【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮で対米外交を担当するキム・ウンチョル外務次官は6日、米国が新たな独自制裁を発動したことを受け、「わが国を最後まで敵視する立場を遺憾なく示した」と反発する談話を発表した。「いつまでも忍耐力を持って相応の対応をする」とも表明した。朝鮮中央通信が報じた。
トランプ米大統領は10月末の韓国訪問に合わせ、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記との会談に繰り返し意欲を示してきた。これに対し、北朝鮮は米国による制裁継続を受け、米国の「敵視政策」が変化するまでは対話に応じず、出方を見定める方針を示唆した形だ。
米財務省は4日、サイバー犯罪などで調達した資金のマネーロンダリング(資金洗浄)に関わったとして、北朝鮮の8人と2団体を制裁対象に追加したと発表。米国務省も3日、北朝鮮産石炭・鉄鉱石の中国への密輸に関与したとして、第三国の船舶7隻を国連の制裁対象に指定するよう求める方針を示していた。
キム次官は、追加制裁が第2次トランプ政権発足後5回目になるとし、米国の対北政策の「変化を予想していた世間の推測と世論に終止符を打った」と批判した。北朝鮮がトランプ政権の対北政策の変化を注視していた様子が読み取れる。
一方、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は4日、北朝鮮が「水面下で米国との対話に備えていた動向がさまざまなルートで確認された」と国会で報告。金総書記には「対米対話の意思があり、今後条件が整えば米国と接触する」との分析を示した。非公開の場で報告を受けた国会議員が記者団に説明した。
国情院は、来年3月の米韓合同軍事演習以降が「情勢の分岐点になる」と指摘。状況次第で北朝鮮が米朝首脳会談を推進する可能性が高いとの見方も示した。