帽子、マレー家のローブ、貴族の手袋、指巫女の靴。いつもの服装から貴族のブーツを指巫女の靴へ変えた。こうすると、ローブの裾から足首が見えて可愛げな雰囲気を与える。また、手袋を着用するに当たってローブを半袖に。適度に素肌を見せるのも良いのだ。こういったように、己の服装をよく吟味し着飾るのもまた一興である。ただし、お洒落を追求すると必然的に軽装になり、打たれ弱くなってしまう。だが、ファッションにおいてそんなものは考えるに値しない。
さて、待合室の席に座ること数十秒、不意に隣から声がかかる。
「……ああ、外からの方ですね。それに……どうやら、獣人でも機械でもない方のようだ」
「ほう、貴公は何者だ」
「私はギルバート、あなたと同じ、よそ者です」
ギルバートと名乗る初老の男は、なんとも病弱なように見える。この男も外から来たようだが、狭間の地出身なのだろうか? それともまったく別の場所から来たのだろうか?
「よそ者とはな……。では、貴公は狭間の地を知っているかね?」
「うーん……すみませんが、聞いたことはありません。それはあなたの故郷なのでしょうか? ごほっ、ごほっ、ごほっ」
「貴公、大丈夫か。すぐに回復させてやる」
落葉の聖印、落ちる黄金の葉を模したそれを左手で取り出し、祈祷「回復」を唱える。聖印から放たれる光により、辺りが暖かい光に包まれる。ギルバートの病状が良くなれば良いのだが。
「え? あ、ああ、ありがとうございます。少しは良くなったようです」
彼の顔色に少し血の気が戻ったようだ。回復の祈祷は異邦人にも効くらしい。新しい発見である。
「それは良かった。そうとも、狭間の地は故郷同然と言ってもいい。どうやら私と貴公では元の世界が違うようだ」
「そうでしょうね。まあ、それでもお役に立てることがあれば、言ってください」
「では、そうさせてもらおう」
この男からしか得られないものもあるに違いない。色々な者と接点を持っておくのは重要である。何かあった時の頼りになるのだから。一人ができることには限界があるのだから。
「あなた、事情もおありでしょうが、できるだけはやく離れた方がいい」
「何故だ?」
「この自治区を治める学園は、子供が主体とは思えない、余りにも陰湿な学舎ですから」
そうか、と返事をしておく。どうやらトリニティにもよからぬ噂があるようだ。光あるものには影もある、過去から未来まで変わらない事実。まあ、特に気にすることでもないだろう。目の前に立ちはだかる障害など、我が力で貫き通せばよいのだから。
奥を見てみると、ミカちゃんがニコニコしながら手を振っている。彼女とネフェリの用事が終わったのだろう。そちらに合流するとするか。やっと外に出られる。建物にいるばかりでは、息が詰まってしまう。
「こちらの用事も片付いたようだ、ではまた会おう」
「ええ、こちらこそ」
彼に別れを告げ、ミカちゃんとネフェリに合流し、共に病院を出る。外は清々しい空気をしていた。見たまえ! 透き通る蒼の空だ!
「ねえ、さっきは何話してたの?」
「ただの世間話だ」
「えぇ〜〜教えてよ〜〜いいじゃんちょっとくらい」
トリニティの闇について話していたなんて言えない。秘密は甘いものではあるが、知らなくてもいいことだってある。さて、ほっぺたを膨らませているミカちゃんの機嫌をなんとかして取らなければいけない。年頃の女の子ってどう接すればいいんだっけ。
「二人とも、早く行くぞ」
「あっ! ちょっと置いてかないでよ! ネフェリさーん!」
病院から出て少し経った頃、私は二人の後ろを追従していた。当然、私は正実に至る道を知らないからな。その姿はさながら導くべき褪せ人のいる指巫女である。そんな中でも、私の視線はあちこちに動いていた。好奇心の収まらない子供のように。
ふと、気になる所を見つけた。それは、トリニティの生徒らしき者が不良生徒数人に囲まれている光景。助けた方がいい、そう思い不良を凝視する。問題ない、奴らは殺れる。ロックオンできるのだから。だが、キヴォトスにおいて、殺しは禁じられているのだが。
服装を黒き刃シリーズ、音を立てぬスケイルアーマー一式*1へ早着替えし、ミカちゃんとネフェリからこっそり離脱。左手武器を落葉の聖印から学院の輝石杖に持ち替え、魔術「見えざる姿」を詠唱し、己の姿を見え難くする。ミカちゃんとネフェリはまだ、数百メートル先の建物の陰を曲がろうとしているところだろう。あとは不良どもに近づくのみ。トリニティの生徒が怯え上がってしまっている、一刻も早く救出しなければ。足音もなく疾走、故に奴らは気付かない。エストックの突きが届く距離にまで近付いた、しかしこれ程近付いても己の存在がバレていない。奴らは目の前の獲物のことで頭がいっぱいなのだ。これはチャンス、その隙を狙い──────
寡黙な武人たる、落葉のダンが独自に編み出した格闘術「ダン流蹴術*2」で不良の尻を思い切り蹴り上げた。
「いったあああああああ!??!?」
まあ、情けない。ただの銃撃ではあり得ない痛みだったのだろう、艶のある悲鳴と共に、蹴られた不良は地面に転倒した。尻に触れた部分から一瞬で薄い氷の膜が広がる、つまりもう少し殴れば凍傷を引き起こせる。
「おい! どこからやられた!?」
「あいつだ! なんか半透明でよく見えねぇ!」
残りを片付けるのが先か。学院の輝石杖を仕舞い、左手から黄金律の聖印、律の観測儀を象った幻影の聖印を取り出し、祈祷「影送り」を詠唱。憎き仇に見えるのだという、薄金の影を送り込む。
「そこか! 撃て撃て────!!」
「いっけええええ!」
滑稽なことだ、彼女たちは薄金の影に対して一斉掃射している。そこへ戦技「落葉旋風脚」で回転蹴りを叩き込む。一連、二連、三連、竜巻の如く回し蹴り、最後の四連目で不良の頭へ蹴り下ろす。まとめて一掃した不良たちを見てみると、見事に全員凍傷を引き起こしている。起き上がる気配もない、これで大丈夫だ。
魔術「見えざる姿」の効果が切れたこともあり、震えているトリニティ生徒へ話しかけてみる。
「貴公、大丈夫か? 不良どもに何かされてはないかね?」
「あ、ああ……ただ恫喝されていただけです……その、ありがとうございます……」
「無事だったようだな。それは良かった」
トリニティの生徒を見送ると同時に、死体漁り*3を始めようとする。褪せ人は浅ましく力を漁り争うものだという。ここはキヴォトスではあるが、依然としてその癖が抜けないのだ。キヴォトスの武器も気になるからな。
「えっ……何をしているのですか……?」
「え? ただ物色しているだけだが?」
どうやら、決定的な認識のズレを起こしてしまったらしい。
魔術師の姿か?これが……
まあ純魔の方でもFPケチるために魔力派生武器で殴ったりしますよね…?ね?
…誰か、俺の原作を知らないか… 水たまりに、落としちまったみたいなんだ で、原作って知ってます?
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ブルアカもエルデンも知っている
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ブルアカのみ知っている
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エルデンのみ知っている
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ブルアカもエルデンも知らない