イソ弁1年目の個人事件の取り方と2年目以降に向けた準備
(弊所の)勤務弁護士向けに、どのように個人事件を受任していくかをまとめました。
はじめに
弊所は私が事務所のトッププレイヤーであり続けることを前提に、所属弁護士全員がそれぞれ独立してもやっていけるプロフェッショナルとなることを目指しています。
独立してもやっていけるというレベルは、個人事件+事務所報酬(給与)で安定して売上2000万円程度(個人事件に広告費をかける場合は売上-広告費が2000万円程度)が見込めるレベルだと想定しています。独立した場合は1000万円くらい利益が残る、セミパートナーや勤務弁護士なら1500万円くらい利益が残る想定です。この状態を5年以内程度で目指して欲しいと思っています。統計でいえば弁護士の上位3割程度です。これでようやく1人前と呼べるレベルかなと思います。
この状態になってもなお、独立せず事務所に残ってくれる場合は、10年以内に、個人事件で安定して売上3000万円超(広告費をかける場合は売上-広告費が3000万円超)が見込めるレベルを目指して欲しいです。独立した場合は1800万円超程度利益が残り、セミパートナーならもっと利益が残る想定です。統計でいえば弁護士の上位1割程度です。かなり余裕ができてくる状態だと思います。
上位1~3割というとぱっと見簡単そうに見えますが、この部分の多くを東京や大阪の企業法務事務所の弁護士や大手広告系事務所が占めていると思うので、地方で街弁だと統計の数字以上の難易度ではないかなと思います。
1~5年目の給料がもらえているうちは、事務所事件を週20時間以内程度でこなし、個人事件で1000万円超程度売り上げられるようになることを目標とすればよいです。
1年目の個人事件の受任の仕方
1.当番、国選
手っ取り早く個人事件を受任するならこれでしょう。国選の事件単価は10~20万程度、年間6件程度は容易に受任できると思います。当番で私選を引ければ単価が100万円程度に上がります。その後関連して他の民事や家事事件の受任機会につながることもあります。ただし、あくまで1年目に手っ取り早く個人事件を受任する手段にすぎず、刑事事件の場数を踏むという位置づけにしましょう。刑事事件を主戦場にするわけでなければ、2~3年以内に卒業するのが望ましいです。
2.弁護士会の法律相談、役所の法律相談
これらの相談は大手広告事務所のスクリーニングから漏れたような相談が多く、最近はなかなか受任の機会につながる相談は少ないと思います。もっとも、1年目の弁護士がとりあえず自身の依頼者候補と繋がれる機会としては貴重です。場数を踏みがてら、受任できる案件があればラッキーくらいの気持ちでのぞめばよいと思います。また、多くの受任を断ることになるので、受任を断る練習にもなるでしょう。
3.知人、親戚等の紹介
弁護士になったことを知人や親戚等に周知しておけば、なんらかの紹介が得られることは多いと思います。
とりあえず弁護士になったよ~とでもFacebook等に投稿したりしておけばよいでしょう。
4.ポータルサイトでの広告
ポータルサイトの広告は、都会だとよほどエッジが効いてないと電話すらならない可能性が高いですが、地方なら交通事故、離婚、相続、その他でまだまだ問い合わせは得られると思います。
さて、以上は、まず最初の1年目の応急措置的な受任方法です。5年以内までに安定した受任を確保するには正直あまり役立ちません。2年目、3年目を見据えて準備をしていくことが重要です。
2、3年目に向けた準備
事務所の事件の顧客は基本的に元々継続的な関係性があるかリピートが期待できる優良顧客です。しかし、これはあくまで事務所(というか私)の顧客なので、自立した弁護士になるには、自分のルートで優良顧客を見つけていく必要があります。これはなかなか容易ではありません。
1年単位ではなく、2~3年かけて準備していく必要があります。すぐに成果は出なくても、事務所事件で食べていけるようにはしますので、じっくり取り組んでください。
あなたに継続的に依頼を供給してくれるのは、私以外では、事務所外の同業の士業、経営者や富裕層などの人たちです。また、ある程度とがった専門性があれば紹介やネットからの集客も期待できます。他士業連携なども考えられますが、そこは私の苦手分野なので説明は割愛します(あまり優良顧客を得られると思えない。)。
こちらの記事も参考にしてください。
【法律事務所】最初の月5万の顧問先5社と契約するまでの実践|F
1.弁護士会の委員会活動
とってもアナログな昔ながらの手法で批判も受けそうですが、私が1年目で勤務弁護士からのスタートなら、弁護士会の委員会活動に力を入れようと思います。昨今の若手弁護士には不人気で人手不足なので、今はチャンスだと思います。
専門系の委員会活動なら、事務所外の専門性の高い弁護士と容易に関係が持てます。議事録作成や飲み会の幹事など面倒な雑務を引き受けてかつ実直な仕事ぶりを見せていけば容易に信頼を得られるのではないかと思います。
専門分野を確立するチャンス、事件の紹介や共同受任を得られるチャンス、何らかの実績(執筆、講師等)を作るチャンスを事務所外で得るには今はこれが一番手っ取り早いのかなと思います。
2.経営者、富裕層との関係作り
経営者団体、勉強会、ゴルフやグルメなどの趣味の活動などで、経営者や富裕層との関係を作っていくことは有用です。
やり方は人によって合う・合わない、得意・不得意もあるので、自分にとって無理のないやり方を見つけていくことが重要です。
3.専門分野の勉強、情報発信
自己紹介や集客の核となるような専門分野を作れるよう、特定分野の勉強やブログ等での情報発信をすることが考えられます。すぐには成果は上がらないですが、コツコツブログを書いたりしていると、突然上位表示されて問い合わせがきたりすることがあります。メディアの取材を受ければ実績にもなります。
資格を取ることは、ただちには仕事に直結しないですが、得意分野の説明のしやすさや説得力にはつながります。例えばITの資格を持っていれば、あなたを誰かがIT企業等に紹介してくれるときに「〇〇先生はITの資格も持っていますよ。」と紹介しやすくなります。
資格にかかわらずきちんと勉強する癖をつけておかないと、5年10年立っても、その場しのぎの弁護士になってしまうかもしれません。
事務所事件との付き合い方
個人事件のことばかり書きましたが、よほどの人でない限り、1年目の1番の個人事件は事務所からの報酬が得られる事務所事件です。個人事件ばかりに気を取られて、事務所事件を疎かにするのはあなたにとって得策ではありません。
最初にあなたに与えられる仕事は、誰でもできる簡単な代替性がある仕事や私の事件処理の補助などの仕事が中心です。
これは私があなたの仕事ぶりがまだわからず、とりあえず様子見からのスタートだからです。
事務所事件におけるあなたの目標は、私からどれだけの裁量の広い仕事を奪えるかです。
簡単な仕事をやらせてみて、問題がなさそうであれば、私はあなたにより裁量の広い仕事をお任せするようになります。そうなれば、あなた自身に実績がつき、自信もつくようになると思います。顧客との接点も増えます。あわよくば、顧客があなたを気に入り、私から顧客を奪えるかもしれません。
逆に、なんかいまいちだなと思ったり、いつまでも顧客対応や事件処理に不安がある場合は、それ以上の仕事をお任せすることはないと思います。そのような状態だと5年以内に1人前の状態になれる可能性も乏しく、事務所からは退場してもらうことになるかもしれません。



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