〈医療の値段・第7部 医師にたずねよう〉③全6回
2026年度の診療報酬改定の議論が本格化している。物価高騰などで、悪化する病院経営の立て直しが必要だが、医療費のムダを減らさないと保険料アップは避けられない。高血圧や糖尿病など生活習慣病の過剰診療を見破り、医療費のムダをなくした患者家族の奮闘ぶりを報告する。(この連載は杉谷剛が担当します)
◇
◆生活習慣病の父、いつもの通院の診療代が1.5倍に跳ね上がった
東京・多摩地区の閑静な住宅街に昔ながらの診療所があった。2階建ての一軒家の1階部分で、敷地には患者向けの駐車場もある。
糖尿病など三つの生活習慣病があった父の診療代の値上がりに疑問を感じた木村麻里さん(仮名)は、昨年11月に父の処方箋をもらいに診療所を訪れ、医師に質問をした。いつもの院長ではなく、昨年から一緒に診療するようになった息子の医師が対応した。
父は昨年6月の診療報酬改定後、割高な「生活習慣病管理料(Ⅰ)」を請求され、診療代が1.5倍に跳ね上がった。検査や注射、病理診断を含む包括料金だが、検査などをしてもしなくても糖尿病の場合は7600円がかかる。一方の(Ⅱ)は3330円で、検査料などは実施のつど加算される。
「父の尿検査は年1回、血液検査は年に2〜3回だから、(Ⅱ)にしていただけないんですか」。そう聞いて木村さんは医師の次のような回答に驚いた。
◆「おかしくないですか」と聞いたら「それがうちの方針です」
「そんなことはしませんよ。こっちが赤字になりますから。いろいろ検査をする人だったら(Ⅱ)にします。でも、〇〇さん(木村さんの父)は検査をしないから(Ⅰ)にしています」
検査が少ない患者に、検査を含まない割安の(Ⅱ)を請求すれば売り上げが少ないので、検査をしなくても割高な診療報酬が入る(Ⅰ)を請求すると、医師はあけすけに語った。
「それは患者目線ではなく、そちら目線ですよね。父は検査が少ないから(Ⅰ)を取るなんておかしくないですか」。思わず怒り口調になったが、医師は「検査が少ない人は(Ⅰ)、いろいろな検査をする人は(Ⅱ)、それがうちの方針です」と取り合わなかった。
◆堂々ウソの院内掲示も「うちの方針」
...残り 775/1695 文字
この記事は会員限定です。
- 有料会員に登録すると
- 会員向け記事が読み放題
- 記事にコメントが書ける
- 紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
カテゴリーをフォローする
-
Kero 11月6日15時43分
-
ジャック・リーチャー 11月6日8時3分
多くの国立病院も赤字。町医者も不正をしないと「こっちも赤字になりますからと」。その裏では財源の保証もなく兵器の爆買い、対米輸出企業のための80兆円ものアメリカ投資などが行われている。
一体根本的な問題は何なのだろうか?個別の問題も大事だが、全体的な問題を整理していただけないだろうか?
初回の記事で日本人の外来受診回数が欧米に比べて異常に多いと報道していたが、その背景には働き方(ドイツでは病欠は有給とならないなど)も一つの原因であると思う。
高額医療費の上限額を下げたり、otc類似薬の保険適用除外などは、医療保険に入れとテレビと新聞は宣伝しているようにしか見えないのだが。
年金(国民年金と厚生年金を同列で扱ったり)や医療を取り巻く社会保障の議論が多いが、どれも個別の問題を扱うばかりで、とても根本的な問題を議論しているとは思えない。
みんなのコメント2件
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。
今がチャンス!
抽選でAmazon eギフト券1,000円分などが当たるキャンペーン実施中! 今すぐ詳細をチェック