レイサ、スズミ、魔術師になれ。あとレイサはカーリア騎士にもなれ。
「ああ、この”男”は私以上に戦い抜いて王の座を掴み取った者だ」
ああ、私の性別が明らかに……。そういえばネフェリは虜囚服を着た私を一度見ていたか。*1胸元が空いているそれを着ているとまんまと分かってしまうものだ。まあ、己の性別など特に気にしていないのだが。
「へぇ〜結構凄い人なんだね……。あとアステリアさんって男の人だったんだ!」
普通に気付かなかった、と話すミカちゃんによると、人間の大人はキヴォトスにおいて珍しいんだとか。どうなっているんだ、この世界。誰が何のためにこんな世界を作ったのか、是非とも「大いなる意志」に聞いてみたい所存である。それより、ミカちゃんは何をそんなに私を見つめているんだ。私が目覚めて間もない頃に貴公をじっと見つめたことへのお返しか? 私でも困惑するんだぞ。
「え〜〜アステリアさんはもっと可愛い服とか着た方がいいよ! せっかくのお顔が勿体無い!」
「私は着せ替え人形じゃないぞ……」
私がキヴォトスに転移してから勝手に着替えられているんだ、少しばかり動きやすい服に。いつもは貴人の帽子、マレー家のローブ、貴族の手袋、貴族のズボンを着用しているのだがな。*2キヴォトスでもファッションショー開催か? まあ、私もオシャレするのが好きだけども。それは満更でもない。
「それでだ、まさか人間の男が私しかいないという事態はないだろうな?」
「ケネスとゴストークもキヴォトスにいるから安心するといい。だがエルデの王は一夫一妻のはずだろう?」
「ハーレムでも作る気?」
ミカちゃんが訝しげな目でこちらを見やる。やめろ! そんな目で私を見るんじゃあない! そしてハーレムを作る気もないぞ! とはいえ、ケネスさんとゴストークの奴がこの地にもいるというのか。ケネスさんは今もネフェリに仕えているのは確定として、ゴストークは相変わらず門衛をやっているのだろうか。彼らにも会ってみたいものだ。
「ハーレムは作らんぞ……。そうだ、ネフェリはキヴォトスで何をやっているんだ?」
「ああ、連邦生徒会長の指名で『正義実現委員会』という部活動の顧問を務めている。とはいえ、私はただの戦士であることに変わりはない」
「ティーパーティーの私が一応上司だよ!」
正義実現委員会とはな……随分と物騒な名前だ。しかし、ここで連邦生徒会長とやらの名前が出てきたわけだが、その者はネフェリのことを知った上で指名したのだろうか。狭間の地にいたネフェリを既知だというのなら、同じく私のことも一方的に知っていそうだ。まことに得体の知れぬ者である。
「正義実現委員会とやらはどういう活動での集まりなんだ?」
「主に治安維持だな。どこであれ、風が汚れることもあるものだ」
「安心しろ、部員の子たちは皆誇り高き正義と信念を持っている。私はそれを大切にしたいんだ、お前がかつてそうしてくれたようにな」
ネフェリの掲げた信念は純粋であるが故に脆い。これが彼女の義父の裏切りに深き絶望をもたらしてしまった。だが、私はその慰めにと戦鷹の古王の遺灰を手渡した。通常、遺灰というものは主の呼びかけに呼応して霊体を召喚させる。しかし、その戦鷹は孤高を貫き、いかなる者からの呼びかけにも応じない。その有り様がネフェリを奮い立たせたのだろう。そうして彼女は、義父に別れを告げ、導きを捨て、ただ戦士として再び立ち上がったのである。
「そうか、貴公の有り様がその子たちに継承されているといいな」
「ああ、嵐を呼ぶ戦士が私の他に現れるとなお良い」
「正実の子たちはみんないい子だよ! きっと大丈夫だと思う!」
正実という略称があるようだ。ミカちゃんが言うように、正実の部員が皆善き人だと嬉しい。
「そうだ、その傷を癒やしたら訓練の稽古をお前に手伝ってもらいたい。いいか?」
「いいぞ、導きを見つけていないが故にやることもないからな」
二つ返事で了承した。私はこういう癖を持っている、つまり人の頼みを断れないのだ。
「あと、この傷はすぐに治る。すぐに訓練へ向かってもいい」
緋雫の聖杯瓶をもう一つ飲み、ベッドから勢いよく床に足をつける。ちゃんと自分の足で立てている、故に問題無し。
「ちょっと! 怪我人は大人しくしててよ!」
「見たまえ、既に治癒された私の体を」
袖をまくり、傷一つない綺麗な腕をミカちゃんに見せてやった。これが私の無事を証明する拠り所となって欲しい。話をするのも悪くはないが、そろそろ外に出たい頃だ。ミカちゃんが私の腕をまじまじと見つめている。
「本当だ……。キヴォトスの外の人って元から再生力とか高いの? それともさっき飲んでたものが関係してるの?」
「後者の方が合っているな。褪せ人……いや、アステリアが飲んでいたそれは、あらゆる傷をたちまち治すものだ」
