生活保護減額、補塡は一部 厚労省案「最低でも2.5%減」に原告反発か
厚生労働省は2013〜15年の生活保護費の引き下げを違法とした最高裁判決を受け、減額分の補塡を全額ではなく一部にとどめる調整に入った。7日に開いた同省の専門委員会で、基準を改定し直したとしても最低でも平均2.5%程度の引き下げが必要になる方向性を示した。原告以外も補塡の対象とする方針だ。
高市早苗首相は同日の衆院予算委員会で、最高裁判決について「厚労相の判断の過程および手続きには過誤や欠落があったと指摘された。深く反省し、おわびする」と述べた。国側として初めて謝罪した。
最高裁判決を巡る厚労省の専門委員会で、議論のとりまとめ案を提示した。違法とされた物価下落率をもとにした減額調整をやめ、一般の低所得者世帯の消費実態に照らして基準をふたたび改定するとした。その場合でも、最低2.49%の引き下げが妥当な水準になると示した。
引き下げ率はこのほか、4.01%、5.54%の2案も示した。消費実態を見る期間などによって差が生じている。11月中にも開く次回の専門委員会で議論を続ける。
原告は減額分の全額を支払うよう求めており、反発の声が上がるとみられる。
国は13〜15年、生活保護費のうち食費や光熱費など日常生活に必要な「生活扶助費」を平均で6.5%、最大で10%引き下げた。計670億円程度の国費削減につながった。
このうち約580億円分は、厚労省が独自に算出した08〜11年の物価下落率(4.78%)をふまえた「デフレ調整」によるものだった。残りの約90億円分は保護を受けていない低所得者世帯の消費水準などと比べて見直した「ゆがみ調整」だった。
厚労省はとりまとめ案で、補塡に関してゆがみ調整の部分はこれまでと同じく実施する考えを示した。
専門委員会の議論では、物価変動率を用いるデフレ調整によって基準をふたたび改定するのは「困難」との意見が出ていた。今回のとりまとめ案では物価にかわり、当時の消費実態に基づいて引き下げ幅の基準をはじいた。
一般の低所得者の消費実態と比べるため、5年ごとに実施している総務省の全国消費実態調査(現・全国家計構造調査)の09年のデータを使う。08年のリーマン・ショックの影響を緩和するため、毎年の家計調査で補正する。
当時の基準を再改定して差額を追加支給する場合、最高裁判決の原告だけでなく、関連する訴訟の原告や訴訟を起こしていない当時の生活保護受給者も補塡の対象として想定する。すでに生活保護の対象から外れた人や国内にいない人も、実務上の課題を考慮した上で検討する。死亡した人は過去の判例を根拠に、対象外とする見込みだ。
6月の最高裁判決ではデフレ調整について、専門部会での審議を経ずに物価変動率のみを指標として用いたことが「専門的知見との整合性を欠く」として生活保護法に違反すると結論づけた。一方、ゆがみ調整は適法とした。国に対する賠償請求は退けた。
減額を決めた背景には、当時の政治情勢が絡んでいた。自民党は旧民主党から政権を奪還した12年の衆院選公約で「給付水準の原則1割カット」をかかげ、生活保護の減額に踏み切った。