「簡単な方のブラインドタッチ」をやろうぜ:俯瞰と体感
言語化タイピング概論において、ある程度小さいキーボードを使うべきだと述べました。
なぜなら、ブラインドタッチ(タッチタイピング)にも二種類あるからです。
そして、簡単な方と難しいほうがあるからです。
今回は、「簡単な方のブラインドタッチ」について整理したいと思います。
俯瞰と体感
二種類のブラインドタッチとは、
地図のようにキーボードを思い浮かべ、目的のキーを狙い打つ
キーボードを思い浮かべず、指の動かし方の感覚だけで打つ
のことです。
ここでは、前者を俯瞰ブラインドタッチ、後者を体感ブラインドタッチと呼ぶことにします。
一般的にブラインドタッチというと、俯瞰ブラインドタッチを思い浮かべる人が多いと思います。「キーの位置を覚えているから見なくても打てる」ということです。
しかし、実はこれは「難しい方のブラインドタッチ」です。これがなかなか身につかないのは当たり前です。難しいからです。
逆に体感ブラインドタッチの方は、まあたいてい「なんそれ」という感じになると思います。一般的なキーボードはそーゆーふうにできてないので。
しかし、実はこっちの方こそ「簡単な方のブラインドタッチ」なのです。それはもう、例え話じゃなく次元が違う。
次元が違うとはどういうことか。詳しく説明しましょう。
俯瞰=俯瞰+体感
妙な式が出てきましたね。別に体感=0ということではありませんよ。
簡単にいえば、俯瞰ブラインドタッチにおいても、結局のところ、「地図上の目的地」に辿り着くには、体感でやらないといけないということです。
キーボードを見てない、というより、手を見てないからですね。視覚で手をキーまで誘導することができないからです。
キーボードは動かないので位置を覚えることもできますが、手は動くので、現在地も速度も体感でしかわからない。
乱暴な言い方をすれば、俯瞰ブラインドタッチとは、
視覚で目的のキーを探して打つルックタイピング
指の動かし方の感覚で目的のキーを打つ体感ブラインドタッチ
の複合技みたいなものです。
それに対して、ルックタイピングと体感ブラインドタッチは、それぞれ視覚と体感のみによる単純技だということができます。
ルックタイピングはお話にならないのでブラインドタッチ同士で比較すると、俯瞰ブラインドタッチだけが複合技だというわけ。
認知科学とかの言葉を使うと、エゴセントリック座標認知とアロセントリック座標認知の複合課題であるという言い方ができます。多分。
エゴセントリック座標認知とは、自分(の身体)を基準とした座標認知のこと。今喋ってる相手がどのくらい遠くにいるとかそういうことですね。
アロセントリック座標認知とは、自分の外側の環境を基準とした座標認知のこと。自分が部屋の中のどこにいるか、というのがこれです。
つまり、
体感ブラインドタッチ:エゴセントリック課題
俯瞰ブラインドタッチ:エゴセントリック・アロセントリック複合課題
であるから、何倍難しいとかじゃなくて、難しさの次元が違うということ。
たとえるなら、「素振りとスイカ割り」みたいなものです。
素振りは目をつぶってたって(まあフォームの美しさとかはともかく)できるに決まってますが、それをスイカに向かって振り下ろし命中させるとなれば、ぐるぐる回されなくたって別次元の難しさになるわけですよ。
ところがどっこい、普通のキーボードでは簡単なはずの体感ブラインドタッチが極めて難しくなります。キーボードがデカいからです。
クソデカキーボードがブラインドタッチを難しくする原因
ここで、言語化タイピング概論で説明した標準運指と最適化運指も関わってきます。
最適化運指は、ルート構築を空間的に行う必要があることから、基本的に俯瞰ブラインドタッチが前提と考えます。つまり、体感ブラインドタッチにおいては標準運指が前提です。
では、一般的なキーボードにおける標準運指を振り返ってみましょうか。
はいバカー。こんなん体感で打てるわけないんですよ。
体感で打つということは、指の動かし具合のみによってキーを区別する必要があり、そのパターンは常人なら
奥
ホーム
手前
の三つくらいが限界でしょう。
それだと親指除けば4×3×2=24キー、つまりアルファベットも入り切らないから、人差し指二列まではしゃーなしとしましょう。人差し指だから我慢できたけど中指だったら我慢できなかった。
小指二列は、不可能ではないけど体感ブラインドタッチ的には避けるべきだと考えます。「高いからつらい」ってのもありますしね。
親指も同じく3キーとするなら、36キーまでは増やせる。
本当はフィンガー26キーの32キーがいいとは思うんですが、それだと今度はかな入力の設計がきちーんだよなー。僕は36キーいけるので32キーの追求は諦めました。
話を元に戻すと、「36キーに必要なすべての機能を詰め込んだキーボード」が、常人が体感ブラインドタッチで済ませるために必要なものであり、
コンパクトだの60%だのハッピーな配列だのは、難しい方のブラインドタッチでないと打てない、常人がまともに扱うにはそれなりの訓練を必要とするシロモノだということです。
普通の電気屋とかには、スイカ割りレベルの難しい道具しか売ってないんですよ。
そんなあなたにスモールキーボード
で、以前なら選択肢が個人販売の自作キーボードしかない状況だったんですよね。それでも実用上ほぼ市販品レベルのものもありましたが……
だが今は違う!!(ギュッ)
分割
完全無線
省キー
エルゴノミクス配列
完成品
企業販売でサポートもあり
というスゲエヤツが話題をかっさらっています。その名もCornix(LPは薄いスイッチ対応版)。
現在品薄で入手困難ですが、なにしろ企業のやることですから、売れれば売れるだけ作ってくれるでしょう。いずれは欲しい人全員に行き渡るはずです。
ちょっとキー多いなとは思いますが、まあ許容範囲でしょう。いらないキー塞ぐって手もありますしね。
次元違いの「簡単なブラインドタッチ」を是非体験していただきたい。最初はキーマップで途方に暮れると思いますが、とりあえずこれでいいと思うよ。



コメント