ネフェリが説明を加えてくれた、ありがとうと心の中で言っておく。ミカちゃんから見れば、今の聖杯瓶も、魔術も祈祷も、異質なものに見えるのだろうか。世界が異なれば律も異なる、まさにそういうことである。
「へえ〜〜っ……住んでる場所が違うというか何というか……。なんだか魔法みたい」
聖杯瓶は魔術でも祈祷でもないのだがな。こんなものを魔法と言い張っていたら、本職の魔術師や預言者から嘲笑されてしまう。そうだ、キヴォトスにも魔法────魔術と祈祷────は存在するのだろうか? もしあるのならば、是非習得したいところだ。識ることに終わりはなく、また完全もない。それでも、私は手を伸ばすのだ。ただ、強くなるために。
「キヴォトスに魔術と祈祷はあるのか?」
「えっと……魔術? 祈祷というか、お祈りの時間ならあるけど……」
新しい魔法はない、おぉ新しい魔法はない。非常に残念だ。私の生き甲斐が一つ失われてしまったのだから。
「ねえ! そんな悲しそうな顔しないでよ! じゃあその魔術? っていうのやってみてよ!」
「いいだろう、こう見えて私は魔術剣士なのでね」
では、何の魔術を使おうか。おそらく我々がいる部屋を傷つけないものが望ましいだろう。そう考えながら、青緑の輝石が埋め込まれた杖「学院の輝石杖」を左手に持つ。
「では、『氷の霧』」
別に魔術名を唱えなくてもよいのだが、ミカちゃんにとっては印象に残るだろう。それで、老いた雪魔女が用いたという魔術「氷の霧」を杖から放つ。霧状のそれは雪景色のように煌めいている。
「わ────っ、すごーい! 本当に出た! って冷たっ!」
自分から触りに行ってしまうミカちゃん。この程度の魔術で相当喜ばれるとは、私と彼女での認識の差が相当かけ離れていることを実感する。
「ねぇ! 私にも使えたりする!? もしできたら教えて欲しいな!」
「貴公、落ち着きたまえ。少し待て、素質を判断してやる」
はしゃぐミカちゃんを眼中に捉え、彼女の能力値を鑑定する。ミカちゃんは少し不思議そうな顔で私を見ていたが、私は気にせずその能力値を読み取った。
Mika Misono
生命力:60
精神力:19
持久力:30
筋力:80
技量:14
知力:40
信仰:25
神秘:80
筋力80……? 神秘はともかく、あんな華奢な体でどうやってその数値を叩き出したのだ。いや、その疑問は今は重要ではない。言うべきだろうか、ミカちゃんは筋力と神秘で戦う方が適性があるという旨を。だが、優雅なお嬢様に「貴方は大斧を振り回す方が適性ありますよ」などと言ったら逆鱗に触れてしまう気がする。とはいえ、魔術を単なる嗜みとして習得するなら別に気にしなくてもいいだろう。
「ふむ、それなりの素養はあるようだ」
やったっ、と喜びを口にするミカちゃんに対して、一つ告げなければいけないことがある。これは、私が弟子入りする際に師から告げられたことでもある。
「だが、師は慎重に選ぶべきだぞ。私は、異端の魔術師。派閥を選ばず、あらゆる魔術を修めたのだ。それでもよいのかな?」
「うん! 私も色々使ってみたいし、とにかく魔術を使いたいの!」
「よかろう、貴公の師となり、魔術を教えよう。だが、私は厳しいぞ? 優しい言葉など、かけてはやれんからな、フフッ」
話し方が我が師とまんま同じになってしまった。とはいえ、私が初めて弟子を取ったことは結構嬉しかったりする。さて、どの魔術を教えようか。期待が止まらない。
「やった──! ネフェリさんも一緒にやろうよ!」
「私は魔術の才覚がないんでな、すまない」
「それで、魔術の授業をするにしろ訓練の相手をするにしろ、まずはここを出るぞ」
「ああ、そうだったね。じゃあ行こうか! ねっ、アステリアさん!」
「急に腕を掴むんじゃあない……! あっ待って着替えさせ」
本当にたくさんの出来事があったが、ひとまず我々はこの部屋を出て、外に足を運ぶことにした。
ミカにマレー家の執行剣……?モーグウィンの聖槍……?古隕鉄の大剣……?
…誰か、俺の原作を知らないか… 水たまりに、落としちまったみたいなんだ で、原作って知ってます?
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ブルアカもエルデンも知っている
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ブルアカのみ知っている
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エルデンのみ知っている
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ブルアカもエルデンも知らない